仮面ライダージオウ×Fate/Grand order The KING order   作:リョウギ

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第2話 「B.C.2600:人神統合文明」

「人理の味方、ですって?」

 

こちらを見下ろしながら、黒髪の女神は嗤う

 

「私たち、そして私たちを管理する王がいなければ生きてもいけない人間の歴史なんか、存続させてなんになるのかしら?」

【なんになるか、か。それは僕には返答が難しいところだ】

 

女神の詰問に土人形は首を捻りながらも凛然と答える

気にくわないのか、女神は笑顔ながらも眉間にシワを寄せる

 

「はっ、私たちに作られた兵器風情に答えられる質問じゃなかったわね。もういいわ、そこの人間たちと一緒にー」

 

『女神イシュタル』

 

と、4人しかいないはずの森林(跡地)に低く、威厳のある声が響く

 

「‼︎」

 

今の今まで見下した態度を崩さなかったイシュタルが冷や汗を垂らしながら姿勢を正す

 

「お、王よ。い、いかがなさいました?」

 

慣れない敬語でどこか、恐らく先程の威厳ある声の主に伺いを立てる

 

『いかがも何もあるまい。貴様、(オレ)の国にアレを放ったな…?』

 

声の凄みある詰問にイシュタルが更に冷や汗を垂らす

 

「な、なんのことでしょうか?」

『隠し立ては(オレ)の目には通用しないことなど知っているだろうたわけが。アレの使用は禁じていたはずだぞ』

「は、はい……申し訳ありません……」

 

相変わらず声の主はわからないが、声だけでもその苛立ちが伝わってくる

 

『加えて必要のない森林資源の破壊、貴様の大雑把さはなんとかならんのか?ん?』

 

『ーまぁ良い、戒律違反には罰則を下すまでだ』

 

と、それを眺めていたジオウたちに何か違和感が走る

ーと同時に前方の地面に派手な土煙が上がり、衝撃音が響く

 

「……ッあ……‼︎」

 

そこに転がっていたのは、先程まで空を漂っていたイシュタルである

その体にはいくつもの金色に光り輝く武器が突き刺さり、赤い血が滴っていた

 

『下がれ、イシュタル。そこな魔王どもなぞ眼中にない。捨て置け』

「……承知、しました……」

 

先程使ったものと同じ金色の門を開き、イシュタルの姿が消える

 

『感謝しておけよ魔王。女神の気まぐれで死ぬはずだった貴様の命……(オレ)が拾ってやったのだからな』

 

声が愉快そうに告げる

おもむろに動いたのは、エルキドゥだ

 

【キミが、英雄王ギルガメッシュかい?】

『土人形風情に割いてやる言葉なぞ無いが、その通り』

 

と、どこからか巨大な粘土板がジオウたちの頭上に出現する

そこに映し出されたのは金色に輝く豪奢な鎧を身にまとい、腰に歪んだ形状の翠色のベルトを装着した怪人

肩鎧には翼のような意匠があり、頭部はどこか鷹などの猛禽類を彷彿とさせる

 

(オレ)こそ、人を統べ、神を統べた原初の王、ギルガメッシュである』

 

そう仰々しく宣言したギルガメッシュは腰のベルトに手を添える

と同時にジオウたちを再び違和感が包む

次の瞬間、3人の周囲には金の門から出現した夥しい数の金色の武器が敷き詰められていた

 

「なっ……」

 

『理解したか?雑種。これが、人も神も繋げて統べた絶対なる王たる(オレ)の力よ』

 

映像越しでは無い、声が響く

ジオウたちの目前にいたのは、あの映像に現れたギルガメッシュ王であった

ギルガメッシュはおもむろに右手を上げると、展開していた武器を霧散させた

 

『何故イシュタルを下げたのか、そんな下らん質問に先んじて答えてやったまでよ。何、簡単だ』

 

『貴様らなど、いつでも排除できる。それだけよ』

 

ジオウが息を呑む

目の前に立つその王は、そのプレッシャーだけでもイシュタルとは比べ物にならない強烈さがあった

 

【キミが、ギルガメッシュ……そうか】

『……気安いぞ、土人形。貴様ごとき道具が、(オレ)の名を軽々しく口にするな』

 

エルキドゥの呼びかけにギルガメッシュが怒気を孕んだ声を漏らす

 

【すまない。その名前が、何故か僕の記憶領域から離れなくてね】

『フン、まぁ良い』

 

ギルガメッシュが踵を返す

 

『逆らうも逆らわぬも、貴様らの好きにするが良い。だが、それは無駄であると知れ』

 

それだけ言い残すと、ギルガメッシュは出現時と同様に忽然と消えた

 

【…………】

 

エルキドゥは、その後ろ姿をどこか寂しげに見つめていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「時代の修正、だと?」

 

ゲイツがマーリンと名乗った青年を睨みつける

 

「ああ、その通り。これはキミたちの世界にとって必要だし、これが放置されてしまうと、この世界は崩壊する」

 

さらっととんでもないことをマーリンが口走る

 

「世界の崩壊……⁉︎」

「あぁ、そうだとも。なんの比喩でも無い、正真正銘の世界の崩壊さ」

 

近場の岩に腰掛けながら、マーリンが続ける

 

「実を言うと、この事件は僕らにも経緯はわからない」

「なんだと…?」

「気がつけばこの時代に彼女と共に召喚されていて、『狂った時代を修正しなければならない』ということとその方法だけが頭に残っていたのさ。そこまでの経緯はどうやっても思い出せない」

 

やれやれと肩をすくめる

と、マーリンの側にいた少女がおずおずと歩み寄る

 

「自己紹介が遅れました。サーヴァント・シールダー、真名マシュ・キリエライトと申します。マーリンさんと行動を共にしているものです」

 

と丁寧に自己紹介した少女は深々と頭を下げる。それに釣られてゲイツとツクヨミも頭を下げる

 

「さて、話を戻そう。そもそも何故世界が崩壊するのか、簡単な理屈だよ。歴史が歪んだからだよ」

「歴史が歪む……改変されたということか」

「さすがタイムマシンなんてものを使うだけあって理解が早いね。そういうことさ」

「歴史が改変されるなんて、そんな唐突なことが……」

「だが、実際に起こっている。現にここ、バビロニアも大きく歪んでいるんだ。何より、僕たちの知識に残る王と今の王は、あまりに在り方が違う」

「バビロニア……そうか、」

 

マーリンの言葉に何か思い当たったのか、ツクヨミがコンソールを開いて情報をサルベージする

 

「ギルガメッシュ王朝……紀元前2600年に栄えた国……原初の王であるギルガメッシュが統治した王朝……」

「あの年代は、そういうことだったのか……」

「………おかしいわ、これ」

 

ツクヨミがコンソールの文章を指差し、ゲイツ、マーリン、マシュ、そして先程から不気味なほど静かに話を聞いていた壇 黎斗神が覗き込む

 

「ギルガメッシュ王は神の時代に終止符を打って、人の時代を築いた……それなら確かに、あの女神とやらがのさばっている理由がわからんな」

 

そこの文章によれば、ギルガメッシュは神を旧時代として廃し、それにより人間の時代を確立したとある

ここがギルガメッシュが生きた時代ならば、あのような形で権能を露わにした女神がのさばっているはずがないのだ

 

「綻びが早く見つかって重畳だね。恐らく、歪みの原因はギルガメッシュ王で間違いない」

「ならば、タイムマジーンを修復し次第ウルク王朝に向かうのが当面の目標だろうな」

「その前に少しいいだろうか?」

 

おもむろに手を挙げたのは、壇 黎斗神

 

「キミたちがするべきことはわかった。マーリンにマシュ、キミたち二人がここにいる理由もわかった。だが、私がこのような場所にいるのは何故なんだ?」

 

至極真っ当な、それでいて誰もが失念していた疑問であった

 

「………あれ?彼、キミたちの仲間じゃないの?」

「断じて違う。それよりも、聞きそびれていたが何故貴様がここにいる?壇 黎斗王?」

「壇 黎斗神だ。王などと陳腐なものじゃない。私をどこで知ったか知らないが、キミたちには面識が無いはずなんだがな?」

 

ゲイツはその返答に首をかしげる

 

壇 黎斗、この男とゲイツには実は面識があった

何せ彼は、壇 黎斗王を名乗り、アナザーオーズへと変身していた人間だったのだから。それにあの強烈なキャラクターは忘れように忘れられ無い。人違いなどでは無いはずだが……

 

「むぅ……正直なところ、僕にもわからない。ただ、クロト君はどうやらサーヴァントに近い存在としてここにあるようだね」

「……聞き忘れていたな、そのサーヴァント?というのはなんだ?」

「そういえば説明がまだだったね。サーヴァント、それは人類の歴史に刻まれた英雄の伝承の影法師、英霊の現し身のようなものなんだ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「へぇ〜じゃあ、エルキドゥもそんな英雄の一人なんだ」

 

半壊したタイムマジーンから落ちたパーツや、壊れた部品を集めながら、傍に佇むエルキドゥにソウゴが話しかける

 

【まぁ、そういうことになるね。僕自身には、自覚は無いんだけどね】

「自覚がない?それって……?」

【そのままの話だよ。僕は、何故僕がサーヴァントとして召喚されてるかわからない】

 

どこか寂しげに、エルキドゥが続ける

 

【僕は神に造られた兵器だ。ある程度のことはこなせる。だがそれだけなんだ。目的もない、残した偉業もない、それなのに何故かこの土地、この歴史に呼ばれた。サーヴァントとして】

「………」

【ギルガメッシュ、何故かあの王の名前は覚えてる。でも違和感が拭えない。………どうやら、僕は今故障しているようだ】

 

自嘲気味に、エルキドゥが話を切り上げる

 

(見た感じ故障ってわけでも無い気がするんだけどな……)

 

しげしげとエルキドゥを眺めながら、ソウゴも煮え切らない表情を示す

 

「我が魔王、応急処置は完了したよ。一応時間移動もできるが、安全ではなくなっているがね…」

 

タイムマジーンからウォズが顔を出す

 

「お疲れ様。さて、これからどうしようかな……」

 

ソウゴが腕組みをしながら悩む

 

【僕が呼ばれたということは、この時代には何か異常が起きているかもしれない。僕はそれを調べに行くとするよ】

 

エルキドゥがその巨体を起こす

 

「あの王様に会いに行くの?」

【あぁ、あのギルガメッシュ王も気になるけど、何より彼にイシュタルが従うのが考えづらい。手がかりがあるとすれば彼だろうと思うから】

「そっか……」

 

ソウゴがエルキドゥに向き直る

 

「じゃあ、俺も行くよ。王様に会いに」

【………何故だい?】

「なんとなく、かな。エルキドゥとは知り合ってすぐだけど、でも放ってはおけないし」

 

あっけらかんと、ソウゴが続ける

 

「それに、王様は絶対困ってる人は見捨てないと思うから、さ」

 

エルキドゥにソウゴが微笑みかける

 

【………ほんと、おかしな人間だね、キミは】

 

表情はわからないが、それでもエルキドゥは微笑んだように見えた

 

「話勝手に決めちゃってごめんね、ウォズ。俺はこれからエルキドゥと一緒に王様に会いに行くんだけど、一緒に来てくれないかな?」

 

ソウゴの問いにやれやれとウォズは肩をすくめる

 

「私の答えは決まっているだろう、我が魔王。私も向かうよ」

「ありがとう、ウォズ」

 

こうしてエルキドゥという新たな仲間が一旦ながら魔王一行に加わった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いやぁ、これはすごいな……まさかタイムマシンなんてものに乗れるなんて、サーヴァントにもなってみるものだ」

 

と呑気にマーリンが話しているが、タイムマジーンの狭いコクピットはゲイツ、ツクヨミに加えてマーリン、マシュ、壇 黎斗神を乗せたためにすし詰め状態である

墜落したタイムマジーンをなんとか修理した一行は、ひとまずギルガメッシュ王がいるであろうウルクを目指して、今度は撃墜されないように地上スレスレを走りながら移動していた

 

「しかし……不気味なほど何も無いな」

 

モニターから周囲の景色を眺めながらゲイツが呟く

 

モニターに映し出された周囲の景色は平和そのものだった

都市部に近づくにつれ、作物が豊富に実った畑やら、放し飼いされた羊、整備された水路など、都市機構に準ずるものや、人間の生活の痕跡らしいものがポツポツと現れてきたが、どれも整備が行き届き、荒らされた痕跡などが無い

不気味なほどに綺麗なのだ

 

「不気味なほど、とは言い得て妙だな。あまりにも綺麗すぎる」

「確かに……これじゃあ、まるで人の生活の証拠はあっても、そこに誰かが生きている痕跡がないような……」

 

と、そうこう話しているうちに遠目に大きな神殿のようなものが見えてきた。その城下には升目状に整備された街並みが広がっていた

 

「……私の記憶とは少し違いますが、ウルクが見えてきましたね」

 

少し訝しむような顔をしたが、すぐに緊迫した表情に戻ったマシュがウルクへの到着を一行に告げた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『魔王一行とやらがこの街に向かっているな。エレシュキガルめが戦闘した一団は既に目と鼻の先だな』

 

ウルクの王城の玉座に鎮座し、ギルガメッシュが気怠げに告げる

その眼前に平伏していたエレシュキガルが冷や汗を垂らしながらそれを聞いていた

 

(ま、まずいのだわ……‼︎ 私が逃してしまったばかりに、王のお膝元でもあるこの街への侵攻を許してしまったのだわ……‼︎)

『エレシュキガル、』

「は、ひゃいっ!?」

『そう身構えるな。貴様のそれは失敗などではないわ。(オレ)はそのような指示なぞ出してはいない』

 

呆れたようにエレシュキガルに声をかける

 

『彼奴らは捨て置け。歯牙にかけるほどの価値もない』

「し、承知しました‼︎」

「承知しました……」

 

ダラダラと汗を垂らすエレシュキガルと対照的に、同じようにその横に平伏したイシュタルはいささか不満げに応える

 

『貴様らは貴様らの役割を果たせ。イシュタルは天空よりの監視、場合による天誅執行、エレシュキガルはそろそろ《間引き》を始めよ』

「はっ……‼︎」

『それと……』

 

おもむろに、ギルガメッシュが左手を二人にかざす

同時に、二人の女神の眼前にそれぞれ奇妙な形状のガジェットが金の門から溢れ落ちる

 

少し、大型だが壇 黎斗神が使っていた《ゲームガシャット》によく似た形状のものだ

 

「これは……?」

(オレ)からの気まぐれな下賜である。好きに使うがいい』

 

ガジェットを拾い上げ、未だに不思議そうにしているエレシュキガルとはこれまた対照的に、ギルガメッシュの意図を察したのかイシュタルは邪悪に微笑む

 

「承知したわ。イシュタル、監視に行ってきまーす‼︎」

 

挨拶もそこそこに、イシュタルがマアンナを呼び出し、王城からロケットの如く飛び出す

それに続いてエレシュキガルも軽くギルガメッシュに会釈して王城から出て行く

 

『臣下に施すも、王たる責務よ…』

 

ギルガメッシュは盃に並々と注がれた葡萄酒を悠然と飲み干し、笑った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ウルク近郊 ソウゴ、ウォズ、エルキドゥ一行

 

【そろそろウルクが見えてくる頃合いだよ】

 

ソウゴとウォズを乗せたタイムマジーンに並走する形で、脚部をキャタピラ状に変化させて走行しているエルキドゥが告げる

彼(彼女?)の言う通り、遠景に巨大な神殿のようなものが見える

 

「思ったよりも早く着いたね、ウォズ」

「あぁ……」

 

楽観的なソウゴと対照的に、ウォズはまだどこか警戒している様子だった

 

【ー止まって】

 

エルキドゥがソウゴに声をかけ、タイムマジーンを停車させる

エルキドゥは空を見上げている

 

「怪しそうなガラクタと土人形、はっけーん♪」

 

案の定というか、なんというか、エルキドゥの視線の先に浮かんでいたのはあの女神 イシュタルだった

 

【懲りないな、イシュタル。王様にあれだけお叱りを受けたのに、まだ僕らに構うのかい?】

「王のお情けで見逃された自覚がないのかしら、貴方たちは? それに、今は私自身の仕事の最中だからこれは問題ないわ」

 

再びソウゴたちと遭遇した時のような余裕の表情でイシュタルが告げる

 

【仕事……?】

「そう、私の仕事は王が築き上げたこの国、この文明の監視と警備。そのうち必要無くなるでしょうけど、この文明を脅かす身の程知らずな外敵を撃ち殺すのが私の仕事よ」

【女神であるキミが、あの王に従っているのか?】

「不敬な言葉は慎みなさい、土人形。確かに嫌味なところはあるけど、あの王の力は本物よ。私たち神と、人を統治して束ねて平定したあの王は、本物なのよ」

【…………】

「人と神様が共存してるの……?」

 

タイムマジーンから降りてきたソウゴがイシュタルに問う

 

「……人間のクセに、ギルガメッシュ王のことを知らないの貴方…?」

「いや、ギルガメッシュ王は知ってるよ。でも、俺が知ってるギルガメッシュ王とはどうも繋がらなくて」

「………いいわ、冥土の土産に教えてあげるわ」

 

「ここは、人神統合文明バビロニア。半神半人のギルガメッシュ王が神をまとめ、人を諌めた楽園。人は何ものにも脅かされず、神はその信仰を一身に受ける。双方が双方の幸せを享受できる大国なのよ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「おや、旅人さんとは珍しい。ゆっくりしていきなさいな」

 

通りすがった女性が、ゲイツたちを見てにこやかに会釈する

警邏などに引っかかることもなく、あまりにも簡単に一行はウルクへと入国できていた

が、そこにはある意味異様な光景が広がっていた

 

人々は、誰も働いていなかった

 

ある人は家の中で真昼だというのに眠りこけ

ある人は大通りのど真ん中で寝転び日向ぼっこをしている

子供たちは自由に騒ぎ、遊び回り、あまつさえそこに大人まで混じっている

 

現代ほどものに溢れた時代ではないとはいえ、農耕などの気配もないのは明らかに異常だった

 

「すまない、ちょっといいかな?」

「おや、旅人さん。何か用かい?」

 

壇 黎斗神が通りすがった壮年の男性に声をかける

 

「何故皆遊び呆けているんだ? 仕事や、日々の生活の為の労働をしなくていいのか?」

「おかしなことを言うもんだな……そんなものいらないだろ? 女神様や、ギルガメッシュ王がなんでも与えて下さるんだから」

 

あっけらかんと、その男は答えた

 

「私たちがするべきことは、王や女神様に祈ることだけだよ。あぁ、今日も平穏と幸福をありがとうございます……」

 

手を合わせ、天に一礼した男はゆったりとまたどこへともなく散歩を再開した

 

「……道中見た景色の違和感はコレか……」

 

ゲイツが道中の景色を思い出し呻く

道中のあまりにも平和なあの景色は、今思い返すと誰もいなかった

水路、畑、どれも管理が必要な設備だ。現代のような自動設備が配備されているならまだしも、この時代に管理している人間が誰一人としていないのは流石におかしい

 

「さっきの男の言葉を借りたら、神々や王がそれらを管理して、作物などを人間に分配している、ということか。いやはや、思ったよりも異様なことになっているな……」

 

マーリンも思わず渋面を作る

と、そんな思案を巡らせる一行の前で遊んでいた子供が倒れた

 

「キミ‼︎ 大丈夫?」

 

ツクヨミとマシュが慌ててその子供に駆け寄る

 

「酷い熱……このままでは危険です、早く手当をしてあげないと…」

「だい、じょうぶ……」

 

心配するマシュに荒い息をあげる子供が弱々しく応える

 

「大丈夫って、そんなわけないわ。早く治療を……」

「これも、えれしゅきがるさまの、おめぐみ、だから……」

「エレシュキガル、先の冥界の女神のことか」

 

と、いつの間にか現れた女性が、ツクヨミからその子供を預かる

 

「この子は、エレシュキガル様に選ばれたんです。あの方の国、冥界で永遠に平穏を過ごす権利を与えられたんですよ」

 

病に苦しむ子供に声をかけることもなく、女性は幸せそうな顔でツクヨミに告げる

 

「冥界に行くということは、死ぬということなんだぞ……⁉︎」

 

あまりにもあんまりな女性の言い分に、ゲイツがたまらず怒声をあげる

 

「そうですよ。私は果報者です。いつか私も行くその先で、子供が待っていてくれるのですから……‼︎」

 

女性が流したのは感涙だったのだろう

あまりの事態に、ゲイツもツクヨミも、マシュやマーリンも言葉が出てこない

 

「そうか。ならば、ありがたく神の恵みを受け取るがいい」

 

動いたのは、壇 黎斗神

どこからか取り出した紫のガジェットーガシャコンバグヴァイザーを周囲にふりかざし、何やらオレンジに煌めくものを散布した

それを浴びた周囲のウルク人たちは一様に苦しみ出し、次々と倒れていく

 

「貴様ァ‼︎何をしている‼︎」

 

あまりの奇行、蛮行に怒りを爆発させたゲイツが黎斗神の胸ぐらを掴み上げる

 

「簡単なことだ。彼らにとって、死が幸福ならば与えてやったまでのこと。時代が違うんだ、新種のバグスターでも誕生すれば、私の利益になるからな」

 

ねっとりとした悪辣な笑みで壇 黎斗神は応える

 

「貴様……‼︎ やはり貴様は……ッ‼︎」

 

「貴方、ほんととんでもないことしてくれるわね」

 

と、凛然とした声が響く

そこに現れたのは黒衣の冥界の女神

突然の出現に、ゲイツも黎斗神を離し、警戒態勢をとる

 

「………ッフ、ハハハ、ヴェハハハハハハハハハハハ!!やはり現れたな!!女神ィ!!」

 

突然の哄笑。弾けたように態度が一変した黎斗神にエレシュキガルが明らかに萎縮する。先の戦闘のゾンビゲーマーがかなりトラウマになったらしい

 

「え、何、何なの貴方……!?」

 

ビクつくエレシュキガルを尻目に、黎斗神は再びバグヴァイザーを構え、今度は周囲の人間からオレンジの粒子ーバグスターウィルスを回収していく

あまりの事態に再びゲイツが驚愕の顔を示す

 

「まさか、演技だったのか……⁉︎」

 

「その通り。冥界の女神の恵みが熱病、しかも死後の魂を手厚く管理しているならば、冥界に送る人数も取り決められていると推定できる。ならばァ、イレギュラーな死者を出そうとすればヤツはそれを阻止せざるを得ない!!」

 

黎斗神がふんぞり返りながら、エレシュキガルを指差す

 

「………まぁ、新種のバグスターが欲しかったのは事実だが」

「おい待て、」

 

途中まで半ば感心した様子だったゲイツがとんでもない黎斗神の独白に噛み付く、

 

「やめちゃうの? 残念、《間引き》の手間が減ったと思ったのに」

 

それにエレシュキガルは心底残念そうにそう返した

 

「………何?」

 

これは流石に予想外だったのか、黎斗神が珍しく呆けた顔を示す

 

「丁度、また人口が増えていたからね。私の権能で、間引く予定だったのです。人口が増え過ぎれば、快適性が損なわれてしまいますから」

「どういうことだ……これは、天命のように、定めてあったものではないのか!?」

 

珍しい黎斗神の怒声に対し、女神は当たり前のように返す

 

「ええ、その子が発症したのは偶然よ。治療はしないけど」

 

「病の治療?そんな資源の無駄遣いは必要ありません。死すら、神の恵みと信じている彼らにはそんな措置はただの信仰の妨げですから」

 

「生贄などという蛮行も必要としない、それでいて資源の無駄な消費は抑えられる、実に有意義ではありませー」

 

「ふざけるなァッ!!」

 

女神を遮り、叫んだのはー壇 黎斗神

 

「神が管理する?それはその通りだ。人間なぞより優れた神がそれらを管理するのは責務であり、特権だ……」

 

「だが、信仰に甘んじて人々を飼い殺し、それを運命にかこつけるだと……? そんなものは神の恵みでは断じてない!!」

 

「神は試練を与える、試練の前に多くの人間は膝を屈する、だが、それを得て人々は前に進む!! 時には、私のように神まで昇り詰めんとするものも出る!!」

 

「愚かな、そんなことになれば、神と人……最後の最後には人々で潰しあいが始まるだけだとー」

 

「それがどうした……? こんな停滞に甘んじた世界など、神である私は認めない。死すらただ運が悪いと割り切り、前に進むことすら忘れた世界も信仰も認めないィ!!」

 

「時に恵みを享受し、時に神に抗う、それこそが真なる信仰であり、人から見た神の存在意義だァ!!」

 

憤慨したまま、黎斗神はガシャットを構える

 

「明光院 ゲイツ、そしてそこのサーヴァント二人、力を貸せ。あの駄女神も、この時代の王も、否定せねばならないィ!!」

「……元より俺は、そのつもりだ」

 

ドライバーを装着し、ゲイツがウォッチを構え竜頭をノックする

 

《ゲイツ‼︎》

 

ウォッチをドライバーに装填、ぐるりとドライバーを回転させる

 

「変身!!」

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダーゲイツ‼︎》

 

背面に現れたデジタル文字盤からエネルギーベルトが展開、ゲイツを包み込み、その姿を赤い仮面ライダーのものに変化させる

変化が終わると共に、《らいだー》の黄色文字がマスクへと収まる

 

「グレード、X−0‼︎」

《レベルアーップ‼︎》

《デンジャラスゾンビ‼︎》

 

黎斗神も、ゲンムゾンビアーマーへと変身を完了する

 

「どこまでも不遜、不敬な人間。貴方には神罰が必要なようね‼︎」

 

エレシュキガルも合わせて神気を解放させる

 

「神罰を受けるのはそちらだァ‼︎ 冥界の女神ィ‼︎」

 

負けじとゲンムも凄む

それに対し、エレシュキガルは悠然と冷たい視線を返しながら、あるものを取り出す

 

「……何ッ⁉︎」

 

ゲイツとゲンムがそれに驚愕の表情を漏らす

 

それは、間違いなくゲンムが使っているものと同じ、ガシャット

 

「特別です。王から賜ったこの力で、貴方たちを魂すら残さずに排除しましょう」

 

エレシュキガルはそう言い放つと、ガシャットを起動する

 

《タドル・ファンタジー‼︎》

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「なんだかすごい国なんだね……今のバビロニア……」

 

ソウゴが感嘆の声を漏らす

 

「今更、そのすごさを理解しても遅いわ。残念ながらね」

 

余裕の笑みを見せながら、イシュタルはその手にガシャットを握る

 

【なんだ、アレは……?】

 

「王から力をもらった私に、貴方たちは今から消し炭にされるんだから!!」

《バンバン・シュミレーション‼︎》

 

ガシャットを起動させたイシュタルはそれを自らの胸に突き立てる

ガシャットはそのまま、イシュタルの中に消え、同時に彼女の周囲に戦艦の艤装のような砲台が出現、マアンナも二つに分裂し、砲台が増設される

 

「蜂の巣にしてあげるわ、魔王様?」

 

最後にその目元に展開されたバイザーを赤く煌めかせ、イシュタルは獰猛に笑った




第2話です‼︎

ギルガメッシュ(仮)の片鱗やら何やら出てきましたが、勘のいい人はもしかすると、もうカラクリに気づいているかも…?

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