仮面ライダージオウ×Fate/Grand order The KING order   作:リョウギ

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第2章
第4話 「0064:血闘場と赤髪の乙女」


ウルクでの激闘からしばらくして

 

「これで、歴史の修正は為されるということか」

 

ゲイツが腕組みをしながらマーリンに視線を移す

 

アナザーギルガメッシュが撃破された後、ウルクではすぐに時代の修正が始まった。都市を覆う外壁が現れ、遊び呆けた人で溢れていた大通りは露店や、どこかに仕事に向かう人々で瞬く間にごった返した

流石に未来人が気軽に古代の人々と接触はできないからとマーリンの魔術でウルクの外まで退避することになった

 

「どうやら、僕のここでの役目は終わったようだね」

 

そう告げたのはエルキドゥ

既にその体は、イシュタルが消滅した時と同様に金色の粒子に解けはじめている

 

「そっか……なんだか少し寂しいな……」

 

成り行きの旅だったとはいえ、しばらく共に行動していたソウゴが寂しそうな顔を見せる

それを見たエルキドゥは、薄く微笑んでソウゴの肩に優しく触れた

 

「ーありがとう、ソウゴ。僕の友を取り戻してくれて」

「お礼なんていいよ。俺もあのニセモノにはムカついてたし」

 

それを聞いたエルキドゥはもう一度優しく微笑むと、今度こそ跡形もなく消えていった

 

「貴様も行くのか?壇 黎斗」

 

ゲイツが声をかけたのは、散々この場を引っ掻き回していた男

彼も体が粒子に解け始めている

 

「壇 黎斗神だ。この時代は既にデバッグが終わったのだろう?ならば、私がいる理由がない」

 

素っ気なくそれだけ答えると、ゲイツに背を向けたまま手を振り、そのままそそくさと消滅していった

 

「……全く、どこかの魔王よりも掴み所がないヤツだ」

 

はぁ、と憑き物が落ちたかのようなため息が溢れた

 

二人を見送ったのち、タイムマジーン2台の修復を完了させた一行はいよいよ、元の時代への帰還をはじめようとしていた

 

「……あーその、実に言いにくいのだが……」

 

マーリンの歯切れの悪い発言にゲイツやツクヨミが首を捻っていると

 

「ーまだこんな感じになっている歴史があるんだよね?」

 

とあっけらかんとソウゴが笑って言った

 

「………何?」

「どういうこと、ソウゴ?」

 

訝しむゲイツとツクヨミに向き直り、ソウゴが答える

 

「実はさっき、このライドウォッチを手に入れた時に、王様から伝えられたんだ。『王として人類史に名前を刻んだ者にあと6人出会う。その人達から王を学んでこい』って」

「王様……ギルガメッシュ王でしょうか?」

「英雄王、彼も中々回りくどい言い方するなぁ……」

 

マーリンが彼の様子を思い出したのか、苦笑しながら頰をかく

 

「概ね彼が言った通りで正解だ。まぁ、今回のように王が関与してるかどうかはわからないが千里眼を持つ英雄王がそうだと言うならばそうなのだろう」

「ということは、歴史の異常はあと6つあるということか……?」

「はい、そういうことになります。私達が捉えた歴史の歪みは7つありました。詳細は不明ですが、数はたしかに7つでした」

 

しばらく静観していたウォズがマシュに問う

 

「つまり、我が魔王の時代に起きたあの異変を解決するには、その歪みを全て正す必要がある、そういうことだろうか?マーリン氏」

「ご明察。先の説明では必要なことしか教えなかったから後付けみたいなことになってしまったのは僕からも謝っておこう。だが、魔王……仮面ライダージオウ、キミの力が必要なことは今回の一件で確信した。だから……」

「わかった。手伝うよ」

 

申し訳なさそうに切り出したマーリンに、二つ返事でソウゴは了承を返す

 

「よ、よろしいのですか? 依頼しておいてこういうのもなんですが、決して簡単なことではありません。今回のウルク以上に危険かもしれませんし……」

「たしかにそうかもしれない。でもほら、王様から言われちゃったから、王になりたいなら王を学んでこいって」

 

「ーそれに、困ってる民を助けるのも王の仕事でしょ?」

 

朗らかに笑ってソウゴがそう答える

 

「……でさ、ゲイツー」

「ついてこいとでも言うつもりだろ?」

「わかっちゃった?」

「お前との付き合いも長いからな。嫌でもわかる」

 

やれやれと腕組みをしながらゲイツとツクヨミもマーリンとマシュに向き直る

 

「俺たちも協力しよう。ジオウを一人にしてはおけんからな」

「未来に異常が生じるなら、私達も無関係では無いから。できる限り協力するわ」

 

そう告げる二人を横目で眺めていたウォズにソウゴが話しかける

 

「ウォズはどうする?」

「愚問だね。我が魔王。キミが王へ歩む道なら、私がついていかない理由はないだろう?」

「だよね。ありがとう!」

 

改めてソウゴがマーリンとマシュに振り返る

 

「ってことで、次の王様に会いに行こうか‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

西暦64年 ローマ帝国

都市中央の大型コロセウム

コロセウムの戦闘場に歓声と共に5人の剣闘士が姿を見せる

いずれも筋骨隆々の猛者……と思いきや、何人かは剣闘士のようには見えない、貧相な体格のものがいる

 

『良くぞ、ここまで辿り着いた!! 勇猛なる猛者たちよ!!』

 

明朗な声がコロセウム全土に響く

声の主はコロセウム内の最も豪奢な入場門、その頂部に堂々と立っていた

華奢で小柄ながら、薔薇をあしらった豪華な装束をまとい、その手には巨大な盾と中型の直剣が握られている。そしてマスクに覆われたようなその頭部は、どこか甲殻類のような雰囲気をしている

 

『余は皇帝であるが、今宵は無礼講。余という伝説を超える為に、全霊を賭してかかってくるが良い!!』

 

入場門より軽やかに着地した怪人はその剣を挑戦者の一団に向けて高らかに宣言する

それに合わせてより大きくなる歓声

剣闘士たちが決意を固め、それぞれの手に何か錠前のようなものを握り、構える

 

《マツボックリ‼︎》《クルミ‼︎》《イチゴ‼︎》《ドングリ‼︎》《マツボックリエナジー‼︎》

 

解錠したそれをベルトに装填すると、それぞれの頭上に果物を模した形状の鎧が出現、落下し装着され、仮面ライダーのような姿に変わる

槍、手甲、短刀、ハンマー、三叉槍、各々の手の武器を怪人へと向け構える

 

まず動いたのは、長ものを構えた黒い鎧の二人。槍を振り回しながら怪人に接敵、素早い連撃を放つ、が、怪人は手にした盾で三叉槍を防ぐと片手の直剣で連撃を的確に弾き、持ち主を斬り伏せる

続けて盾を押し上げ、返す刀で三叉槍使いにも強烈な斬撃を2度3度浴びせ、吹き飛ばす

その隙に怪人の頭上からハンマーを大上段に構えた戦士が襲来、そのハンマーを力いっぱい叩きつける。その会心とも思える一撃は一瞥もされずに盾で防がれ、直上に弾き返される

それを見届けた怪人は、黒い錠前を取り出し解錠

 

《ドラゴンフルーツエナジーアームズ‼︎》

 

低い曇った音声と共に怪人の鎧の形状が変化。盾と剣の代わりに中型の弓がその手に握られ、吹き飛ばされた戦士に向けて発射され命中、盛大な爆発が起きる

ハンマー戦士が残した爆発を眺めながら、赤い鎧の戦士が投げ放った短刀を一瞥もくれずに弓で弾き落とし、こちらに駆けてくる拳士の拳を払い、その鳩尾に弓を照準、ゼロ距離で矢を放ちながらその後方の赤い鎧の戦士も共々貫く

 

たった一人の怪人に、5人の剣闘士は完封されてしまった

 

『うむ……中々骨はあったが、まだまだである。もう少し余を楽しませよ』

 

心底残念そうに怪人が呟き、頭を抱える

だが、割れんばかりの歓声を耳にすると手を広げ、満足気にそれを受け止め続けた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「西暦、64年っと」

 

タイムマジーンに次に向かう年代を入力する

次に向かうべき年代をマーリンもマシュも知らず、途方に暮れていたところ、バビロニアへと年代を示したあの白いライドウォッチがまた新しい年代『0064』を記したのだ

一応その時にマーリンにこのウォッチの心当たりを聞いたが、どうも彼も知らないらしい

 

「乗せていただくのは2度目ですが、実際にタイムスリップするのは初めてです。なんだか緊張してきました……」

 

ソウゴ側のタイムマジーンに乗り込んだマシュが緊張したような様子でタイムマジーンの内装を眺めている

 

「警戒する必要はない。まぁ、移動中は大きく揺れるから、そこだけは気をつけたまえよマシュくん」

 

もう一人の同乗者のウォズがマシュに注意を促すと、慌ててマシュは操縦桿があるアームにしがみつく

 

「ーそれじゃ、行こうか。次の王様に会いに‼︎」

 

ソウゴの操縦でタイムマジーンが浮上、それに追従してゲイツたちが乗るタイムマジーンも浮上し、ワームホールへと侵入していく

 

しばしの浮遊感の後、二台のタイムマジーンはワームホールを抜け、別の時代へと着陸する。今度はいきなり攻撃されることはなかった

 

「ここが、新たな歴史の歪みがある時代か……」

 

タイムマジーンから降りたゲイツが周囲を見渡す

そこに広がっていたのは人でごった返す大通り

それなりに高さのある民家が軒を連ね、広場には装飾が多数目立つ噴水、通りには水路も見られる

 

「これは、なるほど……ここは確かー」

「ここは古代の都市国家ローマ帝国で間違いなさそうね」

 

喋りかけたマーリンに先んじてツクヨミが手元のデバイスを見ながら伝える。ゲイツもデバイスを確認するが、なるほど確かに資料画像と都市の様式がよく似ている

 

「古代ローマで、西暦64年……確か、ネロ帝の時代じゃなかったっけ?」

 

タイムマジーンから降りてきたソウゴがゲイツたちに話しかける

 

「ネロ帝?」

「ー確かに、西暦64年付近は、ネロ帝がローマを統治していた時代みたいね」

 

意外なソウゴの知識にツクヨミが驚きながらも関心する

 

「……よく知っていたな、ジオウ」

「そりゃあ王様になるのが夢だからね。勉強はしておかないと」

 

自信満々に告げるソウゴに普段の彼の様を知っているゲイツとツクヨミは頭を押さえる。ウォズは「さすが我が魔王」と超いい顔でそれを見ているが

 

「古代ローマ、ですか……私も以前、この場にいたのはおぼろげながら覚えています」

「へぇ〜、じゃあマシュって、この時代のだれかだったのか」

 

ソウゴの言葉になぜかマシュは表情を曇らせる

 

「いえ……それが、変なんです。実は、ウルクも間違いなく訪れていたことを記憶していて、そこでギルガメッシュ王とも話したことを覚えてはいるんです。ただ、なぜそんな記憶があるのかはわからないんです……」

 

マシュの独白を難しそうな顔をしながらもきちんと聞くソウゴ

 

「私自身が生きた時代は、よく覚えています。円卓の騎士が生きたあの時代を」

「僕も実は円卓の騎士の時代から召喚されている。無論、彼女のこともよく知っているよ」

 

話を聞いていたマーリンがマシュの頭を撫でる

 

「はい、マーリンさんには昔からよく色々教えられていて、大変お世話になっています」

 

と、三人が話している中周囲を警戒していたゲイツが何かを見つける

 

「……なんだ、あれは……?」

 

ゲイツの視線の先に存在していたのは、あまりにも不自然な構造物だった

 

周囲の建物よりも明らかに高い建物が都市の中央にそびえ立っている

高いなんてレベルじゃない、近代でも珍しい、東京タワーに並ぶかもしれないほどの塔が屹立しているのだ

何より奇妙なのはその頂上。なんと古代ローマでも有名であったコロセウムがそこにそのまま鎮座している

時代故か、現代に残るそれよりも遥かに大きく、さらに金色に装飾され、輝いている

なんとも不恰好だが、立地やその姿からまるで世界樹のようにも見える

 

「………何あれ……?」

 

あまりに異様な建造物に、さすがのソウゴも開いた口が塞がらない

その光景に呆然としていた一行は、完全に反応が遅れた

 

「わ、わっ!?」

 

急に下から持ち上げられる感覚と共に、空中へと一行が持ち上げられる。落ち着いてきた思考が捉えたのは、自分たちが網のようなものに包まれているらしいこと

 

「!?なんだ、これは!?」

『安心したまえ、悪いようにはしない』

 

困惑するゲイツの声に応えたのは、何やらノイズ混じりの声

見ると網を支えている車輪のないバイクのような不思議なメカにまたがる大柄な人型から聞こえているらしい

 

「我が魔王とその臣下たちにこのような狼藉……一体何をするつもりかね?」

『ほう、魔王か。これは彼の予想より遥かに面白そうな人物のようだ』

 

『魔王とその一行、我らが皇帝がキミたちを剣闘士として指名した。乱暴ですまないが、このままドムス・アウレア・ユグドまで連行させてもらう』

 

と、ソウゴたちを捉えたマシンはそのままにあの世界樹のごとき建造物へと舵を切った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

謎の高層建造物ードムス・アウレア・ユグド

 

『到着した。控え室を準備するまで観戦でもしておいて欲しい。準備が終われば、ゴーレムが案内に来るだろう』

 

乱暴な連れ去り方ではあったが、存外優しく解放されたのはあの高層建造物、曰くドムス・アウレア・ユグドの頂部コロセウムの観客席

解放が終わり次第、マシンとそれにまたがる人形はそそくさとコロセウム縁部の一際豪奢に装飾されたやぐらへと戻っていく

 

「……潜入の手間は省けたが、やれやれここの皇帝様はいささか強引だね……」

 

ローブのホコリを払いながらマーリンが苦笑する

 

「ー見て、あれ‼︎」

 

観客席の手すりに掴まりながら身を乗り出したソウゴが階下を指差す

 

そこには、コロセウムだから当然ではあるが、闘技場が広がりまさに試合が行われていた

 

割れんばかりのウォークライや歓声の中、かなり距離が開いているにもかかわらずここまで打ち合う音が響いてくる

 

「……さっきの連中、俺たちが『剣闘士として指名された』などと言っていたが、まさかアレに参加させる気か……?」

 

とゲイツが眉をひそめながら呻く

 

「ーちょっと待って、アレ見て‼︎」

 

何かに気づいたのか、ツクヨミが闘技場の剣闘士を指差す

そこにいたのは何やら浮いた姿の剣闘士だった

簡素な鎧、どこか戦国時代の足軽のようなものを纏っており、長槍、もしくは三叉槍を振り回している

よく見ると姿はバラバラではあるが、戦ってる剣闘士たちはみなそれらに似た鎧姿をしている

 

ーいや、その彼らも含めて共通点はあった

 

「あれって……まさか、ベルト⁉︎」

 

そう、そこで戦うものたちの腰には黒、もしくは赤のベルトが巻かれていた。中央に果物が描かれたような物体が装着されている

 

(なんか……どっかで見たことあるような……)

 

ベルトを見たソウゴは、そのデザインにどこか既視感を感じていた

 

ー確か……あの包丁のようなデザインがついた黒いベルトは、アナザー鎧武が巻いていたものと似ているような……

 

「待ってください‼︎ あれ‼︎」

 

何かに気づいたのか、マシュが闘技場の隅を指差す

 

「⁉︎ アレは⁉︎」

 

そこには、周りよりも小柄な剣闘士が別の剣闘士に吹き飛ばされ、変身が解除される姿が

吹き飛ばした剣闘士はその小柄な剣闘士ーだった少女に手にしたハンマーを振り上げた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

少女は連れ去られ、命からがら見つけ出したベルトとよくわからない錠前で精一杯戦った

でも、少女の力なんてたかが知れていて、他の鎧に倒され、今、目の前には、自分の命なんて簡単に奪われてしまうだろうハンマーが、振り上げられてー

 

ガギィィィン!!!!

 

ー金切り音が響く

 

「ぐぁっ!?」

 

苦悶の声が響く

恐怖に瞑っていた目を開く

 

「大丈夫?怪我とかしてない?」

 

そこに立っていたのは、純白の軍服を纏った女性

その手には小型のバックラーと細身の直剣

纏めた赤い髪に映える碧眼を煌めかせたその人は、柔らかく微笑みながらこちらに手を差し伸べていた

おずおずとその手を取ると、女性は優しく抱き起こし、隅に座らせてくれた

 

「そこでじっとしてるのよ。すぐに終わらせてあげるからー」

 

向き直った女性は、真剣な表情に戻り、鎧たちに剣を向ける

 

「ー戦士ならまだしも、付け焼き刃の女の子を寄って集って大の大人が……覚悟はできてるんでしょうね?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「あの人、すごい……‼︎」

 

ツクヨミが感嘆の声を漏らす

少女を助けた女性は、生身の姿のままで仮面ライダーらしき剣闘士たちを相手どり、矛を交えてきた三人を翻弄、見事に組み伏せ変身を解いてみせた

 

「彼女は……そうか、サーヴァントか‼︎」

 

しばらく女性を眺めていたマーリンが得心に至ったように頷く

 

「サーヴァントってことは、エルキドゥみたいな人ってこと?」

「そうだね。もしかすると、彼女がこの時代の異変のカウンターなのかも……」

 

『試合、終了である‼︎』

 

明朗な声がコロセウムに響く

そうこうしているうちに闘技場に立っていたのは3名ほどであった

もちろん、あの赤髪の女性サーヴァントもおり、あの少女を抱き上げ、頭を撫でている

 

『勝ち残った勇士よ、よくぞ頑張った!! 特に麗しき女剣士は此度も良い活躍であったぞぅ♪』

 

どこからか響いてくる声は試合の感想をひとしきり述べるとブツリという音と共に聞こえなくなる。どうやらどこからか放送されたものだったようだ

ゲート前に立っていた石像が動き出し、ゲートを開く

残った剣闘士たちがそこからぞろぞろと出て行く

 

「今の放送が件の皇帝というわけか」

「………あれ?ソウゴは?」

 

放送や闘技場の様子を見ていたゲイツたちが、今更ながらもその場にいるはずの魔王がいなくなっていることに気づく

 

「………あの魔王……ッ‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コロセウム 下層ロビー

 

「もう歩ける?」

「……うん」

「そっか。よかったよかった」

 

赤髪の女性は助けた少女を立たせると屈み込み、その頭を撫でながら微笑む。その様はどこか母親のようで、不思議と少女は心の底から安心できた

ーが、その顔が再び恐怖に歪む

 

「戦い……闘い……戦いタイ……‼︎」

 

フラフラとした足取りで女性の背後から現れたのは、黒い足軽のような鎧を纏ったーある時代では黒影と呼ばれたライダーによく似た三叉槍持ちの剣闘士

黒影はその三叉槍を無防備な女性の背中に向けて振り下ろしー

 

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

「ハァッ!!」

ギャリィン‼︎

 

ーその槍は、すんでで受け止められる

助太刀に現れたのはソウゴージオウであった

 

「⁉︎」

 

異変に気付いた女性は少女を抱え上げてその場から下がる

 

「えっと、あんたは……」

「あ、あたし?」

「そう‼︎その子をお願い‼︎」

 

そう叫んでソウゴは黒影に向き直り、ジカンギレードを構え直す

 

「邪魔、するなァァッ!!」

《マツボックリエナジーアームズ‼︎》

 

くぐもった音声と共に、黒影の体から黒い蔦が噴出、それと共に腕や脚にさらにゴツい鎧が装着され、さらにもう一本三叉槍が出現する

 

「ヴァァァァァァ!!!!」

 

獣のような叫びをあげながらの連撃にジオウも対処するが、先程よりもかなり力が強く、押し負けて吹き飛ばされる

 

「ってて……そっちがパワーアップするなら、こっちだって‼︎」

 

ソウゴが取り出したのは普通のライドウォッチよりも大きなサイズのマゼンタのウォッチ

 

《ディ・ディ・ディ・ディケイド‼︎》

 

ウォッチを装填、ドライバーをぐるりと回転させる

 

《アーマータイム‼︎》

《カメンライド‼︎ ワーオ‼︎》

《ディケイド‼︎ ディケイド‼︎ ディーケーイードー‼︎》

 

ドライバーから展開されたホロカードが突進してきた黒影を吹き飛ばし、ジオウへと収まり、その体をマゼンタ色に染め上げる

カードがはまったようなフラットな顔面と胸のライン内に《ディケイド》という文字が刻まれる

 

「フルーツ…鎧…あ、やっと思い出した‼︎ お前これに弱いでしょ?」

 

とソウゴが思い出したように取り出したのは橙と青のカラーリングをしたライドウォッチ

 

鎧武(ガイム)‼︎》

 

負けじと向かってくる黒影を手にした長剣ーライドヘイセイバーでいなしつつ、鎧武ウォッチをディケイドウォッチのレールに装填し、回転させる

 

《ファイナルフォームタイム‼︎》

《ガ・ガ・ガ・鎧武(ガイム)‼︎》

 

発声と共にジオウのアーマーカラーが橙と青に変化、顔のディスプレイは鎧武カチドキアームズの顔に、胸の文字も《カチドキアームズ》に変化する

 

「ここからはオンステージだ‼︎」

 

どこか惜しいセリフと共に大剣ー火縄大橙DJ銃大剣モードを取り出し、ライドヘイセイバーと共に構え、黒影に突撃

振りかざされた槍を小回りが利くヘイセイバーで弾き、がら空きの腹に大剣を叩き込み、よろけた黒影に更にダメ押しの袈裟斬りが叩き込まれる

 

「がっ……‼︎ ぐぅ……⁉︎」

 

よろよろと黒影が立ち上がる中、ヘイセイバーにディケイドウォッチを装填、柄の時計の針をぐるぐるぐるりと3回転

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《ヘイ‼︎ 仮面ライダーズ‼︎》

《ヘイ‼︎セイ‼︎ヘイ‼︎セイ‼︎ヘイ‼︎セイ‼︎ヘヘヘイ‼︎セイ‼︎》

「はぁぁ……ッ‼︎」

 

深く腰を沈め剣を構えるジオウに危機感を覚えたのか、黒影がはうはうのていで離脱を図るが、もう遅い

 

《平成ライダーズ‼︎ アルティメットタイムブレーク‼︎》

「おりゃああああ‼︎」

 

敗走しかけた黒影を横並びのホロカードが捕獲、間髪入れずに横薙ぎの一閃が命中。続けて大上段から今度はホロカードと一体になった兜割が黒影を両断する

 

「がっ、ああああああああ!!!!」

 

必殺の一撃を受けきれるはずもなく、黒影はあっさりと爆散

変身者の男とヒビの入った黒い錠前ーロックシードが転がる

 

「ふぅ……」

 

撃破を確認したソウゴが変身を解除すると、誰かが背後からその肩を叩く

 

「あなた……なんだか知らないけど強いんだね。助かっちゃったよ。ありがとう」

 

そこにいたのは、赤い髪のあの女性サーヴァント。柔和な笑みを浮かべながらソウゴに礼を述べる

 

「そっちもすごくカッコよかったよ。えっと……」

 

いい篭るソウゴに女性は手を差し出し

 

「私はサーヴァント……って言っても伝わるかわからないけど、ライダーのブーディカだよ。よろしく」

「ブーディカか。ライダーって、なんかすごい親近感ある気がする……俺は常盤 ソウゴ。王様を目指してるんだ」

 

と二人は握手を交わす

 

「王様が夢って、すごく壮大な夢だね」

「そうかな……? みんなを幸せにするなら、これしか無いって思ったんだけど……」

 

ソウゴの言葉に何か思うところがあったのか、ブーディカが少し悲しそうな顔をして、すぐに暖かい微笑みに戻る

 

「そっか……いい夢だね、王様」

「でしょ? わかってくれる人に会えて嬉しいな〜」

 

と話していると、

 

「ソウゴ‼︎」

 

今までソウゴを探していたであろうゲイツたちが合流してくる

 

「お前はどこをうろついてたんだ……」

「ごめん、どうしてもブーディカと話がしてみたくて」

 

呆れた様子のゲイツにソウゴが頭をかきながら答える

 

「ブーディカ、そうかブーディカか! ブリタニアの女王が呼ばれているとは、なんとも心強いな」

「なんだかそんな風に言われると照れちゃうな……そんな大層なことしてないんだけど。そっちの二人もサーヴァントなんだね」

「はい、シールダーのマシュ・キリエライトと言います。こちらはキャスターのマーリンさんです」

 

と談笑を深めていると

 

「ぐぁあああああぁああぁああぁああぁああ!!!!」

 

和やかになりつつあった空気を裂くように、壮絶な悲鳴が鳴り響く

見ると、黒影に変身していた男が黒い蔦に絡まれながら苦しげにもがいている

ソウゴたちが助けようと手を伸ばすももう遅く、男は全身を蔦に覆われて消滅。後には黒いロックシードのみが残った

 

「……今のは……?」

「……たまにあるのさ。負けた剣闘士、その中でもああいう錠前で武装してる連中が、黒い蔦に覆われて錠前だけ残して消える。あたしにもさっぱりわからない現象だけど……」

 

悔しそうにブーディカがそう呟く

それを見たソウゴはブーディカに向き直り

 

「俺たち、この世界の歪みを直してるんだけど、協力してくれないかな?」

「へ?あたしに?」

 

ソウゴが笑顔で頷く

 

「あんたの力が必要なんだ。俺の直感なんだけど……」

 

と少し照れたように答えるソウゴ

ブーディカはそれをしばらく呆けたように見つめていたが、ぷっと吹き出し朗らかに笑う

 

「そうか、直感か〜面白い王様だね、ソウゴ」

 

ひとしきり笑った後、ブーディカは再びソウゴの手を取って握り返す

 

「いいよ、協力する。さっきのあんたを見てたら、信じてもいいような気がするからね。改めてよろしく」

 

ソウゴは心底嬉しそうにはにかんだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『なんだあれは!? なんと、なんとも面白い‼︎ 気に入ったぞジオウとやら……』

 

コロセウムの縁部、皇帝席として設けられたやぐらで件の皇帝が愉快そうに手を叩く。玉座の前には、先の一部始終を映し出していた板が設置されていた

 

「Arrrrrrrr………」

 

皇帝が腰掛けた玉座の側に立つ背の高い黒い鎧騎士がガチャガチャと鎧を戦慄かせる

 

『どうした狂犬(レインドッグ)?気になる相手でもいたか?』

「Fuuuuuuuuu………」

 

狂犬(レインドッグ)と呼ばれた黒騎士は低い咆哮を漏らすばかりで皇帝の問いには答えない

つまらなそうに肩をすくめ、玉座に深く座り直した皇帝は愉快そうにくっくっと笑う

 

『余の用意したエクストラソルジャー、そして現在もスコア首位を独走し続ける《チームシャルモン》とやら、余のエクストラソルジャーを一度倒して見せたレッドプレイヤー、更に魔王と……くくく、随分華やかになったではないか。良い、実に良いぞ‼︎』

 

『余の楽しみと、民の楽しみ。それが盤石なるローマの礎となるとは、愉快に極まる興行よな……』

 

笑う皇帝は側に備え付けられた酒瓶から葡萄酒をグラスに注ぐと、うまそうに飲み干した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コロセウム内 観客席裏

 

「なるほど、古代ローマのコロセウムとは中々面白い時代だね」

 

揺らめくオーロラのような壁から姿を現したのは中背の美青年

その手にはシアン色が眩しい銃のようなものが握られている

 

「さて、この時代のスーパーアナザーライダーは、一体誰と成り代わってー」

 

と辺りを見回していた青年はある異変に気付く

自身が通り抜けてきたオーロラ、それが普段の白色から紺色へと変化したことに

そしてそこから、傘を被った人物が出現したことに

 

「これまた変な世界に飛ばされたかな? 見た感じはどうも前に流れ着いた中世イタリアっぽい世界に似てるんだけど……」

 

その傘で表情がよく見えないが、声から判断すると女性のようだ

見ると服装こそ崩した和服のような出で立ちで奇抜だが、服の上からでも引き締まった、鍛えているのがわかるいい体つきをしている

 

「ー何ものかな?」

 

青年が手にした銃を女性に向ける。それに気づいた女性はわたわたと手を振りながら弁明する

 

「あっと、違うんです怪しいものじゃない……って言っても説得力無いなぁ……信じて欲しいと言っても信じてくれるようなタイプじゃ無いでしょ?あなた」

「鋭いね。そうとも、僕は相当に疑ぐり深いよ?」

 

銃を向けたまま青年が返す

傘の女性ははぁ、とため息をつきながら肩を落とす

それを見た青年は、何を思ったか銃を下ろした

 

「ーたしかに怪しいが、害意は無いことはわかった。気になることは多いが、どこにでも行きなよ」

 

それを聞いた女性は安堵の声を漏らす

 

「よかった〜無頼者とはいえ、いきなり刃傷沙汰になるのは避けたかったから、そう言ってくれるなら助かります」

 

「ーカルデアともマスター(・・・・・・・・・・)とも繋がれなくて散々だったけど、なんとかなりそうで何よりー」

 

パァン、キィンッ

さっきまでの温和な空気が嘘のように張り詰めた空気を噴き出し、刀を一本構えた女性は青年を睨む

 

こちらに向けた銃から硝煙を昇らせる青年を

 

「気が変わった。カルデアと、マスター……君が知っていることを洗いざらい話してもらおうか」

 

青年は一転して鋭い視線で女性を睨み、左手に一枚のカードを取り出して構える

 

「ーそれを知っているということは、あなたも何か関係している、ということかしら?」

 

女性も声色に凄みを込めて、左腰のもう一本の刀の鯉口を鳴らす

 

「さぁね、知りたいなら力づくできたまえ。僕もそうさせてもらうからね」

 

不敵に笑って青年は構えたカードを銃のスリットに装填、銃身を展開する

 

《カメンライド…》

「変身」

《ディエンド‼︎》

 

銃から10枚のシアンに煌めくエネルギープレートが射出、女性へと殺到するが、それを傘と抜き放った2振りの刀で女性は跳ね返す

プレート出現と同時に青年の周囲に現れていた三原色のホログラムシルエットが青年に重なり、完成された灰色のスーツにプレートが収まり、その姿をシアンに染め上げる

 

文字通り数多の世界を股にかける怪盗ー仮面ライダーディエンドがその正装を露わにする

 

「ーただものではないと思ってはいたけど、得体が知れないわねあなた」

 

プレートを防ぐために傘を使い、女性の素顔が露わになる

そこにあったのは、煌めく銀髪をまとめた凛然とした貌

 

「手荒にはしたくなかったのは本心、ですがあなたが彼女らを知るなら話は別です。洗いざらい喋ってもらうわよ」

 

油断なく銃ーディエンドライバーを構えるディエンドに、手にした刀を向ける

 

「ー二天一流、新免武蔵守藤原玄信(しんめんむさしのかみふじわらはるのぶ)、参る‼︎」




はい、おまたせしました新章です‼︎

早速色々と錯綜してますがローマ編もお楽しみあれ‼︎
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