D.C.Ⅱ 〔2〕   作:消雪

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ホラー要素を強くする予定はないので、なるべく早く通常の話にもっていこうかと思っとります。
登場人物も絞っていきます。



〔1〕

俺は今日から朝倉家に泊まり込む事にした。

音姉と由夢は、さくらさんの家を一時的に借りている。

 

自分の行っている行動が、一体何になるのか解らない。机には漫画を山積みにしている。

時計を見ると、22時を指していた。

 

朝倉家で「ある事」が起きて、俺は根本的な解決をする方法もないまま家の中で何時間も漫画を読んで時間を潰していた。

この朝倉家の静寂な空間と同じ様に、さくらさんの家も今は静かだった。

 

 

 

『幽霊……』

 

 

 

何気なく呟いてみた。

だが後に残るのは、静寂な時間が流れるだけだった。

 

 

 

……

 

 

 

ー二日前ー

 

 

 

『どうした?さっきの悲鳴は?』

 

『そこに、そこに……』

 

『何も、ないぞ』

 

『そこに、何かいた』

 

 

 

当初、俺は音姉の目の錯覚だと思っていた。

由夢は疲れすぎだと言っていた。

 

あまりに怖かったせいか、音姉が一時的にこっちに泊まりたいと言い出してしまった。

取り付く島もなく少しの間、音姉は俺の部屋を使わせて、俺はソファーで寝る事にした。

 

 

 

ー昨日ー

 

 

 

だがその次の日の夜、由夢が俺にメールを送ってきた。すぐに来て、と。

カーテンを除けて朝倉家を見ると、明かりが一つもなく無人の家とすら思えた。

 

すぐに朝倉家に駆けだし、ドアを乱暴に開けた。

携帯をライト代わりにして家の中を探していると、階段の上がった所で由夢が口を押さえながら震えていた。

 

 

 

『………』

 

『そ、そこに……』

 

『………』

 

『あ……』

 

 

 

よほど怖かったのだろう。

家の中に行くべきではなかったとすら思った。

 

だがこれは不可抗力というものだ。

俺は何もしていない。それだけは理解してほしい。

意図的にドッキリを仕掛けたのであれば、確実に殺されてしまう。

 

 

 

『どうしよう、タオル持ってこようか』

 

『いいから出て行って!!』

 

『でも……』

 

『いいから!!』

 

 

『わかった。だが終わったら外に出て何があったか説明してくれ』

 

『うるさい。もしこの事を誰かに言ったら問答無用でぶん殴るから!!』

 

 

 

……

 

 

 

~朝倉家~

~食卓~

 

 

『………』

 

 

 

二人共疲れていたのか。偶然が重なっただけなのか。

しかし、音姉も由夢もしっかり見たという。

 

人の形ではなかったが、モヤっとした輪郭があったようだ。

本当にそんなものが、この家に……

 

 

突然、俺の携帯が鳴りだしてドキっとした。

画面を確認すると音姉からだった。

 

 

 

『大丈夫?』

 

『ああ。こっちは何ともないよ』

 

『もうこっちにおいでよ』

 

『そうはいかん。明日は純一さんもさくらさんも旅行から帰ってくるだろ。こんな不気味なまま帰させる訳にはいかん』

 

 

『でも何か出来る事があるの?』

 

『ないけどな』

 

『じゃあこっちへおいでよ』

 

『大丈夫だって。俺が一日過ごして、何も出て来なかったと言ってやるよ』

 

 

『………』

 

『由夢はどうしてる?』

 

『………』

 

『音姉?』

 

 

『そういえば、弟君の事を話すとずっと気まずそうにしてるよ』

 

『………』

 

『俯いてばっかりで話が進まないし』

 

『ま、幽霊の件で気が滅入っているんだろう。そっとしておいてやれ』

 

 

『もしかして何かあったの?』

 

『幽霊だろ』

 

『だって弟君の事以外なら普通に喋るから』

 

『その話は明日にしてくれ。俺も毛布に包まって休みたい』

 

 

『うん、わかった。じゃあお休みなさい』

 

『おやすみ』

 

 

 

あくまで自然に会話をしたが、手の平は汗が滲んでいた。

あの事は、毛ほども感づかれる訳にはいかない。

 

今は幽霊より、由夢との接し方の方が難問である。

極自然に、極自然に、いつも通りに、いつも通りに。

 

ふと時計に目が止まり、時間は23時になろうとしていた。

念の為に、もう一度朝倉家の室内を確認する事にした。

 

 

台所、居間、階段、トイレ、純一さんの部屋、由夢と音姉の部屋……

何もないよな。もうやる事と言えば寝るしかない。

 

自分のやっている事が無駄な徒労に感じ始めると、急に眠くなってきた。

一先ず、純一さんの部屋を借りて眠りにつく事にした。

 

 

 

~朝倉家~

 

 

 

『結局、何にもなかったな』

 

 

 

朝6時に目を覚ますと、あくびがてら言葉が出た。

当然と言えば当然の結果になった。

 

そもそも、幽霊が危害を加える気なら、とっくに音姉も由夢も怪我でもしている。

これ以上、考えるのは体に毒というものだ。

 

朝食の支度もあるので、一旦自分の家に戻る事にした。

 

 

 

『………』

 

 

 

そういえば、久しぶりに夢を見ていた。

子供の頃は睡眠中、夢をよく見ていた気がするが、今となってはまどろみの様な時間だけが過ぎ去るだけになった。

 

……風見学園の女子生徒だった。

 

自分の記憶の中では見た事がないし、名前も知らない。

もしその女性に会ったら、名前だけは覚えるかも知れないとびっきりの美人だった。

 

……だがその女性から鬼気迫る感じがした。あるいは切羽詰まった、緊迫していたというべきか。

……もう確認のしようもない。

 

いずれ、その夢もいつもの様に溶けていく事だろう。跡形もなく。

 

 

 

~家~

~台所~

 

 

 

自分の家では、音姉が台所でハムエッグを作っていた。

テーブルの上にある皿には、人参の千切り、レタス、プチトマトのサラダが盛り付けられている。

 

 

『………』

 

 

 

俺の存在に気づいていないようだ。いつもなら、玄関のわずかな音ですら聞き分けてくるのに。

後ろに下がり、食卓のドアを軽くコンコンとノックした。

 

 

 

『あ、弟君。おはよー』

 

『おはよ。ひょっとして幽霊の件で疲れてる?』

 

『そんな事ないよ。いつも通りだよ』

 

『……そっか』

 

 

 

風呂場の洗面器で石鹸で手を洗ってから、朝ごはんの準備を手伝う事にした。

サラダもハムエッグも作ったのだから、恐らく手伝う事はないとは思うが。

 

 

 

『もう終わったよ』

 

『だな。後は食パンをトーストに入れて終わりか』

 

『だね。由夢ちゃんを呼んできて。一緒に朝ごはんにしよっか』

 

『すまん。あっちに携帯を忘れた。すぐに戻るから』

 

 

 

俺は慌てて、桜内家を出て朝倉家に入った。

携帯は忘れていない。今もポケットに入っている。けど、朝一で会うのはさすがに気まずい。

 

さりげなく挨拶からいきたい。

 

 

 

~家~

 

 

 

『おはよ、由夢』

 

『………』

 

 

 

いきなりスルーと来るか。音姉は何かあったのかと由夢を見ている。

俺なりに自然体で挨拶したんだが。今は何をやっても無駄かも知れない。

 

ここは幽霊の話を強引に引き付ける事にした。

 

 

 

『幽霊の話はこれで終わり。第一、これ以上深く考えたら体に毒だ』

 

『でも私たち別々で見たんだよ。そんな事ってあるの?』

 

『強いて言えば、何か強迫観念の様な思い込みでもしていたか……』

 

『そんなのしてないよ』

 

 

『今日から純一さんが居るだろ。俺も隣の家に居るわけだし』

 

『因みに、弟君は何もなかったの?』

 

『何もなかったし、何も見えなかったし、何にもする事がなかった』

 

『ふぅん、そうなんだ』

 

 

『落ち着いたか?』

 

『少しね。ほんの少し』

 

 

 

……由夢の方はと言えば、一心不乱で朝ごはんを食べ続けている。

会話に参加しようとする素振りすら見せず、今回の事は一筋縄ではいかない気がしてきた。

 

しっかりご飯を食べてくれるだけでも有難いと思えてくる。

 

 

 

『ご馳走様』

 

『由夢っ』

 

 

 

駆け足で去る由夢を、つい大きな声で引き留めてしまった。

音姉も何事かと見ている。

 

 

 

『なによ』

 

『大丈夫か?』

 

『……うん』

 

『良かった』

 

 

 

由夢はすぐに朝倉家へと戻ってしまった。

だが、こんな光景を音姉が何も思わないはずがない。

 

その視線は家庭内で向けられるものではなく、生徒会長としての目つきに変わっていた。

 

 

 

『由夢ちゃんと何があったの?』

 

『何もないよ』

 

『……何かはあったけど、答えられないって事かな?』

 

『………』

 

 

 

一瞬、返答に迷って無言になってしまった。

しかし、もう遅かった。

 

何年もその相手と同じ生活をしていると、相手の微妙な仕草や表情の変化すらも感覚的に捉えてしまう。

その微妙な仕草が、俺の体のあちこちで出てしまった。

 

 

 

『なーるほど』

 

『音姉、この件は深入りしないでくれ。絶対に』

 

『複雑?』

 

『かなりね』

 

 

『じゃあ弟君を信用しようかな』

 

『サンキュー』

 

 

 

俺は一足先に音姉を帰した後、食器洗いをしていた。

たった一日だけど、されど一日。

 

清潔感を保つ音姉が、ホコリ具合をチェックしない訳がない。

今も学校から帰ってきた後、掃除の事でいっぱいかも知れない。

 

 

 

 




適当に書くつもりです。
あまり根詰めると持続力が続かないので。
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