D.C.Ⅱ 〔2〕   作:消雪

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◎〔12〕

ー喫茶店ー

ー朝ー

 

 

 

『そういう風にジロジロ見るのは止めてくれ』

 

『そうだけど、でも、何か違う……』

 

『俺もジロジロ見ようか』

 

『分かった。止めるから』

 

 

『………』

 

『もう、いじわるだなぁ』

 

 

 

観察する様に見てくるので、やり返しておいた。

白河が言うには姿、形は間違いないが、雰囲気や感覚がいきなり変わったように見えるらしい。

 

後、ちょっとした仕草が「ある人」と重なり合う様だ。

しかし、俺がことりさんと重なり合うにしては、考えすぎだろう。

 

 

 

『うん、可愛いよ』

 

『ちゃんと場所を考えてね』

 

『うん、顔も赤くなった』

 

『なってません』

 

 

『いじわるな分、俺は俺だろ』

 

『うん、確かに。ことりさんはそんな意地悪しないから』

 

 

 

本当に顔が赤くなったのでもっと茶化そうと思ったけど、こういうのは本当に嫌で困っている事があるので、すぐに引き返した。

念の為にペコっと頭を下げておこう。

 

 

 

『そういえば以前、朝倉さんの家で幽霊騒動があったじゃない?』

 

『ああ、まぁな。もう全然見てないけど』

 

 

 

見てないというか、朝倉家とは疎遠になってしまい、家の中に入る機会が無くなってしまった。

最近は、純一さんとも話し合う回数は減っている。

 

 

 

『……何でもない。いないのならいいの』

 

『あの幽霊のおかげでこっちは大迷惑だよ』

 

『……ごめんなさい』

 

『あ、いや、根に持っている訳じゃないんだ。今のは考え無しで喋っただけだ。すまない』

 

 

 

あの時、幽霊が俺に伝えようとした事を、直感で当てて、トラックとの事故を回避した。

当初は、白河を含め、誰も俺の行動を理解できず、白い目で見られ、完全に嫌われた。

 

白河の様に、何か違うと思っている者もいれば、朝倉姉妹の様に今も嫌っている人間もいる。

嫌っている人間は少ないかもしれない。

だが、警戒されているとなれば大多数になる。

 

 

弱い者を叩くというのは、人として恥であり、人格を疑われる最低の行為だというのがわかる。

悪のイメージも強いので、それは中々消えるものではない。

 

 

 

『義之君は今も、災難な目にあっているもんね……』

 

『ホントに。ほとんど悪霊だよ』

 

『待って。あの人をそんな言い方しないで』

 

『なんで。散々な目にしか合っていないんだぞ』

 

 

『それは解るの。でも怒るなら私だけにして』

 

『……すまない』

 

『………』

 

『ごめん』

 

 

 

口調は穏やかだが、怒っているのが伝わった。

本人の前で、親族の悪口を言うのは大人げなかったな……

 

頭を少し下げて、丁寧に謝った。

 

親族……

ことりさんの事を少し聞いてみようか。

 

聞きづらいが今まで気になっていた事を。

 

 

 

『白河にとってはすごくいい人だったんだな。その、ことりさんは』

 

『うん。あの人のようになりたい』

 

『なれるよ。きっと』

 

『無理、ことりさんは特別だから。もう一生、あんな魅力のある人と会う事はないとはっきり言える』

 

 

『その特別って?』

 

『それは会ってみないと分からない。言葉で説明できる自信ないし』

 

 

 

夢の中だが、俺は朝倉家でその人と会っている。

飛び抜けてきれいな女性というのはわかるが、あの時は危険を伝えようと緊迫していたので、魅力まではわからない。

 

しかし、幽霊となると……

あまり触れたくないが、確認したかったので聞いてみた。

 

 

 

『どんな人か会ってみたい。今度、会ってみてもいい?』

 

『……それは出来ない。もういないんだし』

 

『ご、ごめん。忘れてくれ。ホントにごめん』

 

『ううん、いいの。でももし会う事が出来たら、その特別が絶対にわかると思うの』

 

 

 

やっぱりそうか。

もし生きていたら、あの時の事を聞くことができたけど仕方ない。

 

重苦しいので、この話題から離れて、学校について話すか。

学校について、もしくは友達についてと考えていると、ウエイターが困った様子でこちらへ向かってきた。

 

 

 

『すいません、もうコーヒーフレッシュは使いませんか?』

 

『ああ。俺は大丈夫っす。白河は?』

 

 

『………』

 

 

『白河?』

 

『私も使わない』

 

 

 

周囲を見渡すと、そこそこお客が立て込んできた。

しかも、殆どの客がコーヒーを頼んでいる様なので、フレッシュの器が足りなくなったのだろう。

 

 

 

『やっぱりおかしい』

 

『何が』

 

『今日の義之君』

 

『いつもと変わらないよ』

 

 

『……あの人と喋り方まで似てる。義之君は、っすとか言わなかったのに』

 

『ことりさんは、サラリーマン風の社会人だったのか』

 

『違う』

 

『わ、解ってるって。冗談だよ』

 

 

 

喫茶店で過ごした後、白河は小恋と待ち合わせしている様なので、俺はゲーセンにでも寄る事にした。

義之君も来れば?と誘われたが、今の俺はそこまで余裕がなかった。

 

この能力について、今後の事も考えないといけない。

白河といつまでも一緒に居ると、何かを見抜かれそうで怖かった。

 

 

 

ーゲームセンターー

ー昼ー

 

 

 

最近のUFOキャッチャーを見ていると、難易度の高さに驚く。というよりムカつく。

昔の事を思うと、握力の無さにどう取っていいのかさっぱり分からない。

 

以前は狙いを定めてると、取りかけまでいくんだけど……

今のUFOキャッチャーはお手上げ状態なので、やる事がなくなってしまった。

 

直接、買った方が安く済むの一言になる。

 

 

 

〔これぐらい殴らせてね、杉並〕

 

 

 

 

アーケードゲームを見回っていると、「バンっ」というすごい音がしたので、そっちへ足を向けた。

昔と変わらないセリフが出るので、今でも一瞬でパンチングゲームだと分かる。

 

これはストレス発散になるので、これぐらいしかしない。

周りにいる皆は関心のないフリして、実際は気になって仕方がなく、ある人はしっかり数値まで確認する。

 

今思うと不思議な現象だな。

 

 

 

『あれ、弟君じゃない』

 

『高坂先輩……』

 

『久しぶりだね。何してるの?』

 

『ブラブラと散策中です』

 

 

 

意外な一面を見た。

パンチ力は150KGをキープしているので、女にしてはかなりのパワーだ。

 

やっぱり、鍛えている人は違うな。

 

 

 

『すごいパンチ力ですね』

 

『まぁね。毎日走っているんだし』

 

『下半身を鍛えるのは基本ですか』

 

『……何、喧嘩売ってるの?』

 

 

『悪気じゃないですよ。何気なく聞いただけです』

 

『まぁいいわ。嫌な相手を思い浮かべて殴るの』

 

『例えば?』

 

『杉並君とか』

 

 

『そんなに腹を立てていたんですか』

 

『冗談に決まってるでしょ』

 

 

 

最後のゲームで殴り終えると、グローブを元の位置に戻し、ゲーム機の上に3枚あった100円玉を財布にしまうと、俺の方に来た。

口を押えながら、言おうか言うまいか思案していた。

 

 

 

『弟君さ、その、聞いていい?』

 

『何をですか?』

 

『まだ音姫と喧嘩してるの』

 

『……喧嘩というより絶交です。お互いに』

 

 

『姉と弟だったのに?』

 

『……そうです。その質問は終わりにして下さい』

 

『せめて、由夢ちゃんとは仲直りしたら。冷たくされたのは音姫なんでしょ?』

 

『今更……。由夢もおと……、朝倉さんと一緒に居た方がいい』

 

 

『なんで?』

 

『いざという時、由夢が力になってくれるからです』

 

『……安心した。完全に音姫を嫌いになったんじゃないんだね』

 

『…、……』

 

 

 

……適当に出した言葉だ。

なぜ、俺はこんな事を考えていたのだろう。

 

絶交とか言っても、心の奥底では心配しているのか……

あの時は、冷酷に突き放されたというのに。

 

 

 

『弟君さ、唐突なんだけど次の日曜日学校に来ない?』

 

『嫌ですよ。せっかくの休みなのに』

 

『せめて、何をするのか聞いてほしいな』

 

『……何をするんですか?』

 

 

 

高坂先輩は知らないだろうが、土日は農作業で一日つぶれる。

農作業は重労働そのもので、あとの時間は体を休めたい。

 

 

 

『料理に腕自慢のある人が弁当を持ってきて、誰が一番美味しいか勝負をするの。弟君もやろうよ』

 

『………』

 

『一位になった人は、一つだけ何でもお願いができるの』

 

『………』

 

 

『……弟君は常識があるよね。滅茶苦茶な願いを言うつもりはないよね』

 

『………』

 

『弟君?』

 

 

 

あまりやりたくなかったが、高坂先輩の心を読ませてもらった。

生徒会のメンバーたちが、音姉の力になる為の催しのようだ。

 

簡単に言うと、意図的に音姉を勝たせて、お願いというのが仲直りという寸法だ。

 

 

料理の腕自慢というのは、音姉に俺、高坂先輩、小恋の4人。

由夢が入っていないのはミソだな。

 

採点するのは音姉、由夢、小恋の3人。

こっちに入れられているのもミソだな。

 

 

しかしその催しは、音姉が勝てるように評価を付ける人が仕組まれているものだ。

つまり、最初から誰が勝者になるか決まっている。

 

本来なら、丁重にお断りして終わりだが、勝敗を人為的に勝たせるというのが気に入らなかった。

今の俺には、誰にもマネができない野菜がある。

 

 

しかももう一つ隠し玉があった。

敢えて、勝負して質の違いを見せてやる事にした。

 

 

 

『どうしたの?』

 

『いえ、何でもないです』

 

『それで、どうする』

 

『……断ります』

 

 

 

さて、こう答えたらどうなるか……

 

 

 

『ええ~、せっかくなんだし参加しようよ』

 

『因みに、料理の腕自慢は他に誰が来るんですか?』

 

『私と月島って子。後、もう一人来る予定だよ』

 

『その人は誰ですか?』

 

 

『……さすがに隠し切れないか。音姫だよ』

 

『………』

 

『ダメ?』

 

『いえ、せっかくだから参加します』

 

 

『えっ、本当に?』

 

『はい。せっかくだし』

 

『じゃあ、次の日曜日お弁当作って持ってきてね』

 

『はい』

 

 

 

ゲーセンを後にして帰宅途中、農家の人に電話を入れた。

「ある野菜」をキープしてもらい、次の土曜日に取りに行く事した。

 

 

 

……

 

 

 

ー次の日曜日ー

ー台所:朝ー

 

 

 

昨日、収穫したばかりの新鮮な野菜。これだけでも十分大きいだろう。

「ある野菜」というのは、昔ながらの日本野菜。専門用語では固定種と言う。

 

スーパーで売っている、形が整っているだけの野菜とは訳が違う。

……そうは言っても、最初は新鮮さしか分からないか。

 

 

野菜を中心とした弁当を作りたいので、もう一つ弁当箱を用意して、野菜を詰める事にした。

万願寺唐辛子、ナス、ピーマン、ほうれん草、里芋……、ご飯が添えやすい様に、焼き魚を付け足した。

 

もう一つの弁当はトマト、キャベツ、レタスの上にトウモロコシの粒を散りばめた。

収穫したばかりのトウモロコシは、甘みが最高に美味しい。

 

多めに散りばめておこう。

 

 

 

『あとはタッパーに詰めてと』

 

 

 

完璧だ。

後の残り時間は、コーヒーでも飲んでよっか。

 

皆はどんな弁当を作ってくるのか楽しみでもあった。

しかし同時に来るのは、久しぶりに対面する音姉と由夢の事も頭に浮かんだ。

 

 

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