D.C.Ⅱ 〔2〕   作:消雪

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〔4〕

~家~

~居間~

 

 

 

『朝か……』

 

 

 

次の日。何だかぐっすり寝てしまった。

時計は6時半を指している。

 

現在は、居間に布団を運んできて俺と純一さんが使っている。

音姉と由夢は、俺の部屋を使っている。

 

辺りを見渡すと、今日は純一さんが居ない。布団も片づけられている。

いつもは俺の方が朝が早かったのに。

 

 

考えていても仕方がないし、朝ごはんの用意でもするか……

 

 

 

~台所~

 

 

 

スーパーで買ってきたロールパンの真ん中に、包丁で切れ込みを入れて、カレー風味の野菜炒め、ウインナーを入れる。

 

冷蔵庫に入っていたプチトマトは期限切れが間近だったので、熱を通すものを適当に作る事にした。

朝食にあまりこだわりはないので、トマトスープにした。

 

朝食の準備は着々と進むのに、思考においては進んでは戻っての繰り返しだ。

思考というものは、しっかり手綱を握っておかないと、理屈や根拠のない推測を四方八方に広げてしまう。

 

 

 

『………』

 

 

 

純一さんもさくらさんも、何か思い当たりがあったのだろう……

 

俺は全く分からないし、音姉も由夢も何だかわからない様子だった。

対照的に、何か捉えていたのが純一さんとさくらさんだ。

 

共通点で言うと、昔はあの二人は同級生であり、風見学園の生徒だ。

昨夜、自分の言った女性が「誰か」に酷似していたのではないだろうか。

 

しかし、もし幽霊で現れたとすると、もうその人は既に……

 

 

 

≪コンコン≫

 

 

 

後ろで軽くノックをする音が聞こえたのでふり返ると、由夢が立っていた。

何だか複雑な表情をしている。

 

ま、色々あったから無理はない。

当面は、純一さんとさくらさんの事で頭がいっぱいになりそうだ。

 

 

 

『兄さん、疲れてるでしょ?』

 

『いつも通りだ。由夢は?』

 

『いつも通りですよ』

 

『………』

 

 

 

何だか、3日前ほどにあった俺と音姉とのやり取りのデジャブを感じる。

もしかして、由夢はさっきから食卓に居たのか。

 

 

 

『さっきから居てたか?』

 

『なんだ。気づいてたんだったら振り向いてよ』

 

『すまん。朝食に集中していてな』

 

『……私に気づいてたのか。気づいてなかったのかどっちですか』

 

 

『気付いてたよ。朝食にしようぜ』

 

『そうだね。もしかして、お姉ちゃんの分まであるのこれ?』

 

『ああ。もしかして生徒会で早出したか?』

 

『うん、でも私が学校の昼食にするから。これ2、3個をラップで包んで持っていくよ』

 

 

『ダメだ。朝も昼も同じ食事は体に良くない。ラップで包んだ物は音姉に持っていく』

 

『変わんないって。何だかお姉ちゃんに似てきてるよ。兄さんなのに』

 

『料理を作っていると栄養バランスを考えてしまうんだよ。由夢も音姉にまで追いつかなくても、俺に追いついてくれ』

 

『ふん。うるさいです』

 

 

 

俺は朝食を口に入れながら、食パンを出してサンドイッチを作る事にした。

トマトを斜め切りにし、キュウリやハムを食パンに挟んでラップに包む。

 

一番ヘルシーで手軽に出来るサンドイッチだ。

それを朝食を取っている由夢の前に置いた。

 

 

 

『トレードだ。俺が音姉に届けにいくよ。由夢はこっちを食え』

 

『……もしお姉ちゃんが、昼食の準備があったらどうするの?』

 

『そん時は、俺がロールパンをやっつける』

 

『支離滅裂すぎるんですけど。それじゃあ兄さんが朝昼連続になるじゃない』

 

 

『俺は何でもいいんだよ。男なんだから』

 

『もっと支離滅裂です』

 

 

 

兄さんもお姉ちゃんには程遠いから安心した、という捨てセリフを後にして学校の準備をしに行った。

俺もそろそろ歯を磨いて、学校へ行く準備をしないと。

 

そういえば、純一さん朝食を食べに戻らなかったな。

さくらさんも早出だったのかな。

 

二つの皿を用意して、その上にロールパンを乗せておいた。

これで朝食には気づいてくれるだろう。

 

 

 

~家~

~夕方~

 

 

 

『おかえりなさい』

 

『ただいま』

 

 

 

音姉が笑顔で迎えてくれる。

やっぱ人が多いというのは、いいものだな。

 

家に帰るだけなのに、これだけ気分が晴れている。

家庭、家族というのが生活において、どれほど大切が身に染みる。

 

 

 

『家族っていいな』

 

『突然どうしたの。弟君らしくない』

 

『……何でもないんだ。由夢は?』

 

『弟君の部屋で漫画を読んでるよ』

 

 

 

俺は食卓に入ってテーブルを見た。

ロールパンは無くなってたので、食べてくれたのかな。

 

お出かけした様子もない。

では、朝倉家に居るのだろうか。

 

 

 

『純一さんは?』

 

『あっちの家だよ』

 

『そうか。ちょっと様子を見て来るよ』

 

『ダメ。弟君は夕ご飯手伝ってもらうんだから』

 

 

『すぐ戻るよ。様子を見るだけだし』

 

『じゃあ、なるべく早くね』

 

 

 

~朝倉家~

 

 

 

誰かが歩いている音がする。これは多分、純一さんだろう。

モヤモヤを探しているのかな。

 

いきなりドアを開けたら、間違いなく驚かせるのでいつもより丁寧にドアをノックする

 

 

 

『桜内です。失礼します』

 

 

 

ドアを開けると、二階から純一さんが降りてきた。

もしかして、ずっと探していたのかな。

 

 

 

『いらっしゃい。そろそろさくらの家に行こうとしていた所だよ』

 

『そうですか。ところで……』

 

『どうしたの?』

 

『えっと……』

 

 

『ああ、あれかい。出会えなかったよ』

 

『自分も付き合いますよ。一つ気になる事があるし』

 

『気になる事って何だい?』

 

『あの時の女性は焦っていた様な、緊迫した感じがしました。何かあるな、と』

 

 

『こ……、あの子が?義之君はそれをどう考えたの?』

 

『何か危険を知らせに来ているのかな、と』

 

『その危険とは何だい?』

 

『そこまでは分かりません。憶測です。実際に何しに来ているのかも分からないです』

 

 

『………』

 

『………』

 

 

 

……何だか重苦しい空気が漂ってしまった。

こんな憶測を言うべきではなかったと、後悔の念に駆られる。

 

忘れて下さいと慌てて付け加えたが、俺の説も可能性として考えている様だ。

しかし、いつまでもこうしている訳にもいかず、夕ご飯の準備の為、一旦帰る事にした。

 

 

 

~家~

~居間~

 

 

 

夕ご飯を終え、入浴も済ませた後は、ソファーで横になったり、皆で談笑したりしている。

その居心地の良さはキリがなく、時間をシビアにしないと一日中になりそうだ。

 

音姉や由夢が就寝の為に、部屋に戻った。さくらさんは、戸締りの確認をしている。

そのタイミングを見計らってか、純一さんが話しかけてきた。

 

 

 

『本当に申し訳ないと思っている』

 

『ど、どうしました?』

 

『1時間ほど付き合ってほしい』

 

『……もしかして、朝倉家に?』

 

 

『やっぱり、気になるんだ。睡眠を妨げる様で無理にとは言わない』

 

『大丈夫です。自分も気になっていたので。さくらさんにも上手い事言っておきます』

 

 

『私、ずっと居るんだけど。最近、義之君の中で私の存在が薄れてない?』

 

『そんな事ないです。今のは気づいていなかっただけです』

 

 

 

何だか、さくらさんとの会話がたどたどしくなっている。

俺はいつも通りだが、どこかリズムが整っていない様な気もする。

 

……朝倉家の思い出が強く懐かしみ始めてからかな。

 

 

 

~朝倉家~

 

 

 

『暗いですね』

 

『暗いね。足元気を付けて』

 

『電気付けなくていいんですか?』

 

『その方がこちらからも解るかなと思ってね。それにあの子たちに気づかれると説明が難しいし』

 

 

 

さくらさんには制限時間、1時間までと言われてしまった。

あまり時間が取れないが、逆に考えると何をしていいのか分からない。

 

会話も隣に聞こえない様に静かにしないと、音姉や由夢に気づかれてしまう。

 

 

 

『昼間、全ての部屋を調べたんだけどね。現れなかったよ』

 

『下手に動くより、同じ場所で待っていた方が向こうも気づくかも知れないですよ』

 

『なるほどね。そういう発想の転換が利かない事を思うと、もう歳だな』

 

『大丈夫ですって。さくらさんもあんなに明るいんですから』

 

 

『どこで待とうか?』

 

『2階の階段の上った所で待ちましょうか。一度、その場所で出たみたいだから』

 

 

 

……

 

 

 

やる事もなく、真っ暗の中で俺と純一さんが座っている。

暗闇の中では相手の表情が見えず、純一さん本人かどうか不安感が増す。

 

しかし、俺の中では幽霊より睡魔の方が先に来た。

生活習慣を付けていると、この時間は寝る時間だと体が睡眠を欲し始める。

 

幽霊が出るなら出るで、速く来てくれる様に祈った。

 

 

 

『!!!』

 

 

 

……何だかノイズの混じったものが聞こえた。

これは、音ではない。どういう感覚で捉えたかよく解らないが、確かにノイズの様なものが聞こえた。

 

すぐに純一さんの手を触る様に叩いた。

 

 

 

『どうしたの?』

 

『何か感じます。純一さんは?』

 

『か、感じるって何を?』

 

『解らない。付いて来てもらえますか?』

 

 

 

とりあえず、ノイズが大きく聞こえる所へ向かう事にした。

ノイズは殆ど断片的にしか聞こえない。しかも、ノイズがずっと聞こえている訳でもない。

 

場所を移動しようと思ったが、立ち止まってしまった。

もしかしたら、ここが一番ノイズが拾えているのかも知れない。

 

 

 

『行くんじゃないのかい?』

 

『ノイズが聞こえなくなって、発信源がどこなのか。あるいはここなのか』

 

『ノイズだって?そんなもの全く聞こえてこないよ』

 

『何ていうか、聴覚ではないです。どの感覚で聞こえたか解らないです』

 

 

『……そうだった。彼女はある種の能力があった事を忘れていた』

 

『能力?能力って?』

 

『いや、気にせんでくれ。意識をしたら下手な事を考えれなくなってしまう。とりあえず、心の中で話しかけてくれ』

 

『……はい』

 

 

 

……さっきよりノイズが大きくなったというか、酷くなったというか。

あるいは気の迷いか、何だか分からなくなってくる。

 

強いて言うなら、ノイズの様なものがほんのわずかに大きくなった感覚しかない。

それも気の迷いかも知れない。

 

 

 

『私には何も感じない。義之君はどうだ?』

 

『ノイズがわずかに大きくなった様な、単に意識し過ぎて気の迷いなのか』

 

『ここに現れる様に訴えかけてほしい』

 

『既に心の中でやっています。けど、何も出てきません』

 

 

 

そうこうしている内に、1時間が経過してしまった。

残念だが、自分はここで打ち切りする事を持ちかけた。

 

けど、純一さんはここで一晩寝る事を決めてしまった。

幽霊に害意は無いにしろ、何かいる事は確かだから桜内家に戻る様に説得したが、純一さんは頑なに拒んだ。

 

仕方なく自分だけ桜内家に戻った。

 

 

 

 

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