転生したら妹がブラコン拗らせて独身のアラフォーだった   作:カボチャ自動販売機

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15話 お出掛けと挑戦状と凹む魔王

学校に通い始めて二週間が経った。

クラスの皆も、挨拶をすれば返ってくるし、事務的な会話も出来るようになった。世間的には小さな一歩かもしれないが、私としては大きな一歩。朝、挨拶をしておはよう、と返事がある度に顔が綻んでしまう。

 

魔法教育では班決めを行い、私は泉美ちゃんと一緒の班になった。お淑やかな泉美ちゃんが鬼のガッツポーズをしていたりして面白かった。真由美さんには疑われているため、同じ班になったら注意が必要だったから、バラけられたのは良かったかもしれない。泉美ちゃんの実力よりもやや下を意識して、訓練に挑んでいる。

 

「真桜先輩っ」

 

今日の魔法教育が終わり、帰り仕度をしていると、泉美ちゃんが声をかけてきた。

先輩、と呼ばれる度になんだか得意気な気持ちになる。

 

「明日、私と一緒にお出掛けしていただけませんかっ!」

 

ガバッと頭を下げて、握手を求めるように私に手を出している泉美ちゃん。

 

「泉美、それじゃいきなり過ぎるよ、ちゃんと説明しないと」

 

戸惑い気味だった私に気がついた香澄ちゃんが泉美ちゃんに説明を促してくれた。お出掛け、と言われてもどこに行くとか、何時に行くとか、何をしに行くとか、そういう情報がないと判断できない。何せ私はお小遣い500円、交際費は貰えるとはいえ、対応できない場合もある。

 

「そ、そうですね、性急過ぎました。申し訳ございません」

 

泉美ちゃんにそれから話を聞くと、どうやら言葉のままだったようで、明日の土曜日に一緒に街へ行って買い物とかブラブラしましょう、というお誘いだった。そういうことなら私も断る理由はない。

それに、泉美ちゃんには申し訳ないが、このシチュエーションは利用できる(・・・・・)

 

「そういうことなら問題ないよ。明日はどこに集まればいいの?」

 

泉美ちゃんから敬語は止めて欲しいという提案があり、フランクに話している。女子校ということで基本的にお淑やかに敬語で話しているのだが、後輩にまで敬語を使っていると、後輩は逆に話しかけにくいと、香澄ちゃんが教えてくれた。

その香澄ちゃんは、たまにボクという一人称に変わるときがあり、少しシンパシーを感じている。泉美ちゃんに聞いたところによると、本来の一人称がボク、の様だ。前に私がリアルボクっ娘は痛い、とか言っていたが香澄ちゃんくらい自然ならありだ。やんちゃ感が逆に可愛いとすら感じる。

 

「車でお迎えにあがりますので、宜しければ住所を教えて頂けますでしょうか?」

 

香澄ちゃんが、何故かドン引きしたような顔で泉美ちゃんを見ているが、泉美ちゃんは笑顔だ。

 

住所は、本当は教えない方が良いのだろう。九島の息のかかったアパートであるし、もし響子さんと鉢合わせでもされたら、関係がバレてしまう。真由美さんに疑われている現状ではリスクがあったが、そもそも私が九島に連なる人間であることを隠しているのは個人的なエゴだ。実は、これがバレたところで大した問題では無かったりする。

それに、七草家がその気になれば家の住所などいくらでも調べられる。リスクを考えるだけ無駄な話であった。

 

「ええ、じゃあ後でメールをしておくね」

 

「はい、お待ちしております!」

 

満面の笑顔を浮かべる泉美ちゃん。これは利用するだけでなく、ちゃんと楽しませないと。とりあえず気まずくなることがないように、今時の女子小中学生で話題になっているものを調べておこう。

 

「香澄ちゃんも一緒なの?」

 

「ざ、残念ながらボクは用事があるので、泉美と二人で(・・・)二人で(・・・)楽しんできて下さい!」

 

私が訊ねると、香澄ちゃんは不自然なくらいカチコチな口調で答えた。先輩の実質的な誘いを断らなくてはならない、ということで、緊張したのだろう。

私の位置からはその表情までは見えないが、じっと泉美ちゃんが香澄ちゃんを見ていたので、きっと応援していたはずだ。やはり姉妹の絆というのは素晴らしいね。

 

「香澄ちゃん、明日は残念だけど、また今度どこかに出掛けようね」

 

「ありがとうございます、楽しみにしてますっ」

 

笑顔を浮かべながら、本当に楽しみにしていそうな嬉しそうな表情をするものだから、私はつい、彼女の頭を撫でてしまった。私の方が少しだけ背が高いからか、長年のお姉ちゃんとしての癖なのか、撫でたくなってしまったのだ。

私が謝ると、香澄ちゃんは快く許してくれたが、どこか挙動不審だった。何かに怯えているようにも見えたが、気のせいだろう。

 

「それじゃあ泉美ちゃん、明日はよろしくね」

 

「はい、全身全霊で挑みます!」

 

泉美ちゃん、君は明日何を成し遂げようとしているんだい?

私は空回りしている泉美ちゃんに苦笑い気味の笑みを浮かべつつ、この場を去った。

 

 

 

 

 

「私も一緒に……」

 

「お姉ちゃん、泉美ちゃんに口利いて貰えなくなるの嫌だったら、黙って」

 

「なんで!?私、嫌われてるの!?」

 

去り際に誰かが何やら騒いでいたが、明日のために準備するべきことを考えていた私の耳には届くことはなかった。

 

 

 

 

「えっ、七草のご令嬢と?」

 

「ええ、ですから護衛は不要です。七草の方に不信感を持たれますので」

 

 

私のイデアにアクセスし、存在を認識することができる能力(便宜上『眼』と呼んでいるが)は知覚能力を拡張することで索敵に利用することが出来る。イデアの中で個々のエイドスを見分ける特別高性能の知覚力ということだ。簡単に言うならば千里眼である。

私は、常にこの能力のリソースの内、半分を索敵、知覚能力の拡張による索敵に使っている。勿論それは意識的ではなく、無意識の探知であり、何か危険があれば感知できる、という程度のものだが不意を打たれる確率を下げられる。

私の『眼』は特に解析とこの索敵に向いている様で、集中すれば、まるで幽体離脱でもしているかのように、自由自在に認識すること出来る。まだまだこの力を使いこなせてはいないが、これ程便利な力はない。

 

この力によると、九島の護衛と思われる人は12人で交代制。6人ずつで2班を編成し、昼と夜で代わっている様だ。それだけの人員を投入しているのは、私の存在だけでなく、響子さんもいるからなのだろう。私にとっては護衛というよりも監視としての意味合いが強く、彼らに監視されている状態では四葉に何もアクションを起こすことが出来なかった。実際、四葉の諜報と思われる人員も私の索敵範囲に入ったことがあるが、九島の護衛を警戒してか、すぐに立ち去ってしまった。

 

この護衛兼監視を排除するために、泉美ちゃん、つまりは七草を利用させてもらう。

七草の令嬢を監視していた、と思われれば諍いになるし、それが九島の護衛だと分かれば私が九島に連なるものだとバレてしまう。

また、もしも九島であるということを明かしたとして、それは七草を信用していない、と言っているようなものになってしまう。

どちらにしても護衛をそのままつけておくのはデメリットになる。なら、響子さんは護衛を外すはず。彼女には護衛がいなくとも私を監視できる無数の眼があるのだから。

 

「確かに七草の護衛に気取られると面倒ね……分かったわ、護衛は外すけど、近くで待機させておくわよ。それに、私も見守っている(・・・・・・)から安心してね」

 

これは意訳すると、護衛は外しても、近くには待機させて、響子さんが監視している、ということだ。

 

電子の魔女(エレクトロン・ソーサリス)』の異名を持つ彼女は、電子・電波魔法による高度なハッキングスキルとそれに対応したスキルを身に付けたハッカーとしての側面を持っていることが推測される。

彼女の言動から、街中のカメラをハッキングし、私を監視することが出来るのだろう。これが無数の眼。現代の日本には何百、何千という監視カメラが設置されている。これが彼女の眼となるのだ。

 

これは響子さんの挑戦状。私が何らかの行動を起こすのではないかと疑い、釘を刺しているのだ。ワクワクするね。困ったことに、私はこういう勝負事が大好きなのだ。

 

「響子さん、しっかり見守って(・・・・)いて下さいね」

 

「ええ勿論」

 

響子さんが不敵な笑みを浮かべる。私からの挑戦状を受け取ってもらえたみたいだ。

 

「では響子さん、私は泉美ちゃんが来るのを下で待ちますので」

 

私がそう言って玄関に向かおうとすると、響子さんに首根っこを掴まれた。

 

「真桜ちゃん、ルールその3、私服は可愛いものを着る」

 

唐突に響子さんが言う。私は小首を傾げるしかなかった。これは今流行りの服をそれぞれチョイスして組み合わせたのだ。つまりは流行の最先端。ダサいはずもないし、可愛いはず。

 

「コーディネートがチグハグ過ぎるわよ!鏡見た?それぞれの服が主張してて、すごくうるさい。簡単に言うと、とてもダサいわ」

 

唖然とした。そんな馬鹿な。ただ流行の最先端を調べ、組み合わせただけではダメだと言うのだろうか。最強の布陣で固めたはずなのだが。

 

「そんな格好で行ったら、良い笑い者だわ。今まで良く大丈夫だったわね」

 

「服は基本的に妹が選んだものを着ていました。それに、なるべくシンプルなものを選ぶようにと母に言われていたので」

 

響子さんの酷い暴言にも負けず、USNAでのことを思い出していたのだが、基本的にシンプルな服装が多かったのは確かだ。コーディネートなども妹に言われるがままだった。

 

「あー、そういうことね……。後で時間作って最近のファッションについてと、服のコーディネートを基礎から教えてあげるから、日本できちんと学んでいくのよ」

 

可哀想な子を見るような目で私を見ながら頭を軽くぽんぽんすると、響子さんが、今日はこれを着てきなさい、とクローゼットからぱっぱと服を取り出して、ベッドの上に並べた。えっ、私この服を選ぶまで二時間くらいかかったんですが。

 

「真桜ちゃんにも、弱点ってあったのね」

 

挑戦状とか何とか言っていたが、くすっと響子さんが笑うのに、私は凄く負けた気がした。なんだこれ、凄い嫌なんだけど。もう第一ラウンドでKO寸前なんだけど。

 

そうして私は出掛ける前に、響子さんに滅茶苦茶凹まされ、ボロボロの心で部屋を出た。

 

私ってダサいのかな……。




――香澄の心の声――

(泉美、自然に住所聞き出したっー!?計画通りって顔してるっ!)


香澄「ざ、残念ながらボクは用事があるので、泉美と二人で、二人で楽しんできて下さい!」
(泉美からの無言の圧力がヤバいよ!何その目!笑ってるのに笑ってないよ!)


頭を撫でられながら
(真桜先輩ぃぃいいいっ!泉美が、泉美が凄い顔でこっち見てますから!ボク、頭の毛全部抜かれちゃう!?)


結果、真由美さんが妹に辛辣な扱いをされる。





真桜VS響子。そして、水面下で動き出す四葉。暴走する泉美。

真桜をめぐる三つ巴?の戦いスタートです。
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