転生したら妹がブラコン拗らせて独身のアラフォーだった   作:カボチャ自動販売機

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あけましておめでとうございます。
今年は二期も放送されモチベーションが高まっておりますので頑張って更新していきたいです。


33話 襲撃する魔王

九重八雲。

既に彼が、どこで何をしているのかは少し前から深夜に調べてもらっていた。

 

いつか自分の力を試すのに丁度良いと思っていたのもあるし、単純に、あれだけの男が逢魔が死んでから今までの間でどれだけ強くなったのか、興味があったからだ。悔しいがあいつは私の理想の魔法師だった。理想、というよりも好みというべきか。

 

戦略級魔法師が持て囃されているように、高火力というのはそれだけで価値のあることだが、巧みな技と繊細な魔法の組み合わせ、これこそが美しい魔法師の姿だと私は思う。

 

そうなると、あいつは美しいということになるがそれは認めたくない。あいつの技術や魔法は認めるが、その人格に美しさなんてものが欠片もないからだ。

 

妹に指一本でも触れたら殺すと脅せば、逢魔から逃げ切って真夜と深夜に触れるかゲームを始め(後にボコボコにした)、逢魔が使いたくても使えなかった魔法を目の前で使って見せびらしてきたり(後にボコボコにした)と、はた迷惑なやつなのだ。

 

その、八雲と会うとなれば、まず間違いなく戦うことになる。私たち、いや、ぼくたちはそうやって知り合い、そうやって語り合ってきた。友ではなく、敵でもなく、戦うことでしかお互いを認められない、好敵手(ライバル)

いくら女子中学生になろうとも、あいつに負けるのだけは御免だ。

自主練をしたり、達也君と訓練したりしていても、所詮、この体は素人、その上、私の戦闘勘も当時とは比べ物にならないくらいに落ちている。

次の月曜日に達也君を八雲に紹介する約束をしたため、調整に使える時間は一週間もない。万全の状態にするためには、もっと時間が欲しいが、時間は有限。少しでも早く達也君は技を学ぶべきだし、そもそも私が日本へ来た目的は深夜の治療であって、八雲と戦うことではない。八雲と戦うために時間をたっぷり使っていては本末転倒だ。

 

ただまあ、研究をしようにも設備が必要だ。

実は、治療の研究をするための施設を、深夜に用意してもらっており、それが出来るのが凡そ10日後くらい。

 

八雲との戦いは、空いた時間に丁度良いから、という理由もあったのである。

正直言って、今の私と一対一でまともにやりあえる魔法師はそういないだろう。

自分の今の力を存分に試したい、という私の欲望を叶えるのに、散々やりあって私の癖から好みまで把握している八雲は適任なのだ。

 

達也君を八雲に紹介するついでではあるが、手を抜くつもりはないし、毛頭、負ける気もない。

 

そんなわけで。

 

 

「来ちゃった♡可愛い師匠のお家訪問ですよー」

 

これから一週間、対八雲のために特訓をしなくてはならず、そのための協力者(サンドバッグ)として、私は弟子の元を訪れた。

前回構ってあげられなかったし、そろそろその鈍りきった体を徹底的に鍛えてやろうと思っていたところだから丁度良いよね。

 

「し、師匠、名倉はどうしたんですか?」

 

「ああ、あの執事っぽい人?手練れだったなぁ。まあ、だからこそ読みやすいんだけど」

 

次はサプライズで突撃する、と決めていたから勿論玄関から堂々と入ったりはしていない。

前回、この屋敷に来たときに内部構造は覚えていたし、侵入経路も考えてあったから、そこから侵入して弘一君の部屋まで行こうとしたんだけど、途中で私を感知した人がいるのに『眼』で気がついたから待ち構えて戦った。

久しぶりの本気の戦いに高揚していたのか、相手が魔法を使う間もなく、潰してしまった。動きも優秀だったし、手練れだったのは間違いなかったのに、折角のお楽しみが勿体ない。

真桜となって魔法がまともに使えるようになって、色々と新しい魔法を開発していたから使いたくて仕方がなかったんだよね。我慢できずに使ってしまった。まあ、魔法が実践で役立ちそうというのが分かっただけでも良しとしよう。

これから弘一君(サンドバッグ)でいくらでも試せるし。

 

「学校はどうされたので?」

 

「家庭の事情でお休みということにしてきました。

これから土曜日まで、私と弘一君は楽しい楽しい戦闘訓練です♪」

 

「が、がが学生は勉強に励むのが一番かと」

 

只でさえ時間が少ないため、学校は休むことにした。

 

また皆に心配をかける(前回お見舞い七草姉妹二人のみ)ことになってしまうけど、私にとって学生は趣味のようなもの、留学の理由が教育だったから通っているし、学校は楽しいけれど、最優先ではないのだ。

七草の当主と特訓する、といえば響子さんにお休みの許可も出たので保護者納得済みな上、門限も解放。何故か響子さんは、七草家の方向を訊ねてきて、その方向に向かって黙祷を捧げていたけどなんでだろう。

 

まあ、そんなわけで学校を気にする必要はないのです、と弘一君に微笑めば、目をキョロキョロさせて、口をパクパクさせている。

 

「えっ、何?私と訓練するのが嫌なんですか?嫌なら嫌と言ってくれて良いんですよ?ほら、やっぱりそれぞれ予定がありますから。なんでしたっけ?どうしても外せない用事があるとかないとか言ってたじゃないですかー。いやー、断られて悲しかったなー。そうそう、私――悲しいときは手加減出来なかったりするんですよね」

 

私が至って笑顔で、それはもう優しく、穏やかに伝えれば、弘一君はついに観ね……自分に素直になったのか、涙さえ浮かべて。

 

「…………わー、師匠との訓練嬉しいな」

 

 

そう、言ったのである。

これがツンデレというやつか。可愛くはないな。

 

 

 

 

 

一週間、とは言ったものの、日曜日には深雪さんとの大事な大事な予定がある。

実質使えるのは6日間。

 

深夜に貸切にしてもらった訓練施設で朝から晩までじっくり特訓が出来るとはいえ、そう長い時間でもない。

それに、弘一君が忙しいというのは本当でやらなくてはならない仕事もあるので、6日間丸々付き合わせるわけにもいかない。

ぼくが仕事で抜けることを許可したら、本当に師匠ですか?と訳のわからないことを言ってきたので、殴っておいた。

 

私だって十師族の当主がどれだけ忙しいのかは知っている。そのくらいの配慮はするよ!弘一君が私のことをどう思っているのか、一度問いたださなくてはならないかもしれない。

 

「今の師匠に勝てる人類っていないのでは?」

 

訓練初日、鈍った勘を取り戻そうと魔法ありで組手をしていると、ボロボロになって這いつくばっていた弘一君が、なんとか体を起こして言う。その目が私ではなく、どこか遠くを見ていて、なんとなく馬鹿にされている気がしたので殴ってまた這いつくばらせた。愛の鞭はパワハラではないのです。

 

「相性と条件次第ではいくらでもいるでしょう。例えば超長距離から、私のいる半径1キロを吹き飛ばすとか」

 

「まともな方法では勝てないということじゃないですか」

 

「まともな方法しか考えられないから貴方は勝てないのですよ。いつも教えていたでしょう。想像力こそが魔法の才能だと」

 

常識や理論で凝り固まった魔法師は弱い。人体の構造上限界がある体術や剣術でさえ、魔法が組み合わさることで無限の選択肢を得るのだ。

 

可能性を想像し、読み解き、広げる。

 

それが強い魔法師のあり方なのだと、私は思う。

 

「さて、続けましょうか」

 

「あの、師匠。体が動きません」

 

「あ、大丈夫ですよ。動かなくても私は勝手に技を仕掛けますので」

 

「それは大丈夫じゃないですよ!?」

 

甘えたことを抜かす弘一君に微笑めば、即座に立ち上がって走り出す。ほら、やっぱりまだ動けるじゃないですか。

この6日間で全盛期くらいには戻してあげられるように日程を組んでるんですから、このくらいじゃ終われないよね!

 

「今寒気がしたんですけど、何かとんでもないことを考えていませんか!?」

 

「安心してください、訓練が終わる頃には貴方は私に泣いて感謝しますから」

 

「たぶんその涙は感謝ではなく、安堵かと!」

 

「良いでしょう、今から感謝するようになるまでボコボコにします」

 

「ありがとう師匠!最高だよ、師匠!!」

 

 

この気持ちいいまでの手のひら返しは相変わらず健在の様だ。

 

 

「とりあえず、今日の予定は倍くらいにしましょうか」

 

「え゛っ……!?」

 

 

うん、修行は楽しいね。




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