転生したら妹がブラコン拗らせて独身のアラフォーだった   作:カボチャ自動販売機

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ここらでタイトルを一部回収しておきます。


3話 知ってしまった魔王

一人称をぼくから私に改めた。

 

元々四葉逢魔としての記憶が戻る前は『私』の一人称で生きてきている。この体にはもう馴染んでいるし、何より、リーナに不審がられるわけにはいかない。

いくらポンコツのリーナでも、一人称が急に『ぼく』になったら気がつく。

それで不審に思うだけなら百歩譲って良いのだが、突然厨二に目覚めたとか思われたら死にたくなる。

個人的にぼくっ娘は正義なのだが、それは二次元だから可愛いのであって、この時代、リアルでは相当イタイ。

 

それに、もう私はリーナの姉として生きると決めたのだ。ぼくとしての四葉逢魔は消えないし、消そうとも思わないけど、今はマオ=クドウ=シールズを優先する。

 

 

そう、決めたはずだったんだけど……。

 

 

 

「妹がアラフォーで独身貴族かましてる件について」

 

 

記憶が蘇った私は、四葉家について調べていた。こんな家にあるPC程度では秘密主義の四葉家については大したことは調べられないが、それでも四葉真夜、四葉深夜という名前は有名だ。

多少の個人情報くらいは分かる。

 

四葉真夜 43歳 独身。

四葉深夜 43歳 独身。

 

 

泣いた。この文字の羅列に全ぼく(・・)が泣いている。

『極東の魔王』『忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)』とか持て囃されてるみたいだけど、双子揃って独身じゃないですか!

贔屓目は多分にあるが、二人は世界一可愛かった。天使だよ、天使。

そんな二人が独身!?えっ、日本から男って消えたの?

 

このままじゃ四葉家断絶だよ?無くなるよ?

 

 

「お姉ちゃん、遊ぼー」

 

 

天真爛漫な笑顔で駆け寄ってきたマイシスター。今日も可愛いね、リボンが両サイドで違うのはおしゃれかな?まあ、ただのポンコツだろうけど、そこが可愛いので許しちゃう。

 

 

「リーナ、リーナは40歳まで独身貴族なんてことしないで、私に花嫁衣装を見せてね」

 

 

血の涙を流しながら祝福するよ。

勿論、リーナと結婚したいというなら私を倒してからだけどね。四葉逢魔よりも強くて、経済力があり、私よりも、リーナを愛し、包容力がなくては駄目だ。そんな力もないのに、リーナを狙おうなんて野郎がいたら、ぶっ飛ばしてその辺に晒すね。

 

 

「結婚ってこと?」

 

「そうだよ、素敵な人を見つけるんだよ」

 

「結婚したらお姉ちゃんついてくる?」

 

 

いや、私はハッピーセットのオマケか!ついてこないよ!そんなキラキラした目で見られてもついてこないよ!あ、上目遣い――お姉ちゃん、どこにでも、いつまででもついていくよ!

 

 

「えへへ、お姉ちゃんが一緒ならいいよー」

 

 

はい、可愛い。頭撫でちゃう。もうね、なんかね、一人占めしたいよね、この可愛さ。

 

そうだ、私はマオ=クドウ=シールズ、リーナのお姉ちゃんだ。

それに結婚だけが幸せではない。ぼく(・・)だって二人が苦労しないくらいのお金は遺していたし、実際、今も四葉家の財力は健在。

あんなに仲の良かった二人だ、案外二人で楽しくやっているのかもしれない。

四葉なんて断絶した方が世界のためって感じもするし、二人が幸せならぼく(・・)はそれでいいさ。

 

 

そう思うと、気が楽になった。

 

 

「お姉ちゃん大好きー」

 

 

リーナの花嫁姿を見届けた後、二人の様子を見に行く。それを第二の人生の楽しみにしよう。

 

 

そんな風に甘いことを考えていた私に突きつけられたのはただの残酷な事実だった。

 

 

 

 

 

深夜が療養生活中らしい。それも、もう何度も入退院を繰り返しているらしく、とても心配だ。

体が特別弱かったわけではない。何らかの病気か――魔法の過剰な行使か。

 

深夜の系統外魔法『精神構造干渉』は魔法の理を覆せる程の禁忌を秘めた魔法だ。

ぼく(・・)は当時、深夜に訓練以外での、この魔法の使用を禁止していた。

この『精神構造干渉』は人の精神の構造を認識して、改変する魔法なのだが、この『人の精神の構造を認識』というところが深夜に多大な負担を与える。使い方次第では寿命を削る程のリスクがあるのだ。

人の精神なんて、曖昧で、莫大な情報の詰め込まれたブラックボックスの構造を認識するのだから当然だろう。況してや、それを改変しようというのだからノーリスクな訳がない。

 

医療技術の発展した現代で、こうまで入退院を繰り返す様な病はそうそうない。最も考えられるのは、やはり魔法の過剰な行使。

 

 

それは、ぼく(・・)ならば治すことができる。

ぼく(・・)は深夜の魔法にこういうリスクがあることを想定していた。ならば当然、最悪の事態、つまりこうして深夜の体調に悪影響を及ぼした場合の魔法を開発している。

当時は理論でしかなかったが、今の、マオ=クドウ=シールズの魔法力と適正ならば、可能なはずだ。

 

噂レベルの情報であり、具体的な症状、体調は分からないが、もし深夜が20歳より前に体調を崩していたとするならば、持って後数年。

 

このまま何もしなければ、深夜はそう遠くない未来に死ぬ。

 

 

深夜が幸せだったのならば、それでも良い。

ぼく(・・)だって20歳で死んだが、満足していた。幸せかどうかは、生きた年数ではない。43歳で死んだとしても、それを運命であると受け入れ、幸せだったと思えるのならば、ぼく(・・)はむしろそれは喜ばしいことだと思う。

 

でも、もし何か悔いが、後悔が、やり残したことがあって、死にたくないと、死が怖いと思っているのならば、助けてやりたい。

 

深夜は強がりだから、きっと誰にも不安とか悲しみとか打ち明けないと思う。

今も、一人不安を抱えて、苦しんでいるかもしれないと思うと、ぼく(・・)はもう止まれなかった。

 

つい数日前に、マオ=クドウ=シールズでいる、と決めたはずなのに、もうそれを覆そうとしている。

今だって、私よりぼくとしての思考が殆どを占めてしまっているくらいだ。

 

もし、私が深夜の治療のため日本へ行った場合、一年は帰ってこれないかもしれない。

四葉逢魔が開発した治癒魔法はリスクを極限まで下げ、確実性を高めたために、治癒が定着するまでに時間が掛かる。

 

魔法による治療とは一時的なものであり、効果が持続する内に何度もかけ直す必要がある。

魔法が効果を表すのに時間は掛からず、魔法が効果を発揮した瞬間に、魔法を掛けられた者は治癒魔法の効果が続く限り万全な状態での行動が可能になるが、それは一時的なもの。

 

魔法の効果とは本来、全て一時的なものなのだ。

 

魔法とは世界を騙す技。魔法師とは詐欺師だ。

 

物質や現象が持っている性質、エイドスを偽の情報で上書きするのが魔法。

そして、魔法には、人が詐欺師に騙されても何れ騙されていたと気がつくように、エイドスには復元力があり、時間経過によって魔法の効果は無くなる。

 

ただ、無くなるのはあくまで魔法の効果。

魔法で起こった物理現象もエイドスとして記録され、魔法により改変される前のエイドスと、魔法の発動によって新たに記録されたエイドスのどちらが安定的かによってどういう風に復元されるかが変わる。

 

治癒魔法とは、継続してエイドスを改変し続け、改変後のエイドスを本来のエイドスであると誤認させることによって、治癒の効果を押し付けるのだ。

 

分かりやすく例えよう。

例えば骨折をしてしまったとして、それを治癒魔法によって『骨が繋がっている状態』にする。しかし、骨は本来折れているわけだから、復元によって、魔法の効果が切れれば『骨が折れた状態』に戻ってしまう。そこで、治癒魔法を切れ目無く繰り返し、『骨が繋がっている状態』を継続することによって『骨が繋がっている』という情報の安定性が、『骨が折れている』という情報の安定性を上回るポイントが訪れる。

これが『骨が繋がっている』という状態が定着したということになる。治療完了だ。

 

このプロセスがぼく(・・)の開発した魔法では時間が掛かるのだ。つまり、継続してエイドスを改変し続けるというのが長期間必要になる。

肉体的損傷ではなく、魔法的損傷はまだまだブラックボックスの領域。それを治療しようというのだから、経過を見ながら徐々に改変を強くし、慎重にやりたいからだ。

 

一年。

私は治療完了までの時間をそう考えているが、それは希望的観測ともいえる。

深夜の症状が私の考えている以上に酷いかもしれないし、魔法も上手くいくとは限らない。

 

でも、このまま何もせずにいるなんて、出来なかった。今すぐ深夜の元に駆け寄って、大丈夫、ぼくが治すよって抱き締めたい。

 

だから今だけは、四葉逢魔を優先させて欲しい。

 

ぼくは決意を固め、リーナの部屋を訪れた。基本的に私の部屋で過ごすことが多いリーナだから、こうして部屋を訪れるというのは久しぶりかもしれない。

 

 

「リーナ、ちょっと良い?」

 

「何ー?」

 

 

部屋のドアを全開にして、最強に可愛いリーナが迎えてくれた。

部屋には乱雑に教科書やら本が散らばっており、どうやら本棚の整理をしていたらしい。たぶん、きちんと出来ないだろうから、後で私がこっそり直しておこう。

 

 

「実は大事な話があって」

 

 

私は一年程日本に行こうと思っていると話した。理由は勿論本当のことを言わずに、魔法師としての成長のためということにした。

リーナの魔法師としての才能は類い稀なものだ。大袈裟ではなく世界で見てもこれ程の才能の持ち主とはもう出会えないのでは?と思えるほどだ。

私は、魔法演算領域の一部を待機状態の転生魔法に占拠されていたために、リーナとの魔法力は大きく開いていた。

だからそれを理由にさせてもらった。

リーナに追い付くため、日本へ行くと。

 

話を聞いたリーナは笑顔で言った。

 

 

「いつからいくの?私も準備しなくっちゃ!」

 

 

リーナ、完全についてくる気である。

私が一人で行こうとしているなんて微塵も考えていない。

 

 

うん、こいつは難しいミッションになりそうだ。




主人公は四葉の公式の記録しか分からないので、深夜が独身だと思っていますが、そこは原作通りに結婚しております。

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