転生したら妹がブラコン拗らせて独身のアラフォーだった   作:カボチャ自動販売機

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光宣がみのるで変換できない……。


5話 友達が出来る魔王

「九島光宣です」

 

私が九島家に着いた時には10時過ぎだったろう。長らく話していたらしく、九島家での昼食の時間となっていた。伯父さんの提案で息子さんの紹介は、食事をしながらということになったのである。

一度、私が暫く使わせてもらうことになる客室へと案内され、荷物を置いて向かったのはカジュアルな食堂だった。

九島邸には食堂が複数あるらしいのだが、ここは子供用、つまり、若者向けの部屋で、親たちに連れてこられた未成年同士が親睦を深めるための食堂だ。名門、九島となると閉鎖的な四葉とは違い、頻繁に多くの親族が出入りする。こういう場も使用頻度は高いのだろう。

 

伯父さんの末の息子、九島光宣は人間離れした美貌の持ち主だった。美貌、といっても女性的なものではない。優しく繊細な顔立ち、とでも言うべきか。

世界共通として通じそうな典型的な美少年であった。

 

 

「私がいては話も弾まないだろう。光宣、私は外すから後は頼んだよ。真桜さん、何かあれば遠慮せずにね」

 

 

この時点で、私は伯父さんの思惑を悟った。何故こうまで私に良くしてくれるのか。

その答えは、この困り顔でこちらを見ている九島光宣にある。

 

 

「困りましたね……僕、友達とかいなくて、何を話したら良いか」

 

 

これだけの美少年に友達がいないのは不自然だ。自身がリーナという極上の美少女の近くにいたから分かるが、卓越した美貌はそれだけで人を集める。

彼に友達がいないというのなら、それは人と接する機会が少ない、ということに他ならない。

 

 

「まずは自己紹介からですね。私はマオ=クドウ=シールズ、日本では深瀬真桜と名乗ることになりましたので、真桜とお呼びください」

 

 

伯父さん、九島真言の思惑に乗るようで癪ではあるが、それはこの少年には関係のないこと。このまま困った顔で居心地悪い思いをさせることもないだろう。

 

 

「では僕も光宣と呼んでください。えっと、どうしよう……」

 

 

なんとか話を続けようとするも、何を話したら良いのか分からないのだろう。11歳の少年にしてはとてもしっかりしているがそれは教育の上に成り立っているもので、経験の上に存在しているわけではない。

友達もいないという彼に、いきなり異性のほぼ同級生、それも外国人と二人きりなんて、伯父さんはどうも子供の気持ちを汲み取れていない。

いや、汲み取るつもりがないのか。

 

何せ、彼は既に光宣君の次(・・・・・)を考えている。

つまりは光宣君の子供、伯父さんの孫だ。

 

どうやら私は光宣君の嫁候補ということで、こうまで厚待遇で日本に迎え入れられたらしい。

そりゃ、両親も笑顔で送り出すわ。なんせ、もし私が光宣君と結婚でもすれば、USNAでは不遇の扱いを受けているシールズ家も、日本で九島家の庇護下に入れる。お祖父ちゃんはともかく、権力と金が大好きな両親ならば簡単にUSNAを捨て、日本へやってくるだろう。

 

何故私が嫁候補として選ばれたのか、それは簡単だ。優秀で確かな遺伝子だから、これに尽きる。

私の魔法師としての成績はともかく、遺伝子上は優秀だ。実際、双子であるリーナは類い稀な結果を残している。

九島烈に拘る九島真言ならば、九島烈の弟であるお祖父ちゃんの遺伝子を受け継いでいるため、遺伝子上は類い稀な程に優秀、と判断するだろう。

 

留学の話を受けたとき、九島真言はそんなことを考え、私を嫁候補にしたのではないだろうか。

九島の人間である私ならば、他家の介入を許すことなく次の世代を生み出せる。

突如湧いてきた優良物件だったのだろう。

 

だから私達を二人きりにしたし、そうすれば少なからずお互いに好感を持つだろう、と考えた。

何せ光宣君のこの美貌だ。普通の女の子なら簡単に靡くだろう。そうしてから婚約の話をすれば、喜んで飛び付く……と思われているんだろうな、と想像はついた。

 

この一週間はそういう時間なのだろう。

入学まで一週間あるのは手続きやらのためだと思っていたのだが、私と光宣君が親睦を深める時間だった、というわけだ。態々学校を関西ではなく関東にしたのも、婚約しなくては光宣と離れ離れになる、という心理を生み出すためとも考えられる。

 

残念ながら私は普通の女の子ではないので断るが。

勿論、親睦は深めるし、仲良くもするけど。それに、留学が終わるまでは、それなりに気があるようなふりをしないと。

この厚待遇は続けて欲しいからね。

 

 

「緊張しますか?」

 

「ごめんなさい、上手く話せなくて」

 

「ああ、いえ、違いますよ。別に不満に思っているわけではなく、もっとゆっくりしましょう、ということです」

 

 

光宣君は運ばれてきた料理にも一切手をつけずに、話題を考えている様だった。そんなに考えなくても適当で良いと思うのだが、それはコミュニケーションになれた人間の対応。彼のように、家族以外の人間と接する機会が極端に少なかったような子供には難しい。

だからこそ、ゆっくり。

 

 

「すぐに話そうとしなくても、何か思いついたらで良いんですよ。ほら、例えばこのムニエルが美味しいとか」

 

 

趣味などを聞くのもいいが、趣味は話が広がらずそのまま終わってしまうことも多い。特に異性の場合、共通の話題に発展することが難しく、コミュニケーションの不得意な人間にはおすすめできない。

その点、今食べている食事は共通のもの、初めから共通の話題が提供されているのだ。これを使えば、話を広げやすいだろう。

 

それを、光宣君に話すと、彼は目をキラキラとさせていた。

11歳の男の子だ。友達が欲しいと思うのは当たり前のこと。どんな事情があるのは知らないが、同年代の人間と接する機会が少ないのなら、その少ない機会の中で友人を作れば良いのだ。

 

 

「真桜さんの話を聞いたら、友達もできそうな気がしてきました」

 

 

笑顔で言う光宣君であるが、ここは少しだけ意地悪をしてみようか。

 

 

「寂しいですね、私は友達ではないのですか?」

 

 

わざとらしい泣き真似なんてしながら目を伏せてそう言うと、光宣君は大慌てで身を乗り出した。

 

 

「そんなことは!と、友達と思っても良いんですか!?」

 

「勿論です。じゃあ、私が光宣君の友達、第一号ですね。まあ、再従兄弟ですから、友達というのは苦しいかもしれませんが」

 

 

正確には親族としてカウントされるべきなのだろうが、私と光宣君は今日が初対面であるし、今までお互いの存在すら知らなかったのだ。友達、と言っていいことにしよう。

 

友達、というのが余程嬉しかったのか、単に緊張が解れたのか、それからの光宣君は饒舌だった。

 

これが本来の彼なのだろう。彼は自分のことを良く話した。人と接する機会も少なく、父親もまともな愛を向けてはない。自分を認めて欲しい、という承認欲求が強いタイプだ。能力が高いのに評価されない、そのことにコンプレックスを持っている。

そういう人間はただ褒めるのではなく、こちらから相手のことを聞いていくのが良いだろう。自分の話に興味を持ってもらえることは一種の承認となるのだから。

 

 

「僕は体が弱くて、病気になりやすいんです」

 

 

一年の1/4をベッドの上で過ごしているという光宣君は虚弱というわけではなく、病気になりがちな体質らしく、それ故にまともに学校へも行けずにいる様だった。彼が人と接する機会が少なそうだったのはそういうわけだったのである。今は元気にしているが、これも珍しいことのようだ。

 

 

「原因は分からないのですか?」

 

「はい、医学的には健康体らしくて……何の異常もないはずなんですが」

 

 

私は光宣君の病弱の原因を探るべく、彼を見る(・・)ことにした。

ある力を使って。

 

 

転生の魔法を使ったのは四葉逢魔であって、真桜ではない。

だから私は転生の魔法を持っていないし、魔法演算領域を占拠されたりもしていない。

しかし、四葉逢魔の記憶が戻るまでの間は、魔法演算領域の一部を待機状態の転生魔法に占拠されていた。これによって、私は魔法力を制限され、双子であるリーナに魔法力で大きく突き放されていたわけだが、この待機状態の魔法をストレージしておく過程で私はある能力を得ていた。

 

それは転生魔法の副産物。

転生のプロセスに必要であったために生み出された残滓。

 

つまり、イデアにアクセスし、存在を認識することができる能力である。

 

転生魔法は四葉逢魔のエイドスを丸々全て読み取りイデアに保存し、それを別の人間のエイドスに上書きする。その性質上、転生魔法の発動にはイデアにアクセスしその情報を読み取ることが必要不可欠。

 

結果として、転生魔法を失っても私にはイデアにアクセスし、存在を認識することができる能力、が残ったというわけだ。

 

現代魔法はイデアを経由してエイドスに魔法式を投射するものだから、現代魔法師は皆イデアにアクセスする能力を持っているのだが、イデアを意図的に認識することはできない。故にこの能力は感覚の拡張ということになる。超高性能、超広範囲の感覚器官を手に入れたということだ。これは使い方次第で本当に色々なことができてしまう。

 

例えば分析。

相手の想子体へアクセスすることで、その相手の構造情報、因果を読み取る。

私は未だ不明だという彼の病弱な体質の原因が分かれば、と考えその分析を行ったわけだけど……彼という存在の異端さ、九島真言の闇に触れてしまった。

 

光宣君の病弱体質の原因は魔法力が高過ぎること。その高過ぎる魔法力に想子体が耐えられず破損し修復されるというのが短いサイクルで繰り返し行われているのだ。それによって病弱となってしまっているのだろう。

 

それで終われば良かったのだが、解析した因果によって、私は根本的な原因が彼の出生にあることをも知ってしまった。

 

光宣君は確かに伯父さんの息子だ。しかし彼の母親は違う。戸籍上の母親は遺伝子上の母親ではない。彼の本当の母親は、伯父さんの実の妹だったのだ。

 

九島真言は狂ってる。

父である九島烈への劣等感が執着となって狂気が住み着き、自身の精子と実の妹の卵子を人工受精させ、人工子宮を用いて、調整体魔法師として九島光宣を作り出した。

そうした遺伝子的近親相姦による影響なのか、遺伝子操作により生み出された調整魔法師としての不具合なのか、それは分からないが、出生の複雑さが、今の彼の体質の原因となっていることは間違いないだろう。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、なんでも」

 

急に黙り込んでしまった私に、光宣君が心配そうに訊ねる。なんとか平静を保つことができたが、分析は早計だった。知らなくて良かった闇を知ってしまった。

 

ぼくが早計にも分析をしてしまったせいで勝手に気落ちしていると、伯父さんが部屋へと戻ってきた。丁度食事が終わった頃に戻ってきたということは、配膳係のメイドが私達の食事が終わったことを伝えていたのだろう。なら、私達が食事中におしゃべりをしていたことも知っているはず。

だからか、伯父さんは満足げな笑みを浮かべていた。彼の中では既に、私は光宣君に好意を抱いていることになっていそうだ。

 

「光宣、真桜さん、少し食休みをしたら訓練場にいかないか?お互いに魔法力もみてみたいだろう」

 

どうやら伯父さんは、ここで光宣君にカッコいいところを見せつけさせようとしているらしい。

先程の解析からも光宣君の魔法力には期待できる。私もこの提案に乗ることにした。

 

 

「でしたら模擬戦をお願いしたいのですが。私の魔法力が日本でも通じるのか、試してみたかったのです」

 

「真桜さんと?」

 

 

光宣君は最初あまり乗り気ではなかったが、伯父さんは違ったようだ。

 

 

「良いじゃないか、光宣は同年代の魔法師と訓練したことがないからな、良い経験になると思うよ」

 

 

光宣君はそうして伯父さんに説得され、何とか首を縦に振った。しかし、私としては不本意な状態の光宣君ではなく、全力で戦って欲しい。

 

 

「光宣君、本気でこないと私、勝っちゃいますよ?」

 

 

そう挑発してやれば、光宣君はにこりと天上の笑みを見せた。どうやらやる気になったらしい。彼は負けず嫌いの様だったから、こうして挑発すれば乗ってくると思っていた。

 

 

さて、九島の末子の力、見せてもらいましょうか。




主人公の能力は達也のエレメンタル・サイトと同質の力です。ただ同性能というわけではありません。
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