Twitter上で開かれている「#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負」用に一時間で書き上げた小説です。
 「○○に降る雪」「水たまり」を扱っています。

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踏み出せない雪景色

結子の住む町に雪が降る。白い綿菓子のような見た目の雪は、空から激しく降っていて、外を霧のように覆いしている。

 

 結子はタブレット越しに真っ白な外の景色を眺めながら溜め息をついていた。。

 

 

 

 「はぁ、なんで……なんで今日なのよ……?」

 

 

 

 タブレット内のスケジュールメモに、結子は何度目かの確認をした。今日の日付には「晶とのお出かけ」とだけ書かれている。

 

 ひょんなことから付き合い始めた晶との、今日は最初のデートだったのだ。

 

 

 

 「こんな天気じゃ、外には出られないか……」

 

 

 

 結子はベッドにバタンと倒れた。天井をボウーッと見上げ、続いて窓の方に目を向けた。外は変わらず真っ白だ。

 

 まるで自分を表す景色だなと彼女は思った。真っ白にして見えなくして、どこにも行かせてくれない景色。

 

 

 

 人が苦手な結子にとって、人込み溢れる町は自分を楽に歩かせてくれない場所であった。

 

 歩けば人にすれ違う。学校も、商店街も、この町の外の更なる都会も……

 

 どこでも結子は、そんな世界で息苦しさを感じ、中々人と打ち解けられないでいた。

 

 

 

 人の心は、溶けない氷の奥深く。結子はそう思うようになっていた。

 

 

 

 キーボードを打つ手が止まる。晶へのメールをどう書こうか悩む。

 

 『ごめんなさい、今日はこんな天気ですし』

 

 このあと、どう書こうか悩む。中止だけでなく、またいつか遊びに行きましょうと書くべきか。そしたら何時とか、どんな感じに決めていこうか。

 

 だけど、晶は実家の手伝いで忙しいと聞く。今日だって忙しい日々の合間を縫って了承してくれたんだ。次に誘うときは、また段取りを立ててから彼を誘いに……

 

 

 

 自分の胸に手をあて、結子は深呼吸する。

 

 初めてだ。人にこんなに胸が熱くなるのは初めてだ。心臓は鼓動を高め、胸は大きく揺れ動く。

 

 

 

 氷のように冷たい雰囲気を放ってたであろう私に、どもりながらも正面から私に告白してくれたこと。

 

 好意を持ってるのはずっと前から分かってたけど、正面からくると私も慌ててしまう。

 

 

 

 そんな付き合い始めだったから、彼も私もどうしていいか分からず、いつもぎこちなく接している。

 

 今日のお出かけだって、彼が何とか頑張って私に誘いの言葉をかけてくれたからだ。

 

 今日行けなかったら、この付き合いが進むことは遅くなるだろう。

 

 それは嫌だ。彼が普段どんなことして出掛けてるか、どんなことをしてるか知りたい……

 

 

 

 『話したいです』

 

 

 

 メールの語尾に書いてしまった文章に、結子は顔を手で隠して悶える。

 

 恥ずかしさと照れから来る悶え様、彼女はいつの間にかメールを送信してしまった。

 

 

 

 「~~~~~~~っ!?」

 

 

 

 ベッドから跳ね起きてタブレットの画面を見ると、早速返信が来ていた。

 

 

 

 『こんな天気だし、しょうがないよね(笑)また別の日にする?予定空けとくよ』

 

 

 

 結子は頷いた。彼とは出かけたい。

 

 そして結子は自覚した。今日彼に会いたいのだと。今日は彼と話したいのだと。

 

 

 

 『うん。またいつでも大丈夫だから、晶君の行きやすい日にどこか行こうね』

 

 

 

 結子は今度は無難ない文のメールを晶に送れた。

 

 一息つくと、返信が届いた。

 

 

 

 『今日は遊べなさそうだけど、雪は綺麗だね』

 

 

 

 『うん、綺麗だと思う。だけど外が真っ白で見えないね』

 

 

 

 少しネガティブな返信に、結子はやってしまったという気持ちに沈んだ。

 

 

 

 『見えないよね(笑)だけど、外は真っ白で見えないけど、誰かとこういう景色を一緒に見れるのっていいな』

 

 

 

 晶も一緒に雪を眺めている。そう思うと、晶と一緒にいる気がして、心が弾んでくる。

 

 

 

 『うん、そう思えるのって、すごく嬉しい』

 

 

 

 中々人と打ち解けられない私だけど、今は同じ景色を眺めてる彼と、心が通じ合ってる気がした。

 

 外は相変わらず真っ白だけど、この日は彼とメールのやり取りが出来た。それだけで結子は、外の雪景色に満足できた。

 

 

 

 『それでさ、次の予定なんだけど……明日いきなりだけど、大丈夫かな?』

 

 

 

 彼のことをもっと近くで知りたい。私は『うん』と返信を送った。

 

 

 

 翌日雪は止み、道路には雪が溶けた水溜まりに陽の光がキラキラと反射していた。

 

 結子と晶は隣り合って歩いている。いつもはぎこちない二人であったが、今日は氷が溶けたように、二人とも屈託ない笑顔で会話が弾んでいた。


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