とある少年の波紋疾走   作:イヌガミケ

12 / 16
第12話「交差」

ある日、ジョジョが街を歩いていると正面からものすごい勢いで走ってくる人影が見えた。そしてそれが上条だとすぐに分かった。

 

「おーい上条。どうしたんだ、そんなに慌てて?」

 

「ああ、武城か……。わたくしはとある不幸から逃げてきたのですよ。おーっと何があったかは聞かないでくれ! 頼むから!」

 

「お、おう……分かった」

 

「はあ……いつものことだげどな……ハァ……」

 

不幸がうつるんじゃないかと思うくらいの重たいため息を吐いた。

 

「そ、それならさ、上条。これから気分転換にどっかに遊びに行かないか?」

 

「いや。気持ちはありがたいんだけど上条さんは遊びに使えるお金を持ち合わせていないので遠慮させてもらいますよ」

 

 そう言って上条は不幸オーラを出しながら去って行った。

 

 

 

 

 

(そういえば色々あって街の中を散策することってあんまりなかったな)

 

 上条を遊びに誘った時にジョジョは今まで修業やら何やらで寮、学校、河原、スーパーなど必要最低限の場所にしか行ったことがないことに気付いた。折角だからと思い、彼は物語で見たことがある建物などを見てまわることにした。聖地巡礼(本物)である。

 

 まずは近くの警備員の詰所へ行き第七学区の地図を入手した。そこで第七学区は学園都市のほぼ中央に位置してまた隣接する学区が最も多い学区でもあることが分かった。そして地図に書かれている施設の説明から中高生が中心の学区であることも分かった。地図を頼りにまずは一番近いセブンスミストへ向かった。

 

 

 

 

 

 セブンスミスト、よくある服のチェーン店だ。中高生がターゲットのためか手頃な値段の服が多い。奨学金があまりもらえない学生にとってはありがたいことである。

 

(いずれお世話になりそうだな。……そういえばここって近いうちに爆発するんだよな。そんなところで買い物をする気になれないな……)

 

 そう考え、店の場所だけを確認して次の目的地に向かった。

 

 

 

 

 

 学舎の園(まなびやのその)。第七学区の南西部に位置し、常盤台中学を含む5つの有名な学校が共同で管理している土地だ。その大きさは2キロメートル四方で一つの「街」といってもいいほどの広さである。周囲を高い柵で囲まれており内部には二千台以上ものカメラが設置されているなど徹底したセキュリティーがしかれている。

また内部は外と違いヨーロッパ風のデザインとなっていること、ここにしか出していない店もあることなどもプレミア感を高めている要因となっている。

 

 そして内部の学生への配慮なのか警備員を含む男性は一切入れないことになっている。それ故に実際に内部を見たことがある男性はおそらく皆無であろう。

 

(俺は見たことがある部類に入るのかな?)

 

 そんなことを考えながら学舎の園の柵を見ていたら内部の学生と思われる少女たちがゲートから出てきた。

 

「ねえ、折角午前中に授業が終わったことだしみんなでご飯に行かない?」

 

 女学生の言葉で携帯を見ると既に13時を回っていた。

 

(もうこんな時間か)

 

 探索をいったん止め昼食を食べる場所を探し始めた。探し始めて5分も経たずにファミレスを見つけた。外観は家族連れや学生向けの普通のファミレスで看板には見たことがあるフォントで「Joseph’s」と書かれていた。

 

(Joseph’sって元ネタ完全にアイツだよな。そういえば「ジョナサン・ジョースター」の由来は打ち合わせをしたファミレスからというのはガセって聞いたことがあるけど実際はどうなんだろ?)

 

 そんなことを考えていたがとりあえず店に入っていった。店内はいたって普通のファミレスだった。席につき期間限定で夏バテに効くという「ゴーヤのスタミナパスタ」注文し、約10分後にはジョジョのテーブルの上に置かれていた。食べ始めたからしばらく経つと突然どこからか非常ベルの鳴る音がした。何事かと思い周りを見渡したが特に騒ぎにもなっていなかったのでそのままパスタを食べ続けた。

 

「いいのか、トイレを借りるだけで?」

 

「いいからいいから!」

 

 2人の女性が慌てて店を出て行ったが彼がそれに気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 食べ終わり次の目的地である常盤台の女子寮に向かった。

 

 常盤台中学には学舎の園の中と外に一つずつ寮がある。内部の方は当然入れないので見に行くのは御坂と白井が住んでいる外部の方だ。ちなみに例の寮監もこっちのほうにいる。こちらも学舎の園ほどではないが警備は厳しく寮生の許可がないと入れない。特に用もなく来たのはただ単に「見たかったから」である。学舎の園も同じ理由である。

 

 一通り見終わって帰ろうとしたらガタイのいい数人の男が常盤台の制服の子を取り囲んでいるのが見えた。

 

「あ、あのわたくしこれから友人と用事が」

 

「いいじゃねぇか、そんなの。俺たちと遊んだ方が絶対ェ楽しいって」

 

「なんなら俺たちが断っといてやろうか?」

 

「よう遅かったじゃん」

 

「!」

 

 少女を強引に口説いている3人の男の中にジョジョが割って入ってきた。突然の乱入で男たちは一瞬驚いたが割り込んできたジョジョの方がもっと驚いていた。遠くから見た時は男の陰に隠れていて顔がよく見えていなかったが、ジョジョが助けようとした常盤台の子は彼のよく知っている子だった。少しウェーブのかかった栗色の髪におっとりとした顔立ち。彼女の名前は湾内絹保。「とある科学の超電磁砲」の登場人物の一人である。

 

 新たに出てきたキャラクターにジョジョは非常に興奮していた。それは上条やツェペリに合った時以上のものだったがすぐに我に返った。

 

(イカンイカン……。落ち着け俺。ここで取り乱したら『友人のフリをして知的に脱出作戦』がパーになっちまう)

 

「いやあ。時間になっても来ないから心配で探しちゃったよ」

 

 そう言い彼女の手をとる。そして男たちに見えないように「うまく話を合わせて」と必死にアイコンタクトを送る。

 

 彼女も意図が分かったのか、

 

「は、はいご心配をおかけしました」

 

 とうまく合わせてくれた。

 

 彼女の手を取り立ち去ろうとしたら一人の男に胸ぐらを掴まれた。

 

「おいニイちゃん。何勝手に横取りしようとしてんだぁ?」

 

「あんまりナメたことすると痛い目に遭うぜ」

 

「いやいや、こっちは元々遊ぶ約束をしていたから――」

 

「だったら俺たちと遊ぶ約束にしないとな」

 

 男の一人が指をポキポキと鳴らし始めた。

 

(もう穏やかに終わないかな……)

 

「そ、それじゃあ……あっちの方に行きませんか? ここだと人目につきそうですし……」

 

 

 

 

 

「やれやれだぜ」

 

 ジョジョは湾内と共に女子寮の近くの空き地に連れて行かれた。ここは建物が陰になって表通りからは見えないところにある。男たちはジョジョを痛めつけるためにここに連れてきたはずだったが見事に返り討ちにされてしまったのだ。

 

「ケガはない?」

 

「は、はい。ありがとうございました……」

 

「じゃ。俺はこれで失礼するよ」

 

 そう言って立ち去ろうとする。

 

「あ、あの!」

 

「?」

 

「お、お、お名前を聞いてもよろしいですか?」

 

「武城譲治。普通の高校生さ」

 

 ジョジョは振り返ることなく再び歩き始めた。湾内はその姿を見えなくなるまで見つめていた。

 

「武城さん……か…」

 

 

 

 

 

 

 曲がり角を曲がり彼女から見えなくなった途端、ジョジョは猛スピードで走り出した。そして空き地から離れたところで近くの路地裏に入り込んだ。

 

(ヤバいヤバいヤバい、思いっきり格好つけちまった……。何だよ「普通の高校生さ」って。現実でやったらドン引きだぞ。いやここは2次元だからセーフか? いやここにいる人にとっては3次元になるのか)

 

 なぜここまで悶絶しているのか。それはジョジョが彼女のファンだったからである。彼は御坂ではなく湾内が推しキャラなのである。おっとりとした顔立ちとおしとやかな性格、そしてまだ先の話だが友人のために戦うというやさしさに惚れていたのだ。

 

 

 

 

 

(結局夜になっちまった……)

 

 2次元と3次元の壁について考えていたら日課のトレーニングの時間になっていた。ジョジョはいつものように河原を走っていた。すると土手の下の方から光と砂埃が見えた。何事かと思い土手を降りると倒れている上条とその近くで立っている御坂がいた。

 

(あれは御坂と上条。ということは今決闘しているのか)

 

 この状況を見ると御坂が上条を倒したように見えるかもしれないが、彼がただ単に面倒くさくなってやられたフリをしていただけなのである。ジョジョはそのことを知っていたがあの白々しい演技をされたら誰でも気付くだろう。もちろん御坂も例外ではない。

 

「ふッ……フザケんじゃないわよ!!」

 

 倒れている上条に電撃を飛ばす。上条は慌てて起き上がり距離をとる。

 

「だってお前ビビってたじゃん」

 

「う、うっさい! ビビってなんかないわよ!」

 

 今度は電撃の槍を作り上条の方へ投げた……はずだったが槍はジョジョの方へ向かった。

 

「えっ、ちょ……!」

 

「ジョジョ! どうして!?」

 

「しまっ――」

 

 飛んでくる槍に対してジョジョは両手を前に出した。すると槍はジョジョに当たることなく右へ逸れ土手にぶつかり砂埃が上がった。

 

 2人――特に御坂はその様子を見て驚いていた。

 

「ア、アンタなにしたのよ!」

 

「な、なにと言われても……」

 

 槍がジョジョに向かって飛んできたとき、彼はまず波紋のエネルギーで体内の生体電気の電圧を高めた。そして両手に弾く負の波紋を込めたのだ。そうすることで感電することなく槍を弾いたのだッ! 名付けて『生体電気の波紋疾走(せいたいでんきのオーバードライブ)』ッ!

 

「まさかあんたもそいつと同じ……」

 

「おいおいだったらこんな手はしてないぜ」

 

 そう言って御坂に手を見せる。暗くて見づらかったが彼の両手は少し焦げていた。いくら電圧を上げて防いだとしても常盤台の超電磁砲(レールガン)の電撃を無傷で済ますことは無理のようだ。

 

「上条みたいに完全に打ち消すことは……」

 

 そう言って上条のいる方を見たがさっきまでいたはずの彼がいなくなっていた。辺りを見渡すと彼は河原の土手を上っていた。

 

「とりあえずお前も無事そうだから俺は帰るぜ」

 

 そう言って走り去って行った。取り残された2人に気まずい空気が流れる。

 

「と、とりあえず……」

 

 ジョジョは後ろを振り向き、

 

「逃げる!」

 

 走り出し土手を駆け上がっていった。

 

「なっ、ま、待ちなさい!」

 

 慌てて御坂も追いかける。ジョジョは上条と同じ方向に逃げ、あっという間に彼に追いついた。

 

「なんでこっちに来るんだ」

 

「いや、俺も帰る方向一緒だし。それに元はといえばお前の勝負だっただろ」

 

「待ちなさい! 2人とも!」

 

 男2人が話しているうちに御坂も追いついてきた。

 

「……ん? ちょっと待て。俺は関係ないだろ!」

 

「うるさい! 電撃が効かなかったアンタもそいつと同じよ!」

 

 無傷じゃないにしてもそこそこ力を込めた電撃を受け流されたことは少々プライドに響いたのだろう。

 

「「不幸だー!」」

 

 夜に2人の悲鳴がこだました。

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 




「生体電気の波紋疾走(せいたいでんきのオーバードライブ)」
人間の体には磁気と同様に微弱な電流が流れている。その電気を波紋の力で強化することで電撃を防ぐだけでなく神経を活性化させ感覚や運動機能を強化することもできる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。