とある少年の波紋疾走   作:イヌガミケ

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第13話「虚空爆破(グラビトン)」

「上条ォ~、昨日はよくも俺を置いて逃げたな」

 

「ま、待てジョジョ。俺は丸く収めるためにあの場から立ち去ったわけであって」

 

「どこが『丸く』だ。あいつスゲー怒ってたじゃん」

 

 あの後一晩中上条と共に逃げ回っていたジョジョはその日の昼ごろに街中で上条と出くわし、彼に文句を垂れていた。

 

「しまいには俺まで目をつけられるし」

 

「まあ、事故だったとはいえ自慢の電撃が効かなかったらいい気分ではないだろうしな」

 

「ハァ……」

 

「あ、あの……」

 

 二人が会話していると小さな女の子が話しかけてきた。

 

「この辺にお洋服屋さんってありますか?」

 

「服? このへんで服屋というと……セブンスミスとかなあ」

 

 女の子の問いに上条が答える。

 

「そのお店はどこにありますか?」

 

「えっと、この通りを真っ直ぐ行って二つ目の信号の角を右に……」

 

 説明をしていた上条が突然黙り込んだ。

 

「もしよかったらそこまで送っていこうか?」

 

 今のご時世では問題になりそうな発言が上条の口から出てきた。ヘタすれば即御用なセリフを言えるのは主人公補正なのかそれとも二次元の補正なのか。

 

「ほ、ホントですか!?」

 

 彼女は目を輝かせていた。初めて合った人をこうもあっさりと信用してホイホイついて行こうとするこの子もアレである。これも上条の主人公補正なのかそれとも(以下略)。

 

「ああ。どうせ今日はヒマだったしな。ジョジョも来るか? 俺の相手をしているんだからヒマなんだろ?」

 

「お、おう」

 

 結局三人でセブンスミストに向かうことになった。

 

 

 

 

 

 セブンスミストに着き、小中学生モノがある階に向かった。

 

「じゃあ適当にこの辺で待っているからな」

 

「うん!」

 

 そう言うと女の子は洋服売り場に走って行った。

 

「ここまで来て一緒に行かないのか?」

 

「上条さんは女の子の服の良し悪しがいまいち理解できないのですよ。そういうお前はどうなんだ?」

 

「奇遇だな俺も同じだよ」

 

 男二人が服のセンスについて話していると服を持ち辺りをキョロキョロとみている中学生くらいの子がいた。明るい茶髪に常盤台の制服を着ている彼女はここにいる二人を数時間前まで追い回していた人物であった。

 

 

 

 

 

 彼女、御坂美琴はタイミングを伺っていた。彼女は自分がかわいいと思っていたパジャマを初春たちに子供っぽいと言われたため堂々と試着できずにいた。

 

(大丈夫よ。パジャマだし、人に見せるわけじゃないし。それに鏡で一瞬、一瞬確認するだけだし)

 

 御坂は初春たちの方を見る。彼女たちは向かいの水着売り場で水着を見ていた。

 

(よし今だ!)

 

 パジャマを持ってダッシュして鏡の前に立った。着た感じを確かめようとしたら見覚えのある顔が鏡に映っていた。

 

「お前何してんだ?」

 

 驚いて言葉になってない声を出してしまう。が、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

「な、何でアンタがこんな所にいるのよ!」

 

「いちゃいけないのかよ」

 

「だいたいここは女物の……ってそこのアンタは昨日の!」

 

「ど、どうも」

 

「アンタらまさか――」

 

「おにーちゃん、このおようふくとかどうかな? ……あ! トキワダイのおねーちゃんだ!」

 

「この前のカバンの子? ってアンタ妹なんていたの?」

 

「違う違う。この子が服屋探してるっていうから案内しただけだ」

 

「そうだったんだ。……まあそれはさておき、昨日の決着をつけようじゃないの!」

 

「お前の頭の中はそれしかないのかよ……。だいたいこんな人の多い中でやるのかよ」

 

「うっ…」

 

「文句があるならすぐに視界から消えてやるから。それじゃ入り口で待っているからな。このお姉ちゃんと服を探してきな」

 

「うん!」

 

「じゃ行こうか」

 

「お、おう」

 

 ジョジョも上条に付いて行きその場を後にした。

 

 

 

 

 

「何ていうか…」

 

「?」

 

「お前も大変だなあ」

 

「いつものことだけどな。それにしても、どうして俺なんかを追いかけまわしているんだろうな」

 

(こいつ数十分前の自分のセリフ忘れているのか!)

 

 心の中でツッコミを入れていると館内放送が流れ始めた。

 

『お客様にお知らせがございます。ただいま当店の電気系統が故障したため、誠に申し訳ございませんが本日の営業を終了させていただきます。お客様は係員の誘導にしたがって速やかに移動してください。繰り返します――』

 

「故障? 故障したくらいで店閉めちまうのか?」

 

「重要な部分が壊れたんじゃねえか? どっちにしろ出るしかなさそうだし」

 

「あの子はどうするんだ?」

 

「ビリビリが連れてくるんじゃないか。ヘタに逆走するとマズいだろうし」

 

 ジョジョは納得し二人は係員の誘導にしたがって外に出た。二人は出てくる客を見たがあの女の子の姿はなかった。しばらくすると御坂が出てきた。上条は慌てて御坂に駆け寄る。

 

「おい、ビリビリ! 女の子見なかったか!」

 

「え、アンタと一緒じゃなかったの?」

 

「じゃ、じゃあまだ中に…ッ!」

 

 上条は誰もいなくなった店内に入っていった。それを見た御坂も慌てて追いかける。ジョジョは彼らを追いかけずに見ていた。

 

 彼は今目の前で起こっているのが「とある科学の超電磁砲」での「虚空爆破(グラビトン)事件」であると理解した。彼らが突入してしばらく経ったら爆発が起こるが上条の活躍でケガ人はゼロ。そして犯人は御坂が取り押さえることになっている。つまり自分が動かなくても解決する。ヘタに動かない方がいいとジョジョは判断したのだ。

 

 そして予想通りに爆発が起こった。撒き上がる噴煙にざわめく客や野次馬。そのザワザワしている人ごみの中からジョジョは路地裏に入り込んでいく人影を見つけた。ショルダーバッグを肩にかけ黒い髪でメガネをかけた地味な少年だった。彼はすぐに彼が犯人だと分かった。彼の名は介旅初矢(かいたびはつや)。能力は「量子変速(シンクトロン)」というアルミを基点に重力子(グラビトン)を増大ではなく加速、周囲に放出する能力だ。分かりやすく言うと「アルミを爆弾に変える」能力である。異能力者(レベル2)だが「ある道具」で今は大能力者(レベル4)相当の力を持っている。

 

 ジョジョは路地裏に入っていく介旅を入り口から見ていたが追わなかった。

 

(ここは後からくる御坂に任せよう。今のあいつは仮の力とはいえ大能力者(レベル4)クラスだ。狭い路地裏で爆弾をまかれたら避けようがない)

 

 見張られているとは露知らず少年――介旅は言葉を漏らす。

 

「すばらしい! すばらしいぞ!強い力も使いこなせるようになっている。もう少しだ。もう少しで無能な風紀委員もいじめていたやつらもみんなまとめて吹き飛ばせるッ!」

 

 不気味な笑い声を漏らしながら路地裏に消えていく。

 

(おかしい。ここで彼女が入って来るのに)

 

 後ろを見るが煙が立ち上るセブンスミストそれを見る野次馬や客が見えるだけで御坂が現れる気配は一向になかった。

 

(どうして来ないんだ。このままじゃあ逃げられちまう! ……仕方がない)

 

 ジョジョは決心し路地裏に入っていった。そしてジョジョは一気に突撃し彼の持っていたバッグをひったくった。介旅はその勢いで転倒した。

 

「な、何なんだ君はッ!」

 

「用件は聞かなくても分かるだろ? 爆弾魔さん」

 

「な、何を言ってるんだい? 僕には何のことだか――」

 

「確かに威力は凄かったな。だけどあの爆発で死傷者どころかかすり傷ひとつ負った人もいなかったぜ」

 

「バカなッ! そんなはずはない! 僕の最大出力だぞ……ハッ!」

 

「ほぅ」

 

「い、いやあ外から見てて大きい爆発だったから中にいる人は無事じゃないだろうと……」

 

 彼は焦っていた。スプーンの入ったバッグを奪われて自分を犯人と疑っている。だがこいつさえ始末すれば逃げられると考えた。もしもの時のために後ろポケットに忍ばせておいたスプーンに手を伸ばした。ジョジョはそれを見逃さなかった。バッグを捨て再び介旅に肉薄する。そして投げようとしたスプーンを蹴り飛ばし彼の腕を掴み押さえつけた。

 

「そいつは自白とみていいんだな?」

 

「……もこうだ」

 

「あ?」

 

「いっつもこうだ。力のあるやつにねじ伏される。お前らみたいに力のある奴が悪いんだ」

 

「お前なあ……」

 

 ジョジョが喋ろうとしたその時、自分の体が何かに掴まれる感覚がした。驚き自分の体を見るが何もついていなかった。

 

(何だこれは! 何もないが確かに掴まれているッ!)

 

 考えていると体が宙に浮き、そして路地裏の入り口の方向に投げられた。地面に倒れたが再び宙を浮いた。今度は地面から三十センチほど浮いたところで止まった。

 

「よお、情けねえな介旅」

 

 後ろから男の声が聞こえた。ジョジョは浮いている状態から首を回し男の方を向いた。男は介旅と同様に細身だったが背が高く割と整った顔をしていた。紺色の制服を着ていたがいいとこの学校ということぐらいしか分からなかった。

 

(誰だコイツ。こんなやつ原作で見たことないぞ)

 

「誰だって顔してるんで自己紹介させてもらうぜ。俺は円上司(えんじょうつかさ)。介旅の後をつけてくる奴がいたんでね。助太刀させてもらったよ」

 

 彼が自己紹介をしている隙に抜け出そうともがいていたが胴体をガッチリと掴まれている感覚は消えなかった。

 

「おっと無駄だぜ俺の『念動力(テレキネシス)』でお前は袋のネズミだ」

 

「念動力(テレキネシス)」。数ある超能力の中でポピュラーな系統の一つである。手を使わずに物を動かしたりするのが主である。現在円上はその能力でジョジョを縛り付けていた。彼が大きな手を出して胴体を掴んでいる姿をイメージしてくれれば分かりやすいかもしれない。

 

「さあ、やっちまえよ介旅。お前の夢だったんだろう。力のある奴をねじ伏せるのが」

 

「……そうだ。俺は…」

 

 円上に言われ、彼はジョジョが捨てたスプーンが詰まったバックへと歩み寄る。

 

 絶体絶命のピンチである。だがジョジョは諦めていなかった。何もできずにやられる思いだけはもうしたくないのだ。動けないのなら動かずに倒す方法を考えればいい。そう考え周りを見渡した。すると自分の右背後の手が届きそうな位置に排水用か何かの鉄パイプを見つけた。そしてそれは真っ直ぐ円上の方に向かって続いていた。

 

「これだあぁぁ!」

 

 ジョジョは力を込めて奇妙な呼吸音を響かせる。そして波紋を右手に溜め右後方の鉄パイプに叩きつけた。

 

「『銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)』!」

 

 放った波紋はパイプを伝わり円上の体を貫いた。それと同時に胴体を掴まれているような感覚が消え、ジョジョの体は重力に従い始めた。そして着地するとすかさずUターンして怯んでいる円上の顔面に拳を叩きいれた。その後すぐに介旅の方に振り返って構えたが何も起こらなかった。介旅はただこちらを見ているだけだった。その顔から諦めの表情が出ていた。

 

「お前……レベル0じゃないな」

 

「さあな、自分でも分からん。まあ力があるのは確かさ。ところで……まだやるのか?」

 

「いや降参だよ。二人でかかって、しかも押さえつけていたのに状況をひっくり返したんだ。そんな奴に勝てる気がしない。……結局僕なんかレベルが上がっても何も変わらない。何をやってもだめな人間だったんだ」

 

「……」

 

 ジョジョは座り込んでいる介旅に歩み寄る。

 

「な、何をする気だ。僕はもう戦う気なんて」

 

「お前は何のために力を求めたんだ?」

 

「えっ?!」

 

 介旅の目の前へ来るとしゃがんだ。

 

「お前は人を傷付けて喜ぶために力を手にしたわけじゃないんだろ?」

 

「……そうだよ。僕は変えたかったんだ。弱者が虐げられる世の中を。こんな運命なんて受け入れたくなかった。だから自分の運命を変えるために力を使ったんだ!」

 

「……っは、運命なんて大層なこと言っておきながら結局ただの八つ当たりじゃあないか」

 

「何ッ! ……そうだなあんたみたいに強い奴には僕みたいな人間のことなんか――」

 

「お前は」

 

 ジョジョが介旅の胸ぐらを掴む。

 

「お前は本当に戦っていると思っているのか?」

 

「とっ、当然だ! 僕は自分の居場所をつくるために――」

 

「じゃあどうしてお前をいじめている奴らに立ち向かわないんだ?」

 

「!」

 

「お前がここまで行き着いた原因はそこだろ? だったら風紀委員じゃなくてそいつらを吹き飛ばせばいいじゃあないか」

 

「そ、それはあいつらの仕返しが怖いから……」

 

「怖い? やっぱり戦うとか言っておきながらお前は逃げているじゃあないか。その恐怖に立ち向かう気持ちがない限りお前は一生弱者のままだぞ!」

 

「そんなの――」

 

「次にお前は」

 

「気持ちだけで強くなれたら誰も苦労しないよ、と言う」

「気持ちだけで強くなれたら誰も苦労しないよ……ハッ!」

 

「そのとおりだ。けどな介旅。お前は必死に努力したのか? ボロボロになりながらも道に迷ってもそれでも努力したのか?」

 

 彼の気迫に介旅は思わず目を逸らす。

 

「なあ、覚えているか? 今から3カ月くらい前、能力者の銀行強盗を取り押さえようとした少年が大ケガをした事件があったことを」

 

「あ、ああ」

 

「そいつは力がなかったことに絶望した。自分はこの世界で必要とされないのでは。お前なら分かるはずだ。虐げられいる者の気持ちが」

 

「…………」

 

「だがそいつはあきらめなかった。必死に努力して超能力とは違う能力を手に入れた。そいつが力を求めた理由は助けたかったからだ」

 

「助けたかった?」

 

「自分と同じように虐げられている人を助けるために努力したんだ。だからよ、自分が同じような境遇に遭っている人のために力を使ってみろよ!」

 

「……人のためか……考えもしなかったよ」

 

 先ほどとは違う笑みを浮かべていた。自分の事を理解してくれる人がいてくれて嬉しかったのだ。

 

「だが」

 

 ジョジョの表情が変わった。介旅はそれが怒っている顔だとすぐに分かった。

 

「お前が今までしてきたことは許されることじゃあない」

 

 掴んでいた右手を離し、

 

「だがら」

 

 拳を作った。

 

「一発殴る」

 

 

 

 

 

「容疑者の少年を確保しました」

 

「ご苦労様ですの」

 

「あの……それと容疑者のいた路地裏でノビている人もいたんですけど……」

 

「彼と同じ場所にいたのなら話を聞く必要がありますね。一緒に連れて行きなさいな」

 

 

 

 

 

「大丈夫だったのか上条」

 

 風紀委員が来る前にその場を後にしたジョジョは店の入り口で上条を待っていた。

 

「ん?ああ、見てのとおりさ。ビリビリが助けてくれたからな。さ、面倒にならないうちに帰ろうぜ」

 

 そう言って二人は店を後にした。ジョジョはあの爆発から人々を救ったのは彼だということを知っていた。彼はみんな助かったのなら誰が助けたかは重要じゃないという考え方をしている。だが後で面倒になると思い、ジョジョにはビリビリ――御坂が何とかしたと言ったのだ。

 

「うっ……」

 

「ど、どうした?」

 

「い、今理不尽な怨念を感じた……」

 

「ならとっとと帰ろうぜ。アイツが追いかけてくるかもしれないし」

 

「そ、そうだな。二日連続で鬼ごっこは御免だしな」

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 




円上 司(えんじょう つかさ)
オリキャラ。能力は「念動力(テレキネシス)」で本来はレベル2だが介旅と「ある道具」を使いレベル4クラスの力を持っていた。ジョジョが思った通りイイとこの学校の生徒だが周囲よりもレベルが低いことに苛立ちを感じていた。そんな中で使うだけでレベルが上がる道具を手に入れたが得体のしれない物に使用をためらっていた。そしてある日、自分と同じくレベルの低さを嘆いていた介旅と出会い、二人でその道具を使用した。

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)
金属を伝わる波紋。鉄パイプなどに込めて攻撃力を上げたり、武器を持っている相手との鍔迫り合いの時は相手の武器を介して波紋を流し込むことも可能。



最後まで読んでくださりありがとうございます。
相変わらずの文章レベルだと思いますが今年もよろしくお願いします。
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