爆破事件の後、ジョジョは2つのことに疑問を抱いていた。1つ目はあの時に御坂が現れなかったことだ。本来なら爆発の後、御坂が介旅を取り押さえるはずだったのだがその御坂が現れなかった。そのために自分が介旅を取り押さえることになった。爆発に巻き込まれたのではないかと思われたがあの爆発でケガ人は誰もいなかったことを上条から聞いた。助けた本人が言うのだから間違いないのだろう。
そして2つ目。円上という男の存在だ。彼は原作では見たこともない人物であった。介旅と関わりがあったみたいだが、その時は自分も熱くなってしまい聞く前に彼を殴ってしまったので詳しい話は聞くことができなかった。あっさり倒してしまったが彼は何者だったのか。
「おい、武城! 聞いているのか!」
突然ジョジョに声が掛かる。思わず彼は空返事してしまう。
「全く……。いいかこいつみたいに夏休みだからって気を抜いたりハメを外し過ぎたりしないようにするじゃん」
周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。今日は7月19日、明日から夏休みに入る。今は担任の黄泉川が生活の心得などを説明していた。
「ウチからの話は以上じゃん。それじゃあみんな、2学期に元気な顔をみせるじゃん!」
この日は終業式だけなので午前中に学校が終わった。HRが終わった後ジョジョは寮に戻った。彼にはやることがあったのだ。それは「冷蔵庫の中を空にする」ことだ。彼は今夜停電が起こり冷蔵庫が使えなくなることを知っていたのだ。たから冷蔵庫に入っている食材は昼に食べてトレーニングを行う夜は外で食べることにしていた。トレーニングから帰ってきて料理している時に停電したらたまったものではない。
普段よりも少し量の多い昼食を食べ食べ終わったらテーブルの食器を片づけ夏休みの宿題を取り出した。彼は夏休みの宿題を7月中に終わらせるタイプの人間である。ここの学力レベルは周りよりも高い。彼の通っている高校もレベルが高いわけではないが外の同じ雰囲気の高校よりも少し進んでいる。しかし入学して数ヶ月間必死に行った勉強のおかげで平均以上の点が取れていた。
夜になりトレーニングに出るころには宿題の半分が終わっていた。出る前に全ての電化製品のコンセントを抜きジョジョは外へ出た。
トレーニングが終わりファミレスで新作メニューの「ゴーヤのトマトカレー」を注文し食べようとした時、
「これこれ、よってたかって女の子の財布を狙うもんじゃありませんよ」
「あぁん! 何だテメエは!」
聞き覚えのある声がした。振り返ると3人の柄の悪そうな男たちと御坂、上条がいた。ジョジョはこのシーンが「とある魔術の禁書目録」の序章のシーンであると直感した。この出来事が夏休み前日、7月19日に起こることは知っていたがまさか自分がいるファミレスで起こるとは思っていなかった。彼らを助けようと一瞬考えたが御坂もいるので問題ないと考え向き直ろうとした時、
「お、ジョジョじゃん!」
見つかりたくない人に見つかってしまった。慌てて隠れるが時既に遅し。
「テメエもこいつの仲間かぁ?」
「イエ、マッタクシラナイヒトデス」
「何言っているんだよ! 頼むから手を貸してくれ。俺らなら3人相手でも――」
その時、男たちが座っていたテーブルの近くの男子トイレからぞろぞろと人が出てきた。
「どしたの?」
「誰こいつら?」
その数6人。
「ええー集団でトイレは女の子の特権だと思っていましたがー!」
ジョジョは額に手を当てて呆れていた。10人以上座れるテーブルに3人しか座っていないことやテーブルの上の食器の量とか見てそれくらい判断できないのかとツッコみたくなるくらいに呆れていた。
「フフフ。いくら二人でもこの人数は相手にできないだろう。今なら有り金全部――」
出せば、と言う前に上条は猛ダッシュで逃げ出した。男たちはしばらくポカンとしていたが今度は取り残されたジョジョの方を向いた。さっき男は「二人」と言った。一人が上条を指しているとするともう一人は自動的に自分ということになる。やれやれという感じでジョジョは財布から千円札を取り出す。
「この金は料理の代金であってお前らに渡す金じゃない。これがどういうことか分かるか?」
そう言って皿の下に札を挟み込む。そして後ろを向き猛ダッシュで店から出た。
「おい、上条! また置いていきやがったな!」
「いや、あそこは逃げるだろ常識的に考えて」
「食い物の金を払ってないやつに常識的に言われなくない!」
「あっ……」
代金を払ってないことに気付き頭を抱えるが、
「待ちやがれぇ!」
追いかけてくる男たちをみて走るスピードを上げる。
「上条! ここは二手に分かれて逃げよう!」
「賛成だ!」
そう言って次の交差点を上条は右に、ジョジョは左に曲がった。男たちも5人は上条の方に4人はジョジョの方に別れて追いかけた。
ジョジョが次の角を曲がると変電所の入り口に着いてしまった。
「ちッ、行き止まりか」
引き返そうとすると男たちに追いつかれてしまった。
「いやあ、僕は巻き込まれただけでありまして」
とりあえず自分は無関係だということを主張してみた。
「うるせぇ…ぜぇ……ココまで…きといて……ぜぇ……はいそうですかって…引き下がれるかよ!」
男らは自分たちに立てついたことよりも散々引っ掻き回されたことに怒っているようだった。だがどちらにしてもマズイ状況には変わりなかった。
あの連中は幻想御手の集まりで御坂はその情報を得るために彼らに近づいたところで上条の邪魔が入った。そこに自分が巻き込まれている状況である。つまり目の前にいる集団は幻想御手を使用している。レベルが上がった能力者を相手に出来るかジョジョ自身分からなかった。
「ハァ…どうやら見せる時が……来たようだな。幻想御手で……レベル2になった俺たちの力を!」
超能力には0から5までの6つの段階がある。一般的に「超能力」として使えるのはレベル3からである。つまり0から2までは「超能力」と呼べるほどの代物ではないのだ。
ジョジョが男たちを倒すのにそれほど時間は掛からなかった。先ほども述べたようにレベル2では戦いに使えるほど強力なものではない。それ故に戦いはただの肉弾戦になる。ジョジョにとっては少し体が硬くなったり炎を出したりする程度で大して変わらないものだった。
「やれやれだ……」
「まったく派手にやってくれたね」
彼の背後から声が聞こえた。振り返ると女が立っていた。背中にバラの刺繍が入ったスカジャンという格好でポニーテールに強気な顔つきをした女が立っていた。
「姉御……」
倒れていた集団一人が喋った。彼女は姉御。本名は不明。おそらくファミレスで駄弁っている集団のリーダーだろう。ここでジョジョは一つの疑問が出てきた。彼女は「レールガン」のアニメで御坂と対峙する。とすると御坂は今どこにいるのだろう? そう考えているとパシンと音が響いた。見ると彼女がしゃがんでさっきの男にビンタをしていた。
「何してんだいアンタら!」
「うう……。けど姉御、あいつ強くて――」
「そういうことじゃないんだよ! 大人数で一人に向かって……恥ずかしくないのかい!」
「……すいません」
「謝るのはアタシじゃないだろ」
そう言って倒れている連中を起こしてジョジョの前に並ばせた。
「悪かったよ……」
「そうじゃないだろ!」
「うっ……。本当にスイマセンでしたぁ!」
「「「したー!!」」」
「こいつらも謝っているから許してくれないか?」
「あっ、はい」
見たことがあるシーンのはずなのに思わず空返事してしまう。
「ほら、お前ら! 今日はとっとと帰んな!」
「「「「うすッ!」」」」
運動部みたいな掛け声をして男たちは来た道を引き返していった。かなり慕われている印象を感じた。
「じゃ、じゃあ僕もこれで……」
「待ちな」
ジョジョも帰ろうとしたが呼び止められてしまった。
(何か嫌な予感が……)
「随分とウチの舎弟をかわいがっていたんだ。覚悟はできているんだろうね?」
「えっと…何を言っているのでせう? さっきみんなで謝ってくれましたよね?」
「アレはアレ。借りはきっちり返させてもらうよ」
(うわああぁぁ! やっぱりいぃぃ!)
彼女が地面に手を当てる。すると地面に波ができジョジョの足元がぐらついていく。
「おわッ!」
「アタイの能力は『表層融解(フラックスコート)』。アスファルトの粘度を自在に変えることができる!」
地面、アスファルトが液状化しジョジョが自分の重みで沈んでいく。
「沈めて動きを止めるつもりか!」
「そうさ。足元を液状化して沈め、元に戻せばそれでお終いよ!」
「ならばッ!」
姉御が彼の足元のアスファルトを固めようとしたその時、ジョジョがジャンプした。予想外の行動に彼女は驚いていた。彼の足元のアスファルトはほぼ液体のようになっている。そんな足元てジャンプなど不可能なはずである。さらに今度はドロドロなアスファルトの上に着地したのだ。普通ではありえない。そのことで彼女は直感した。
「それがお前の能力か!?」
「ん……まあな」
ジョジョは足に反発する波紋を流していた。そのため液状化したアスファルトの上でジャンプをし、普通の地面のように立てているのだ。
「今度はこっちから行くぞ!」
ジョジョはドロドロな地面を走り彼女に近づき拳を繰り出す。と同時に彼女の前にアスファルトの壁が出てくる。
「かかったな! 阿呆ゥがッ! 足がダメならその腕を捕まえてやるッ!」
「しまっ――」
彼女の目論見では放った拳を液状化したアスファルトで包み込み固めて動きを止めるはずだった。が、腕がアスファルトに入る感覚はなかった。彼の拳は突き抜けることなく手前で止まっていた。足と同じように手に波紋を流し込み取り込まれないようにしていたのだ。
「危なかった……」
「なっ…!」
ジョジョはすかさず横に回り込み姉御に蹴りを入れた。彼女は作戦が失敗して動揺していたのか反応が遅れ蹴りを喰らい転倒した。しかしすぐに立ち上がった。
「今の蹴り……本気じゃないな」
「そうだよ。だけど君のアスファルトの粘度を変える能力は俺に通用しない。それにさっきのを見る限り格闘も俺の方が上手。これだとどっちが勝つかなんて目に見えてる。だからおとなしく――」
「ふざけるな!」
平和的に終わらせようとするジョジョの言葉を遮る。
「アタイまだ負けちゃいないんだ! アンタも能力者なら本気でかかってきな! アタイの黒金の意思をそのチンケな能力で砕けるものなら砕いてみなァ!」
彼女の目は本気だった。束ねる者としての覚悟からであろう。だからこそ慕われているのかもしれない。その覚悟を無下にするのは失礼であると考えた。とはいっても女性の、それも美人な彼女の顔を殴り飛ばすことはできない。やれやれとため息を吐き彼女に向かって人差し指を立てた。
「一発だ。一発お前の腹に叩き込む。それで勝負をつけてやる」
「ほう、やれるもんなら」
再び地面に手を当てる。
「やってみな!」
ジョジョが再び肉薄する。姉御は再びアスファルトを操り、壁を出す。今度は道幅いっぱいに出現したためさっきのように回り込むのは建物に阻まれて不可能だった。彼女のもとへ辿り着くにはジャンプして壁を超えるしかない。それが彼女の狙いだった。自分のところに来るには壁を乗り越えるしかない。そうなるとジャンプする必要がある。だが空中だと攻撃を避けようがない。彼女はそこを狙っていた。
だがジョジョも彼女が作った壁を見た時に彼女の狙いを見抜いた。そして彼女の注意は上に向いていると考えた。ジョジョは拳を液状のアスファルトに叩きいれた。
「『波紋震動』!」
彼女はアスファルトを操るために体がアスファルトについていなければならない。そして自分の手元足元も液状化しなければならない。つまりジョジョから彼女までは液状のアスファルトがつながっている。そこに目をつけた。固体で通らなくても液体なら通る。波紋は地面を通り彼女を貫いた。
(何だ。このビリッとした感覚はッ)
彼女が怯んでいるところにジョジョが壁を乗り越え上からやってきた。彼女も応戦しようとするが体がうまく動かせない。ジョジョはそのまま彼女のみぞおちに波紋付の拳を叩き込んだ。彼女はそのままジョジョの腕でぐったりと動かなくなった。
(さて勝ったはいいもののこの子どうしよう。いくら夏でも外に放っておくと風邪ひきそうだしな)
「なあやっぱ戻らねえか?」
「バカ。そんなことしたらまた姉御にどやされるぞ」
「けどよお。あいつスゲー強かったじゃん。ひょっとしたら」
「テメエ……まさか姉御が負けるって言いてえのか!」
「い、イヤ。でもさ…」
「お、おい! あれ!」
男の一人が指を指す。暗闇の中からバラのスカジャンを着た姉御を担いでジョジョが現れた。
「姉御!」
「おーいたいた。思ったより近くにいて助かったぜ」
仲間が見つかって安堵するジョジョと対照的に男たちは怒りの表情を露わにしていた。
「テメエ……よくも姉御を!」
「おいおい、彼女が本気で来いっていったから……」
言ってみるが男たちは聞く耳を持っていなかった。自分のリーダーがやられたことに怒っている様子を見て彼女が慕われていることを改めて感じた。
(さてどうやって逃げようか)
考えていると突然明かりが消えた。自分たちの周りだけでなく広い範囲で明かりが消えていた。ジョジョは御坂が引き起こしたものだとすぐに分かった。
(と、とりあえずチャンスッ!)
暗闇の中でおぶっていた姉御を降ろしそのまま立ち去った。
TO BE CONTINUED
「波紋震動(はもんしんどう)」
地面を伝わる波紋。「ジョジョの奇妙な冒険」第1部でジョナサンがカバンを盗んだポコに対して使った技と同じ。名前の元ネタは同作の同人ゲームから。