とある少年の波紋疾走   作:イヌガミケ

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第15話「7月20日 その①」

「暑い…」

 

 うだるような暑さでジョジョは目が覚めた。昨晩、大規模な雷が落ちその周囲一帯が

停電になった。そのためエアコンはおろか冷蔵庫なども一切使えなくなっていた。犯人はもちろん「彼女」だ。今思うと随分と迷惑な話である。後先考えずに全力を出してしまうのは彼女がまだ子供だからであろうか。

 

 こうなることを知っていたジョジョは昨日の内に冷蔵庫の中を空にし、全ての家電製品のコンセントを抜いてブレーカーを落としていた。そのため大した被害はなかった。しかし家電製品が無事でもこの暑さはどうにもならない。エアコンは壊れてないが停電のため使えない。

 

 彼は不幸だなと一瞬思ったが、もっと被害を受けているであろう隣人のことを考えると自分の方はまだマシな方だと思った。言い忘れていたがジョジョの部屋は上条の隣である。

 

 ふとジョジョは思い出したようにベランダに出た。昨日停電があったのなら今彼のベランダには「アレ」がいるはずだった。ベランダに出て上条の部屋の方を見ると「ソレ」はいた。上条の布団ではない「ソレ」は金色の刺繍がされた白い布を纏っていた。程なくして上条も布団を干そうとベランダに出てきた。そして「ソレ」を見つける。

 

「……腹……」

 

布団ではなく修道服を纏った修道士(シスター)を。

 

「……お腹……った」

 

そして、

 

「…お腹減った」

 

もう一つの物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

「なあ。これ本当に食えるのか?」

 

「しょうがないだろ。昨日の停電で冷蔵庫の中が全滅していたんだから。そういうお前はどうなんだよ」

 

「俺は『偶然』冷蔵庫の中が空だったからな」

 

「ちくしょー!」

 

 彼女を見つけてからジョジョは何事だという態度をとりながら上条の部屋に乗り込んだ。その時上条はシスターに手を噛まれて悲鳴を上げていた。

 

 ジョジョは噛まれた痕を波紋で治療し、さらに食料を要求するシスターのために全滅した冷蔵庫の中の余り物で野菜炒めを作る上条を見守っていた。冷蔵庫が使えなくなったのは昨晩であったがこの季節のせいで中の食材はすっかり傷んでいた。しかも既に期限が過ぎている食材などもフライパンの中にぶち込まれていた。そんな料理は腹が減ってても食う気にならない。

 

 やがて野菜炒めが完成しシスターの前に置かれる。すでにおかしなにおいなどが漂っていたが彼女はそんなことも気にせずガツガツと食べ始めた。コイツの腹はどうなっているんだ? と彼はふと疑問に思った。某戦闘民族並みである。

 

「すごくおいしいよ! 特にこの酸味! 私が疲れていることを見抜いてこの味付けにしてくれたんだね!」

 

 おいしそうに食べているがそれは調味料による酸味ではない、意図した味付けではないのだ。

 

「いや……。無理して食べなくてもいいんだぞ。そんなおいしくない男料理じゃ……」

 

「ううん。私のために無償で作ってくれたんだもん。だからおいしくないわけないよ!」

 

 彼女は目をキラキラさせて言った。上条の方を見ると申し訳なさそうな顔をしていた。そして純粋な目をしたシスターに傷んだ食材を与えてしまった罪悪感にさいなまれたのか、彼女が食べていた皿を取り上げ自分の中へ掻き込んだ。ある程度食べたところで倒れた。食材自身が出す酸味に耐えられなくなったのであろう。その時に食器を放り投げてしまうがジョジョがキャッチしたので食材をぶちまけることはなかった。

 

「自分も食べたかったら言ってくれればいいのに……」

 

 

 

 

 

「自己紹介がまだだったね私の名前はインデックスっていうんだよ」

 

「インデックス? ってどうみても偽名だろソレ。目次かッ!」

 

「禁書目録って意味なんだけど……。あ、魔法名はDedicatus545っていって『献身的な子羊は強者の知識を守る』って意味だよ」

 

「あのー……日本語でお願いできますでせうか?」

 

 彼女は自分のことについて話をしていた。それは自分がイギリス正教の人間であること、10万3000冊の魔道書を持っていているため魔術結社に追われていること、それで飛び移ろうとして背中を撃たれ上条のベランダに引っかかったこと、にも関わらず無傷なのは歩く教会という自身の修道服に施されている魔術のおかげであることなど、どれもジョジョにとっては聞いたことがあるものだった。

 

 修道服に関しては詳しい事を話していたが要は物理攻撃でも特殊攻撃、魔術でも防いでしまう。AでもCでも何でも来いということである。そして魔術を信じられない上条はそれを右手で破壊できるなら魔術を信じると言い出した。この後何が起こるか分かっていたジョジョはトイレに行くと言って席を外した。しばらくして少女の悲鳴と少年の叫び声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「まあ、なにがあったかは聞かないでおくよ」

 

 もっとも何があったか分かっているから聞く必要はないのだ。それにこれ以上聞いて彼の傷口を広げる気はない。上条は終始下を向きインデックスは毛布にくるまり彼がバラバラにした修道服を直していた。

 

「できた!」

 

 そういって彼女はまくっていた毛布を外す。先ほど彼女が着ていたものと全く同じように修道服が出来上がっていた。大きな安全ピンが付いていること以外は。上条もそのことについてツッコんでいたが突然思い出したように立ち上がる。

 

「やべ、補習の時間! お前はどうするんだ? ここに残るなら鍵渡すけど」

 

「いい。いつまでもここにいると連中がせめてくるからね」

 

 そう言って玄関へと走り出す。上条は慌てて追いかけるがどういうわけかカーペットに足をとられ、よろけているところにポケットから携帯がこぼれ落ちてよろけている弾みでそれを踏み抜いてしまった。

 

「うぅ……不幸だ……」

 

「不幸と言うよりはドジなだけかも」

 

 さらに彼女は君の右手が空気に触れているだけで幸運とかも打ち消しているかもね、と笑顔で言って更に彼をへこませる。この状況で彼女の声がしっくりきていると感じたのはジョジョだけではないだろう。

 

「それじゃ。ご飯ありがとね!」

 

「っておい、どこか行く当てがあるのか?」

 

「大丈夫! 教会まで行ってかくまってもらう――ひやあ!」

 

 小さな悲鳴をあげる。見ると彼女の周りに数台の掃除ロボットが纏わりついていた。

 

「なっ、何これー!」

 

 それから逃げるように彼女は階段を降りて行った。その様子を二人で見ていた。

 

「やっべ、補習!」

 

 上条は思い出したように慌てて部屋に戻り支度する。

 

「じゃあ、俺はこれで失礼するぜ」

 

「ってお前、補習は!?」

 

「ギリギリ回避」

 

 ジョジョは笑顔で親指を立てる。

 

「……ちっきしょォォー!」

 

 悔しがる視線をジョジョに向け部屋を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 一人部屋に残されたジョジョはこの後何をしようか考えていた。そして今日起こることを考えているとインデックスはこの日に何者かに襲われることを思い出した。そこで先回りして彼女を助けられるのではないかと考えた。

 

 だがそうすると彼女を襲う者とのかかわりがなくなり今後の物語に影響を与えてしまうかもしれない。

 

 考えた結果、インデックスを無傷の状態で保護し上条と襲撃者を対峙させるようにする結論に至った。ジョジョはベッドから起き上がるとインデックスの追跡を開始するために外へ出た。

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ…」

 

 ファミレス、ファストフード店など彼女が行きそうな場所を探し回ったが彼女の姿はなかった。途中で御坂を見つけ彼女のことについて話を聞こうと思っていたが突然現れた黒子と共にどこかへ消えてしまった。少し残念がりながらもジョジョは気を取り直して聞き込みを開始した。

 

「銀色の髪に白い修道服を着たシスターさんを見ていませんか!?」

 

 彼女の姿は学園都市の中では非常に目立つ格好だったのですぐに見つかると考えていたが誰に聞いても有力な情報は得られなかった。

 

 それでも懸命な聞き込みの甲斐があり第七学区の南西に位置する三沢塾の近くに教会があるという情報を入手した。

 

 その情報を頼りにその場所へ向かうと見覚えのある大きな建物が彼の目に入った。彼はこの建物が三沢塾だとすぐに分かった。いずれは乗り込むことになるだろうな、と考えていたがすぐに教会を再開した。

 

 程なくしてその教会が見つかった。早速インデックスのことを聞くがそのような子は来てないと言われた。早く着いてしまったと思い、教会の前で彼女が来るのを待っていた。しかし空がオレンジ色になるまで待っても彼女は現れなかった。

 

 

 

 

 

 結局インデックスは見つからなかった。

 

(どこに行ったんだよインデックス……)

 

 ジョジョは力ない足取りで帰り道にいた。

 

(彼女を連れて帰らないと…………帰る?)

 

 ふと気づいて立ち止まった。彼は彼女が忘れ物のフードを取りに戻ってくることを思い出したのだ。

 

(そうだ! わざわざ捜しに行かなくても彼女が帰ってくる前に上条の部屋の前で待ってていればよかったじゃあないか!)

 

 そう考えたジョジョは急いで寮へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 上条の部屋の前に着いたとき彼女はまだ戻っていなかった。安心して部屋の前で待っているとインデックスが階段口から出てきた。フラフラと歩く姿を見てジョジョは疲れているのではないかと思った。

 

「どうしたんだい、インデックス? 腹が減ったから戻って来たのかい?」

 

 冗談交じりでインデックスに近づいた。すると彼女は突然ジョジョにもたれかかってきた。

 

「インデックス……?」

 

 彼女を受け止めると手に液体が付く感触がした。恐る恐る見ると赤色の液体――血が手に付いていた。

 

「い、インデックス! どうして!」

 

 彼女の背中はすでにバッサリと斬られていた。ジョジョはすかさず彼女の背中に手を当て波紋を流す。

 

「インデックス! しっかりしろ!」

 

「おや? 君は彼女の知り合いかい?」

 

 波紋を流していると背後から声が聞こえた。声のする方を見ると黒い格好をしていた男が立っていた。インデックスと対になっているような黒い修道服にローブという格好だけを見れば誰でも神父だと思うだろう。しかし赤色の長い髪に右目の下にあるバーコードのような刺青やピアスは神父としては似つかわしくない姿だった。

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED




インデックスの歩く教会の説明で出てきたAとCという言葉について
 このアルファベットは「ポケットモンスター」シリーズで使われるボケモンのステータスの略称です。各ポケモンには6つのステータスがありHP=H、こうげき=A、ぼうぎょ=B、とくこう=C、とくぼう=D、すばやさ=Sと表します。ABは「たいあたり」などの物理技、CDは「10万ボルト」などの特殊技に関係しています。イノケンティウスや神裂の七閃は物理技でステイルの炎は特殊技とイメージしてくれれば分かりやすいかもしれません。
 歩く教会は物理技と魔法技のような特殊技の両方を無効化できるという事を言いたかっただけです。
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