第177支部から帰宅後、ジョジョはもう一度部屋を隅々まで調べた。何かこの世界での自分についての手がかりがあるかもしれないと考えたのだ。そこで出てきたのは一人暮らしの学生が使うようなものがほとんどだったがその時、
(これは……)
地味な色の封筒を見つけた。中を見ると高校の入学案内が入っていた。
(最初に探したときは気にもとめなかったがこんなものがあったとは……)
彼は未だに信じられずにいた。しかし昨日の学生証やこの入学案内が彼が学園都市の人間であるということを示しているのは事実であった。
(しかもこのパンフレットに写っている校舎の写真は……ということはあいつらと同じ高校ってことか)
次の日、ジョジョは学校へ行く支度をして寮を後にした。行く場所は分かっていたが一つ問題が生じた。行く場所は分かっていてもそこまでの道順まではアニメや原作では書かれていない。それ故に彼は道に迷ってしまった。
(どうしよう……)
道が分からずに途方に暮れていると前からウニのようにツンツンした頭の少年が歩いてきた。少年は足元に落ちていた空き缶の存在に気付かずに近づいてくる。案の定、彼は缶を踏んで派手に転んだ。
「不幸だ……」
「あの……大丈夫ですか?」
「いえ、大丈夫です。いつものことですから」
ウニみたいなツンツン頭。そしてギャグにしか思えないような不幸体質。彼の名前は上条当麻。この世界の中心となる物語である『とある魔術の禁書目録』の主人公である。
「あれ?その制服は……ということは同じ学校?」
「えっ、ええ。……あの、よかったら一緒に行きませんか?」
「えっ?まあいいですけど……」
(よし。これで高校までの道順はなんとかなった)
「へぇ、上条さんは高校から学園都市に入ったんですか」
「ええ、そうなんですよ。中学まではごくごく普通の学校でね。そういう……えっと」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。僕は武城譲治。ジョジョって呼んでください」
「ジョ……ジョ?」
「武城の城と譲治の譲をとってジョジョです」
「ふーん。変わったあだ名だね」
「よく言われます。でも下の名前をとってジョージより印象に残ると思うんです」
「ああ、確かに。それで……ジョジョも高校から学園都市に?」
「はい。昨日初めて学園都市に来たんですよ」
嘘はついていない。確かに彼は昨日この学園都市にやってきた。その後も上条と話をしながら歩きなんとか目的の高校についた。入ってすぐのところにクラス分け表が貼ってあったのでジョジョたちは確認する。
「どうやら僕と上条さんはクラスが違うみたいですね」
「うん。そうみたいだね」
「残念だなぁ。折角上条さんと友達になれたのに」
「……友達……か……」
急に上条は黙り込む。
「? 上条さん、どうしたんですか?」
「あ、いやなんでもないよ。そ、それよりもクラスは隣みたいだから途中まで一緒に行こうか?」
「そうですね。行きましょうか」
上条の教室の前で別れてジョジョは自分の教室に入る。
(上条が1年今は4月ということは今は禁書目録の話から約3か月前ということか)
日付を考えながら自分の席を見つけて座ると隣から、
「君、席ここ?」
声をかけられた。見るとサングラスに派手な首飾りという派手な格好の男。
「ええ、まぁ…」
とりあえず返事をする。
「お~そうか。俺は水御門元雪。隣同士仲良くしようにゃ~」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
ジョジョも挨拶をすると、
「固い。固いで君ぃ。そんなんじゃ友達たくさん出来ひんで~」
突然目の前に声の主が現れた。水御門ほど派手な格好ではないが180cmを超えそうな身長は水御門とは別の意味で目立つ。
「そう言わんと黒ピ。きっと緊張してるからにゃ~。ああ彼は黒髪ピアスぜよ」
「よろしゅうな」
黒髪ピアスと呼ばれた男が挨拶をし、自分の席に座る。
「こちらこそよ……よろしく。僕は武城譲治。ジョジョって呼んでくれ。」
「ジョジョか……変わったあだ名やな」
「俺はてっきりジョージとかが来ると思ったぜよ。ところで何でジョジョなん?」
また「ジョジョ」の由来を説明していたら、
「はーい。入学式始めるから廊下に並ぶじゃん」
指示通りにジョジョたちは廊下に整列し会場である体育館へ向かった。入学式の内容は超能力の話があったのを除いて普通の学校と同じような内容だった。式が終わり教室に戻りしばらくするとドアが開き、先ほどの声の主が入ってきた。
「はーい。静かにするじゃん。今回このクラスを受け持つ――」
後ろに束ねている長い髪、緑のジャージと特徴的な口癖。彼女の名前は黄泉川愛穂。昨日の不良を引き取った警備員であり彼の担任となる女性である。
「それじゃあ入学式が終わったばかりだけど早速、身体検査<システムスキャン>に行くじゃん」
身体検査<システムスキャン>。能力開発を受けている学生の能力の強度<レベル>ための検査であり、検査で出た予知能力、透視能力、読心能力、精神感応、念動力の結果を元に能力のレベルや系統が分かる。大がかりな機械を使うように思われるが、これらを使うのはレベル4や5が大勢いるような学校だけで、レベルが低い生徒が多い学校ではカードの透視など簡単な検査で測る。
身体検査が終わりしばらく待っていると黄泉川が入ってきた。
「結果が出たじゃん。見たところうちのクラスはなかなか優秀じゃん? 全員能力者ってわけじゃないけどのびしろはありそうじゃん。それじゃあ番号順に結果を取りに来るじゃん」
そう言って一人ずつ紙を渡していった。ジョジョの番になり結果を受け取るときに、
「武城。お前は後で職員室に来るじゃん」
急に話しかけられたのでジョジョは少し驚いて生返事をしてしまった。紙を貰い、席に戻ると水御門が話しかけてきた。
「ジョジョ~。お前何やらかしたんだにゃ~?」
「さあ……こっちが聞きたいくらいだよ」
そう言って黄泉川から渡された検査結果を見た。そこには全ての検査で反応がなくレベル0であるという結果が書かれていた。
(やっぱそう都合よくはいかないか……まあちょっと頑張れば何かしら能力の片鱗が見えてくるだろう)
ジョジョは自分に言い聞かせた。
HRが終わりジョジョは言われた通り職員室へとやってきた。
「えーっと……どうして僕だけ呼び出しなんですか?」
「さっきクラス全員の検査結果を見たんだけどお前だけ全部の検査に引っかからなかったじゃん」
「……それって僕は能力のかけらすらないということですか?」
「まあそうなるじゃん。でも諦める必要はないじゃん。ゆっくりでも努力すれば何かしらの変化は起きるじゃん。……といってもお前はすぐ力が欲しいと思ってるみたいじゃん」
「……どうしてそう思うんですか?」
「昨日、お前が世話になった風紀委員から報告があってな。なんでも人を助けるために不良共にケンカ売って返り討ちになったとか。ということは今お前は力が欲しいと考えている。力なんかどうでもいいとか考えていたらわざわざ不良にケンカなんて仕掛けないじゃん。どうだい?」
「はい……そうです」
「でも気持ちだけで勝てるほど甘くないじゃん。そこで武城。一つ提案があるんだが……」
「はぁ……はぁ……」
「ほら! ペースが落ちてきてるじゃん!」
「そんなこと……はぁ…言ったって……このペースで10周も……はぁ…走ると……」
「無駄口叩く暇があるならさっさと走るじゃん!」
彼は校庭のトラックを走っていた。平均的な持久走よりも速いペースで。彼は黄泉川の提案を受けてトレーニングを受けている。今ジョジョがやっているのは彼女がよしというまで走り続けなければならないマラソンである。傍から見れば体罰と言われそうではあるが、この終わりがないマラソンを行うのはただの根性入れのためでもいびりのためでもなく、レベルを上げるためには自分の限界を超えることを体感することが重要であるという彼女の考えがあるからだ。
「……も…もうム…リ――」
更に数週回ったところでジョジョは倒れた。黄泉川が倒れた彼のところへ向かう。
「どうだい限界を超えるってのはどういうことか、少しは分かったじゃん?」
「ハァ……ハァ……」
「答える元気もないか。やれやれ、ほら立てるか?」
「はぁ…ありがとう…ございます…」
「よし、じゃあ次のトレーニングに行くじゃん!」
「……次?」
所変わって体育館。
「準備はいいか? まずはアタシの攻撃を受け流すじゃん」
彼女の手には武器に見立てたゴム製の棒。当ってもケガはしないがそこそこ痛い。
「は、はい!」
「それじゃ、行くじゃん!」
そう言いジョジョに向かってきた。ジョジョは言われたとおりに彼女の攻撃を受け流そうとしたが彼女の気迫にビビって中途半端な動きになってしまい一撃を肩にくらってしまう。
「イテッ!」
「そんなへっぴり腰じゃダメじゃん。相手に気持ちで負けたらその後の勝負も負けるじゃん」
そうは言っても向かってくる彼女の表情は鬼気としたものがあり、受け流しの前にまずはそれに打ち勝つことから始めなければいけないようだ。
「あの……これって限界を超えることと何か関係があるんですか?」
「直接は関係ないけど重要じゃん。強度<レベル>っていうのは0から1、1から2と段階的に上がっていくけど正直、能力として使えるのは強能力者<レベル3>からじゃん。実戦の上では低能力者<レベル1>や異能力者<レベル2>っていうのは無能力者<レベル0>と大して変わらないじゃん。能力として使えるまでの間は格闘に頼らざるを得ないじゃん。それに能力が使えるくらい強くなっても能力に頼りすぎるといざという時に困るからな。何より」
コホンと軽く咳払いをする。
「闘いの基本は格闘じゃん。武器や装備、自分の能力に頼る前に自分の体を鍛える事が強くなるための第1歩じゃん。ほら次はお前の番じゃん」
持っていた棒をジョジョに渡す。その後、攻守を交替し格闘訓練は続いた。何とか彼女に一泡吹かせてやろうと意気込んでいたジョジョであったが受けでは気迫に負けてやられ、攻めではあっさりと受け流されカウンターをくらってしまった。ケンカをほとんどしたことがない一般人と訓練を受けた警備員の間に力の差があるのは明白だった。しかしジョジョはそのことを解っていたが文句を言わず彼女に立ち向かっていった。
「ゼェ……ゼェ……」
「今日はここまでじゃん。警備員の仕事が無いときはいつでも相手してやるじゃん」
「あ、ありがとうございました」
去っていく黄泉川にジョジョは頭を下げた。結局彼女に一泡吹かせられなかったが何かしらの希望が見つかったからか彼の表情は晴れやかだった。
TO BE CONTINUED
最後まで読んでくれてありがとうございました。
プロローグはまだまだ続きます。