とある少年の波紋疾走   作:イヌガミケ

5 / 16
第5話「現実」

能力者の強盗が黒こげになってからすぐに警備員が来て、強盗2人組は逮捕された。そしてジョジョは病院に搬送された。彼が目を覚ましたのは病室のベットの上だった。

 

「気が付いたようだね」

 

彼が目をやるとそこにはカエルみたいな顔をした白衣の男が立っていた。本名は不明だが冥土返し(ヘブンキャンセラー)と呼ばれている腕のいい医者であることをジョジョは知っていた。

 

「気分はどうだい?」

 

「まあ……よくはないですね……。体中が痛いですし…」

 

「聞くところによると強盗を取り押さえようとして返り討ちに遭ったらしいね。検査の結果、肋骨の骨折に右足の骨折、その他諸々で全治1ヶ月の大ケガだったよ」

 

ケガについて詳しく話そうとした時、突然病室のドアが開き黄泉川が入ってきた。そしてジョジョに詰め寄ってきた。

 

「お前が強盗を取り押さえようとして返り討ちに遭って大ケガしたって聞いたじゃん。どうして何も考えずに無茶して取り押さえようとしたじゃん! 相手が能力者かどうかも考えずに! 能力が無いうちは無茶するなとあれほど――」

 

能力が無い。強盗の言葉がジョジョの脳裏をよぎる。今までは気にもしていなかった言葉であった。しかし能力によってケガをしたことで能力が無い事が劣等感へと変わっていた。

 

「何だよ…」

 

「!?」

 

「能力能力ってそんなに能力が大事かよ! 結局能力で人の価値が決まるっていうのかよ! 力がある奴が崇められて、ない奴はゴミクズ同然に扱われるのが当たり前だっていうのか! 俺みたいな才能のない奴は能力者のいいなりになれって――」

 

パッシイィィン

 

ジョジョが声を荒げて言い切る前に黄泉川はビンタをかました。

 

「能力がないからダメだとは言ってないじゃん。アタシが言いたかったのは周りを見て、よく考えて行動することが大事ってことじゃん。確かに無能力者が能力者と戦うのは厳しいし、そのハンデをなくしたいがために焦って能力が欲しいと思う気持ちも分からなくもないじゃん。でも焦って無理をすると今回みたいなことになるじゃん。とにかく今はゆっくり休むじゃん。ケガが治ったらまた鍛えてやるじゃん。ゆっくり焦らずやればいいじゃん」

 

そう言って黄泉川が病室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

ジョジョが入院してから2週間。彼のケガは順調に治っていった。歩けなかった足のケガも松葉杖があれば歩けるようになり、その他の部位も治りつつあった。しかしジョジョの表情は暗いままだった。

 

「クソッ!」

 

彼は能力がない事を焦っていた。「ゆっくりやればいい」という黄泉川の言葉を受け取れずにいたのだ。そして彼は自分の考えが甘かったことを悟った。もし何かあっても誰かが助けに来てくれて大事にはならないだろうと。しかしそんな幻想は見事に打ち消された。そんな都合のいい話があったなら今こうしてベッドの上にはいない。自分は特別だと思っていた。この世界を知っているが故に。まるで神にでもなっていたかのように思っていた。ご都合主義で自分の思い通りにいくと思っていた。

 

「力が欲しい……」

 

この世界でもやっていける力を今すぐ欲しいとジョジョは思った。そう考えていると、

 

「力を手に入れて何がしたいんだね?」

 

いつの間にか病室の中にあのときのカエル顔の医者が立っていた。

 

「ノックぐらいしたらどうですか?」

 

「ノックはしたし、もしもしも言ったよ。でも返事がなかったんでね。心配になって入ったんだ」

 

「……それで何の用ですか」

 

「ケガの具合がよくなっているのに浮かない顔をしていたからね。何か困ったことでもあるのかと思ってね」

 

「別に困ったことなんてないですよ。あるとすれば毎日ベッドの上でゴロゴロするのが退屈なことぐらいですよ」

 

誰とも話したくなかったので適当な返しをするが医者は問い詰めてきた。

 

「能力が無いことを気にしているのかい?」

 

「べ、別にそんなことは……」

 

「2週間程前の先生とのやりとりを見ていればなんとなくだけど分かるよ。自分は能力がないから大ケガを負った。だから思った。力が、能力が欲しいと。それも今すぐに。だけど彼女の言っていたように今は無理をしないでゆっくりとケガを治すことの方が重要だよ。それに無理をして力をつけるよりも自分にできることをやったほうがいいと思うよ」

 

「……やれやれ……最近の医者はお悩み相談室みたいなことをするんですか?」

 

「僕の本業は心理カウンセラーじゃない。医者だ。けど医者は患者の体だけでなく心も治すのが仕事だと思っている。体だけ治すのならロボットにやらせればいい。でも言われたことしか出来ないロボットでは人の心を治せない。だからこそ僕みたいな人間の医者がいると思うんだ」

 

その場しのぎの言葉ではない。彼の言葉からは医者としての使命感、信念が表れていた。

 

「力を手に入れて君は何をしたいんだね」

 

医者が再び口を開いた。その迫力にジョジョは思わずたじろいだ。

 

「それは…力があればこんなケガだってしなかったし……悪い奴らだっで……」

 

「いいかい? 力を持つという事は責任を伴うということなんだよ。持つ力が大きくなるほど負う責任は大きくなる。大きい力を使えば人を助けることが出来るかもしれないが使い方を間違えれば人を傷付け、時には殺めてしまうことだってある。そうなった時、君は残された者の悲しみや憎しみなどの思いを背負っていく覚悟はあるのかい?」

 

物腰は柔らかかったが力強い迫力にジョジョは何も言い返せなかった。その場にいることが気まずくなった彼はベッドから降りて松葉杖を掴み病室の外へと歩き出した。

 

「どこへ行く気だね?」

 

「……外の空気を吸いに」

 

「窓を開ければ外の空気は吸えるよ」

 

カエル顔の医者の言葉を無視し、ジョジョは病室を出て行った。

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。