とある少年の波紋疾走   作:イヌガミケ

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第6話「波紋」

「(自分に出来ることか……。とは言っても能力が全てという風潮の学園都市で無能力者が出来ることなんて限りがあるんじゃあないか……? あいつは医者だからいいものの、俺はどうすればいいっていうんだ!)」

 

 病院を出たジョジョは河原を歩いていた。

 

「(……佐天さんもこういう気持ちだったのかなあ……。周りは能力者で自分は無能力者。いつも彼女たちの活躍を見ているだけ。はあ……もう武装無能力集団(スキルアウト)にでも入っちまうかなぁ)」

 

 そんなことを考えながら歩いていると、道の端っこにあぐらをかいておにぎりを食べている外国人の男が目に入った。それ自体は特におかしくないが白のスーツに白黒のシルクハットというこの学園都市では浮いている格好だった。

 

「(あの服装……どこかで見たような)」

 

 そう思って外人を見ていたら目が合ってしまった。ジョジョは咄嗟に目をそらしたが手遅れだった。外人は、

 

「何か困っているようだな少年」

 

 と話しかけてきた。日本人と変わらない流暢な日本語にジョジョ驚いていたが外人はそのまま話し続けた。

 

「どうやらケガで困っているようだな」

 

「(そりゃこんな状態を見れば誰だってそう思うだろ)」

 

「どれ。一つお主に面白いものを見せてやろう」

 

 そう言って外人はなんと座ったままの姿勢で数mの跳躍をした。そのままジョジョのところまで飛んでいき、

 

 パウッ!! と、ジョジョの胸に指を突きたてた。

 

「グエッ」

 

 いきなり胸を殴られ前に倒れて地面に手を付いてしまう。

 

「グッ、い、息が……」

 

「そうそう。肺の中の空気を1㏄残らず絞り出せ」

 

 突然の出来事で混乱していたが状況が分かってくると今度は怒りを露わにするようになった。

 

「テメェ……ハァハァ……ケガ人に…ハァ…何しやがる!」

 

「ワシはお前さんのためにやったんだがな」

 

「…………チッ」

 

 このケガじゃ満足に殴ることもできない。何よりあんな跳躍をする奴に勝てる気がしない。直感でそう思ったジョジョは松葉杖を拾い来た道を引き返していった。去ろうとした時、シルクハットの外人はジョジョが倒れていたそばの枯れかけた花が綺麗に咲いているのに気付いた。

 

 

 

 

 

 河原から戻ってきたジョジョは病院のベッドの上で寝っころがっていた。

 

「(今日は厄日だ…… カエルには説教をされるわ気分転換に散歩してたら変な外人に胸を殴られるわ病院に戻ったらまたカエルに説教されるわ)」

 

『外出するのは構わないが、ひとこと僕に言ってくれないと困るよ。特に今みたいな身体の状態だと咄嗟の時に動けなくてトラブルに遭うかもしれないからね』

 

 カエル顔の医者の言葉を思い出す。

 

「(さっき遭ったっつーの。それに殴られてから変な呼吸は続いているし。あの時はまさかとは思ったけどケガとかは治ってないし体も軽くなっていない。あの外人はただの紳士かぶれのおっさんだったみたいだな。あーあ本当についてない。もう寝よ)」

 

 そのまま深い眠りについた。この時ジョジョは体の中である変化が起こっている事に気付いていなかった。そしてその変化がッ! あの一撃かッ! 彼の運命を変えることになるッ!

 

 

 

 

 

 次の日の朝。起きたジョジョは体の違和感に気付いた。

 

「痛みが……消えてる!」

 

 なんと骨折した箇所の痛みがほとんどなくなっていたのだ。

 

「まさか…! じゃああの外人はッ!」

 

 もしや……! そう思いジョジョは病室を飛び出した。昨日まで松葉杖がないと歩けなかったのが嘘みたいに軽やかに。

 

「走っても痛みがない。やっぱりこれはッ」

 

 

 

 

 

 河原に着くとあの外人はいた。

 

「やあ、また会ったな少年。今日は昨日の腹いせに来たのか?」

 

「あなたは……もしかして波紋使いですか?」

 

「! お主、波紋を知っておるのか」

 

「…………昔読んだ本の中に書いてあったんです。不思議な力でケガを治したり普通の人よりも長く生きたりする技があると(さすがにマンガであんたが使っているのを見たとは言えないよな)」

 

「ほう、そうか……。ではお主はなぜここに来た。ケガを治してくれた礼でも言いに来たのか?」

 

「お願いします。僕に波紋を教えてください」

 

 外人は黙り込む。さっきまでの冗談交じりではなく真剣な顔つきでジョジョに尋ねる。

 

「……なぜ波紋を学ぶ?」

 

「えっ?」

 

「お主は何故に波紋を学ぶ? 強くなりたいのならワシでなくとも他で訓練すればよかろう」

 

「それじゃあダメなんです!」

 

 ただ腕っぷしが強いだけではここではやっていけない。アイツらと渡り合うためには何かしらの特殊能力が必要だ。そう考えていた。ではなぜ波紋を選んだのか。元々ジョジョが波紋に興味があり、たまたま会った人間が波紋使いだったからか? それもあるかもしれない。ただ確実に言えることは今は藁にもすがる思いであるということだ。

 

「少年よ強い力を持つという事は大きな責任を持つという事だ。それに波紋を身に付けるという事は責任だけでなくこの先訪れるかもしれない過酷な運命をも背負っていくことになる。お主にはそれを背負う覚悟はあるか? それがないのなら力など持たずに静かに暮らす方が有意義じゃぞ」

 

 力と責任。カエル顔の医者と同じ事を言った。しかし力を身に付けたがために残酷な死を迎えたであろうこの男の言葉には重みがあった。

 

 そう。今ならまだ引き返せる。余計な事に関わらず責任も負わずにこの世界の一員として平和に暮らすのも悪くないかもしれない。しかし元の世界に戻れず、知り合いもいない中で一生を終えるというのは15歳の彼にっとって酷なことだろう。だが無闇に首を突っ込んだらこの前のように大ケガを負ったり、下手したら死んでしまうかもしれない。どうしたらいいか悩んでいると頭の中で声が聞こえた。

 

『何? 目的を果たす時に存在するリスクのせいで考えがまとまらないだって? それはリスクというものをマイナスに捉えているからだ。……ここまで言えばもう解るだろう?』

 

 声はすぐに聞こえなくなったがどういう意味なのか理解した。そしてジョジョは逆に考えた。ここでの死ぬかもしれないリスクというのは能力者などの戦いである。ということは不思議な力を持つ能力者と戦うという事は元の世界ではできないような体験――すなはち冒険ができるのではないか。『冒険』に憧れを持っているジョジョは考えた。ここはとあるの世界。アイツらとこの世界の物語を作っていくと考えると面白くなってくる。その中で元の世界に戻るための手がかりを探す。探している途中で『戦い』というリスクが出てくるかもしれない。しかしそれは物語を面白くするための冒険という楽しみであり、それを克服するために波紋を学ぶ。そう考えれば力をつける理由になる。マイナスに捉えがちリスクをプラスに考えたことで迷いはなくなった。そして、

 

「やります!」

 

 力いっぱいの返事をした。

 

「どんな困難も乗り越えてみます!」

 

「ふむ、いい目をしているな。よかろう! 明日から修業を始める。それでお主の覚悟を見定める」

 

「はっ、はい!」

 

「ところで自己紹介がまだだったな。ワシの名はウィル・A・ツェペリ」

 

「(やはり…)僕は武城譲治。…………みんなからは……ジョジョって呼ばれています」

 

「何っ! お主、今何と!」

 

「ジョジョです。武城の城と譲治の譲をくっつけてジョジョです。どうしたんですか血相を変えて」

 

「いや……少しな……。時にお主、家族にイギリス人の家系の者はいるか?」

 

「いえ。僕の知っている範囲では家族は全員日本人です」

 

「そうか……」

 

 彼の反応を見てジョジョは確信した。この男は間違いなくジョナサン・ジョースターに波紋を教えたツェペリ男爵だ。

 

「では僕はこれで」

 

「う…うむ。明日の8時だ。遅れるでないぞ」

 

 ツェペリと修業の約束したジョジョは河原を後にした。彼の表情は明るかった。彼にとってはこの外人――ツェペリとの出会いが一筋の希望の光に見えたのかもしれない。が一つ気になることもあった。

 

「なんであの人がこの世界にいるんだろう?」

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 




 ご精読ありがとうございました。
 非常に時間がかかりましたが、次回からいよいよ波紋の修業が始まります。
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