とある少年の波紋疾走   作:イヌガミケ

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第9話「反省」

もうダメかもしれない。これから背中に鈍い痛みが襲い掛かる。上条はそう思いながら女の子を庇っていた。しかしいつまで経っても背中に痛みを感じなかった。不思議に思いおそるおそる振り向くと自分と不良の間にジョジョが立っていた。ジョジョが鉄パイプを左腕で受け止めていたのだ。

 

「オラッ!」

 

そして空いていた右手で不良を殴り飛ばした。

 

「大丈夫か上条」

 

「お、俺は大丈夫だけど…お前は」

 

心配する上条にジョジョ袖をめくって左腕を見せた。普通ならくっきりと痣が出来ているはずだが彼の左腕はほんの少し色が青くなっている程度だった。

 

「大丈夫だ、問題ない。それよりも」

 

ジョジョは上条の左腕を見る。

 

「お前の左腕は大丈夫そうには見えないぞ」

 

よく見ると上条の腕から血が滴っていた。さっきの不良のナイフで切ったのだろう。吹き出すほどではないが早く止血しないとマズそうな出血量だった。

 

「これ……ヤバイよな。早く病院に行かないと……」

 

「いや。ちょっと待ってくれ」

 

そう言ってジョジョが上条の左手に両手をかざす。

 

コオォォォー! と奇妙な呼吸音と共にジョジョの両手がほのかに光りだす。上条は左腕が温かいものに包まれたように感じた。数分後、光が収まると流れていた血が止まっていた。

 

「ハァ…ハァ…とうだ? 痛みとかはないか?」

 

「あ、ああ。でもお前、能力者だったのか?」

 

「まあ厳密に言うと違うんだが……まあ似たようなもんだよ。それよりも早く警備員に連絡しないとな」

 

 

 

 

 

警備員が来るまで女の子の介抱をし、来た頃合いを見計らって2人はスーパーへ向かった。

 

お目当ての卵は既に売り切れていた。

 

「不幸だ……」

 

貴重なタンパク源を確保できずに嘆く上条と別れ、部屋に戻りベットに横たわった。そして自分の右手を見る。

 

彼は初めて人のために波紋を――力を使った。そして彼は気付いた。今まで自分のために力を使っていた事を、昨日自分がしたことが愚かだった事を。波紋を学ぼうと決意した理由も自分本位。自分を見下した相手を倒したのもムカついたからだ。だが上条は違う。不良を倒すことしか考えていなかった自分とは違い、女の子を助けることを考えていた。上条は、いや上条だけじゃない。御坂や一方通行――最初の頃はアレだったけど、みんな人のために自分の力を使っていた。

 

「まさか主人公に説教されるとはな…」

 

直接面と向かって言われたわけではない。だが彼があの不良に向けて言った言葉はまるで自分に言われているような気がした。そして数十分程前のムシャクシャしていた気持ちは収まっていた。

 

 

 

 

 

翌日。放課後にいつもの河原に向かった。修業している河原に着くと彼が座っていた。

 

「来たかジョジョ」

 

そう言い、彼――ツェペリは立ち上がりジョジョと向かい合った。波紋を教えていた時とは違い、近寄りがたいオーラを出していた。マンガなら「ドドドドド」と表現する程だ。

 

「答えを聞かせてもらおう」

 

彼の放つ気迫に押されながらもジョジョは答えた。

 

「……俺は初めて波紋を……『力』使った時、自分のために使っていた。ムカつく奴をやっつけるために。でも昨日解ったんです。この力は人を助けるためにあることに。先生。もう一度俺に波紋を教えてください。波紋で人を助けたいんです!」

 

その場で正座して頭を下げた。土下座をしたのだ。それを黙ってみていたツェペリは口を開いた。

 

「ジョジョ。お主の気持ち、確かに受け取った。その気持ちを忘れぬように精進するのじゃ! さあ、1日2日とはいえ修業が出来なかった分の穴は大きいぞ。早く頭を上げてその分の遅れを取り戻すのじゃ!」

 

「先生ッ……はい!」

 

こうしてジョジョの波紋修業が再開された。

 

 

 

 

 

「上出来だジョジョ。2種類の波紋を同時に操れるようになったな。これからは組手による実践訓練に移るぞ」

 

数日後、水面の上でコップの水を操ることに成功した。

 

修業も一段落したと思い水面から戻るとツェペリは構えをとっていた。

 

「ほれほれ、のんびりしている暇はないぞ。さあどこからでもかかってくるがよい」

 

「では……!」

 

ジョジョはツェペリの胸にめがけてパンチを繰り出した。ツェペリはそれを軽々と手の平で受け止めた。その時ジョジョは電流が流れる感覚がした。思わず怯んでいると腹にパンチを叩き込まれる。もちろん波紋付きで。

 

「グェ」

 

パンチの衝撃と波紋による衝撃でうずくまってしまった。

 

「波紋で防御ができるようになったみたいだがまだスピードもパワーもないな。攻撃のときは拳に、防御のときに防ぐ箇所に波紋を瞬時に流せるようにするんだ」

 

「ハ……ハイ……」

 

 

 

 

 

「今日の訓練はここまでだ」

 

結局ジョジョは1度もツェペリに攻撃を当てることができずに終わった。

 

「ときにジョジョ。お主、以前に何か武道を習っていたのか? 動きに思ったほど無駄が無かったが」

 

「え…ええ。2カ月ほど前に担任の先生に鍛えてもらったんです」

 

「なるほど。では明日からは波紋を使いこなすことに重点を置くぞ」

 

 

 

 

 

ジョジョが組手の修業を始めてから数日後、買い物の帰り道で「それ」は起こった。いつものように夕飯の食材を買って帰る途中で6人程の不良に絡まれているカップルを見つけた。助けに入ろうかと考えていたらなんとカップルだと思っていた2人は上条と御坂だった。瞬間ジョジョは思い出した。ここはあの2人が初めて会うシーンだと。そして彼の予想通りに事は進んだ。上条が不良たちに何か言う。彼らとは少し距離があったためはっきりとは聞こえなかったが、何を言っているのかは理解できた。

 

「オマエダアァァァ!」

 

そして彼のセリフに怒ったであろう御坂が電気を放つ。その電撃で周りの不良は黒こげになるが上条だけはそれを打ち消す。そして上条が逃げる。この一部始終を見ていた彼は不思議な気持ちになった。まるで歴史的な瞬間に立ち会ったような感覚だった。

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 

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