Feta l stale eight 作:ペリアクチン
──
ざざーん、と。
どこかチープな……
それもそのはず、目の前には大海。ここは港。曇り空にしては、遠くの水平線まではっきり見える。
ざざーん、ざざーんと、寄せては返す波は一見して大海原のソレだというのに、どうしてだろう。
その大海原が、粘土細工に色を塗って、
これは大海原へ対する侮辱だろうか。
それとも、大自然に対する不慣れだろうか。
一つ言える事があるとすれば――ここ。
気分のすぐれない、どうも晴れやかな気持ちになれない第一印象だったと、そう言えるのだろう。
◆ ι ◆
それがこの世界における俺の名前だった。
……うん。
言いたいことはわかる。
モロパクじゃねーか、と。そう言いたいのだろう事はわかる。
かくいう俺も、自分のフルネームを知った時は唖然とした。そういうことしていいと思ってるんだ、と思った。
ただまぁ、なってしまったものはどうしようもない。
ばぶぅばぶぅとこの世に生まれ落ちた俺は、特に聞いたこともない地名と聞いた覚えのない友人に囲まれて、小学生までの間をスクスクと育たせてもらった。
何か大きな火災があったわけでもなく、祖父、もしくは父親が死ぬということもなく、銀髪赤目なロリ従姉がいるというわけでもなく。
特に体を鍛える事もなかった。むしろひ弱である。名前に反してヒョロッヒョロである。
そんな感じで、小学二年生。
転機が来た。
両親の転勤により、引っ越すことになったのだ。
親友たちとお別れ会をし、子供たちの間で流行っていた戦隊モノロボットの食玩の部分部分を譲り受け、再会の約束をして故郷を去った。
荷物を引越屋に頼んだため、圧迫されない快適な自動車の中。
運転席と助手席に座る両親に、そういえば、と。
あることを尋ねた。
「これから行く場所って、どんなとこなの?」
……ぶりっこぶりっこなのは認めよう。
「海も山も川もある街よ」
母親が言う。
「へー、名前はー?」
元居た町は三船市だった。
さて、新しい街はどんな名前なのか。
そんな、軽い気持ちだった。
軽い気持ちだった俺に――父親は、ルームミラー越しに言ったのだ。
「フユキ。フユキ市、だよ」
「……ふぁ?」
青天の霹靂であった。
◇ μ ◇
まぁ、冒頭でも話したように、俺が来たのはフユキはフユキでも不行市という、山に囲まれ海に面した、行き止まり、という意味の込められた街名だったらしい。スノーなほうじゃなくて安心した。
引っ越し先も武家屋敷なんてことはなく、近くにヤのつく人の家もなさそうだったのでさらに安心。
ご近所さんへあいさつ回りに行ってくる、と母親は出かけていき、その後すぐに届いた引越屋の荷物を父親が受け取り、荷ほどきが始まった。
俺は危ないからと、庭へ追いやられた。
仕方がないので落ちていた枝葉を手に取って、自分でもよくわからない顔なのかヒトなのか動物なのかをグリグリと書き連ねていると、不意に影が差したのを感じ、うつむいていた顔をあげる。
そこには、俺と同い年くらいの女の子の生首が。
あ、いや、ホラーでなく。
石垣の上から出せるのが首から上のみという低身長だからこその、生首が。
興味津々、と言った様子で俺の事をガン見していたのである。
「……」
「……」
沈黙。
見つめ合って五秒。これ以上見つめ合っていると恋に落ちてしまうと誰かが歌っていた。
しかし女の子は目を背けなかった。ならば俺も、負けじと見つめ返す。
「……」
「……」
五秒どころか、十秒……いや、一分くらいは経ったかもしれない。
ようやく、耐えきれなくなったらしい……女の子が、口を開く。
「――久しぶり!」
――……どちら様?
◇ ν ◇
「私は、
「え、あれ、知り合いじゃないの?」
「やだ、ナンパ? 初めましてだと思うけれど」
名前のインパクトにツッコもうとして、その後の言葉の方が気になってツッコんでしまった。
久しぶり、って知り合い以外に使わない……よな?
つか、小学生がナンパ? て。おこちゃまに手を出す趣味はない。
「んじゃ、初めまして。
俺は江見八代。エミだと女の子みたいだから、ヤシロって呼んでくれよ、トオサカ」
「トオサカじゃなくて、トオサ! でもミョージで呼ぶとお父さんみたいだから、私もカリンって呼んでよ」
……遠坂じゃなくてトオサなのね。俺もまーまーパチもんだけど、この子もパチもんだなぁ。
「よろしく、花梨。それで、何の用?」
「別に。この時期に引っ越してくる人は珍しいから、気になっただけ」
「珍しい? そうなの?」
「うん。だから、この不行の街の次期セカンドオーナーとして、見てきてほしいって頼まれたの!」
……今度はがっつりそのままの単語が来ましたね。
ん? あれ、でも、ということは。
「お父さんの名前、聞いてもいい?」
「お父様? お父様は、
ホッ……いや、トオサ カ
おいおい。
「それで、なんで久しぶり、なんて言ったの?」
「なんで、って……あれ、なんでかしら?」
「ヘンなの」
「変でいいじゃない。その方が楽しいわ、きっと」
変なのが楽しいのは子供の内だけだろうなぁ、きっと。
ま、そんなことは小学生の身分には関係ないか。
「俺、今日この街に引っ越してきたんだ。よろしくな」
「だから知ってるって。変なのはオタガイサマじゃない? 八代くん」
「……そうかも」
引っ越しが珍しいから見に来た、という子供に何言ってるんだ俺。
いやホントに。
「まぁ、いいわ。ヘンなの同士、よろしくね」
「ん、よろしく」
手は握らない。
だって二人の間には、石垣があるから。
物理的に届かない。
「お盆が終わったら、転校生ね」
「うん。同じクラスだったら、ホントによろしく」
「勿論。あ、それじゃ、私はこの辺で。お昼までには帰らないと、お父様に怒られちゃうから」
ばいばい、と手を振って。
花梨の生首は、その場から姿を消した。
さて、と。
父親に、転校する学校の名前でも聞きますかね……。
◆ Д ◆
「ボクは
「でも上級生には負けるよね?」
「チッチッチ、甘いな江見。ボクは秀才だからね、既に六年生までの授業内容は把握済みなのさ」
「ほんとに?」
「あぁ。だからさ、江見。わからないところがあったら遠慮なく聞いてくれていいよ。この! 帆奈水原学園の秀才であるこのボクにね!」
「うん、頼りにしてる」
それはまぁ、予想していた自己紹介ではあった。
ワカメ……というよりはモズクが頭に乗っかっているようなその少年は、キザったらしい口調で、しかしどこか憎めない顔で言ってくる。
口ぶりもまた、言っている事が事実なら素晴らしい事であるし、それを他者に分け与える事になんの躊躇いもないというのは、流石子供の純粋さ、もしくは彼の生まれ持った人徳なのだろうことが伺える。
「江見、俺の名は
「二年生で生徒会長が出来るの?」
「何、歳は関係なかろう。必要なのは、悪を見逃さず、罰する心だ」
「ほへぇ」
さっきから聊か無理矢理すぎやしませんか、と思いながらも、メガネの少年を観察する。
厳しそうな口調、瞳。しかしその奥にあるのは……なんだろうな、慈愛? 慈愛の心をもつ小学生? ナニソレコワイ。
「ところで江見、生徒会に入る気は」
「うーん、ごめん。まだ決められないかな」
「そ、そうか。うむ、選択肢を狭めるのは良くない事だな。あいわかった。だが、気が向いたらのぞきに来てくれ」
「うん」
聖はそう言って、自分の席に戻っていく。
時計を見ると、2時間目の始まる時間だった。
槐を見る。
「ボクも戻らせてもらうよ」
「うん。それが良いと思う」
二人とも、俺の席に集まってきていたから、特に離れているわけでも近いわけでもない席へ戻っていく。
そうして、教室のドアが静かに開かれた。
「社会科の授業を始める」
……この人殺人拳とか使わないよね?
◆ Д ◆
夕暮れ時。
小学生の有り余る元気に混じって放課後までサッカーをし、ところどころを汚しての帰路。
ヒョロッヒョロとはいえ、その程度の体力はあるのである。
まっすぐ家に帰るよーに、との言葉を受けて、その通りにまっすぐ帰る。寄り道なんてしない。そもそも何がどこにあるかわからないのだから、そんなことをすれば迷子一直線である。
網掛けのような空がグラデーションに追いやられ、じくじくと紫色に浸食されていくのを上の空で眺めつつ、帰宅。
インターホンを押して、ただいまーと声を発する。
だが、返りはなかった。
「……?」
新居だというのにインターホンが壊れているのかと、不満と疑問を抱きつつ、玄関扉をノックする。
呼び出し音よりノックの方が聞こえるなんてことはありえないのに、それでもやってしまうのは確認のためだったのだろうか。
何の?
「……ただいまー?」
まるで。
まるで、太古の昔から。遥か昔から。大昔から。
その扉に、鍵が掛かっていないことをしっていたかのように、俺の手はドアノブを握り──回した。
何の抵抗もなく回るそのドアノブに、違和感など些末も覚えることなく、それを開く。
視界に広がったのはまず、黒だった。
まず、黒だ。
玄関にある靴でも、靴箱でも、段ボールでも、廊下でもなく。
一面――見える限り、全ての場所にこびりついた黒が、俺を出迎える。
墨汁のはいった壺でも投げつければ、こうなるだろうか。
もしくは生きたタコをゆっくりと擦り付ければなるのかもしれない。
ゾリゾリと、すりおろすように。
キ、と……どこかで軋むような音が鳴った。
何が軋んでいるのか。糸車か? それとも張り板か?
違う。俺は答えを知っている。
何が軋んでいるのか、知っている。
「よォ、ボウズ。覗き見とは、良い趣味してるじゃねェか」
声。
お盆いっぱいを使ってようやく覚えた家の間取りの、廊下の角から声がした。
キ、キ……と、きしむ音が近づいてくる。
俺は動かなかった。
玄関扉を開けたまま、その音がする方をじっと見つめていた。
そうして、ソイツは現れる。
「なァ、こんないい夜に、どうだ、ボウズも」
「一緒になってなぁ」
「踊ろうや、精々、精一杯」
カタカタ、カタカタと顎を鳴らし。
キィキィと耳障りな音を立てて。
黒のこびりついた世界に、よく映える――白。
白。白。白の群れ。
カラカラ、キィキィ、カタカタ。
乾いた音は、乾いた黒ずみを踏み割りながら。一歩、また一歩と。
こちらへ近づいてくる。
「命の限りさァ!」
夥しい量の、人骨の群れが――!
◆ Д ◆
同時刻。
十鎖邸――。
パチパチと燃える暖炉の前。
ロッキングチェアに座る初老の男性と、その前でこぶしを握り締める少女の姿があった。
「……お父様」
「花梨。怖いのかな」
「……ええ、怖いわ、お父様」
「ああ、それでいいよ。君はそれでいい。そして、安心しなさい。君には私がついている」
男性――少女の父親だろうその人物は、コツコツと床を棒で叩いた。
棒。右足の中腹辺りから生えた、その義足で。
本来であれば不安をあおる事になりそうなその行為は、しかし、少女の恐怖をぬぐう。
「……うん、大丈夫」
ぎゅ、と、その小さなこぶしを……こぶしの中にある宝石を握り締めて、少女は頷いた。
そうして、部屋の暗がりにあるソレ――床に描かれた方陣のようなものの元へ向かう。
「素に銀と鉄――」
静かに、しかして、小学生が出すものにしては厳かで――あまりにも儚いその声に、父親だろう男性は目を細める。
一言一句、全く違えることなく発する少女の姿は頼もしくもあり、同時に寂しいもので、さらに言えば――少しだけ、恐ろしかった。
記憶はあれど。
この娘を愛し、この娘を育てたその記憶はあれど。
男性には――己に最も必要と言えるモノが、なかったから。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
それでも、もし。
この方陣から放たれたるものが、娘を害そうというのなら。
その身を挺する覚悟までは、決めていた。"ソレ"がなくとも、彼は父親だったのだ。
そしてその覚悟は、杞憂に終わる。
「――サーヴァント・アーチャー。真名をカルナ。宜しく頼む」
娘が呼び出したものは――屈指の大英雄だったのだから。
◆ Д ◆
さーぶあんといちらん
| クラス | 真名 | マスター |
| セイバー | ??? | ??? |
| ランサー | ??? | ??? |
| アーチャー | カルナ | 十鎖花梨 |
| ライダー | ??? | ??? |
| キャスター | ??? | ??? |
| アサシン | ??? | ??? |
| バーサーカー | ??? | ??? |
※あ、この表はFate二次で使いたい方入ればどうぞ。誤字報告とかからまるまるコピペできます。