糖分多量の恋愛短編集   作:黒百合すずめ

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作者が疲れてる時に思い付きで書いた物です。
疲れてる時は糖分を取るをコンセプトに過剰な糖分で本作品は構成さています。
作者自身も読み直して画面を叩き割りそうになりました。



連載
幼馴染と、とある冬の日(前編)


未熟な愛は言う

 

「あなたが必要。だからあなたを愛す」

 

成熟した愛は言う

 

「あなたを愛している。だからあなたが必要」

 

エーリヒ・フロム(1900年3月23日~1980年3月18日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると知らない天井だ・・・・なんて事はなく、

いつも通りの自分の部屋の天井だった。

カーテンから淡い光が漏れて部屋の中を薄暗く照らしている。

薄暗いと言うことはまだ太陽は水平線から顔を出してないのだろう。

天井をぼーっと眺めてたが、自分以外の息遣いが聞こえる事に違和感を感じ、

寝返りを打つと幼馴染.....「奏」の寝顔が目の前にあった。

 

「なんでここに居るんだぁ。かなでぇ、お前の家はここじゃないだろう」

 

そこにいるはずのない幼馴染が居る事に驚き、思わず考えが口から漏れた。

その所為で、目の前の幼馴染の目を覚ましてしまった様だ。

 

「うにゅー.....おはよー...しゅーくん」

 

寝ぼけてるのかそのまま抱き着き上目遣いで言ってくる。

 

「わたしのうちじゃなくてもだんなさんのとなりにいるのはぁ~つまのつとめだよぉ~」

 

なんともまあ、可愛い事を言ってくれるなぁと思いながら抱きしめ返して耳元で囁く

 

「奏は寝ててもいいけど離れてくれないとご飯作りに行けないよ」

 

「それは困るぅ~。一緒に起きるからあと5分~」

 

「分かった。5分だけだからな」

 

奏は頷くとそのまま胸に顔をうずめてしまった。

奏の髪の匂いが鼻腔をくすぐる。脇に置いてある時計は6時前を指していた。

 

奏との出会いは覚えていない、幼稚園入園前から遊んでた記憶が一番古い

家が隣って訳じゃないが、田舎で隣の家が遠いこの辺りじゃ子供の数も少なく、子持ちの家庭同士の仲が深くならないはずもなく家族ぐるみで仲がいい

というか既に親公認で付き合ってる。

だから居間で親に会ってもなにも言わないだろう。

少なくとも俺の方には告白した記憶もされた記憶もない、ただ幼稚園の頃から隣には必ず奏が居た。

小学生にありがちな

 

「お前ら付き合ってるのか?」

 

というからかいも奏が

 

「うん、そうだよ、ずっと一緒だよ?」

 

と俺に微笑みながら返し、向こうは唖然としていたのも覚えている。

中学校で夫婦かよと言われても同じように返してた。

高校進学で別々になることもなく一緒の高校に進学した。

 

想い出に浸っていると5分経ったようだ。時間が経つのは早い

奏を起こさないと朝飯が作れないので仕方なく起こす。

 

「起きろ、5分経ったぞ」

 

奏は名残惜しそうに離れ目をこすりながらこちらに微笑む

 

「ん、おはよう、修一」

 

左手で髪を撫でながら挨拶を返す

 

「おはよう、奏」

 

奏は首に手を回すと目を瞑り、俺はそのまま目覚めのキスをする。

触れるだけのものだが、幸福感でいっぱいになる。

二人でベットから出て、廊下に出ると寒さが身に染みる。

秋が終わりかけ、冬はもうすくそこまで来ているのだ。

洗面所で二人並んで歯を磨き、一人ずつ顔を洗い、居間に着くと奏は炬燵に飛び込み、幸せそうににやけてる。

大方、早起きしてお弁当を作り終えてからうちに来た奏が付けておいたのだろう。

奏は居間に置いてきて、僕は台所でエプロンを巻いてから朝飯を作り始める。

炊飯器のタイマーがちゃんと作動していればご飯が炊けているだろう

今日は豆腐とキツネ揚げの味噌汁とご飯と焼き鮭、それと漬物だ。

 

お盆に3人分のご飯をよそって居間に持っていく

居間に入ると玄関が開く音がした。

丁度、早朝ランニングが趣味の父親が返ってきたようだ。

ジャージ姿の父親が居間に入ってきた。

 

「おはよう父さん、母さんはまた夜勤?」

 

「おはようございます。お義父さん」

 

「おはよう修一、奏ちゃんも、かあさんは昨日から明後日まで仕事だぞ、シャワー浴びてくるから飯は後でいい」

 

首にかけたタオルで汗を拭きながらそのまま台所の方に抜けていく。

 

「奏、飯食べてさっさと行こう」

 

「うん、そうだね」

 

二人とも箸を持つと

 

「「いただきます」」

 

奏と二人の食卓、今日も飯がうまい

食べ終わると父さんの分の朝飯だけおいて二人で片し、食器を洗っていると後ろから奏が抱き着いてきた。

 

「しゅう君、私、一回帰って制服に着替えてくるね」

 

丁度洗い終わり手を拭きながら後ろを振り向き頭を撫でる。

 

「ああ、また後でな、すぐそことはいえ、気を付けろよ」

 

「うん、また後でね」

 

奏は名残惜しそうに離れると、食器棚の脇にあるエプロン掛けに掛けてあったカーディガンを羽織ると玄関へ駆けていった。

パジャマにカーディガンの服装は褒められた物ではないが、どうせ田舎でこの時間だ、誰も見まい

自転車で3分も掛からない距離だが、間に家は3軒もない

気を取り直し、エプロンを外しエプロン掛けに掛け自分の部屋に戻る。

壁に掛けてある制服を取りさっさと着替える。

最後に黒いコートを着て、マフラーを巻き手袋を嵌めて居間に顔を出すと父さんが飯を食べていた。

 

「行ってきます。父さん、茶碗は水に漬けておいてね、帰ったら洗うから」

 

「行ってらっしゃい、今日は仕事で戻らないから家事よろしく」

 

玄関を出て車庫から自転車を出して跨り、奏の家へ急ぐ、家から続く一本道の先は朝靄で霞んでいた。

空を見ると暗かった空は白んで来ていた。

奏の家に着くと車庫に自転車を仕舞い、引き戸を叩き、土間に入る。

土間と言うのは古い家にある玄関みたいな広い多目的空間である。

ガラス張りの障子の向こうの居間に奏と奏の家族の姿が見えた。

手袋を片方外すと居間に叫ぶ

 

「奏ー、行くぞー」

 

居間から奏の声が聞こえた。

 

「今行くー」

 

ガラスの向こうで奏と奏のお母さんが立ち上がり二人が出てくる。

 

「おはよう、修一君、いつも奏のお世話ありがとうね」

 

「いえいえ、こちらこそ、奏にはいつも色々お世話になっております。」

 

奏はローファーを履き、置いてあったカバンを取り、マフラーを巻いてから、こちらに来て俺の腕を取り、手袋を外した方の手を握る。

微笑ましそうに奏のお母さんがこちらを見てくるが気にしない。

 

「行ってらっしゃい、修一君、奏」

 

「「行ってきます」」

 

玄関から出るとそのまま自転車を置いて歩いてバス停に奏と向かう。

時間は掛かるが奏と少しでも一緒に居たいので奏の家からは歩いて向かうのだ。

奏の家の敷地を出て、道を二人並んで手をつないで歩き始める。

冬に差し掛かり紅葉していた木々もその葉を落とし始め、北風がそのさみしくなった木々の合間を通り過ぎていく。

僕は奏の手を握りながら稲刈りもとっくに終わった田んぼ道を歩き、バス停までの歩みを進める。

ふと田んぼの向こうを見ると朝日が顔を出そうとしていた。

バス停に着く頃には互いに話が止み待合室の長椅子に二人で座りバスを待つ

奏は寄り添うように隣に座り頭を傾けると僕の肩に寄りかかった。きっと眠いのだろう

やがて山の方からやってきたバスに乗る。都会の方では見ない古めかしい床板が木で行先表示幕も電気式ではなく、未だに幕を回して表示を変えるタイプの物だ。

乗り込んだバスは田舎の路線の為かいつも通り空いており、指定席になりつつある一番後ろの席に座る。奏は窓側だ。

奏は目を擦りながら小さく欠伸をし、こちらに寄りかかって来た。

肩を抱いてこちらに抱き寄せると耳元から小さく寝息が聞こえてきた。

バスのエンジンの振動の心地よさも相まって眠ってしまったのだろう

奏越しに見える窓の外には朝日に包まれ淡く輝く小川と稲刈り後の少し寂しい田んぼとが見えた。

 

その後、バスは駅に着いたので僕は奏を揺さぶり起こした。

 

「奏、駅だぞ、起きろ」

 

奏は欠伸をすると目を擦り座席から立ち上がった。このままでは奏が出れないので先に僕が出る。

運転手さんに定期を見せ、奏と共に降りる。

バスから降りると目の前を無言のサラリーマンやOLが通り過ぎ、改札の方へ消えていく

時間が早いためか、まだ学生の姿は少なく話声も聞こえない駅は静かでただただ通り過ぎる人々の足音だけがこだまする。

二人で周りと同じように改札へ向かって歩き始める。

奏は再び手を口に当てると欠伸をした。

奏を見ながら訪ねた。

 

「奏、まだ眠いか?」

 

奏は微笑みながらこちらに眠そうな瞳を向ける。

 

「大丈夫、少し早起きし過ぎただけ」

 

「眠すぎてやばいなら夜、わざわざ、うちまで忍び込みに来なければいいのに、弁当の事もあるんだし」

 

少し呆れ顔で答える。

奏は笑顔で言う。

 

「少しでも修一と居たいから、早起きで寝不足でもいいの!!」

 

正直可愛い、心に刺さる。可愛い、眠気が吹き飛ぶ。

家と名前の呼び方が違うのは周りに人がいるからだろう。

二人の時と外に居る時と学校に居る時で奏は性格変わる。いや変えているのだろう。

小学生と中学生の前半に奏との関係を周りに馬鹿にされてた事で少しだけ精神が滅入ってた時があり、その時以来、奏は外と中で性格を使い分ける様になった。

外では大人しい分、今まで以上に二人きりの時は甘えられる様になったが・・・・・・

まあ、そんなことは置いておいて、今は急ぐべきだろう、駅の電光掲示板を見ると乗る列車の発車時刻が迫っていた。

改札を通過すると奏の手を引きながら跨線橋を渡り2番線へ向かう。

1番線には信号待ちの下り列車が既に停車しており、近くの踏切の遮断機は下がっている。真っ直ぐ続く線路の先を見ると遠くに乗る予定の上り列車が近づくのが見えた。

跨線橋を下りホームへ降りると少し歩き跨線橋を支える支柱の根本へと行く、ここがいつも乗る定位置だ。

自分たちの住む町より向こう側に大きな町がないためか、ホームに入線してきた上り列車の窓から見える車内には、乗っている乗客は少なく車内は閑散していた。

圧縮空気の音とともにドアが開き、列先頭のサラリーマンから列車に乗っていく。

車内に入ると開いている席を探し、空いていたボックスシートに座る。

今度は自分が窓側で奏が通路側だ。

ふと隣を見ると奏はまだ、眠そうにしていた。

 

「奏、着いたら起こすから寝てていいよ」

 

「ん、分かった」

 

そういうと奏は目を閉じて肩に頭を預けてくる。

僕は奏を起こさない様にカバンから文庫本を取り出すと挟んであった栞を取り、続きから読み始める。

40分はこのまま列車に揺られる事になるだろう。

ふと周りを見回すとアナウンスと共にドアが閉まり、列車が動き出した。

右肩からは奏の可愛い寝息が聞こえてくる。朝日は輝きを増しながらその高さを上げていた。

 

列車が終点の駅に到着し、乗り込んだ時より増えた乗客がドアから吐き出される。

文庫本をカバンにしまうと奏を起こす。

 

「〝伊藤さん″、朝ヶ谷だよ、起きて」

 

「ん....もう朝ヶ谷?」

 

「ああ、もう着いたぞ」

 

「分かった。降りよう?〝西崎君"」

 

奏はカバンを持つと一人で列車から降り、ホームで僕を待っていた。

二人で並びほかの乗客と共にホームの階段を下りる。しかし、もう手は繋がない。

これは二人の間の暗黙のルール、それが二人の.......いや、僕の為だから

そうこうしてるうちに駅の中央改札を出る。

駅前ロータリーは多くの人や路線バス、タクシーが行きかっていた。

地元の駅前の時は違い、時間は通勤・通学ラッシュの真っ最中であり、多くの学生がサラリーマンなどに交じって自分の通っている学校へ急いでいる。

ふと空を見上げると家を出た時とは違い、空には雲が広がっていた。

 

「伊藤さん、今日は文芸部はあるの?」

 

隣を歩く奏にそう尋ねる。

 

「あるよ、西崎君は図書委員あるの?」

 

奏は学生鞄を両手で持ちながら聞いてきた。

 

「あるよ」

 

「なら一緒に帰れるね」

 

奏は、はにかみながら嬉しそうにそう言った。

奏の所属する文芸部と僕の所属する図書委員会の部室は同じ図書室を使用しているからだ。

 

「西崎さん、一限ってなんだっけ」

 

ふと度忘れしたので奏に今日の一限が何かを聞いた。

 

「一限は古典だったはずよ」

 

「ああ、確か小テストだっけか」

 

「そうよ、祇園精舎の音読と意味のテスト」

 

「意味って確かどんなに栄えてもいつかは終わりが来る。この世に変わらない物はない、それが世の理だっけ?」

 

奏は少し気に入らなそうに頬を膨らました。

 

「合ってるけど間違ってるよ」

 

「え?間違ってるところあった?」

 

奏は周りに同級生がいない事を確認すると微笑みながらいきなり抱き着いてきて、耳元でこう囁いてきた。

 

「うん、とっても重要、私のしゅう君への想いは絶対変わらないよ、絶対ね........大好きだよ、しゅう君、愛してる」

 

いきなりの事に思考停止しながらも奏を抱きしめ返す。奏から香るツバキの匂いが鼻腔をくすぐる。

そして反射的に奏に言った。

 

「僕もだよ、奏、愛してる」

 

そう言い、僕は奏の額にキスを落とした。

ゆっくり肩を掴み奏を体から話すと嫌でも奏が目に入る。

艶のある肩より少し長い黒髪

優しそうな瞳

幸せそうな表情

発達のいい体

スカートから伸びる細く奇麗な足

彼女は言わずもがな美人だ。学校でも人気がある。

奏は当たり前のように僕の事を慕って愛してくれるが、絶対僕なんかとは釣り合っていない。

それでも彼女は当たり前のように僕を選んでくれ、共に歩んでくれている。

僕はそんな奏の一途なところや真っ直ぐな性格、ときどき見せる可愛い所が大好きだ。

そんな彼女と見つめ合ってると、彼女を絶対に幸せにしなければ、もっと努力しなければと思ってくる。

そんな邪な思考が終わると何事のなかったかのように二人で歩き出す。

ここが学校へ向かう裏道的な少し細い路地なのも幸いしたのか、同じ学校の人は通らなかったようだ。

見られてたら死ねる。

 

そうして歩いていくと市街地を抜け、住宅街を抜け、周りより少し高い丘の上にある学校が見えてきた。

柊ヶ丘高校、僕と奏が1年と9か月通っている学校だ。

校門へ続く緩い並木坂を上っていると、後ろから自転車のベルの音と人の声がした。

 

「よぉ、お二人さん、おはよう」

 

声を掛けてきたのはクラスメイトで、僕の友達でもあり、クラスで人気者の高坂だった。

 

「おはようございます、高坂君」

 

「おはよう高坂、いつも大変そうだね、自転車で坂登るの」

 

高坂は涼しい顔しながら答えた。

 

「これ位の緩い坂なんとでもないさ、朝ヶ谷は坂の街、もっと酷い勾配の坂なんかいくらでもあるぞ」

 

「流石、生まれも育ちも朝ヶ谷の人は違うね、僕らは駅や学校の周りしか行かないからわからないや」

 

高坂は納得した顔で言った。

 

「まあ、駅周辺は坂があんまりないしな、電車から見えるだろ?街の景色」

 

「うん見える」

 

「見る分には緩そうな坂に見えるが結構傾斜がきついんだよ、港がなかったら間違いなく発展してなかったな」

 

朝ヶ谷はそこそこ大きな街だ、山の上から下にかけてアップダウン激しいがそこに住宅地が形成されてる。

その下に立つは、ビルが立ち並ぶ市街地と駅、そして工業地帯を要する港だ。

天然の良港があるお陰で朝ヶ谷は発展してると言っても過言ではない

 

「そうだね、父親が港の鉄工所に努めてるんだけど同じこと言ってたよ、港あっての朝ヶ谷だって」

 

「お前の父さん、鉄工所だったんだなぁ、うちの叔父さんもそこに努めてるわ、部署は?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうして奏や合流した高坂と登っていると校門が見えてきた。

今は冬で何も咲いてないが、春になれば丘の下から校門まで、並木の桜が奇麗に花を咲かせるだろう

そして校門を過ぎると高坂は自転車を止める為に駐輪場の方へと消えて行った。

僕らはそのまま、昇降口へ向かった。

靴を履き替えると奏は先に廊下に立っており、文芸部の後輩と話していた。

彼女は学校で人気者だが、そういう立場の人にありがちな浮ついた話は奏に限っては一切なかった。

それは僕が居るからだろうが、僕との噂もなく

また、かわれる事もあまりなく、むしろ不気味な位だった。

後輩と話が終わったらしい奏と階段を上がり、教室へ向かう。

教室に入ると中で談笑してたクラスメイトが一瞬こちらを見るがすぐ元に戻る。




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