真・ヒーローアカデミア転生 ヒーローが悪魔を使って平気なの?   作:もちたあ

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転生覚醒入学試験

 まさか億番煎じのトラ転を自分でやる羽目になるとは思ってもみなかった。

 

 ただ多少はオリジナリティを出そうとしたらしく、神の代わりにルイ・サイファーなる紳士が出てきた。

 

 ルイ・サイファー。それが俺の想像通りの人物なら、偽名のはずだ。死んだ俺を生き返らそうとしているくらいだから、見た目通りの金髪の白人男性ではない。

 

 ファンからは閣下と呼ばれ、物語の裏表で暗躍する大悪魔・ルシファーの全然隠れていない隠れ蓑である。

 

 そんな彼がわざわざ俺みたいな有象無象を転生させようとしてくれてるのだ。全力でお断りするしかない。

 

「ふむ? 二度目の人生を楽しみたくはないのかな? 今なら君に特別な力を授けようとも思っているのだが」

 

 天国の入口のような雲海に浮かびながら、見た目麗しい男が不思議そうに首を傾げる。それだけで宗教画のようになるんだから、人外の美って奴は凄い。

 

「いえ、その、もう十分人生は堪能しましたのでこのまま成仏させて頂ければ……」

 

 暗に仏教圏の人間だから管轄外だぞと言ってみたのだが、相手は唯一神にすら反逆した悪魔だ。効果は無かろう。それでも縋ってしまうのは人間の弱さって奴か。

 

「そうか。それは残念だ。それでは後は天使どもに任せるしかないな」

 

「……一つ確認したいんですが、天使というと、あの餃子を作るのが大好きなタイプの天使ですかね……?」

 

「餃子? ……ああ、なるほど。フフフ、確かにあの人形達のデザインは餃子だね。その通りだ」

 

「彼らのボスの頭髪はどうなってます?」

 

「未だに主であるかどうかは知らないが、見事な禿頭だったよ」

 

「全力でお話を受けたいと思います何をすればいいでしょうか!?」

 

 餃子になりたくない一心の俺に、ルイ・サイファーは苦笑する。

 

「話が早くて助かるね。何、特別何かをしろとは言わないよ。ただ新しい人生を生きて、出来れば今度は天寿を全うして欲しい。でないと……」

 

「でないと……」

 

「先程も言った通り、今度こそ天使によって、君の魂は神の操り人形に変えられてしまうだろうね」

 

 やっぱり。

 

 どうやら彼の言う天使というのは、ルイ・サイファーと出自が同じようで、現実の聖書に書かれているものではなくて、ゲーム中のぺ天使なんだろう。

 

 女神転生。通称メガテン。彼らの登場するゲームはそう呼ばれている。

 

 転生先としては相当にキツい。かなり長いシリーズだからタイトルによってブレはあるけど、基本的に世界は崩壊するか崩壊寸前で、ただの人間は悪魔と呼ばれる超常の存在の餌になるしかない世界だ。

 

 しかも宗教的な内容だから、死んでも解放されない可能性だってある。魂のような状態で地獄のような場所を永遠にさ迷うとか普通にありえて怖すぎる。

 

 それでなくてもゲームとしての難易度は高めだ。雑魚敵との戦いですら普通に殺される。

 

 歯応えがあって好きだったが、そこに転生したいかと言われれば全力で首を振るしかない。

 

「その問題は心配しなくていい。君が行くのは崩壊後ではあるが、とうに復興しているからね。しばらくは安全に過ごせるだろう」

 

「え、崩壊って大崩壊か神の御業戦争の事っすかね? 2か4の世界?」

 

 恐々聞いてみると、ルイは天使のような微笑みを浮かべた。

 

「それは生まれ変わってからのお楽しみとしたまえ。それでは、良い人生を」

 

「え、ちょっ、待っ!?」

 

 今まで感じなかった重力に引かれ、俺は新しい世界に転生した。

 

 

 

 

 そんな感じの記憶を今更思い出した。

 

 今更過ぎる。どうせなら生まれた時から前世の意識を持たせて欲しい。それかいっそ死ぬまで記憶封印される方が良かった。

 

 なんで雄栄高校受験という大一番で思い出すんだ! てか雄栄高校受験ってなんだ! メガテンじゃなくてヒロアカかよ!?

 

『どうしたのですか? 遅れますよ、羊司(ようじ)

 

「……ぅん、分かってる」

 

 学校前の公園のトイレに篭もり、ようやく手を洗い始めた俺を急かす声がした。無駄に荘厳に響いてとても人間の声に聞こえない。

 

 蛇口を閉める。トイレに他の人がいなくて良かった。もし誰かいたら、鏡相手に百面相をする羊頭の人間、なんて化け物を見られただろうから。

 

 俺が笑うと羊も笑い、俺が怒ると羊も怒る。何度か試したが、やはり鏡の向こうにいる巻き角付きのこの羊はどうやらこうやら俺らしい。

 

 よく言ってサンリオのマスコット……よく言いすぎたな、実際にはメガテンを作った会社の別ゲーム キャサリンに出てくる羊人間みたいになった俺だが、ヒロアカ世界的にはしっかり人間なようだ。今世の俺の名は七目羊司といい、雄栄高校を目指す受験生である。

 

 なんで断言出来かというと、前世の記憶だけでなく、この世界での記憶もしっかりあるからだ。前世と今世で2つの記憶がある訳だが、なんか知らんがスムーズに統合されている。恐らく閣下がなんかしたんだろう。

 

『羊司? 受付開始まで後10分ですよ?』

 

 外にいる連れが促してきた。さすがにもう雄栄に向かわないと。 

 

「分かった分かった。今行くよ」

 

 返事をして外に出た。ちょうど連れがトイレをのぞき込もうとしていたところで、真正面から目があう。

 

 そいつも人間の顔をしていなかった。

 

『全く、だからもう少し早く出ようと言ったのではありませんか』

 

 シュシュシュと音を出すそいつは、俺を丸呑み出来そうな程でかい5つ目の赤いヘビだった。それが俺の前でとぐろを巻きながら浮いている。

 

 そんなのがいれば前世の俺なら一目散に逃げる。もしくは恐怖で固まるか気絶する。そんな反応をしただろう。

 

 でも今世の記憶もある俺は落ち着いたもので、そんな怪物に話しかける度胸を持っていた。

 

「そう言うなよサマエル。十分間に合うんだから」

 

 俺が言うと、蛇の化け物は5つの青い目を全て半眼にしながらも、顔を引いていった。

 

 サマエル。それがこの化け物の名前だ。

 

 神の毒という意味の名を持つ、聖書に記された謎の天使。天使と言っても異形の存在で、翼は生えてるが12枚もあり、姿は人型ではなく見ての通りの赤いヘビ。

 

 そんなのが、俺の個性『悪魔召喚』によって仲魔(仲間の悪魔で仲魔。ちなみにメガテンでは、神も天使もみなひっくるめて、超常的存在は悪魔としている)となっていた。

 

 初めて出会ったのが幼稚園児の頃だから、もう10年近い付き合いになるらしい。

 

『それならいいのですが。あなたはこの高校に入り、学ばなければならないのですからね。ほら、急いで』

 

「お、おう……」

 

 サマエルの尻尾に身体を押され、俺は慌てて校門に向かった。

 

 ちなみにいくら個性社会で異形系がそれなりにいるにしても、サマエルの容姿と大きさは十分異常な範囲だった。そんなのが通学路にいれば、他の受験生が騒ぎそうなもんである。

 

 だが幸いな事に、サマエルは他の人には見えないようになっている。詳しい理由は知らないが、ゲームの設定的に実体化するのに必要なエネルギー・生体マグネタイトが足りないとかそんなんじゃなかろうか。サマエルって高位悪魔だし。

 

 というか俺ってサマエルを使役出来るほどレベル高いんだろうか。別に今世でも世界をかけて戦ったりした記憶はないはずだが……

 

 入試の手続きや、試験内容の説明なんかを受けてる間中、溢れんばかりに疑問に悩まされ続けた。さすがにこれ以上疑問につき合っていられないので、バス移動の最中に現状を整理する事にする。

 

 1,前世を思い出す前の俺は、ヒロアカ世界の標準的なヒーローに憧れる少年だった。

 

 2,個性は『悪魔召喚』、その能力は呼んで字の通り悪魔を召喚する事が出来るってもの。召喚にMAGやマッカはいらないが、召喚出来る悪魔はランダムな上に、本当に召喚するだけで別に契約してる訳ではない。だから召喚した悪魔は普通に襲ってきてもおかしくない感じ。敵出現用ガチャかな? 今までこれ使ってよく死ななかったな俺。

 

 3,サマエルは個性が最初に発動した時に現れた初めての仲魔。

 

 4,メガテンシリーズでのサマエルはラスボス手前の強キャラって扱い。無理矢理ヒーローランクで例えるとエンデヴァー級。間違っても幼稚園児が仲魔に出来るもんじゃない。

 

 5,現実でも聖書の中にも記載されてる程で、アダムに知恵の実を食べさせたヘビがサマエルだという解釈もある。

 

 6,そんな大悪魔が雄英に行くよう過去の俺をそそのかしている。

 

 7,背後にゲームでも原典でも散々黒幕やってる悪魔の親玉ルシファー閣下がちらついてる。

 

 ……これ絶対なんか仕込まれてるよね!?

 

《ハイスタートー!》

 

「おう……おぅっ!?」

 

 考え事しているうちに試験が始まってしまった。まだ動き出していないのは同じ会場になったらしい緑谷くらいで、後は皆街へと駆け出している。

 

『羊司、何をしているのですか。もし試験を放棄するならば、私が手を出しますよ?』

 

「ちょっ、それマズイから! ちゃんとやるから落ち着け!」

 

 俺は慌てて走り出す。サマエルが介入なんてしたら、受験生ごとあの街を吹き飛ばしてもおかしくない。

 

 俺が街に着いた頃には、早い連中はもうロボを壊し始めてた。俺も速攻で混ざらねばならない。

 

 ん、だ、け、ど……

 

 羊人間な俺だけど、別に力が人間離れしてある訳じゃない。つまりロボを壊すには個性を使う必要がある。

 

 問題はこの個性の”制御出来ない悪魔を召喚する”という能力がどれほど危険かというのを理解してしまった事だ。

 

 悪魔にも色々な種類がいるとはいえ、基本的に人間よりも強大な力を持っている。

 

 しかも人間じゃないから倫理観が通用しない。いわば核武装したライオンを野に放つようなもので、数桁単位の殺人だって簡単に行うだろう。 

 

 いくらサマエルが睨む事で無理矢理制御出来るとはいえ、ガチャでそれより強い悪魔が出たりしたら世界終わりかねな、

 

『羊司……ではしょうがないですが、ここは私が……』

 

「いややりますやりますだから動かないで!」

 

 ヘビ睨みしてきたサマエルに押され、俺は考えるのを止めた。もうどうにでもなーれ☆

 

EL ELOHIM ELOHO ELOHIM SEBAOTH(永遠なる主、ツァバトの神)

 

 俺の詠唱と同時に、空気が震える。

 

ELION EIECH ADIER EIECH ADONAI(栄光に満ちたるアドナイの神の名において)

 

 風が巻き起こった。勘の良い奴らが、何事かと振り向く。

 

「|JAH SADAI TETRAGRAMMATON SADAI《さらに口にできぬ名、四文字の神の名において》」

 

 俺の背後の空間に閃光が走る。光は線となり、紋様を描き始める。

 

「|AGIOS O THEOS ISCHIROS ATHANATON《オ・テオス、イクトロス、アタナトスにおいて》」

 

 複雑な象形が組み合わさり、魔法陣となる。空間が湾曲し、圧倒的な死の予感で、周囲が満たされる。

 

AGLA(秘密の名アグラにおいて)

 

 ここまでくると、誰もが手を止めていた。ロボットすらエラーを吐いて止まっている。

 

 観客の多さに目眩がしたが、もうこうなりゃなるようになれだ!

 

「来たれ! 悪魔よ!」

 

『応じよう、子羊よ』

 

 魔法陣から、白い風が飛び出す。それは通りを吹き抜け、行きがけの駄賃とばかりにロボを破壊する。

 

 宙を舞っているのに、蹄の音と嘶きが辺りに響いた。

 

 通り一辺のロボが消えてなくなると、風は来た道を引き返してきた。背筋を凍らせる悪寒を引き連れて、俺の前で静止する。

 

 それは体中に目のある白馬を駆る騎士だった。

 

 勿論人間じゃない。馬に乗るのは王冠を被り、身の丈以上もある大弓を構える骸骨だ。

 

 コイツも悪魔っちゃ悪魔である。だから召喚されたんだろう。でも普通の悪魔とは扱いが違う。

 

 ゲームでは隠しボス扱いされている種族 魔人。その一体であるホワイトライダーだ。

 

『俺を呼んだという事は、遂に始めるのだな』

 

 漆黒の眼窩に睨まれ、完全にビビった俺は敬語になる。

 

「あ、はい……試験で……その、ちょっとお力添えをと……」

 

『よかろう。では子羊には勝利につぐ勝利を捧げようぞ!』

 

 そう言うがいなや、ホワイトライダーは馬を駆り、空高く飛んでいった。しばらくして光の雨みたいなのが降り始め、あちこちで爆発音が鳴り響き始める。

 

 わーアローレインかなあれ。街中のロボ壊してるんかな……? この調子なら試験突破は楽勝だな!

 

 ……現実逃避してた。なんだよあれ。コエーよ。普通に死んだと思ったわ。

 

 てかあれもなんか普通に俺の言う事聞いてる……というか別に俺が命令とかしないうちに勝手に試験こなしてるよね。一体誰に試験内容教えてもらったんですかねぇ……?

 

 確実に関わってるであろう輩を俺が見上げると、サマエルは面白そうに、

 

『ふむ、面白い者を喚びましたね。この宇宙では初めて呼ばれたせいか、随分とはしゃいでいますよ』

 

「はしゃぐっておい……それよりあれ、いつもみたく制御出来る?」

 

『その心配には及びません。見なさい』

 

 サマエルが空を指し示したので見ると、ちょうどホワイトライダーが高らかに勝ち鬨を上げながら消える所だった。

 

『あれだけの高位悪魔ですから、手弁当ではそう長い時間顕現出来ませんよ』

 

「それ、サマエルにも当てはまるんじゃない……?」

 

『私は特別ですから』

 

 いや説明になってないんだが。

 

 まぁともかく、これで俺の試験は終わった。0Pロボとかは余裕で無視したが、試験突破はしてる事だろう。

 

 ホワイトライダーの攻撃で受験生に死者が出てなければの話だが。

 

 

 

 

 

 

 

 




サマエル
「毒ありし光輝の者」という背反の意味の名を持つ、謎多き天使。
その姿は翼ある大蛇で、十二枚の翼を持つレッド・ドラゴンとも形容される。
堕天使とする解釈もあるが、それでは説明のつかない記述が聖書などに多く残る。
「ギリシャ語によるバルク黙示録」によれば、エデンの園にブドウの樹を植えた天使であり、これを神より咎められたためにアダムとエヴァを欺いたとされる。
また一方で「ローマの守護天使」「火星を司る天使」「エデンに棲む蛇」など、その存在には様々な説があり、天使でありながらデーモンの首領ともされる。



ホワイトライダー
「ヨハネの黙示録」第六章・第二節に記される、世界の終末に現れるといわれる四人の騎士の一。
白馬に跨り、手には弓を持つ。
子羊が解放する七つの封印のうち、第一の封が解放された際に地上に現れる。
神の戦いの象徴である彼には冠が与えられ、勝利の上に勝利を得ること―つまりは支配する権利が約束されている。 
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