真・ヒーローアカデミア転生 ヒーローが悪魔を使って平気なの?   作:もちたあ

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入学準備

 どうやら死者は出なかったらしい。無事雄英に合格出来た。

 

 ちなみに合格通知から出てきたオールマイトには『出力の調整が出来るようになろう!』と寸評された。ごもっとも。

 

 自分の部屋で書類を書き終わる。さて、入学準備も落ち着いたし、ここ数日で集めた情報の整理タイムといこう。

 

 まずはこの世界の情勢に関してだが、

 

 1.ヒロアカ世界なのは確定だがメガテン要素もなくもない。ただ一般人の調査力で確認できたのはメシア教というキリスト教系カルトだけ。ガイアは元々色んな組織の集合だからよく分からん。

 

 ジプスーー気象庁指定地磁気調査部くらいは確認出来るかなと思ったがそれもなし。

 

 ヤタガラスだクズノハだ? 平安の世から霊的防御を担ってる秘密組織とか一般人が突き止めれるわけねーだろ! あ、葛葉探偵事務所もなかった。

 

 2.諸悪の根元たるメシア教の勢いは全くない。現実の新興カルト程度の影響力っぽい? 巧妙に隠されてるだけかもしらんけど。

 

 3.メシア教を調べる上で副次的に分かった事だが、この世界は宗教が無いに等しい。もちろんあるっちゃあるんだが、世界全体が日本的無宗教な感じになってるっぽい。

 

 カトリックだのプロテスタントだのイスラムだの仏教だのにも力がない。バチカンもメッカもイスラエルもないって一体どうなってんだこれ。

 

 3.代わりに収まってるのがヒーロー。困った時のヒーロー頼み。ヒロアカ世界だし、そういうもんなのかも。

 

 4.そして俺の生存率に直接関わってくる悪魔が地上を闊歩しているかどうかという情報だが……ぶっちゃけ何も分からなかった。というかそれっぽい事件はみんなヴィランが起こした事になってて判別する事ができない。

 

 ……ざっとこんな感じだ。

 

 ヴィランの犯罪はそこら中で起きてるが、まぁ直ちに影響はない。

 

 次、この世界を生きるにあたっての俺の方針についてだが……

 

 前提として、俺はヒーローをあんまやる気はない。普通に生きれればそれでいい感じ。何が悲しくて自分から死亡率を上げにいかねばならんのか。奇抜な格好でテレビの前に出るなんてのも正直御免被りたいしな。

 

 ただ雄英ブランドは有用だから、退学なんかはする気はない。サポート課とか経営課とかに移ろうかな?

 

 だがそうすると一つ問題がある。サマエルが、俺がヒーローにならないことを許さないであろう事だ。

 

 雄栄合格の報を親よりも喜び、立派なヒーローになりましょうとか言うサマエルである。その意に逆らえば、俺をプチっと潰しても別におかしくない。簡単に俺を殺せる奴に逆らう事など誰ができようか。

 

 ……悪の道に誘うならまだ分かるけど、ホントなんでヒーローに拘るんだろうねー……?

 

 まぁいいや。ちょっと別の事考えよう。

 

 ともかくヒーローやるには個性を使う必要がある。

 

 ん、だ、が、俺の個性『悪魔召喚』は敵召喚ガチャだ。いざヴィランとの戦いで使ったとして、ちょっと間違えれば俺敵味方一般人関係なく殺すような個性である。

 

 だからいざヴィランと戦うって時に制御出来ないガチャをするのではなく、事前に俺の命令を聞いてくれる仲魔を作らないといけない。それもサマエル以外で。

 

 何故かと言うと、サマエルは厳密には仲魔じゃないからだ。

 

 悪魔はこの世界に出てくる時、人間の感情などが生み出す生体マグネタイトというエネルギーを必要とする。仲魔とは基本的にこのMAGを人間が提供する代わりに、力を貸すという存在なのだが、俺はサマエルにMAGを提供していない。

 

 なんで提供していないかというと、サマエルを維持出来る程のMAGを俺が作れないからだ。もし提供すれば、エネルギーが枯渇して俺は一瞬で死ぬだろう。

 

 だからサマエルは手弁当でこの世界に留まっている事になる。つまり俺の命令を聞く義務はなく、いつでも裏切る事が出来る。そもそもまともな契約をしてないし。

 

 なので俺でも扱えるちゃんとした仲魔を確保するのが死活問題になるのだ。

 

 方法だが、COMP――信者に怒られそうだが分かりやすく言うとメガテン版モンスターボール――も封魔管――こっちはボングリ?――も持たない俺に出来るのは一つだけ。レベルを上げて物理で殴る事だけである。

 

 悪魔はこの世界に存在する間は延々とMAGを消費するが、逆に言えばMAGさえあれば悪魔はいくらでもこの世界に留まっていられる。だから定期的に悪魔召喚で悪魔を呼び出して殺し、そのMAGを奪えばいい。レベルなんかがあるなら上がるだろうし、一石二鳥だ。

 

「後は……ホワイトライダーについてか……」

 

 ホワイトライダー。聖書に記された神の御使。

 

 出てくるのはヨハネの黙示録。最後の審判とかその辺の話。世界が終わる時に現れる存在だ。

 

 ゲーム中でも結構しっかりイベントを組まれる事の多い悪魔だし、あのタイミングで出てきたのにただの偶然、なんて事はないだろう。

 

 それに無茶苦茶思わせぶりな事言ってたし。なによ”遂に始めるのだな”って。あんなべらぼうに強い存在が、入学試験程度で言う台詞じゃないよなよく考えたら。絶対何かの計画の始まりを言っているって。

 

 で、それが何かって話になると、やっぱり世界を崩壊させる方向になるよなーって。メガテンだし。

 

 後は俺の名前だ。ホワイトライダーに子羊子羊呼ばれたから調べてみたんだが、ヨハネの黙示録には7つの目を持つ子羊が出てきて、それがなんか封印を解いて最後の審判が始まるらしい。

 

 名が体を表すヒロアカ世界的に七目羊司とか絶対それ引っ掛けた名前だよね。

 

 つまり俺が崩壊の原因になる可能性も高い。

 

「詰んでね?」

 

『どうしましたか?』

 

 椅子に背を預けながら呟いた言葉に、サマエルが反応した。

 

 ちなみにサマエルは勿論家の中には入れない。いや幽霊みたく壁を通り抜けたり出来るが、基本的に家を締め付けるような感じにとぐろを巻いている。だから今は窓から目だけでこっちを覗いてる。

 

「相変わらずジュラシックパークな感じだよなー……いや、何でもないよ。ちょっと自分がヒーローやってるイメージがなくなっただけ」

 

『それはおかしいですね。前はあれだけどう活躍するかを語ってくれたでしょうに』

 

 藪蛇だったか。サマエルの瞳孔が細くなってる。なんとか誤魔化さないと。

 

「……この前のホワイトライダー出しちゃった事でさ。なんか俺、ヒーローってかヴィランっぽいなーって思っちゃって」

 

『そういう事ですか。懸念は分かりますよ。大いなる力は簡単に災いとなりますからね。だからこそその力の持ち主は規範たらねばならないのです』

 

「まぁ分かる」

 

『ですが人の子は流されやすいもの。何の制約もなければ、易きに流されるでしょう。そして一度堕落したと見なされれば、他者の認識を変える事は難しい。他者にそう思われれば、自然とあなたの振る舞いも堕落するでしょう』

 

「ヴィランっぽい個性持ちや、ヴィランの子供がそのままヴィランになるあれだな」

 

『それを律するのが環境です。具体的にはヒーローという身分からくる責務。これが自己の認識、他者の認識を固定し、あなたを善き者として存在させるのです』

 

 サマエルが部屋の中に顔を突っ込み、俺を正面から見据えた。

 

『羊司、あなたは正しき道を進みなさい。誘惑に流される事ない、強い人間とおなりなさい。人の幸せに種類はあれど、あなたは人の不幸を楽しめるような人間ではないのですから』

 

 それはこの10年で分かりましたからね、とサマエルがシュシュシュと笑う。

 

 ……ま、確かに大いなる力には大いなる責任が伴うって言うしな。二度目の人生やるにあたっての必要経費と割り切るか。

 

「ん、ありがとサマエル。とりあえず当面はこのままいくよ」

 

『正しい選択を祝福しましょう』

 

 言い残して、サマエルが引っ込んだ。

 

 なんかいいように言いくるめられた気がしないでもないが、悪いようにはならんだろう。とりあえずはそう信じて、この先を進もう。

 

 勿論いざという時逃げ出す準備はしとくけど。

 

 という訳でレベル上げの時間だ。

 

 

 

 

 手にはスコップ。体には剣道の防具。後ろには邪神サマエル。

 

 現状揃えられる最高装備でもって、俺は悪魔と対峙する。

 

『オレサマ、オマエマルカジリィィイゴェッ!?』

 

 猿のような悪魔 カクエンの大きく開いた口に、シャベルの切っ先を叩き込む。

 

 第一次世界大戦で大活躍した近接兵器は、悪魔の頭をすっぱり切り落とした。

 

 これで丁度100体目。いい加減悪魔と戦う事にも慣れてきた。まぁゲームなら慣れて舐めて呪殺される頃合いだろうから気は抜けないが。

 

『そろそろ休憩してはどうですか?』 

 

「いや、もうちょいやろう。レベルが上がったのかまだ全然疲れてないし、仲魔もまだ出来てないしな」

 

 シャベルをグルグル回し体の調子を確認しながら、サマエルにそう返す。うん、今まで感じた事が無いほど体が軽い。

 

 方針を決めたあの日から、俺は人の来ない近くの山に篭もり、計画通り悪魔と戦い続けていた。

 

 本来なら異界という悪魔の出現するダンジョンみたいな場所を探さなければいけなかっただろう。だが俺は悪魔召喚が出来るので、好きな場所をそれこそ異界のように悪魔でいっぱいにする事が出来る。

 

 初日こそ初めての殺し合いという事で上も下もビショビショになっていたが、サマエルの助けもあって、いっぱしのデビルバスターと言えるくらいには悪魔を屠る事が出来た。

 

 というかサマエルが強過ぎる。あまりにレギュレーション違反過ぎるので流石に攻撃なんかはさせてないが、彼の持つ『神の悪意』というスキルが凶悪過ぎた。これは相手を眠らせたり麻痺させたりとたくさんの状態異常を付与するもので、使えばもう相手は満足に動けなくなる。勿論耐性を持つ悪魔はそこそこいるが、全てを防げる悪魔はほぼいない。なので召喚後すぐに使えば、後はそこをスコップでたこ殴りするだけというパワーレベリングである。

 

 たまに逆襲されて死にかける事はあったが、サマエルは回復魔法も使えたのですぐ戦線復帰が出来た。おかげでMAG吸収の方も順調である。

 

 MAGは精気や魂のエネルギーという感じのものであり、集めれば集めるだけ霊格が強化され、魂が強くなればそれに合わせて体の方も強くなる。

 

 おかげで俺はレベリング前と比べ物にならない程強くなっていた。作品によって悪魔のレベルとかが違うから何とも言えないが、恐らく10前後のレベルに達してるんじゃなかろうか。ちなみに一般人はレベル0。オリンピック金メダリストとか軍人とか鍛えた人でようやく1。2や3あれば通常人類の限界って感じらしい。

 

 ただここはヒロアカ世界であり、人類の8割が異能者という異常な世界だ。一般人でも5レベくらいはありそう。オールマイトとか何レベなんだろうな一体。

 

 さてと。当初予定していたよりずっとMAGも貯める事が出来た。悪魔達のお金であるマッカも結構貯まってきてるし、後は適当な仲魔が出来ればいいんだが……

 

『ガアァアァアアアペギャッ!?』

 

 現れた幽鬼モウリョウをスコップで弾き飛ばす。なんかさっきから悪霊やら幽鬼やら妖獣やら話が通じない奴しか出てこない気がする。

 

 まさか俺の能力ってダーク系悪魔限定とかないよな? こう、普通にピクシーとか出ていいのよ?

 

『うぉう……現実世界かぁぁぁ! 久々に来たなぁぁうぉうっ!?』

 

 出てきた次の獲物をスコップで殴りつけようとしたところ、向こうの持っていたハンマーで防御された。

 

『いきなり攻撃してくるとかうぉまえくるってるなぁぁぁ! 交渉しようとするのが人間の作法じゃないのかぁぁぁ! というかうぉまえ悪魔だなぁぁぁ? フォーモリアかぁぁぁ?』

 

「……あれ? コイツ話通じる?」

 

 俺が身を引いて、出てきた悪魔を改めて確認する。

 

 そいつは一本足しかない人型の悪魔だった。赤銅のフルフェイスマスクに、黒の作業着を着る鍛冶師然とした邪鬼 イッポンダタラ。

 

『うぉまえ、それ武器のつもりかぁぁぁ!? ボロボロじゃねぇかぁぁぁ! 見せろ! 直してやるぅぅぅ!』

 

「はっ? うおっ!?」

 

 突然イッポンダタラが、ハンマーの他に持っていた火箸で俺のスコップを取り上げた。虚を突かれた上に丸腰なので、普通に攻撃されれば俺は死んでただろう。

 

 だがイッポンダタラは俺に目もくれず、『アギアギアギィィィイッ!!』と火炎魔法でスコップを焼き、赤熱するそれをハンマーでガンガンぶっ叩くだけだった。

 

『直ったぞぉぉぉ! ついでに少し性能を上げたぞぉぉぉ! うぉれさまマッドスミスぅぅぅ!』

 

「お、おう……ありが、と……?」

 

『どぅおういたしましてぇぇぇ!』

 

 イッポンダタラにスコップを返された。何回も悪魔を殴り歪んでた柄がまっすぐになってる。それに心なしか軽くなった気もする。

 

 それにしてもこれがマッド口調って奴か。かなり突拍子のない感じだが、一応話は通じそうだ。

 

 じゃあメガテン恒例、悪魔会話をやってみよう。

 

『説明するぞぉぉぉ! 悪魔会話とは! 悪魔と会話をする事であるぅ! アイテム貰ったり仲魔にしたりするにはまず会話で仲良くなる事だぁぁぁ!』

 

「いきなりどうしたお前」

 

『毒電波を受信したぁぁぁ!』

 

 何やらメタい感じの事言い出したが、俺がやろうとしていたのはイッポンダタラの言う通りのものである。悪魔を使役するなら、まず向こうに認めて貰わないといけない。

 

 ……つってもコイツ相手に一体どう話せばいいのかさっぱり分からんなこれ。ゲームの主人公達はどんな風に話してたんだろ……

 

『なんだあぁぁぁ!? おしゃべりしないのかぁぁぁ!? ならうぉれは行くぞぉぉぉ! まだ見ぬ業物を鍛えにぃぃぃ!』

 

 イッポンダタラがぴょんぴょん片足飛びで去ろうとしたので、慌てて会話を切り出す。

 

「待て待て待て。いきなり呼び出しといてあれだが、お前はこの世界でなんか鍛えたいって感じか?」

 

『うぉれはマッドスミスだぁぁぁ! マッドでスミスは何か鍛えねばスミスでもマッドじゃないぃぃぃ!』

 

「なら俺が武器とか防具とか持ってくるから、それ鍛えてくれない? ここにいるためのMAGと後必要な材料とかあげるからさ」

 

『いいぞぉぉぉ!』

 

「いいのか」

 

 いいのか。ちょろくないか。

 

『うぉれさまチュートリアル悪魔ぁぁぁ!』

 

「……やなピクシー枠だなおい」

 

『知るかぁぁぁ! コンゴトモヨロシクゥゥゥ!』

 

 イッポンダタラがそう叫んだ瞬間、俺の中からゴソッと何かを吸い取られるような感覚がきた。どうやら無事契約出来て、俺のMAGを使うようになったらしい。

 

『ふむ、初めて自力で得る仲魔としては少々特殊ですが、おめでとうございます』

 

 静観していたサマエルがようやく口を開く。動かない時はホント蛇のように動かないから存在忘れちゃうんだよね。

 

「ありがとさん。さー、仲魔養うためにももっと悪魔殺すか!」

 

『悪魔殺して平気なのぉぉぉ? うぉれさま平気ぃぃぃ!』

 

 振るわれたスコップとハンマーが、次に出てきた悪魔の頭蓋骨を砕いた。サマナーの力は数の力!

 

 

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