少し落ち着いた。まだまだ予断を許さぬ状況は続いているが、思ったことを書き連ねていこうと思う。
これが一体何のためになるというのか、正直自分でも分からないが、目の前が閉ざされた中にいてどうしても書きたい衝動を抑えられなかった。
もしかしたら、これは遺書になるのかも知れない。
私は佐倉明(さくら あかり)。市立巡ヶ丘病院の内科医だ。―――いや、私は医者では無い。医師免許は未だに鞄の中にあるが、私にそれを名乗る資格などあるのだろうか。
事の始まりは、今からほんの――――・・・
今日が何日なのかを知らない。おそらく数ヶ月ほど経っている。
やはり私には無理だ。文章力が無い。書きたいことが自分の頭の中でうごめいていて、まともに書ける気がしない。
慈姉さんならこういうことは得意だろうが。今何をしているのだろうかあの人は。大学を卒業した後、どこかの高校で教師をしているらしい。無事なのか、はたまた手遅れか。思えばもう5年近く会っていない。最後にあったのは――――いや、この話はどうでもいいんだ。
水を飲んだ。少し落ち着いた。私は今、病院を離れて当てもなく彷徨っている。愛車のR33に乗り、街のあちこちを回ったが、私の見た限り、まともな人間はどこにもいなかった。今はショッピングモールに向かう最中だ。食糧をはじめ、必需品を調達しなければ。手持ちの物は尽きた。薬品だけで生活は出来ない。もしかしたら、誰か生存者もいるかもしれない。
自衛官の死体から拝借した小銃。愛用のビジネスバッグに入った、現金の入った財布といくらかの書類。病院から持ち出した薬品類、器具類は袋の中に。
改めて思う。どうして私はこうも役に立たぬ物ばかり持ってきてしまったのか。手術室に何日も籠もって、頭がおかしくなっていたのだろう。
生存者を見つけた。危篤状態だったが、会話できる程の意識は保っていた。高校生ぐらいの年齢だろうか。腕に噛み傷があって、衣服に血が滲んで広がっていた。気休めの応急処置はしたが、おそらく今頃死んでいるだろう。彼女はショッピングモールから抜け出してきたらしい。店舗の備品でバリケードを作り、乾パンや水を摂取してすごしていたのだという。彼女が店から出て来たとき、彼女の他にもう一人女の子がいたそうだ。その子は今も、店の中で助けを待っている。
彼女から、その子を助けてと頼まれた。ついでに行ってみるのも良いだろう。役に立ってくれるかも知れない。そうでなくても、仲間がいるというのは心強い事である。
ああ、どうして。どうしてこうなるの。役立たず、いくじなし、所詮この程度か。私は姉にはなれなかった。大人の私がしっかりしなければならないのに、結局――――――――――――――――
(解読不能)