【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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今回は締めということで、ハジケ控えめ文字数も少なめです。


奥義12 実質一択の選択肢

 ヒュドラが倒れると同時に扉が開き、中に入るとるとそこはまるで別世界だった。

 闇が支配していた今までと異なり、空には太陽に似た輝く球体が辺りを照らし、奥の壁は一面が滝となっていた。近くには何も植えられていないが畑もある。

 

「とりあえずおしるこでもまくか」

「何で!?」

 

 首領パッチが畑におしるこをまき始めた。その畑の反対側にはベッドルームがあり、奥には岩壁を加工した住居がある。

 ハジメ達四人は首領パッチを放っておいて住居を調べることにした。

 一階には誰もいない台所、リビング、トイレが。奥に進むと巨大な温泉があった。

 

「「わーい、お風呂だ―!」」

 

 風呂を見つけたハジメと天の助は、魂に染みついた習性か迷うことなく服を脱いで飛び込む。

 

「おあちゃああああああああ!!」

 

 そしてハジメは一秒もかからず出てきた。

 よく見ると風呂は沸騰しており、まともな人間なら火傷は免れないだろう。

 

「いや入る前に気付けよ!!」

 

 そんな風呂に入ってしまった天の助は

 

「溶けてまーす」

「うわグロッ……」

「さながら昼ドラみたいにドロドロ」

「いや助けてやれよ!?」

 

 とりあえず天の助を助けてから二階に上がる四人。そこで書斎や工房らしき部屋を発見するも、封印されているのか開けることはできない。

 

「これはイベント見てからじゃないと開かないタイプの扉」

「あー、あるある」

「どうでもいいけどゲーム脳で行動するのやめね?」

 

 という会話をしながら今度は三階へ。三回は一部屋しかなく、奥にある扉を開けると直径七、八メートル程の精密な魔法陣が部屋の中央に刻まれている。

 そしてその魔法陣の向こう側には、ローブを纏い白骨化した誰かの死体がある。

 だがそれよりも注目すべきなのは、魔法陣の中に居る

 

「おー、遅かったなお前ら」

「何でお前居るんだよ!?」

 

 首領パッチの姿。首領パッチは魔法陣の中心でラジコンを走らせながら遊んでいる。それを見た四人は、魔法陣には何の仕掛けもないと無警戒に首領パッチに近寄る。

 そして魔法陣の中に入った瞬間、純白の光が部屋を染め上げる。

 

「どうなってんだよこれ!? 何で首領パッチが居るのに反応しなかったんだこの魔法陣!?」

「おそらくこの部屋に入ってから魔法陣を踏まないと発動しないシステムだった」

「つまりバグでこの部屋に入ったら、一旦部屋に出てから入り直さないとイベントが発生しないってことか」

「リアルタイムアタックでもやってんのかお前ら!?」

 

 蹴りウサギがハジメとユエにキレたと同時に光は収まり、五人が視界を取り戻すと目の前に黒衣の青年が立っていた。

 黒衣の青年は話しはじめる。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えば分かるかな?」

「は?」

「何それ?」

「知らねえぞ?」

 

 そしていきなり躓いた。見かねたユエが反逆者について説明する。

 曰く、神代に神に反逆し世界を滅ぼそうとした七人の眷属が居たそうだ。しかし、その目論見は破られ世界の果てへ逃げ出したとか。

 

 だがユエの説明と、これからオスカーが話す内容は大きく異なっていた。

 オスカーは自らを解放者と名乗り、話しはじめる。

 彼の言葉によれば、この世界の戦争は神の遊戯として産み出されたものらしい。

 それに気づいた解放者達は、人を神から解放しようと神を殺そうと画策した。

 が、神々は人々を扇動し解放者は反逆者として追い詰められた。

 最後に残ったのは中心の七人だけだった。彼らは自分達では神を討てないと判断し、それぞれ迷宮を創り、それを突破した強者に自分達の力を譲り未来への希望を残した。

 

「そしてもう一つの希望、ハジケリストについても話をしておこう」

「ハジケリストだって!?」

「この世界にもハジメみたいなのがいるの?」

「ユエとかいるじゃねえか」

「え? 私ハジケリストの分類なの?」

「むしろそれ以外の何なんだよお前は!?」

 

 蹴りウサギの叫びなど聞こえないので、オスカーはハジケリストについて話しはじめる。

 ある時、オスカー達は異世界からやってきたハジケリストと名乗る謎の男と出会う。謎の力で魔物などを倒していく様に、オスカー達は希望を見た。

 が、ある時彼は帰る方法を見つけたと自分の世界へ帰ってしまう。その前にハジケリストとは何かを教えてくれと頼むオスカー達だったが、彼は言葉で説明できるものじゃない、今までの振る舞いを見て判断しろ、とだけ言って去ってしまう。

 唯一、仲間のミレディだけはハジケを何となく理解していたようだったが、他の誰も理解できず、結局戦力には出来なかったらしい。

 だからもし、そのハジケリストと出会うことがあればこう言ってほしい。

 

「君のこれからが自由な意思の下にあらんことを」

 

 そう話を締めくくり、オスカーの姿は消えた。

 それと同時に神代の魔法である、生成魔法を覚えた。使う機会があるかは知らないが。

 

「シ、シリアスが……長い……」

「死ぬ! 死んでしまうぞ天寿郎!」

「うるせえよ!!」

「何か、色々ととんでもないことを聞いちゃったな……」

 

 ハジケ不足で死にかけているバカ二人を脇に追いやって、ハジメは小さく呟く。

 

「ん、ハジメはどうするの?」

「そんなの決まってるよ」

 

 オスカーの話を聞いてどうするのか尋ねてくるユエに、ハジメ、否ハジメ達は迷うことなく返答する。

 

「「「神々をぶっ殺すさ」」」

(そうすれば、僕はモテモテのハーレムライフを過ごせるかもしれない!!)

(オレが主人公! やることなすこと全て肯定されるなろう主人公になるんだ!!)

(オレが新たなる神となり、ところてんを主食にする!!)

「お前ら我欲しかねえのかよ!!」

「まあそれはそれとして、二人はどうするの? 僕らについてくる?」

 

 バカ三人の薄汚い内心にツッコミを入れる蹴りウサギ。

 それを無視してハジメは、ユエと蹴りウサギに尋ねた。

 

「私は当然ついて行く。ただし蹴りウサギ、あなたはダメ」

「俺なんかした? いや、ついて行くつもりはなかったけどさ。怖いし」

 

 蹴りウサギの問いかけに、ユエは血の涙を流しながら、怨嗟を纏った声で答える。

 

「私のヒロインの座は、誰にも渡さない……!!」

「その顔と言動が既にヒロインじゃねえよ」

 

 ユエの血を吐く叫びをスルーした蹴りウサギは、オスカーの遺体を運び出そうとしているバカ三人の姿を見た。

 

「何してんだ?」

「それ畑の肥料にでもするの?」

「やだユエったら非道!」

「鬼! 悪魔!」

「破壊神!」

「破壊神!?」

「……傷つく」

 

 バカ三人の言動に落ち込むユエ。

 そうこうしながら一行は二階まで降りるが、そこでユエが引き留める。

 

「ちょっと待って」

「どうしたのユエ?」

「ちょっとそれ貸して」

 

 そう言ってオスカーの指にあった指輪を引き抜くユエ。しかし抜き方が乱暴だったせいか、そのまま手首から先が地面に落ちてしまう。

 

「あ、取れた」

「うわあああああああああああああ!!」

「アメ撒いとけばチャラ!」

「東京バナナ食べて下さーい!!」

「死体が食ったら怖えーよ!!」

 

 慌てふためくバカ三人。一方ユエは、封印されている扉に指輪を近づける。すると封印は解け、扉が開くようになった。

 

「やっぱり。この指輪がここの封印を解く鍵。ならこれは一緒に埋めるわけにはいかない」

「いやこっち手伝えよ!?」

 

 一人納得しているユエにキレる蹴りウサギ。

 その後、オスカーを埋められる場所がここしかないということで畑の隅に埋め、簡素ではあるが墓を作った。

 そして封印を解いた先にある書斎で脱出方法を知ったり、工房で宝物庫というドラえ○んのポケットの様なアーティファクトを手に入れたりした。

 後はまあ、なんやかんやあって二日後。

 

「雑だな説明!!」

 

 遂にハジメ達は、地上に向けて出発することにした。

 それぞれ蹴りウサギに向かって別れの言葉を告げている。

 

「ツッコミありがとうね」

「次はところてん食えよ」

「ヒロインの座は渡さないけど、いい友達になれたと思ってる」

「未来で会おう。イタリアで……」

「どこだよイタリア!?」

 

 その言葉を最後に、ハジメ達はオルクス大迷宮を脱出した。

 これは、世界を解き放つ物語である。

 

「という感じで締めたらイケてない?」

「格好いい。解き放つというのもハジケリストにかかってる」

「台無しじゃねーか!!」

 

 転移した筈なのに、蹴りウサギのツッコミが聞こえてきた。

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