【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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第2章 森、兎、ライセンにて。
奥義13 新たなるツッコミ! 奴の名はシア!!


ほぼ一か月ぶりなので前回までのあらすじ

 

 

オスカー「頼む……倒してくれ……。エヒトを……、トータス人とハジケリストの手で……」

ハジメ「オラにも分けてもらうぞ。その誇り……」

 

大体こんな感じだった。

 

 

ユエ「大体あってる」

 

 


 

 オルクス大迷宮を脱出したハジメ達の目に映った光景は、洞窟だった。

 

「なぜだ」

「普通に考えて秘密の通路は隠す」

「「確かに」」

 

 ハジメの疑問にユエが答え、それに首領パッチと天の助が賛同する。

 とはいえ日の光を浴びられると思ったらまだ洞窟なので、全員テンションが低い。のでブーブー言いながら洞窟を脱出する。

 そしてついに、ハジメ達にとっては一か月ぶりの、ユエにとっては三百年ぶりの太陽を一身に浴びる。

 

復活(リ・ボーン)! 戻って来たぞ僕ゥ!」

「三百年だ……もう休暇は十分楽しんだよ私……!!」

 

 久方ぶりの太陽にテンションを上げるハジメとユエ。

 

「「ぐわああああああああああああああああ!!」」

 

 その後ろで、闇の中に居る期間が長かったせいか闇の者と化した首領パッチと天の助が、太陽の光で浄化されかかっていた。

 

「大変だ! 納豆真拳奥義、闇エネルギー注入!!」

 

 慌ててハジメは大量の泥を、首領パッチと天の助にぶちまけて事なきを得た。

 

「何ゆえもがき、生きるのか? 滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。さあ、我が腕の中で息絶えるがよい!」

「オレが……、食品としてあるまじき姿に……」

「元とそんなに変わらない」

「え!?」

「んなことより、ここは一体どこなんだよ?」

 

 泥を浴びたこととユエの発言にショックを受ける天の助を尻目に、ゾー○と化し身長がハジメの二倍くらいになった首領パッチがもっともな疑問を抱く。その質問に答えようとハジメが少し頭をひねり、すぐに答えを出した。

 

「ここは、ライセン大峡谷だ」

 

 【ライセン大峡谷】

 そこは、西にあるグリューエンド大砂漠から東のハルツィナ樹海まで大陸を南部に分断する巨大な峡谷である。断崖の下はほとんど魔法が使えず、強力にして凶悪な魔物が多数生息する、地上の人間にとっては処刑所の同義の地獄。

 

「って前に読んだ本に書いてた」

「ちょっとー、マジヤバくなーい?」

「多分オルクスよりはましだと思う」

「でもこんな所長く居たくねーぞ」

「僕もそう思うにゃわん。じゃあ、樹海と砂漠のどっちに行く?」

 

 ハジメの質問に、首領パッチは化粧をしながら即答した。

 

「当然樹海よ! だって砂漠なんて行ったら化粧が乱れちゃうじゃない!!」

「オレも嫌だな。溶けそうだし」

「じゃ、樹海で。ユエもそれでいい?」

「ん」

 

 こうしてハジメ達は樹海へ向かうことになった。しかしその前に

 

「いい加減ゾ○マサイズの首領パッチがウザいから光の力で戻そ」

 

 と言ってハジメは虫眼鏡を太陽に向け、光を集めて首領パッチに当てた。

 

「熱っ!」

 

 こうして首領パッチは○ーマから元の姿に戻り、一行は出発した。三輪車で。

 

 

 ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖なので、脇道は殆どなく道なりに進めば迷うことなく樹海へ辿り着ける。

 その為ハジメ達は全力で三輪車を漕ぎ、前に進み続ける。

 しばらく進んでいると、大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが、頭が二つある。双頭のティラノモドキだ。

 しかし真に注目すべきは、双頭ティラノではない。その足元で半泣きになりながら逃げ惑うウサミミ少女だ。

 

「兎人族?」

「何でこんな所にいるの?」

「とりあえず助けてから話聞くか」

 

 ハジメとユエが疑問の声を出す中、天の助はウサミミ少女を助けようと走り出す。すると、向こうも天の助に気付いたのかこっちに向かって泣きながら走ってきた。

 

「だずげでぐだざーい! お願いじまずぅ~!」

 

 泣き叫ぶウサミミ少女。彼女は助かったと安堵する。が、目の前にいる相手はそんなにまともな奴らでは無い。

 天の助とウサミミ少女の距離が近づき、ウサミミ少女の姿が鮮明になった途端、天の助はオカンみたいな服を着て

 

「なんて恰好してるのアンタは――――っ!!」

 

 といきなり怒りだした。

 

「えぇ!?」

 

 ウサミミ少女は驚くが、天の助が怒る理由は彼女の格好にある。

 彼女は、双頭ティラノに襲われたためか服がボロボロで、見えてはいけない場所すら見えそうになってしまっている。が、仮にボロボロでなかったとしても、上半身は水着のビキニの様な服に、下半身はミニスカートという中々露出度の高い格好である。

 そんな服装にオカンと化した天の助は怒りを覚えたのだ。

 

「年頃の乙女がそんな肌を露出するもんじゃないの! ホラ、このぬの腹巻付けて!」

「嫌ですよそんな腹巻!!」

 

 ぬの文字が書かれた腹巻を付けさせようとする天の助と、それを拒絶するウサミミ少女はもみ合う。一方、その後ろから双頭ティラノは変わらずシアを狙って追いかけてきていた。

 

「しょうがない。私が行く」

 

 見てられなくなったユエが三輪車を降りて、双頭ティラノを倒そうと適当な魔法を行使しようとする。

 ところで、このライセン大峡谷。魔法を使おうとすると、魔力が分解されるという難儀な場所である。そしてユエはその事実を知らず、違和感を覚えながらもいつも通りに魔力を篭めた。その結果。

 

「…………」

 

 緋愴を使おうとしたが、魔力が分解され初級魔法レベルにまで威力が低下し、もはやたき火レベルの火力となって双頭ティラノに命中する。当然、そんな攻撃に双頭ティラノはビクともしない。

 

「え、えぇ……?」

 

 ウサミミ少女の戸惑いの声が辺りに響く。自分を助けようとしてくれたとはいえ、結果何の効果を生み出していない魔法を目の前で行使されては仕方ないかもしれない。

 

「奥義、ウナギフレイム」

 

 ので、ユエは持っていたウナギに火を吐かせることで誤魔化した。

 

「誤魔化せてませんよ!?」

「おっしゃー! トドメはオレに任せろ!!」

 

 ユエの攻撃を見て、今度は首領パッチがデュエルディスクを構えデッキに指を置く。

 

「オレのターン、ドロー! メインステップ! オレは双魚賊神ピスケガレオンを召喚!!」

「遊戯王かと思ったらバト○ピ始まりましたけど!?」

「双魚賊神ピスケガレオン、サーガブレイヴでは活躍できるといいね」

「不足コストはブレイドラとブレイドラとブレイドラから確保!!」

「ブレイドラ多すぎません!?」

 

 首領パッチの宣言でソウルコアが無くなり、ブレイドラ三体はトラッシュに送られる。そして現れるのは、深海魚と海賊船を合わせた様な外見をしている神の力を持つカードのうち一枚。

 双頭のティラノごときが敵う訳もなく、ティラノはあっさりその命を散らした。

 

「大丈夫?」

 

 キコキコと三輪車を漕ぎながら、ハジメがウサミミ少女を心配して彼女に近づいていく。

 一方、ウサミミ少女はそのティラノの死体を見て、希望を見つけたような目をしながらハジメ達にこう言った。

 

「助けて頂きありがとうございます! 私は兎人族ハウリアの長の娘、シア・ハウリアと言います! いきなりですが私の仲間を助けて下さい!!」

「意外と図々しいなこいつ」

 

 シアの突然の発言に思わず非難的な口調を向ける天の助。だが首領パッチもユエもそりゃそうじゃ、とオー○ド博士のコスプレをしながら頷く。

 

「いや図々しいのは認めますけど! でもコスプレの意味は!?」

「無い」

「!?」

 

 しかしハジメは、シアの露出している部分を無言でチラチラと見ている。このハジメ、意外と青少年らしい欲求がある。が、それをあからさまに表に出したりはしない。

 

「ま、まあまずは落ち着いて誕生日ケーキでも食べなよ」

「何でいきなり誕生日ケーキ!?」

「ユエが持ってるウナギさんが誕生日だから」

「ウナギの誕生日!? というかさん付け!?」

 

 怒涛の勢いでツッコミを入れるシア。一方、急に話題の矛先を向けられたウナギは首を横に振ってからこう言った。

 

「いや、おいは誕生日じゃなか」

「食えやコラァ!! このケーキ日持ちしないんだよ!!」

 

 ハジメに無理矢理ケーキを押しこめられ、苦しみながらもそれを食べきるウナギ。

 するとなんということでしょう。ケーキのあまりの美味しさにウナギは背中に翼が生え、それを使ってどこかへ去っていく。

 

「飛んだ――――――――――――!?」

「ありがとうウナギさん……」

「ウナギ様……」

「ウナギ閣下……」

「どんどん階級が上がっていきますね!?」

 

 上からユエ、天の助、首領パッチの順にウナギを見送る一同。やがてウナギが見えなくなったと同時に、ハジメが三輪車から降りてシアに問いかけた。

 

「で、仲間を助けて欲しいってどういうこと?」

「ここで話題戻るんですか!?」

「早く話さないと話が進まない」

「……はい」

 

 どこか釈然としないものの、シアは極力簡潔に話すことにした。

 

 

 シア達兎人族は、ハルツィナ樹海で数百人規模の集落を作ってひっそり暮らしていたよ。

 そんな兎人族の一つ、ハウリア族にある日魔力を持ち直接魔力を操る術と、固有魔法が使える女の子が生まれたよ。

 魔物と同じ力を持っているのが亜人族の国、フェアベルゲンにバレると迫害どころか処刑されるから、ハウリア総出で女の子を隠してたけど十六年経ってから見つかっちゃったよ。

 だからハウリア一族は樹海から出て北の山脈を目指したけど、ハイリヒ王国の同盟国、ヘルシャー帝国の兵士に見つかっちゃったよ。

 帝国は完全実力主義で、弱い亜人族を捕まえては奴隷にしているよ。

 全滅を避ける為に、ここまで帝国は追ってこないだろうと考えて、一か八か魔法が使えないライセン大峡谷に逃げてきたよ。

 でも帝国の奴らずっと入口に陣取って待ち構えてるし、峡谷の魔物もこっち狙って来るしもう大ピンチ!

 このままじゃ全滅必至! プリーズヘルプミー!!

 

 

「……という感じです」

「「「話長え……」」」

「うわっ、露骨にやる気無い! お願いします。助けてくれたら私が何でもしますから!」

「……え?」

 

 何でもするという言葉に若干心が揺れるハジメ。

 

 ドパンドパンドパン

 

 しかし、ユエに希望の花を咲かせられることでハジメは馬鹿な考えを持てなくなった。

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

「色香に迷わないでハジメ」

「すっかりこのSSの定番ネタとなったオルガ」

「巨乳のウサミミ美少女に翻弄されるエルフのハジメ」

「エルフなんですかその人!?」

「ソクラテ○ラ式遊戯王やめて」

 

 とりあえずハジメが黙った所で、代表してユエが話を進めることになった。

 

「まあ、あなた達を助けてあげてもいい」

「本当ですか!?」

「でもタダじゃない」

「と、言いますと?」

 

 シアが疑問を訴えると、ユエではなく首領パッチがドヤ顔で答えた。

 

「ククク、勿論この私にイケメンハウリアで構成されたホストクラブ会員権を……」

 

 首領パッチの妄言、それをユエは首領パッチの顔に手をかざし

 

「破壊」

「あああああああああああああああああああああ!!」

 

 破壊し、塵一つ残さず消滅させることで妨げた。

 

「ザマパッチ―――――――――――――!!」

「破壊された―――――――――――――!?」

「フフフ、神は不滅だ」

「僕は……、Z団団長ハジメ・イツカだぞ……! これくらいなんてことは無い!!」

「生き返ってる!?」

 

 撃たれたり消滅した筈の存在が普通に喋っているという事実に、ちょっとついて行けないシア。しかしユエは構わず話を進める。

 

「シア、私達があなた達を助ける代わりに、ハウリアには樹海の道案内を頼みたい」

「そんなことなら勿論お引き受けします! よろしくお願いします!!」

 

 こうして、ハジメ達はシア達を助けることになった。という所でシアから質問。

 

「ところで、皆さんのお名前は……?」

「そういえば名乗ってなかったね」

 

 そういう訳で自己紹介。

 

「地獄からの使者、南雲ハジメ!」

「オレは、(スーパー)パチータだ」

『混沌よりも這いよるハジケリスト、とこ川禊。よろしく仲良くして下さいっ!』

「童貞十三騎士団馬鹿円卓第十三位、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム」

「統一感ありませんねこのメンツ!?」




次回更新は来週です。

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