【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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いよいよ今夜、アニメありふれの一話が放送されますね。
いろんな意味でワクワクしています。


奥義14 バカとハウリアと帝国兵

「シアの家族を助ける前に、言っておくことがある」

「何でしょう?」

 

 シアの家族を助ける為、まずは家族の元へ行くことになったハジメ達。しかし、出発前になって急にユエが神妙な顔で何か話しはじめる。ユエに合わせ、シア達も真剣な表情で耳を傾けた。

 

「私の服装、まったく描写されてないけどぬのパジャマから着替えてるから! 今は原作二巻以降、アニメキービジュアルの服装になってるから!!」

「いきなりどうしました!?」

「そして僕は原作序盤で着ていた学生服だよ」

「原作で着ていたあの黒コートは!?」

「黒髪であんなの着こなせるのキリトさんだけだし……」

「「そしてオレ達はいつもどおりだ」」

「服着てないじゃないですか!!」

「じゃあぬのスーツを着よう」

「あたいはセーラー服を」

「着てどうなるんですか!?」

 

 


 

 

【めきめきハジケハイスクール  第一話 恋の始まり】

 

「何か始まったですぅ!?」

 

 はぁ~い、あたいパチ江。どこにでもいるごく普通の女子高生! あたいは今、彼ピッピと付き合ってるの。その彼氏は

 

「やあ、パチ江君。今日も元気だね」

 

 ぬのスーツを着こなす天の助先生。天の助先生は、とっても人気があるイケメンところてん先生なの。え? 何でそんな人と普通のあたいが付き合ってるのかって? それはね――

 

「ところでパチ江君、今月の茄子奉納はまだかね?」

 

 先生の大好きな茄子を毎月奉納してるから! だから今日、その秋茄子を持ってきてたんだけど……。

 

「ごめんなさい先生! 今月の茄子、学校に行く途中飢えている沼の主がいたからあげちゃったの! お願い、明日持ってくるから!」

「ならば貴様に用など無い」

 

 そう言って天の助先生は懐から呪いのナイフ、ナスリッパーを取り出しあたいに向ける。

 

「せ、先生やめて下さい!」

「私と付き合いたい女子などいくらでもいるのだよ。次はそうだな、あの鯖味噌君にしよう。彼女ならいい茄子を持ってきて来るだろうさ」

「いやああああああああああああああああ!!」

 

 先生のナスリッパーがあたいに振り下ろされそうになり、あたいが思わず目を閉じたまさにその刹那

 

 ガシッ

 

 という音が聞こえ、目を開けるとそこには今朝茄子を渡した沼の主、サーベルタイガーがナスリッパーを止めている姿が。

 

「沼の主さん!」

「パチ江さんに手を出すな!」

「ぐわあああああああああああああ!!」

 

 天の助先生のナスリッパーを巧みに奪い取り、そのまま先生の喉笛を躊躇なく掻っ切る沼の主さん。

 その瞬間あたいは気付いたの。あたい、新しい恋をしてるって……。

 魅了持ち産業廃棄物の天の助先生に恋するあたいはもういない。

 今のあたいは、沼の主サーベルタイガーに恋する女子高生、パチ江!!

 

【めきめきハジケハイスクール 第一話 恋の始まり 終】

 

 


 

 

「何だったんですか今の話!?」

「シア行くよ」

 

 突然始まった寸劇にツッコミを入れるシアに、ユエが救急車の運転席に乗り込みながら話しかける。その救急車どこから持ってきたんですか、とシアは言おうかと思ったが、さっきから理解不能の事態が立て続けに起こっているので面倒くさかった。ので黙って救急車に乗り込んだ。

 そしていざ出発となった段階でユエが一言。

 

「ハジメ、運転代わって。足がアクセルに届かない」

「それ乗る前に気付きませんか!?」

「気付かなかった!!」

「」

 

 あまりにもはっきりと断言され、シアは何も言えない。

 そんな空気の中、ハジメの運転で救急車は出発した。

 

 

「ヒャッハー! 道を開けろ雑魚モンスター共!!」

「馬鹿な……、邪神が二体だと!?」

 

 天の助が慄く中、ハジメが駆る消防車と首領パッチが召喚した邪神ドレット・ルートと邪神アバターがライセン大峡谷のモンスターを阿鼻叫喚の地獄に叩きこむ。

 片や未知の異世界の機械、片や圧倒的な力を持つ邪神が二柱。モンスターが恐怖で逃げ惑うには十分だろう。

 しかし彼らは処刑と同義の地獄の住人。そう簡単に引くことは許されない。

 だがその蛮勇の代償は、死という形で彼らを襲い続けた。

 

「というか乗り物変わってる―――――!?」

 

 そしてそのままハウリア達が逃げ惑う中に突入。ハイベリアというワイバーンみたいなモンスターに襲われ、彼らが悲嘆に暮れる中突如現れた消防車と邪神二柱はさながら嵐の様だ。

 ハウリアの子供を襲いかけたハイベリアを轢き殺し、ユエと天の助は消防士のコスプレをして外に飛び出す。

 

「火事はどこだ?」

「あそこです、隊長」

 

 ユエが指差す先には、芋を焼いている首領パッチの姿が。

 

「何だ?」

 

 天の助は迷うことなくウォーターカッターを用意し、首領パッチとその後ろに居たハイベリアをついでに切り刻む。

 

「ウォーターカッターの時点で火を消す気ありませんよね!?」

 

 しかしハイベリアは未だ数匹残っている。だがその残りも

 

「納豆真拳奥義、マーメイドイン豆井戸!!」

 

 ハジメによって掃討される。

 その光景を見たハウリア達は思った。さっきシアの声が聞こえた。それに今、この人達はハイベリアを倒し、私達を助けてくれた。つまり、この人達はハウリアを助ける為にシアが呼んでくれたのでは?

 そう考えたハウリア達はハジメの元へ集う。

 

「おお、助けてくれたのですね!」

「ありがとうございます!」

「お礼に我らの尻尾をもふもふさせてあげます!」

「納豆真拳奥義、シベリア鉄道納豆風味!!」

 

 そのハウリア達を、ハジメは掃討した。

 

「ハジメさん、何でハウリアの人達まで!?」

「ウザくて……」

「というか大丈夫ですか父様!?」

 

 ハジメが掃討したハウリアの中には、シアの父も居たらしく心配し駆け寄るシア。しかし、シアの父は多少痛がる素振りを見せながらも普通に立ち上がって一言。

 

「痛たた……。シアを助けた人は随分と照れ屋ですな」

「父様!」

「シア! 無事でよかった!!」

 

 ウサミミを生やした初老の男性、シアの父親が娘との再会を喜ぶ。そして互いにひとしきり喜んだあと、ハジメ達の方へ向き直った。

 

「ハジメ殿でよろしいか? 私はカム。シアの父にしてハウリアの族長をしております」

 

 カムの自己紹介。その後に感謝の言葉を告げながら深々と下げ、追随するように後ろに居た他のハウリアも頭を下げる。

 

「いえ、こちらにもメリットのあることですから」

 

 ハジメは礼を受け取り、その上でシアと話した内容を説明した。

 

「成程。そういう事でしたらお任せください。ところで――」

 

 そう言葉を区切ってカムは首領パッチと天の助を一瞥してから、再度ハジメに向き合って問う。

 

「あの二人は、一体? 人間族ではありませんよね?」

「ただの非常食と産業廃棄物です、お気になさらず」

「それは凄く気になりますな!?」

 

 カムの驚愕。そしてそれを耳聡く首領パッチ達は聞いていた。

 

「オイコラァ! どっちが非常食でどっちが産業廃棄物だオラァ!?」

「オレだよな!? このところ天の助が非常食だよな!?」

「それは、無い。そんな現実は……絶対にありえない……!!」

 

 血を吐くようなハジメの叫び。その言葉にショックを受け、地に崩れ落ちる天の助。そんな二人を放っておいて、ユエとハウリア達は出発していた。

 

 


 

 

 ハウリア族四十二人を引き連れ、ぞろぞろと峡谷を歩く一行。

 当然魔物達が襲い掛かってくるが、ハジメの納豆真拳やユエの魔法で容易に倒せるので脅威には全くならない。後は適当に救急車や消防車を投げつけていれば、魔物も彼らは獲物というより関わってはいけない奴らだと学ぶ。

 結果、危険な峡谷を抜けるというよりツアー旅行の団体みたいな雰囲気がハウリアの中で漂い始めていた。

 そうこうしていると、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所に辿り着いた。長い長い階段が、岸壁に沿って造られている。

 ハジメがその階段を何気なく眺めていると、シアが不安げに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだ居るでしょうか?」

「どうだろう? とっくに帰ってもおかしくないけど……」

「それに、もしまだ帝国兵が居たら……ハジメさん、どうしますか? 殺しますか?」

「僕は殺さないよ。いくらモットーが殺戮、恐怖政治、血祭りの三ヶ条の僕らでも、殺しは流儀じゃないから」

「そうなの?」

「矛盾してますねそれ!?」

 

 ハジメの答えに疑問符で返したのはユエだった。ハジメ達の普段の行いから、殺しに躊躇があるとは思えなかったからだ。

 

「いや、別にアメコミのヒーローみたいな不殺を掲げているわけじゃないけど。いざとなったらコックピットぶっ刺すキラ・ヤ○ト的な不殺だけど」

「どうしようも無かったら殺すんですね」

「まあそんな感じで」

 

 という世間話をしながら階段を上っていく一行。やがて頂上に辿り着き、ライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 登り切った崖の上には――

 

「おいおいマジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~。こりゃいい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員が軍服を纏っており、剣や槍、盾を構えながらハジメ達を見て驚いた表情を見せるが、すぐに喜色を浮かべ、品定めをするようにハウリアを見渡す。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「シュコー……シュコー……」

「いやああああ助けてええええええええ!!」

「何だお前ら!?」

 

 帝国兵達は、ハウリアを獲物として眺めていたがいつの間にか向こうに行き、ダース・ベ○ダーのコスプレをした天の助と、縛られて囚われている首領パッチを見て驚く。

 それを好機と見るやいなや、ハジメは叫ぶ。

 

「首領パッチを放せ!」

「いや兎人にしか用ねえよ! つーか何だお前? 亜人じゃねえよな?」

「見ての通り人間だよ」

「はぁ~? 何で人間が兎人族と一緒にいるんだ? まあいいや。あのよく分かんねえ二人引き取って、兎人族置いてどっかいけや」

 

 ハジメの存在に疑問を抱くも、すぐに脇に置いて命令だけ出す帝国兵の一人。当然ハジメは従うはずも無い。

 

「フッ。お琴割りだ!!」

 

 持っていた琴を帝国兵の一人に降りおろし、そのまま気絶させた。

 これを見た帝国兵達は、さっきまでの空気から一変し武器を構えてハジメに殺意を向け、後方に居た帝国兵の十人が詠唱を始める。

 一方、ハジメは泣いていた。

 

「うえぇぇ~ん、ファルシオン君に借りた琴壊しちゃったよ~!」

「そりゃあんな勢いで振り下ろせば壊れますよ」

「大丈夫、私が一緒に謝ってあげる」

 

 そういってユエは壊れた琴を持って帝国兵の元へ向かう。帝国兵は何だかよく分からないが、とりあえず持っている剣を振り下ろす。しかしユエはそれを回避し

 

「お詫びの辛味噌。生まれ変われる程強くなれるよ」

「意味が分かりません!」

 

 辛味噌を帝国兵の顔面にぶちまけた。当然、帝国兵は怒り狂い暴言をぶちまける。

 

「何しやがるこのアマァ! 上等だ、てめえは正気がなくなるまで犯した後奴隷商に売り払って――」

「もう琴の話は終わった!!」

 

 しかし、帝国兵が言い終わるより先にユエは飛び上がり、自身の膝裏を帝国兵の後頭部に叩きつけた。プロレスで言うシャイニングウィザードである。

 そのままユエは違う帝国兵の背後に回り

 

「怒りの乙女ドロップ!!」

 

 バックドロップで気絶させた。

 

「何でさっきからプロレス技ばっかり使うんですか!?」

「よし、僕も続いて叩き潰す!」

 

 それに続きハジメも飛び出し、ハエ叩きを構え攻撃する。

 

「オラオラオラァ!!」

「「「ぐわああああああああああああ!!」」」

 

 ハエ叩きで次々帝国兵を倒していった。

 

「本当に叩き潰してる――――――――!?」

「起き上がった後夜に使う用のユエ特製ブロマイドセッティング!!」

 

 そしてユエは、ハジメが気絶させた帝国兵の傍に自身のブロマイドを置いていく。

 

「その行為に何の意味が!?」

「それよりシア、首領パッチ殿と天の助殿は!?」

「そういえばあの二人はどこに!?」

 

 カムの言葉で二人の存在を思い出したシアは、慌てて二人を探す。するとすぐに後方の詠唱していた部隊の傍に、二人が居る事に気付く。

 

「や、やめろぉ……」

「俺が悪かったから、塩漬けだけは……!」

「くそぉ、何てことだ……!」

「いやああああああああ、ヒロインの私を放してええええええ!!」

 

 塩漬けにされた帝国兵達の姿がある。しかしその後ろには、首領パッチを人質に取り天の助の動きを止める帝国兵最後の希望の姿があった。

 

「いやどういう状況ですかこれ!?」

「首領パッチ!!」

 

 人質にされた首領パッチを見て、迷うことなく飛び出すハジメ。

 やがて首領パッチ、天の助、帝国兵三人の傍に辿り着く。そして天の助の足を掴み

 

「その男に」

「え?」

「人質の価値は、無い!!」

 

 そのまま首領パッチ諸共帝国兵を攻撃した。

 攻撃したハジメはすぐさまハエ叩きで追撃を仕掛ける。するとそれに首領パッチと天の助も加わる。

 

「さあ吐け! さらった他の兎人族はどこへやったんだ!? 帝国に移送したのか!?」

「ヒロインの身体にベタベタ触ってんじゃねえぞこのハゲ!!」

「ところてんの塩漬けを食え! ところてんを崇めろ!!」

「分かった話す! 話すから! 多分全部移送済みだ! 人数は絞ったから……」

 

 “人数を絞った„。その言葉の意味を首領パッチと天の助以外の全員が察した。それはつまり、売れそうにない老人などは殺したということだ。帝国兵の言葉に、悲痛な表情を浮かべるハウリア達。

 

「この、ド外道がぁ――――――っ!!」

「ぐはぁ!!」

 

 そしてハジメは、ハエ叩きでそのまま帝国兵を斬り伏せた。

 

「ハエ叩きでどうやって!?」

 

 血を吹きだし、倒れ伏す帝国兵。それをハジメは一瞥した後、帝国兵の大型馬車を一台だけ残して、ハウリア達を乗せる為に使うことにした。

 無論、四十人いるハウリア全員を乗せることは出来ないので、老人や子供を中心に乗せ若者はそのまま歩かせてから、一行は目的地である樹海に進路を取り、再び出発した。


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