【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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ギャグのキレは悪くなっていますが、僕は元気です。

PS.一部ネタの差し替えをしました。


奥義17 変貌と書いてハウリアと読ませよう……

 訓練開始から十日間が過ぎた。

 その間にシアはユエが魔力を操作できる理由と、それにより三百年間奈落の底で封印されていたことを聞いて泣いたり、実戦訓練の末ユエの頬に傷をつけられる位に実力が付いたり、躊躇いはまだあるものの魔物相手なら攻撃を振るえる心を手に入れた。

 

「それで、前に言っていたお願いって何?」

「はい。私はユエさん達の仲間になって、旅について行きたいです!」

 

 そして十日目となった今、シアはユエに自身の願いを伝えた。

 シアが旅について行きたい理由は二つある。一つ目は純粋にユエ達と仲良くなりたいから。二つ目は、家族に心配をかけない為だ。

 シアは元々旅に出るつもりだった。なぜなら、ハウリアの異分子である自分がいつまでも居ると家族は常に危険に晒される。だが一人旅などしようものならハウリア総出で止めにかかるだろう。しかしハジメ達と一緒なら安心して送り出してくれるに違いない、とシアは思っている。

 

「まあ、私はいいよ」

 

 そしてユエは、シアの考えを全部察知したうえで肯定した。ユエからすれば、別にシアが多少の打算を持っていようと咎める気は全くない。それに――

 

「ツッコミ役は欲しいし」

「すみません。今不穏なこと言いませんでした!?」

「そろそろ戻ろう。他のハウリア達とハジメ達の様子も気になる」

「いや私も気になってますけど! ちょっと!?」

 

 シアの発言を無視して、ユエはハジメ達の元へ向かっていく。それを背後から見ながらシアは思った。

 

(何でユエさん、ずっとサンバの格好だったんでしょうか……)

 

 


 

 

 ユエとシアが他のハウリア族と再会するのは、別に難しいことでは無かった。十日前に二人が別れた場所に行けば、そこにハウリア族はちゃんといた。

 

「先生、ご命令の通り魔物を狩ってきました」

「……一匹でいいと言った筈よ?」

「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……」

「丁重にお出迎えしてやったんですよ」

「魔物の分際で生意気な奴らでしたよ」

「晒しとけばよかったかしらね……」

 

 でもキャラはおかしかった。なんかワイルドになっていた。少なくとも前話で書かれていた優しい、という設定は完全に消し飛んでいた。それを見たシアは思わず魚雷ガールに向かって吠える。

 

「いやどういうことですかこれぇ!?」

「教育の結果よ」

「完全に別キャラになってるじゃないですか!!」

「落ち着けシア。私達はこの世の真理を先生から教わっただけだ」

「し、真理?」

 

 荒れるシアを見かねて宥めるカム。ただしカムもワイルドになっているのでシアは懐疑的になっている。

 そんな状態のシアを知ってか知らずか、カムは誇らしげに言い切った。

 

「この世の問題の九割は暴力で解決できる」

「優しかった父様は死んでしまったですぅ! もう居ないんですぅ!」

「だけど、この胸に、一つになって生き続ける!!」

「何でユエさんと!?」

「ジョーク」

「それより魚雷さん! こんな原型をなくすような教育があなたのやり方なんですか!!」

「フッ、確かにあなたの言うことはもっともよ。だけどこれだけは言わせて頂戴」

 

 シアの言うことに心からの共感を覚えつつも、魚雷は教育した当人として言うべきを言った。

 

「こんな筈じゃなかったわよ――――――――――――――!!」

「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」」」」

「ええ―――――――――――――――――――――――っ!?」

 

 いきなり突撃しハウリアを撥ね飛ばしていく光景を無視して、シアは驚きのあまり叫んだ。

 

「本当はもっと、強さの中に優しさを残す戦士にするつもりだったのよ。こんな感じで」

 

『神に会えたら言っとけ!! 放っとけってな!!!』

 

「いやこのイメージ像おかしくないですか!?」

「この時期のガッツだと微妙な気がする」

「というかハジメさん達はどこにいるんですか!? あの人達からも何か言って下さいよ!!」

「ハジメ達ならあそこよ」

 

 魚雷ガールが指差す先をシアが見ると、確かにハジメ、首領パッチ、ところ天の助の三人はいる。

 ただし彼らは獣の毛皮で作った服を着て、石で出来た武器を持った状態で、狩ってきたであろう魔物を焼いて食べている。

 

「ウンババ」

「ウバッホラ」

「オラオハー」

「原始人になってる――――――――――――!?」

「ちなみにさっきの原始人と化したハジメ達の言葉を翻訳するとこうなる」

 

『ウンババ(好きなバーチャルYouTuberっている?)』

『ウバッホラ(うーん、オレはもこ田めめめかな)』

『オラオハー(オレは神楽めめだな)』

 

「話題は現代的だ!?」

「アンタ達ふざけすぎ――――――――――っ!!」

「「「ぎゃああああああああああああああああ!!」」」

 

 ハジケリスト達が突撃されている光景には特に心は動かないシア。しかし魚雷ガールの次の行動には驚かされた。

 

「む、ふざけた奴のオーラを遠くに発見! ぶっ殺すギョラ―――――!!」

 

 魚雷ガールはハジメ達を撥ね飛ばした後、そのまま虚空へと向けて飛びだってしまった。シアはそれをただ茫然と見上げている。

 

「……どうします、この状況?」

「とりあえずさっさと出発したい。でないと大樹に辿り着けない」

「ですね……」

 

 


 

 

 ハジメ達が居るフェアベルゲンの上空に、一人の女性が浮かんでいる。

 銀髪碧眼で白のドレス甲冑を纏った美人だが、瞳には感情と言えるものは何も浮かんでいない。

 彼女の名前はノイント。トータスの神、エヒトが作りだした真なる神の使徒と呼ばれる存在である。

 彼女はホルアドの町で、ハジメのクラスメイトの一人と会話した後、イレギュラーである南雲ハジメ達ハジケリストを捜索していた。会話したクラスメイトの言葉を鵜呑みにした訳では無いが、万が一があっても困るからという判断だった。

 そして今、件の南雲ハジメを発見したのだが――

 

「邪魔ギョラ!!」

 

 いきなり飛んできた魚雷に撥ねられ、何も分からないままノイントは意識を失っていく。意識が完全に消える間際、ノイントは思考する。

 

(また新しいイレギュラー。どうやら、事は慎重に運ばねばならないらしいですね……)

 

 こうして、神の使徒ノイントは実力行使するにしても、時と場所を選ばねばならないという結論を出した。

 その考えがハジメ達の前に立ちはだかるのはいつになるのか、それを知る者はまだ居ない。

 

 


 

 

「なぁにこれぇ」

 

 これが、実際の大樹に辿り着き目撃したハジメの第一声だった。

 途方もない大きさの木が目の前にあるが、肝心の大樹が枯れているのである。しかも、周りの木々は青々と輝いているにも関わらずだ。

 それを疑問に思いながらもハジメ達は大樹の根元まで歩み寄る。そこには石板が建てられていた。

 石板にはオルクスの部屋の扉に刻まれていた物と全く同じ物がある。ここが大迷宮の入口なのは間違いないだろう。

 

「で、こっからどうすんの?」

「カツオ神でも呼ぶ?」

「あの神里帰りするから呼ぶなって言ってたような……」

「いやカツオ神ってなんですか?」

「そんなことより、皆これを見て」

 

 ハジメ達のどうでもいい話に割り込んで、ユエは石板の裏側を指差す。そこには表の紋様に対応する様に小さな窪みが空いていた。

 ハジメがそれにオルクスの指輪を合うようにハメると、石板が輝きだした。

 しばらく光っていたが、やがてその輝きが収まると文字が浮かび上がる。そこにはこう書かれていた。

 

 “四つの証„

 “再生の力„

 “紡がれた絆の道標„

 “すべてを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう„

 

「どゆこと?」

「四つの証は、多分他の迷宮の証」

「紡がれた絆の道標は、私達亜人族の案内人のことでしょうか?」

「再生の力ならオレが心当たりあるぜ!!」

 

 石板の文字の意味にハジメ達が頭を捻っていると、天の助がおもむろに手を上げてきた。当然、ハジメ達は胡散臭そうに天の助を見る。だが天の助は自信満々だ。

 

「何も言うなハジメ。そこで黙って見ていろ! うおおおおおおおおお!!」

 

 天の助は叫びながらハウリア族に突貫していき、どこからか巨大な皿を取り出し自身を盛り付けた。

 

「さあハウリアの皆。美味しいところてんパーティーの時間だよ! オレを召し上がれ!」

 

 天の助の突然の言葉に戸惑うハウリア達。当然だろう。自分達の恩人の一人が、いきなり自身を食えと言ってきて、素直に食べられる人がどれだけいるのか。

 そんな状況を見かねて、首領パッチが助け舟を出した。

 

「食べてやってください。それが、天の助への一番の供養です」

「いやオレ死んでねーけど!?」

「これ、少ないけどご香典だよ……」

 

 そう言ってハジメは大量のレシートを天の助の傍に、まるで刺身のツマの様に盛り付ける。

 

(ご香典レシート!?)

「では、私が頂きましょうか」

 

 やがてカムが箸を持ち、天の助を一口食べる。

 

「父様、味はどうですか?」

「例えるならフィレオフィッs――マズッ!!」

「フィレオフィッシュ!?」

「フィレオフィッシュが不味いわけじゃない。天の助が不味い」

「うぅ……、皆酷い……。」

 

 体の一部を食べられた天の助は、そのまま石板の元へ向かい手をかざす。そしてしばらくすると、天の助の食べられた部分が再生した。

 

「これがオレの再生の力だ!!」

 

 しかし何も起こらない。

 

「全然駄目じゃんか!!」

「「がはぁ!!」」

 

 ハジメがユエを天の助に投げつけて黙らせたところで、今度は首領パッチが無言で手を上げていた。

 

「もうめんどくせえし、オレが中から入って開けてきてやるよ」

「え、そんなこと出来るの!?」

「まあ見てろって」

 

 そう言うと首領パッチは大樹に背を向けて、いきなりしゃがむ。そして

 

「イヤッフゥー! イヤッフゥー!! イイイイイイイイイイイイイ」

「あ、あれはマ○オ64RTA必須のケツワープ!」

「親のケツワープより見たケツワープ」

「もっと親のケツワープ見ろ」

「マ○オ64のTASかRTA動画見たことないと意味分かりませんよこのくだり……」

 

 首領パッチのケツワープで大樹のポリゴンの隙間に入り込み、見事大樹の中に入った首領パッチ。そのまま中に居る首領パッチの声が、外に状況を伝えてくれる。

 

「お、お前はあの時のエビバーガー!」「やめてぇ! ヒロインのあたしを辱めないでぇ!」「巾着巾着ゥ!」「それは、アウストラルピテクス復活の!?」「ちくわ大明神」「ム、ム、ムムムムーンサイド……!」

 

 しかしその言葉を最後に、首領パッチの声は聞こえなくなった。

 

「というか中で一体何が!?」

「おーい、お前ら!」

 

 次の瞬間、空から首領パッチの声が響いてくる。皆が見上げるとそこにはガ○ダムバルバトス・ルプスレクスと化した首領パッチの姿があった。

 

「いやー、ダンジョンで酷い目に遭っちまったよ」

「原型残ってない―――――――――――っ!?」

「じゃあもう諦めて、他の迷宮攻略してから来ようか」

「そうだな」

 

 面倒くさがりながらも、諦めて他の迷宮へ行くことにしたハジメ達。するとカムが話しかけてきた。

 

「ハジメ殿。この度はシアを連れていくと聞きました」

「え、そうなの?」

「あ、そういえばユエさんにしか言ってません!!」

 

 すっかり忘れていたシアは、慌ててハジメ達に仲間になりたい旨を話す。

 

「ど、どうでしょうか……?」

「OK!」

 

 ズドン

 

「な、な、なんじゃこりゃあああ!?」

「ところてんでしょ」

 

 天の助を射殺しながら了承するハジメ。後は流れでシアの仲間入りが決定した。そしてカムの話に戻る。

 

「そんなシアに皆で歌を送ろう。せーのっ!」

「「「デーレ○スでー、かーきんし過ぎて、売っちゃったホーンダのオデッセイー」」」

「何の歌ですか!?」

「本当は仰げば尊しを歌いたかった」

「退くべき時に退くのは恥じゃないから(震え声)」

 

 ハウリア族が歌うよく分からない歌を背に、ハジメ達は首領パッチに乗り込んで出発する。

 途中で町を経由して目指すはライセン大峡谷。そこにある大迷宮をついでに探しながら、大火山に行くのが目的だ。

 その説明を受けた後、シアはボソリと疑問を呟いた。

 

「ところで、首領パッチさんいつになったら戻るんですか?」

「次回には戻ってるよ」

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