【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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地の文にキャラがツッコミを入れるという手法もボーボボなら許される気がする


第1章 おいでませトータス
奥義1 はじまっちゃった物語


 ハジメが入学から一年と少しが過ぎた。その間はハジメなりに楽しく過ごし、また一応テストで平均点を取れる程度には勉強もしている高校生活を過ごしているが、今日は憂鬱だった。

 その理由は今日は月曜日だから、でもあり親の手伝いという名のバイトで徹夜だったせいもある。

 しかし一番の理由は

 

「待ってましたよ南雲先輩! 今日こそあなたを倒してお姉様の心を私達に向けさせます!!」

 

 目の前に居る少女が原因だった。

 後輩ちゃん。本名不詳の後輩であり、八重樫雫の義妹、ソウルシスターズを名乗る集団の一員である。ハジメは知らないが、彼女達は憧れの雫が幼馴染以外の男と関わる事をよく思わっていなので、ハジメとの接触を止めさせたがっている。幼馴染がOKな理由は、雫が恋愛感情は一切ないと明言しているからだ。

 ちなみに、雫はハジメに対しても恋愛感情を一切持っていない。ハジケリストというあり方に対してほんの僅か、雀の涙以下の憧憬と、真拳使いとして人と戦う覚悟に対しての尊敬はある。

 だが恋愛感情は一切ない。なので、別にハジメを倒しても雫は何一つ変わりはしない。

 にもかかわらず後輩ちゃんはこんな態度なのでハジメは

 

「冷凍・秋サンマ!!」

「ぎゃあ!!」

 

 冷凍サンマで後輩ちゃんを斬り捨てた。

 

「日本は、腐ってる! 腐ってる!!」

 

 そのまま息もつかせぬ連続攻撃で、哀れな後輩ちゃんは倒れ伏す。

 

「立て、大して効いちゃいない筈だ。今の秋サンマはただの脅しだ」

「いや効いてますけど!? ボロボロですけど私!?」

 

 口で抗議しつつも、平然と喋れるのでダメージは少ない後輩ちゃん。

 これ以上絡まれてもウザいので、ハジメは妥協案を出す事にした。

 

「この鳥を握るんだ」

「何ですかこれ」

「ハジケ鳥だよ」

 

 ハジケ鳥とは、握られると握った人間のハジケ度数に応じて色んな物に変化する鳥である。ハジケ度数が大きい程大きく複雑な物に変化する。ちなみにハジケ度数が何なのかハジメは知らない。

 という説明をした後、ハジメはハジケ鳥を握り、放す。するとハジケ鳥は軽トラに変化した。

 

「ま、こんな物かな。後輩ちゃんがハジケ鳥をさっきの僕と同じ位の物に変化させられたらまた相手してあげるよ」

「舐めないで下さい! それ位にすぐにやってやりますよ!!」

 

 そう言うと後輩ちゃんはハジケ鳥をひったくり、ハジメと同じように握って離した。

 すると

 

「本部、応答を願います」

 

 謎の男に変化した。

 

「ハジケ度数が低いとキャプテン石田になるよ」

「誰ですか!?」

「む、そこにいるのは南雲君じゃないか」

「しかも知り合い!?」

「丁度良かった。実は今度の火星人掃討作戦にこいつを連れて行って欲しいんですけど」

「私を!?」

「よかろう。他のメンバーに挨拶するといい」

 

 キャプテン石田の声と共に、誰かが後輩ちゃんの肩を叩いた。

 彼女が振り向くとそこには

 

「火星人掃討作戦リーダー、糸マンと!」

「副リーダーの紙マンだ!!」

 

 かろうじて人型の糸と紙が居た。

 

「ああ、強風が!」

「飛ばされる~!」

 

 そしてあっさり風で飛ばされていった。

 

「……では火星の最前線は彼女一人という事になるな」

「よろしくお願いします」

「ちょっと待って下さい!?」

 

 しかし、キャプテン石田は後輩ちゃんの懇願など聞かず担いでそのまま走り出した。戦え、キャプテン石田。火星を侵略して地球人の生活圏を広げる為に!

 

「覚えてろ南雲ハジメ―――っ! この恨み必ず晴らすからなぁ―――っ!!」

 

 背中で後輩ちゃんの恨み節を聞きながら、ハジメは時計を見る。すると、時計は遅刻寸前の時間を指していた。

 

「やばっ!!」

 

 そしてハジメも走り出した。走れ、南雲ハジメ。無遅刻無欠席の為に!

 

 


 

 

「さとうきび畑からこんにちは!」

 

 始業時間直前、遅刻を避ける為ハジメは教室のドアを突き破り突入。壊したドアを納豆真拳で修復しながら、教室の床をゴロゴロと転がり、教卓にスネをぶつけた。

 

「がああああああ! がああああああ!!」

「おはようハジメ。大丈夫?」

「スネがあああああ! 弁慶の泣き所がああああ!!」

 

 痛くて喚いているハジメのスネを、雫が見る。すると

 

『何だよあの牛若丸……。身のこなし軽やかすぎだろありえねえよ……』

 

 弁慶が飲んだくれていた。

 

「本当に弁慶いる――――!? というか泣いてないし!!」

「おはよう南雲君。今日もいつも通りだね」

「また南雲は遅刻寸前か」

「いや、あれはどう考えてもあの後輩が悪いだろ……」

 

 ツッコミを入れる雫に、香織、天之河光輝、坂上竜太郎が話しかけてきた。

 天之河光輝。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人で、小学生のころから雫の実家である八重樫流道場で剣道を習う門下生で、剣道としてみるなら実力もかなりの物だ。だからモテる。具体的には、常に幼馴染として雫や香織が居る状態でも、最低月に二回は告白される。クソが。

 

「クソが!?」

 

 そんな彼の欠点は正義感が強い、という名の思い込みが激しい点だ。具体的には自分が正しいと思った事は全て正しいと思ってしまう点だ。その所為で、ハジケリストとして好き勝手なふるまいを見せているハジメをよく思っていない。ちなみに、このクラスにはもう一人谷口鈴というハジケリストがいるが、彼女はあれで結構うまく立ち回っているので光輝達とも友人関係を築いている。

 次に、坂上龍太郎。単純な脳筋。終わり。

 

「俺の紹介短えな!?」

 

 龍太郎が虚空にツッコミを入れていると、教室の時計が始業の開始を告げた。

 

『黒下着は始業の合図~』

 

 その時計は黒いブラとパンツを付けた男が歌う時計だった。

 それを見た香織は思う。

 

(あの時計、どこで売ってるのかな……? 欲しくは無いけど)

「あ、やばい寝落ちする」

 

 そしてハジメは夢の世界へと旅立った。

 

 


 

 

「弁当忘れた……」

 

 時は流れて昼休み。ハジメは弁当を忘れたので、念のため持っていた某十秒チャージ二時間キープする奴を飲んだが足りなかった。だから家に電話して、弁当を持ってきてもらい待ち時間は寝て誤魔化そうとしていた。

 購買行けよ、というツッコミも聞こえそうだがハジメの知る限りこの学校の購買は

 

『界王拳、四倍だぁ―――っ!!』

『オラオラオラァ!!』

『あたたたたたたたたた、おわったぁ!!』

 

 というイメージ映像が流れそうなほど修羅の国である。真拳使いのハジメでも空腹状態では行きたくない魔境であった。

 

「ハジメ! 弁当持ってきたわよ――――!!」

 

 しばらくすると教室の外から声がした。弁当がやっと来た、と思いハジメが顔を上げると

 

「「ロングホーントレイン!!」」

 

 電車ごっこをしながら首領パッチと天の助が教室のドアを壊して突入してきた。

 ハジメは納豆真拳で慌ててドアを修復する。

 

「で、弁当は?」

「おう。これだ」

 

 と言いながら天の助はそのままハジメの机の上に乗る。

 

「さあ、俺を食え」

「いや、いらない」

「そう遠慮するなって」

「いやそういうのマジでいいから」

 

 天の助の俺を食え発言を、ハジメは本気で拒絶した。

 その事実がショックで首領パッチに泣きつく天の助。

 

「うわああああん! ハジメが酷いよ―――-っ!!」

「天の助……」

 

 首領パッチは肩をやさしく叩き

 

「荷物纏めて国に帰れ」

 

 三行半を告げた。

 

「やだぷ―! 絶対帰んないもんね―!! ブレイクダンス踊ってやる、シャオ!!」

「うるさい!!」

 

 ドゴォ、という音と共にハジメが天の助を黒板のシミにした所で雫が話しかけてきた。

 

「ちょっとハジメ、この二人は何」

「何って……僕の家の居候だけど」

「い、居候?」

 

 雫の質問に答え切れていないハジメの回答に戸惑う雫。すると今度は鈴が話しかけてきた。

 

「ねえハジメ君。その人ってひょっとして伝説のハジケリスト首領パッチさん!?」

「そうだぜ?」

「ドヤ顔がうざいよ首領パッチ」

「え、本当に!? サイン頂戴!!」

 

 一介のハジケリストとして憧れの首領パッチに興奮する鈴は、咄嗟に麻婆春雨を取り出しサインをせがむ。首領パッチはそれに『ドドドード・ドー○リオ』と練りわさびで書いて返す。

 

「ありがとう。そしていただきます!」

 

 そのサイン入り麻婆春雨を鈴は躊躇なく食べた。

 

「というか僕の弁当は?」

「ちゃんとあるから心配すんなって」

 

 そう言って首領パッチはゴトリ、という音と共に持ってきた物をハジメの机に置いた。

 それは木管楽器の一種、フルートだった。

 

「全然求めてないフルート!!」

 

 ハジメはフルートを思わず弾き飛ばした。飛ばされたフルートは、ジャイロ回転を刻みながら、ハジメのクラスメイトの檜山大介に激突した。

 

「ぎゃあ!!」

「お、おい大丈夫か!?」

 

 檜山大介。クラスの不良グループのリーダーでありながら、クラス内で彼の評価は『白崎香織に恋をしているのに気付いてもらえない可哀想な人』で概ね一貫しているという変わった男だ。

 そんな檜山はフルートが激突したショックで倒れ、友人に心配されながら片思いしている香織を探した。流石にこんな状況ならちょっと位心配してらえるかも、という甘い期待だった。

 だがしかし、当の香織は

 

「どうやって動いてるの、あなたって?」

「いや俺に聞かれても……」

 

 動いて喋る未知のところてんに興味津々だった。

 

「ガハッ!!」

 

 思わずショックで血を吐くが、そもそもこの世界は血を吐いた程度で心配される程軟な時空では無い。

 ので現在進行形で心配している友人以外はスルーした。

 

「というかいい加減僕の弁当出して」

「悪い悪い。さっきはミスった。本当はこっちだ」

 

 そう言うと首領パッチはドン、という音と共に弁当を机に置いた。

 

「ハイ、シーラカンス」

「わあああああああああああああ!!!」

 

 それは、深海魚の一種シーラカンスの煮つけだった。まさかの深海魚に思わず叫ぶハジメ。しかし次の瞬間には

 

「いただきます!!」

 

 とかぶりついた。

 

「オレも」

「オレもだ」

 

 そして続けてかぶりつく首領パッチと天の助。

 

「いや何であなた達も食べるのシーラカンス!?」

「「だって昼飯まだ食ってねーし」」

 

 そして数分後、三人はシーラカンスを食べ終える。そして首領パッチと天の助は家に帰ろうとした所で

 

 凍りついた、物理で。

 

「何で!?」

「いや八重樫さん、それよりあれ!」

 

 突如凍った二人に驚く雫にむかって、必死になってある方向を指差しながら話しかけるハジメ。雫がハジメの指が示す先を見るとそこには、光輝がいて彼の足元には幾何学的な模様の魔法陣が現れ、やがてそれは教室全体に広がる。

 

「皆、早く教室から出て!!」

 

 それまで突然のことについてこれず固まっていた教室にいる皆だったが、誰かが発したその言葉と同時に魔法陣が爆発したかのようにカッ、と光を放った。

 

 

 これが物語の始まり。

 ありふれたハジケリストが、何かを手に入れる物語の始まりだ。




感想でボーボボがいないからハジケ足りないのでは、という意見をもらいました。
それに関する返答ですが、このSSではボーボボは出ませんが首領パッチと天の助が共に登場するので大丈夫かな、と考えていました。
ありふれ勢もハジメ以外も何人かハジケリスト化しているので、ハジケ不足にはならないと思います。

足りないじゃん、と思ったらそれは作者がハジケ切れていないからという事にしておいてください。

遊戯王はどのあたりまで分かりますか?(ネタに使います)

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  • 遊戯王5D'sまで
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