【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義19 遂に来た! 解放者のウザい奴!!

「あ、そうだ。シアにこれ渡しとくよ」

 

 出発直前、ハジメはシアに登場が奥義7以来の救世鈍器ピアニカソードを投げ渡す。それを受け取ったシアは凄く微妙な表情を浮かべながら尋ねた。

 

「……あの、何ですかこれ?」

「救世鈍器ピアニカソード。ハイドリヒ王国の宝物庫にあった武器だよ」

「見た目はともかく結構な業物ですね!? 何でそんな物を私に?」

「いや、過去作から引っ張ってきた一発ネタだったんだけど、もう一回位出す機会無いと寂しいし……」

「史上稀に見る酷い理由!!」

「それと武器を持ってないシアに対するプレゼントって言うのもあるよ」

「そんな取ってつけたように言われましても!!」

「おーい、馬車用意したぞー」

 

 ツッコミ続けるシアを尻目に、天の助が二人を呼んでいる。その言葉を聞いて二人は天の助の元へ。そこにあったのは――

 

「用意したぞ。ぬの馬車をな!」

 

 一面にぬの文字が敷き詰められた馬車と、それを引く馬型のゼリー状の生物だった。

 

「馬車がキモいですぅ!!」

「ならこっちにする?」

 

 そう言ってハジメが用意したのは、キャンピンガー程の大きさを誇る豆型の車だった。

 

「ロクな移動手段無い――――――――――っ!!」

「ぬの馬車」

「豆の車」

「あなたはどの車が好き?」

「新春キャンペーン実施中!」

「四人がかりでやるネタが古い!」

「ガールフ○ンド(仮)のネタになったお正月CMって2014年のだし。時の流れは恐ろしい」

 

 ボソリと小声でネタ解説をしながらユエは豆の車に乗り込み、シア、ハジメ、首領パッチも後に続く。

 一人残された天の助は、ショックで叫んだ。

 

「ウンコだけじゃなく豆にも負けた! ショック!!」

「はいや――――!!」

 

 ショックを受けている天の助を、首領パッチが投げ縄で捉える。そしてそのまま豆の車は発進し、天の助を引きずりながら出発していった。

 

「あああああああああああああああああああ!!」

「天の助さ――――――――――――――ん!!」

「「イエーイ!」」

 

 引きずられる天の助を見て叫ぶシア、対してハジメと首領パッチはハイタッチで互いをたたえ合う。その光景にシアは迷わずツッコミを入れた。

 

「いや何でハイタッチ!?」

「あいつは、僕のカレーパンを食べた」

「オレもフルーツサンド食われた」

「それだけ!?」

 

 


 

 

 ライセン大峡谷に入ってしばらく経った。

 その間、魔物に多少襲われたものの特に問題なく進み、ハジメ達がオルクス大迷宮から出てきた転移陣が隠されている洞窟も通り過ぎて二日程進んだ辺りまで辿り着いていた。

 そして今、ハジメ達は首領パッチの提案でバーベキューをしている。野菜とバーベキューコンロは豆の車の中にあり、肉は買っておいたクルルー鳥*1を使った。

 

「まさかバーベキューコンロと野菜が豆の車の中にあるなんて、僕ビックリしたよ」

「あの車ハジメさんが出しましたよね!?」

 

 ハジメがしたまさかの言動にシアはツッコミを入れつつも、皆は焼けたバーベキューを食べながら思い思いに駄弁っていた。

 

「何かこうしてバーベキューやってると、ボーボボ達と旅してた時を思い出すな」

「ああ、そういやボーボボの提案でこういうのよくやったよな」

「へぇ~、そうなの?」

 

 首領パッチと天の助の思い出話に、ハジメは興味を示す。一方、ユエは話に入れず若干膨れ面を見せ、シアは純粋に疑問をぶつけた。

 

「あの、ボーボボってどなたですか?」

 

 シアのなんてことの無い質問。しかしハジメ達は一瞬だけ意外な顔をするが、すぐに納得して返答した。

 

「ボーボボっていうのは、僕らの世界では有名な英雄でね。世界を支配していた悪の帝国を滅ぼした英雄なんだよ」

「んで、オレと天の助はそいつと一緒に帝国と戦ってたんだぜ」

「……気になる」

「お、そうか? ならオレがいかに主人公してたか教えてやるよ! 今夜は徹夜だな」

 

 首領パッチが思い出話で徹夜を提案し、ユエもそれにノっている。だがその前に天の助が一言。

 

「思い出話はいいけど、その前にオレはカバを狩って来るぜ」

「カバ!?」

「カバのバックには金魚がいるから気を付けてね」

「金魚!?」

 

 そう言って天の助はその場を離れる。そしてしばらくすると天の助が慌てて戻ってきた。

 

「てえへんだてえへんでぃ! 皆こっちにきてくれぃ!」

「何キャラですか」

 

 皆は何事だと思いながらも天の助に連れられるがままに進む。そして辿り着いた場所には、壁面と一枚岩の間に隙間が空いていた。天の助はそのまま隙間に入っていくので、皆もそれに続く。

 入った先には結構広い空間があり、中ほどの壁面には看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう彫られていた。

 

 “おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪„

 

「何ですかこのポップな文章は」

「……胡散臭い。でも多分本物。ミレディって書いてるし」

「ミレディ?」

「解放者の一人の名前」

 

 ミレディ。その名は、オスカーの手記に出てきた解放者の一人の名前である。解放者、世間には反逆者として伝わっているが、名前自体は全くと言っていいほど広まっていない。その名がここにあると言うことは、ここがライセン大迷宮である可能性は非常に高いということである。

 だがそれはそれとして、文章がウザかったので首領パッチと天の助は石板の文章に“In ナウマンゾウのウンコ„と書き足していた。これにより文章は”おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮In ナウマンゾウのウンコへ♪„となった。

 

「なぜナウマンゾウ!?」

 

 一方ハジメは周りを全く気にせず大迷宮の入口を探していた。そして奥の壁にハジメが触れると、いきなりからくり扉の様に回転し、ハジメはそのまま壁の向こうへと姿を消した。ユエ達は慌ててハジメを追いかけて扉の奥へ飛び込む。そして入った瞬間、ヒュヒュヒュと無数の風切り音を響かせて矢が飛んできた。

 

「お願い防いで。天使さん!」

「任せろ! プルプル真拳奥義、ぬのハンカチシェルター!!」

 

 ユエの頼みに応じ、ぬのハンカチで出来たシェルターを呼び出す天の助。しかしハンカチで矢が防げるわけもなく、五本程矢を弾いた後全部の矢がユエ、首領パッチ、天の助に命中した。

 

「いやむしろ何で五本弾けてるんですか!?」

 

 そして弾かれた五本の矢は――

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

 

 先にこの部屋に入っていたハジメに命中し、希望の花を咲かせる羽目になっていた。

 

「ハジメさんがまた死んでる! いつもみたいに!!」

 

 それを無視してユエは、部屋の中央にある石板を見る。そこには入口と同じ文字でこう書かれていた。

 

 “ビビった? ねえ、ビビっちゃった? ちびってたりして、ニヤニヤ„

 “それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ„

 

「何て言い草だ。僕を殺した責任、取って貰わなくちゃな」

「伝奇物のエロゲーならメインヒロイン張れそう、その台詞」

「月○リメイクまだー?」

 

 石板の文章に怒りを覚えながらも、大迷宮に挑もうと通路沿いに進もうとするハジメ達。しかし、ある程度進んだと思うと前触れもなく

 

 ピィ―――――――ッ!!

 

 という音が鳴り響いた。

 

「な、何の音ですか!?」

「まさか、万引きか!?」

「おいハジメ、このぬの絵本は何だぁ? きちんと清算してもらわないと困るんだけどなぁ?」

「し、知らない! 僕はそんな絵本万引きしてない!! 僕が万引きしたのはダイナマイトバディ女子大生というエロ本だ!!」

「万引きはしてたんですね!?」

「「万引き駄目絶対!!」」

「ぎゃああああああああああああああああ!!!」

 

 ハジメは二人の怒りを買い、爆発してしまった。

 

「ぬの絵本?」

 

 いきなり爆破されたハジメを無視して、ぬの絵本が気になったユエは天の助から奪い取り、シアと二人で読み始める。その本にはこう書かれていた。

 

 “ぬぬーぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬぬ。„

 

「読めない!!」

 

 ユエは怒りの余りぬの絵本を引きちぎった。

 

「オレの絵本が――――――――――!?」

 

 泣きながらちぎれた絵本の断片を拾い集める天の助。そうこうしている間に音は止み、それと同時に壁に映写機で投影されたかのような画面が現れ、映像が流れ始める。

 その映像は、カブトムシの交尾だった。

 

「何で!?」

『あ、間違えた』

 

 と思ったその刹那、映像が切り替わりニコちゃんマークの仮面を付けた白いローブを付けたゴーレムが画面に映る。

 

『はーい! 皆大好きミレディさんだよー!!』

「いやそれよりさっきの映像もうちょっと見せてよ! 結構貴重だよ!!」

「オレの今年の自由研究、アレを見た感想にするから見せろよ!!」

『ちょっと黙ってて』

 

 ミレディの言葉と同時に、無数の矢が飛来してハジメと天の助を貫く。そしてゴホン、と咳払いをして無理矢理仕切り直し、ミレディはまた話しはじめた。

 

『というわけで、美少女解放者にしてこの迷宮の主、ミレディ・ライセンでーす! よっろしっくねー!!』

「何が美少女だよ」

「雑なキャラデザしやがって」

「作画楽そうだなオイ」

『ちょっと待って! 今は元の身体が死んでるからこんなゴーレムに意識移してるけど、人間の時の私は本当に美少女だから! オーくんとかメイド服着てたら色んな意味でガチガチだったから! グー○ルでミレディって検索したら、サジェストで真っ先に出てくる私を舐めないで欲しいね!!』

「ミレディってあなたか靴のブランドしかないと思うけど」

『そういうこと言うのは無しで』

 

 ハジケリスト四人に塩対応されながら、それでも話を続けるミレディ。その様を見てこの人メンタル強いな、とシアは思った。

 

『まあそれは置いといて、ここからが本題。さっきのピィ――――ッ、って音は一定以上のハジケリストがこの迷宮に挑もうとすると鳴るシステムで、そのハジケリストにはある権利を賭けて挑戦が出来るの』

「権利?」

『うん。その名もダンジョンオールカットの権利!』

「オールカット!?」

 

 ミレディのあまりの発言に思わず叫ぶシア。しかし話は止まらない。

 

『まあぶっちゃけ私はハジケリストなら神殺しをしてくれるって期待してるからさ、ダンジョンパートはいいかな~って思う訳。でもタダじゃないよ。ここでハジケてもらって、私がそれを合格だと思ったらダンジョンを半分カット。そしてその先で今度は私が用意した刺客とハジケ勝負をしてもらうから、それに勝ったら残りもカット。そしてボス戦って感じかな』

「合格出来なかったら?」

『その時は頑張ってダンジョン攻略して』

「成程、分かりやすいな」

「そういうことなら最初は僕が――」

「待てよハジメ。オレにやらせろ」

「首領パッチ……」

 

 ミレディが提示するダンジョンオールカットの権利を手に入れる為、挑戦を名乗り出た首領パッチ。果たして権利を手に入れることができるのか?

 

『次回をお楽しみに!!』

「仲間面して締めの台詞取らないで」

 

 いきなりナレーションの締めに割り込んできたミレディが映る画面に、ユエがロケットランチャーを発射した。

 

『ぎゃああああああああああああああああああ!!』

「何で画面越しなのにダメージ受けてるんですか!?」

*1
地球で言う鶏


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