【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義22 ハジケリスト・イン・ベニテングダケホライゾン

 深紅のドレスを身に纏う銀髪の女融合戦士、ハジータの強さは圧倒的だった。

 十体のゴーレムが連携を駆使して彼女に襲い掛かろうとも、羽子板セイバーの一閃で打ち崩せるほどに。

 

「……敵を嬲る趣味は無いし、私は一分しかこの姿を保てないわ。だから一気にいかせてもらう」

「くっ!!」

「……ウコイサ、ンイボ、ツパンギ」

 

 構えるミレディを尻目に、ハジータは小さく呪文を唱える。

 その刹那、世界は色を失う。今まで立っていた足場も、周りに浮かんでいる立方体も全てなくなり、辺り一面を漆黒だけが支配する。しかし

 

「奥義、深紅の地平線(ベニテングダケ・ホライゾン)!!」

 

 ハジータが奥義を発動させると、空は夕暮れの様な橙色に、地上は深紅色の傘に白色のイボが付いた毒キノコ、ベニテングダケが見渡す限りの地面を覆っていた。

 

「――領域支配系奥義っ!?」

「……知ってるのね。その通りよ、ここは私が造りだした世界。ここでは地も空も時すらもベニテングダケでしかないわ」

「何言ってるんですかこの人!?」

 

 ハジータが発動した奥義に驚くミレディと、ハジータの電波発言に驚くシア。二人を無視して、ハジータはブブゼラを取り出し、辺りに爆音を響かせた。

 そしてブブゼラが鳴ると同時に、辺りのベニテングダケが二メートル程の大きさになり、一列に整列する。その数ざっと二百五十。

 ベニテングダケの圧巻の数を前に、ハジータは力強く言い放つ。

 

「……これより、第二百十五回ベニテングダケ運動会を開始するわ!」

「何で!?」

 

 突然の宣言に思わず叫ぶミレディ。だがハジータはこの程度で慌てたりはしない。

 

「……深紅の地平線(ベニテングダケ・ホライゾン)はそういう技よ。この空間でベニテングダケと勝負して、勝てば元の世界へ戻り負ければ死ぬ。それだけのことよ」

「いや、君がハジータでいれる時間って一分だけでしょ! 運動会とか無理じゃん!!」

「……あそこにある時計を見なさい」

 

 そう言ってハジータは背後に立っている時計台を指差す。その時計台はデジタル時計で、ミレディが大人しく指差す方へ目をやるとそこにはこうあった。

 

 

 ベニ10:09ダケ

 

 

「いや何これぇ!?」

「……ベニ10(テン):09()ダケよ。言ったでしょう。この世界は時すらもベニテングダケと。つまりこの世界は常に午前十時九分よ」

「凄い! 説明されてるのに理解できないって私初めての経験なんだけど!!」

「……そう、それは良かったわね。まあ、そんなことよりもう運動会が始まるわ。とっととあなたとゴーレムも並びなさい、失格にするわよ」

「理不尽!!」

 

 完全にツッコミに回されてしまったミレディが、不満気な表情を浮かべながら実は一緒に着いてきていたゴーレムと共に、ベニテングダケの横に同じように並ぶ。

 それを確認したハジータは、マイクを持って告げた。

 

「……ではこれより開始の挨拶として、ところ天の助に選手宣誓をしてもらいます。ハイ天の助」

「あいよ」

「参加するんですね天の助さんも!?」

 

 ハジータから天の助がマイクを受け取るのを見て、思わずツッコむシア。一方、天の助はそのまま選手宣誓を始める。

 

「宣誓! ボクたちはハジケリストシップにのっとって、正々堂々真っ向から不意を打って豆腐を皆殺しにすることを誓います!!」

「いませんよ豆腐なんて!?」

「……宣誓は終わり。ではこれより――」

 

 そこでハジータは懐から、よだれかけを付けた不細工な人形を取り出す。その人形を首領パッチは知っている。

 

「あ、オレのヤッくん! いつの間に!?」

「第一種目を開始するわ」

 

 ハジータは取り出した人形を上空に放り投げ

 ドパンドパンドパン

 銃で撃って爆散させ、花火の様に空に散らせた。

 

「ヤッく――――――――――――――――――――――――ん!!」

 

 首領パッチが流す血の涙は、見なかったことにして。

 

「……なお、この運動会の実況は私。解説はシア・ハウリアがお送りするわ」

「私ですか!?」

 

 


 

 

「……第一種目、借り物競争を開始するわ」

 

 ―第一種目 借り物競争―

 

 借り物競争。ルールは通常の徒競走と同じようにスタートし、コースの途中に置かれた紙を広い、そこに指示された品物を借りてくるというもの。(Wikipedia参照)

 

「赤組と白組の選手はそれぞれスタート地点につきなさい」

「分け方は普通ですね」

 

 ハジータの指示に従い、赤組からはベニテングダケが二本。白組からはミレディと首領パッチがスタート地点についた。

 

「ミレディさんと首領パッチさん達同じチームなんですか!?」

 

 そうシアが驚く一幕もあったが、とにもかくにもスタート。一斉に走り出し、最初に借りる物が書かれた紙を手にしたのはミレディだった。他のメンツが高くて二メートル程の大きさしかない一方、ミレディは二十メートルある。ガリバーと小人がかけっこすれば、絶対にガリバーが勝つのと同じことだ。

 だがミレディが紙に書かれた借りてくるものを見た瞬間、彼女の足は止まってしまう。その紙にはこう書かれていた。

 

『スーパーファ○コンが4000円安くなるクーポン券』

「令和の現代に現存してるのこれ!?」

 

 あまりにも予想外な代物に思わず叫ぶミレディ。そうこうしている間に、他の走者も追いついて紙を拾っていく。

 

「クソ……、どうすればいいんだ!?」

 

 そして紙を見た首領パッチが叫んだ。一体どんな無茶振りをされたんだ、とミレディが首領パッチの紙を覗き込むとそこにはこうあった。

 

『あの日に置いてきた君の思い出』

「借りる物ですら無いし!!」

 

 白組二人が騒ぐ中、赤組のベニテングダケの内一本が観客のベニテングダケを引き連れゴールテープを切った。

 

「ベニテングダケがゲシュタルト崩壊しそうな文章ですね」

「……成程、ちゃんとお題をクリアしたようね」

 

 借りる物が書かれた紙と連れられてきたベニテングダケを見比べながら、ハジータは言う。

 

「……よくこの『魔攻破邪神ザルビオスの転生体』というお題をクリアしたわね。ということで勝者は赤組よ」

「邪神の転生体キノコなんですか!?」

 

 衝撃の事実がハジータ以外を襲うが、そんなことはどうでもいいとばかりに次の競技の準備をベニテングダケにさせるハジータ。

 やがて準備が終わり、ハジータは選手を呼ぶ。

 

「……次の競技は綱引きよ。選手は既定の場所に集まりなさい」

 

 ―第二種目 綱引き―

 

 ハジータの言葉と共に、赤組のベニテングダケ数本と白組の天の助とゴーレム数体が既定の位置に着く。しかし、そこには綱引きに必須の綱が無く、選手の皆は辺りを見回していた。

 だが次のハジータの言葉で、一同は怒りを見せる。

 

「……けれど綱が用意できなかったから、代わりに丸太を引きなさい」

「丸太!?」

「引けるか―――――――――――――っ!!」

 

 キレた天の助がハジータに向かって丸太を投げつけるも、彼女は気だるげに羽子板セイバーを振るい丸太を弾き飛ばす。

 

「……生意気ね。王の判決を言い渡す。死よ」

 

 そのままもう一度、今度は力をこねて羽子板セイバーを振るう。それだけで風が巻き起こり、天の助もゴーレムもベニテングダケも一切合財まとめて吹き飛ばされる。

 そして死屍累々のまま、誰も立ち上がれないかと思ったその時、ただ一人天の助だけが息を切らせながら立ち上がった。

 

「……やるわね。なら、この綱引きは私の攻撃を受けてなお立ち上がった天の助の所属している白組の勝ちでいいわ」

「判定が雑ですね!!」

「……ということで次は玉入れよ」

「正直実況面倒くさくなってませんか!?」

 

 ―第三種目 玉入れ―

 

 ハジータの攻撃により荒れたフィールドをベニテングダケが整地し、その上に玉入れ用の籠が置かれ、玉が辺り一面に散らばる。ただし――

 

「……玉入れ用の玉が用意できなかったので、代わりにシメジを置いているわ」

「何でさっきから肝心な物用意できないんですか!?」

「……メル○リに無かったのよ」

「中古品に頼ろうとしないで下さい!!」

 

 主催者の不手際にシアが叫ぶ中、玉入れをする選手、チーム全員がフィールドに並ぶ。全員が用意を終えたとみて、ハジータは半鐘を鳴らしながら開始を宣言した。

 

「半鐘!?」

 

 半鐘の音と共に、シメジを籠に入れようと投げ続ける一同。しかし、しばらくするとミレディがシメジをベニテングダケに投げつけはじめた。シメジを受けたベニテングダケは悶絶して失神し、一本また一本と戦線を離脱していく。

 

(……流石ね。シメジは古代バビロニア文明では武器として扱われていたのを、ミレディは知っていたのかしら)

「絶対嘘ですよね!?」

 

 シアのツッコミをよそに、フィールドは最早玉入れではなくシメジ投げ合戦と化していた。シメジが入っていた籠は倒れ零れ落ち、同じように選手たちも倒れ伏す。

 そして最後には誰も立つ者のいない、戦場の果てと化していた。

 

「……でもどっちの籠にもシメジが一つも入ってないのでドローゲームよ」

 

 ハジータは胸の谷間からスイッチを取り出してポチッ、と押しフィールド全体を吹き飛ばす。

 

「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」」」

「何で!?」

「……そして最後の種目は合戦よ。立ち上がりなさい、戦士達!」

 

 ―最終種目 騎馬戦―

 

「種目名と発言が噛み合ってませんけど!?」

 

 ハジータの叫びに呼応し、白組の首領パッチ達と赤組のベニテングダケは立ち上がり、剣、槍、弓矢などあらゆる武器を取り構える。

 口火を切ったのは槍を持ったベニテングダケ。彼は天の助を狙い走り出す。しかしそれを阻むのはミレディ。そこでベニテングダケはミレディとの戦いに挑む。

 だが悲しいかな。ベニテングダケは二メートルの大きさしかないが、ミレディは二十メートルの大きさを誇る。

 自然界の摂理、質量の差に抗う術は無くベニテングダケはただ敗れ去った。その敗北と同じく、他のベニテングダケもただただ蹂躙を受けるのみ。

 必然、勝利したのは白組だった。

 

「終わったのだ! ついに赤組は私達白組に敗れ去ったッ!!」

「……そうね、なら空を見なさい」

 

 ハジータの言葉のままに空を見上げるミレディ。その視線の先にある物を見てミレディは思考が止まる。

 そこにあったのは、巨大なエネルギー体。太陽がもう一つあるのではないか、と錯覚するほどの巨大な力の塊が、空に浮かんでいた。

 

「何、あれ……!?」

「……運動会の間、ずっと溜めていたエネルギーよ。今までの勝負はただあれを溜める為の時間稼ぎでしかないわ」

「ひ、卑怯者!!」

 

 明かされた衝撃の事実に非難の言葉を浴びせるミレディ。しかしハジータは取りあうなどしない。

 

「……後味のよくない物を残すとか、人生に悔いを残さないだとか、そんな考えは無いわ。このハジータにある物はたった一つ。勝利して支配する、それだけよ。それだけが満足感よ。過程や……! 方法なぞ……! どうでもよいのだァ―――ッ!!」

 

 その言葉と共に、空に溜まっていたエネルギーはミレディに向かって一直線に落ちていく。

 当然逃げようとするミレディ。だがこの世界に無数にいるベニテングダケが拘束し、それを許さない。

 できることといえば、恨み言を残すのみ。

 

「この汚らしいアホがァ―――――――――――ッ!!」

「何なんですかさっきからこのDIO様の台詞ラッシュは!!」

「……究極奥義、空へと落ちる深紅(ベニテングダケ・インパクト)!!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 エネルギー体、空へと落ちる深紅(ベニテングダケ・インパクト)はミレディに直撃し、彼女は塵一つ残さず消滅した。

 と同時に深紅の地平線(ベニテングダケ・ホライゾン)が解除され元の世界へと戻り、そのジャスト一秒後、融合が解け元のハジメとユエに分離した。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「ど、どうしたんですかハジメさん!?」

 

 分離した直後、いきなり悲痛な叫びを見せるハジメに、思わず動揺しながら問いかけるシア。

 

「せっかく女の身体だったのに、胸の一つも揉めなかった!!」

 

 ドパンドパンドパン

 

 そして叫ぶ内容が下らなかったので、いつもの通りユエに希望の花を咲かせられた。

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

「ひでえ締めだ」

「オチに困るとすぐこれだよ」

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