【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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新章開始です


第3章 トータスのみんなでおどりゃんせ
奥義24 新たな舞台へと


「着替えが欲しい」

「あ?」

 

 ブルックの町へ向かう馬車の中で、ハジメが唐突に呟く。

 

「制服一張羅がずっと続くのは絵面的にキツイと思うんだ。僕キャラデザに個性薄いし」

「ハジメさんは言動と行動の個性が強すぎる気がしますが……」

「そういうことなら、お前がオルクスに置いてきた黒コートをこっそり持ってきてるぞ」

「いつの間に……」

「ぬのジャージもあるぞ」

 

 首領パッチからは似合わないと思った服、天の助からはぬの文字がびっしりと書き記されたジャージを見せられ、どっちを選ぶか少し、一秒に満たない程度に迷ったハジメ。しかし選び取る答えは決まっている。

 

「首領パッチ。そっちに着替えるから服頂戴」

「ほらよ」

「更に今ならなんと、その黒コートに加えてぬのジャージもセットで付きます!」

「それでお値段は据え置き、百九十八万円ポッキリ」

「高いですぅ!?」

 

 こうして、ユエに続いてハジメも原作の衣装になるのだった。

 

「でも黒髪で眼帯もしてないハジメって読者からはイメージし辛くない?」

「え、今から白髪に染めて片目抉んの?」

「ソンナコトヤッテミロ……。ボクノカラダハボドボドダァ!!」

「何でオンドゥル語!?」

 

 


 

 

 ブルックの町に到着して一週間が経過した。その間に起きた印象深い出来事といえばシアを、たまにユエを手に入れようとする男が山の様に湧いたことだろう。

 最初は適当にあしらったり、胸と露出度はともかく見た目なら負けてないと自負するユエが、ナンパの数の差にブチ切れたりして追い払うことができた。

 しかしシアを狙う男達は一向に減る気配を見せず、一計を案じたハジメは男達にこう告げた。

 

「お前達なんぞシアはお呼びじゃない。どうしてもシアを自分の物にしたいなら、納豆のプールでシンクロナイズドスイミングしてもらおうか」

「それができれば、シアちゃんの好みに近づけるってのか……」

「うん、間違いなく」

「いやいやいや! 一ミリも近づきませんからね!!」

 

 いきなり訳の分からない男の好みを設定されたシアが全力で吠える。一方、男達は少し怯み、何人かは退くが未だ数十人残っている。そして世界とは一人の意志では動かない物である。

 

「おーい、ギルドに言って納豆プール借りてきたぞー」

「ギルドで借りられるんですか納豆プールって!?」

 

 天の助の無情な言葉で、シンクロイン納豆プールを行うことは確定した。

 

「……私を取りあう男達は?」

「アタイのも」

 

 ユエと首領パッチが疑問を呈すが、その問いの回答はハジメが担ってくれる。

 

「ない! そんな展開は無い!!」

「「!?」」

 

 ショックを受け、ズーンというオノマトペが付きそうな精神で体育座りをするユエと首領パッチ。そんな二人を無視して、納豆まみれの男達によるシンクロが始まった。

 最初はそれなりに面白がっていたハジメと天の助だったが、絵面の醜さに段々嫌気がさしてきてついには死んだ目になっていった。ちなみにシアは最初から死んだ目である。

 にも関わらずシアの気を引こうと一心不乱にシンクロする男達に、ハジメは遂にキレた。

 

「お前ら全員、見苦しいんだよ!!」

「「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」」

「いやこの光景の元凶ハジメさんですよね!?」

 

 ハジメは納豆プールにインド象を投げ込み、男達を蹂躙していった。

 

「くたばれ、醜い羽虫共!!」

「インド象生誕祭の始まりだぜぇ!!」

「生誕祭!?」

 

 それに便乗し、天の助は石、首領パッチはメカ首領パッチを投げ込む。

 そして最後には

 

「“緋槍„」

 

 ユエの魔法で焼き尽くされ、ここにシアを狙う男達に関する騒動の決着はついた。(※焼けた納豆は全てインド象が食べました)

 

「インド象が!?」

 

(※そしてインド象はブルックの住人が食べました)

 

「インド象を!?」

 

 その翌日、ハジメ達は冒険者ギルドへと来ていた。目的は納豆プールの後始末を引き受けてくれたギルド受付嬢、キャサリンへの挨拶と、この町を明日には出るので目的地関連の依頼があれば受けておこうと思ったからだ。

 それを聞いたキャサリンは、少し寂しそうにハジメに言う。

 

「行っちまうのかい。あんた達がいると騒がしくて楽しいんだけどね」

「まあ、僕らにも目的がありますから」

「そりゃ仕方ないね。で、どこに行くんだい?」

「フューレンです」

 

 雑談しながらも、仕事のできる女キャサリンはフューレン関連の依頼を探し、すぐに見つけてハジメに提示する。

 

「これが丁度いいね。商隊の護衛依頼。丁度空きが三人分あるし、どうだい?」

 

 キャサリンが提示した依頼は、中規模商隊の護衛依頼だ。護衛に十五人程冒険者を求めており、ハジメ達三人で丁度となる。ちなみに、ユエとシアは冒険者登録はしていないのでカウントしていない。

 

「三人分空きがある護衛依頼とは一体……」

「巡り合わせが悪いんじゃないの? で、受けるかい?」

「はい、受けます」

 

 淡々と依頼を受けることを決めたハジメ。しかし、内心は依頼を受けてクエスト開始という、自由度の高いRPGみたいなノリに結構ワクワクしていた。そして同じ思いを持っているバカがもう二人。

 

「こういう冒険者的なノリ、実は初めてだよな!」

「ホントホント。おかげでわちきのラッシーを喜んでるわ」

 

 天の助は周りの冒険者にところてんを配りながら、首領パッチはドリアンのラッシーを愛でながら内心をさらけ出し、ワクワクしていた。

 

「ラッシーが臭い」

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 そしてユエはドリアンをそこらの冒険者の口に押し込んでいた。

 

「それじゃ、先方に伝えとくから明日の朝一で正門に来て頂戴」

「かしこまりもっこり」

(まりもっこり?)

「あ、それとこれも」

 

 ハジメがキャサリンから依頼書を受け取ろうとすると、彼女がそれに追加して一枚の手紙を渡した。

 

「何ですかこれ?」

「あんた達は色々規格外でトラブルメーカーっぽいからね。他の町でギルドと揉めた時はその手紙を見せな。少しは役に立つだろうさ」

「一体何者なんですかキャサリンさんは!?」

 

 思わず叫ぶシア。そんな彼女を見てキャサリンは指を立てて唇に当ててから、こう言った。

 

「詮索はなし。いい女には秘密がつきものだからね」

「はぁ……」

 

 どこか納得いかないシア。その背後でユエが小さく呟く。

 

「この伏線、ちゃんと回収されるの?」

 

 そしてまた翌日、早朝。正面門にやってきたハジメ達を出迎えたのは、依頼者である商隊の纏め役と、他の冒険者達だった。ハジメ達が最後だったらしく、他の冒険者達がざわついている。

 

「お、おい。まさか残りって“納豆ラバーズ„なのか!?」

「納豆ラバーズ!?」

「……ああ。奴らは納豆まみれの男が好みの兎人族の少女と、それに輪をかけた変人共の集いって噂のあの納豆ラバーズだ」

「私達の評判が酷いことに!!」

 

 ブルックの町で生まれた自分達の評判に、シアが若干落ち込みつつハジメ達は商隊の纏め役の人に声をかける。

 

「あの~」

「君達が最後の護衛かね?」

「はい、これが依頼書です」

 

 ハジメが懐から出した依頼書を見せ、確認した纏め役の男は納得して自己紹介を始めた。

 

「私の名前はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達はとても優秀だとキャサリンさんから聞いている。期待させてもらうよ」

「もっとユンケル?」

「モットヨコセ・バルバトス?」

「素材落とせオラァ!!」

「名前の間違え方がおかしいですぅ!!」

 

 ふざけるバカ三人に対するシアのツッコミ。その光景にモットーは多少面食らいつつ、シアに対し値踏みするような視線を向ける。

 

「ところで、ええと……。キャサリンさんによると、君がハジメ君だったかね?」

「あ、はい」

「……物は相談だが、この兎人族……。売るつもりはないかね?」

 

 モットーのいきなりの発言に多少驚くハジメ。だがこのトータスではそれほどおかしな部類ではない。商人としての性として、珍しいかつ高く売れるであろう超美少女の兎人族であるシアに目を付けたのだ。シアが首輪を付けていることから、奴隷だと判断し主人であろうハジメに声をかけた。

 そのモットーの言葉に、ハジメは毅然と返答した。

 

「いえ、シアを売るつもりはありません」

「……そうか、残念だ」

「代わりに天の助を売ります」

「フッ」

 

 ハジメの言葉と同時に、自身を大皿にを盛り付けポン酢をかけつつ、膝をついて座りながらドヤ顔を決めて登場する天の助。

 天の助は確信していた。この男、モットー・ユンケルは自分を購入すると。そして美味しく食べる客を見つけると。

 だがモットーは百戦錬磨の商人。たとえどれほど珍しい物であろうと、売れるか否かを見抜く眼力はある。すなわち――

 

「いや、売れ無さそうだから結構だ」

 

 買う選択肢など、最初からありはしない。

 

「うおおおおおおおおおお! オレを買ええええええええええええ!!」

 

 一方、モットーの返事に怒り狂った天の助は思わず飛びかかるが、護衛の冒険者に取り押さえられてしまった。それでも暴れる天の助だが、拘束を振りほどくことはできない。

 そしてその後ろでは――

 

「兄ちゃんの仇だ!」

「ゲッヘッヘ……。てめえ如きがこのオレ、首領パッチ様に勝てると思ってんのか?」

 

 ザリガニと首領パッチが戦っていた。

 

「何事ですか!?」

「“凍雨„」」

「「ぎゃああああああああああああああああああ!!」」

 

 ザリガニと首領パッチがユエの魔法で一掃される。その光景を見て、商隊と冒険者一同は不安を隠せなかった。

 

 


 

 

 フューレンの町は、ブルックから馬車で約六日の距離である。

 日の出前に出発し、日が沈む前に野営の準備をする。それを繰り返すこと三回。ハジメ達は、フューレンまで後三日の距離まで辿り着いた。

 今の所何かが起こる訳でもなくのどかに過ごし、今日も特に何もないまま野営の準備をする。冒険者たちの食事関係は自腹であり、商隊とは別メニューなこと、冒険者達は周囲を警戒しながら食べるので商隊が落ち着かないのか、別に食べるのが暗黙の了解となっている。

 そんな冒険者達の食卓は

 

「うめぇ! シアちゃんの料理うめえ!!」

「俺の嫁に来てくれ! 納豆プールに飛び込むから!!」

「何度も言った通り、私別に納豆でベタベタになった男の人が好きとかありません!!」

 

 シアの作ったシチューみたいな料理に舌鼓を打っていた。

 冒険者の食事は大抵干し肉など簡素な携帯食糧なのだが、ハジメ達はそういう物理法則を無視すること、オルクス大迷宮で宝物庫を手に入れていることにより、質量とか関係なく物が運べるので、彼らは全くセオリーとか気にせず好きな食事を楽しんでいた。

 が、流石に他の冒険者がボソボソ干し肉を食べてる中、豪華な食事は気に病んだのでお裾分けしたら大評判となった。

 

「は~い。た~んと食べて下さいね~。ご飯重くしてありますよ~」

「ユエちゃんはどういうキャラなんだ……?」

 

 ユエは小学生の給食の時間で着る割烹着を着て、盛り付けに協力していた。

 

「ところてんいかがっすかー? 箸休めに最適っすよー。今ならオレもついてくるっすよー」

「一つくれ」

 

 天の助はここぞとばかりにところてんを布教し、少しずつ冒険者達に受け入れられていく。

 

「でも天の助はいらん」

「酷い!」

 

 ただし天の助が不味いのは、冒険者の間で共通事項となった。

 

「あなた言ったじゃない! 私を美味しく調理してくれるって!! それなのにあなたシアの料理に浮気してばっかり!! 返してよ、私の五年間返して――」

「うるせえ!!」

「ごはっ!!」

 

 冒険者に醜く縋り付いていた天の助を、首領パッチはドンパッチソードで一刀両断する。直後、シアがあることに気付いた。

 

「敵襲です! 数は百以上です!!」

「百以上だと!?」

 

 いきなりの敵襲に護衛隊のリーダー、ガリティマは動揺し、悪態をつく。護衛隊の人数は十七人。その数では数多いる魔物に対処しきれない、と悩んでいるとユエから提案の声が上がる。

 

「私が行く」

「えっ?」

「囮役は勿論私が行く。あなた達はこれから商隊を守っていく冒険者だから」

 

 それだけ告げてユエはさっさと魔物の元へ向かってしまう。慌てて追いかけようとするガリティマだが、それをハジメが遮る。

 

「ガリティマさん。ユエなら大丈夫だ、問題ない」

「いや本当に大丈夫か!?」

「それより問題はこっちだ」

 

 ハジメはそう言って天の助に視線をやる。するとそこにあるのは、意志ある者達の歴史の中で食べ残された食物の怨念が、天の助に取りついていく様だった。

 

「ワレハコノヨノタベノコシヲホロボスモノ……。ニンゲンドモヨ、ヒケ」

「これを見逃したら……、世界の終わりだ……」

「何でいきなりこんな展開に!?」

「やるしかねえようだな……!!」

 

 ついて行けないシアとは正反対に、状況に対し全力で即している冒険者達。彼らにハジメも応えた。

 

「行くよ! この戦いは聖戦なり!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 今ここに、世界の滅亡をかけた戦いが始まった!!

 

 

 そして五分後、魔物を殲滅し終えたユエがそこで見たものは、謎の達成感に満たされた冒険者達の姿だった。

 何が起きたかさっぱり分からないが、とりあえずハブられたのは伝わったので、ユエは少し寂しくなった。

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