【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義26 おしるこに絡まる運命

前回までのあらすじ

 

ハジメ「そんなつまんねえ幻想なんざ、自分でどうにかしやがれ! この大馬鹿野郎!!」

プーム・ミン「本当……。何やってんだ、俺……!!」

 

という感じだった。

 

シア「いやこんなシーンありませんから!! というか誰ですかプーム・ミンって!?」

首領パッチ「あの時のブタ男」

ユエ「やっぱり禁書三期は三クール必要だったよ、絶対」

 

 


 

 

 平原の中にある街道。それは幾多もの人々が通ったことで自然と出来た、所謂獣道に近い物である。その街道を納豆型の車が時速八十キロ以上の速度で疾走し、その横に追従して走っている少年の姿があった。

 

「勝ち取りたい! 物も無い! 無欲なバカにはなれない!」

 

 そう、ハジメがアストロ○ンガー走りで走っていた。

 

「やると思ってた! 歌ネタ解禁されたから絶対やると思ってました!!」

「欲を言えばサブタイトルにも使わせてほしい」

「使えるって取扱説明書に書いてありますよ……」

「」

 

 そんなハジメを見ながらユエは思い思いの発言をし、

 

「「……」」

 

 首領パッチと天の助は無言でハジメを睨んでいた。

 

「何で!?」

「どうだっていい、悩んだって。うまーれかわーる訳じゃないし――」

「そしてハジメさんいつまで歌ってるんですか!? というかそもそも何で外に!?」

「アイツ……、一回トライアスロンやってみたいって……」

「トレーニングの一環!?」

 

 


 

 

 目的地である湖畔の町、ウルに到着したハジメ達。

 到着した時間が夕方だったので、彼らは細かいことは明日にして、今日は宿に泊まってその宿の一階にあるレストランで名物の米料理を食べよう、ということになった。

 ハジメ、首領パッチ、天の助の三バカは、久々の米にテンションが上がっていた。

 

「いやぁ~、米だよ米。久々に食べる故郷の主食、超楽しみ!」

「オレなんて楽しみ過ぎて身体がイノシシになっちゃったよ」

「オレはヒグマに」

「野生動物には即、猟友会!!」

「「ぎゃあああああああ!!」」

「即断すぎません!?」

「クレーム凄そう」

 

 獣と化した首領パッチと天の助を、マタギの格好をしたハジメが撃つ。

 そんな何気ない光景の後、ハジメ達はレストランの席に通された。そして注文を決めていると、ハジメはいきなり人の気配を感じた。

 店員かと思い、何気なく気配の主を見るとそこには意外な人物が経っていた。

 

「南雲君!」

「あ、先生だ」

 

 そこにいたのは、ハジメ達と同じく召喚された教師、担任という訳では無いが唯一の大人として奮闘しているものの、今一つ空回り気味な幼児体型の二十五歳、社会科教師の畑山愛子だった。

 

「私の紹介酷くないですか!?」

「それより、こんな所で何やってるんですか先生?」

「いや、それはむしろ私が南雲君に聞きたいくらいなんですけど……」

 

 溜息を吐きながらも事情を説明しようとする愛子だが、タイミング悪くレストランの店員がハジメ達の注文を取りに来てしまった。

 

「ご注文をお伺いします」

「おっと、先生。話は注文終わってからにしてもらえますか。僕らこれから晩御飯なんで」

「はあ……、構いませんよ。その代わりきっちり説明してもらいますからね」

「その場合まず先生から話してもらえませんか?」

 

 愛子と約束したハジメは、慌ててメニューを見て注文を決める。どうやらハジメが一番最後だったらしく、ハジメが注文を決めると同時に皆が一斉に注文を言い始めた。

 

「私はチャーハン!」

「私は赤飯」

「僕はハマム・マフシー*1で」

「オレはところてん丼」

「支点を板に吊るしてギリギリ太るニルシッシル*2セットを、我は所望する!」

「注文がどんどんおかしくなっていくですぅ!!」

「というか最後のは一体どういう物体なんですか!?」

 

 シア、ユエ、ハジメ、天の助、首領パッチの順でした注文に、店員は一切の疑問を挟むことなく受け取りその場を去っていく。

 それを見た愛子は、このタイミングだ、とばかりにハジメが居なくなった後のことを説明し始めた。

 

 

 ハジメ達が奈落の底に落ちて行った後、皆は生存を信じていたけど戦いに怯えて一部の人以外は訓練しなくなったよ。

 一回帝国の王様が来て、勇者の天之河光輝と決闘して勝ったよ。

 それはそれとして愛子は、護衛の気を連れながら各地を転々としていたよ。

 そんな彼女を見て、一部の生徒が愛子の護衛に立候補したよ。

 しかし護衛についた生徒の一人、清水幸利が行方不明になっちゃった。

 ということで捜索なう。

 

 

「大体こんな感じですね」

「成程、よく分かりました」

「今時なうって使わなくね?」

「確かに」

 

 愛子から今までの出来事を聞いたハジメは、天の助とユエの合いの手を無視して今度は自分達が今まで見てきた物を話す。

 オルクス大迷宮の下にある真の大迷宮。

 その最奥で聞いたこの世界の真実。

 そしてエヒトを倒す為に、七つの大迷宮を巡っていることを。

 

「そ、そんな……」

 

 ハジメの口から語られる言葉に思わず脱力し、その場に膝をつく愛子。

 いきなり呼び出された異世界で戦争を強いられる、それだけでも愛子からすれば憤慨ものだというのにその理由が神の娯楽の巻き添え。

 そして、生徒が狂った神を倒す為に戦いを挑もうとしている。

 いや、ハジメならば正直なんだかんだで勝ちそうではあるが、それでも不安だったり怒りは感じるものである。

 そうこうしている内に、注文してきた物がやってきてハジメ達はそれぞれ食べ始める。

 ちなみに、首領パッチの頼んだ支点で板を吊るしてギリギリ太るニルシッシルセットとは、一本の柱の上に大きな板をセットし、そこから合計千キロカロリーのニルシッシルセットをそれぞれ板で吊るしたものである。

 

「うわあ……、予想以上に形容しがたい物体ですぅ……」

 

 そして半分くらいまで食べ終わると

 

「ブゥ――――――――ッ!!」

 

 首領パッチがいきなり食べていたニルシッシルを吐き出した。なぜ吐き出したのかと言うと――

 

「何だよこれ!? ご飯にかかってるのニルシッシルじゃなくておしるこじゃねーか!!」

 

 そう、首領パッチが頼んだニルシッシルーセットにはニルシッシルではなく、おしるこがかかっていたからである。

 

「いや気付きましょうよ!?」

「許せねえ……。ちょっと文句言って来るわ!!」

 

 シアのツッコミもなんのその。首領パッチは文句を言いに厨房へ向かう。

 

「僕も心配だからついて行くよ」

 

 それを見てハジメも慌てて首領パッチを追いかけた。

 

「勝ち取りたい! ものもない!」

「それはもういいですって!!」

 

 ハジメがアストロガ○ガー走りで出て行ってから一分くらい経った後、入れ替わるかのように一人の男が入ってきた。

 身綺麗な鎧に端正な顔立ち、そして隙のない立ち振る舞いから彼を見れば誰もが騎士だと分かるだろう。

 

「こんな所にいたのか愛子。探したよ」

「すみませんデビッドさん。ご心配をおかけしまして」

 

 彼の名前はデビッド。愛子を護衛する神殿騎士専属護衛隊隊長だ。エヒト神を信仰する聖光教会の騎士だが、護衛していくうちに愛子に惚れてしまい、彼女の為なら信仰すら捨てる覚悟がある。

 最も、愛子はそんな気持ちなど露知らず、自分に積極的なのはハニートラップ的なものだろうと思い込んでいるが、それをデビッドは知らない。

 それはさておくとして、ここでデビッドはようやくこの場所に愛子以外に何人かいることに気付く。その内の一人、ところ天の助をデビッドは覚えていた。

 

「忘れる方が難しい」

「ですぅ」

 

 デビッドは愛子に慌てて問う。

 

「あの青いプルプル……。まさか、南雲ハジメがここに?」

「はい! 今はいませんが南雲君とさっき話していたんです!」

「おお、それは良かった。では、そこにいる少女は?」

「……そういえば私も知りませんね」

 

 愛子にそう言われ、ユエ達は自己紹介を開始する。

 

「私はハジメの仲間、ユーエスエー・ニャクタロウ・ハジケニウム。長いからユエでいい」

「私も同じくハジメさんの仲間で、名前はシア・ハウリアと――」

「何だ貴様は」

 

 ユエの自己紹介は黙って聞くが、シアが自己紹介を始めた途端に威圧的な表情を見せるデビッド。

 

 

 唐突だが、トータスでは亜人族は被差別種族だ。

 奴隷として連れ去ろうが、戯れに殺そうが、下世話なものの処理を強制させようが人間族の法で裁かれはしない。

 なぜそうなっているかというと、聖光教会の教えで『神から見放された獣もどき』と扱われているからだ。

 例外もあるが、基本亜人族はこの扱いである。なので、帝国は積極的に奴隷として攫い、見麗しければ愛玩用にする。

 だが、聖光教会の教えが強いと意識も少し変化する。

 

「薄汚い獣風情が。こともあろうに人間族と同じように椅子に座るなど、礼儀がなっていないぞ。今すぐ耳を切り落とすか、地面に伏せるなら許してやらんでもないがな」

 

 それがこの言動だ。デビッドからすればこれが当然の対応、当然の言い分である。いくら愛子と関わり、彼女の為ならば信仰を捨てる覚悟が出来ていようと、染みついた常識は拭えない。

 とはいえ、それは愛子達からすれば関係の無い話。

 心無い言葉に落ち込むシア。怒りに燃える天の助とユエ、そして愛子。

 やがて愛子がデビッドに向かって一言言おうとする。がその前に――

 

「騎士の男におしるこたっぷりの鍋をシュゥゥゥ――――――ッ!!」

「これが、人類の答えだ!!」

 

 いつの間にか戻ってきていたハジメと首領パッチが、おしるこがたっぷり入った寸胴鍋を、デビッドにぶちまける。

 そしてそのまま寸胴鍋をひっくり返し、デビッドを鍋の中に封印する。

 

「この封印が解かれた時、新たなる時代が始まる……!」

「フォフォフォ。よーく見るがいい」

「どこから持ってきたんですかそのおしるこ鍋!?」

 

 突然の急展開。それは、シアが受けた心の傷を忘れるには十分なものだった。

 一方、ハジメは大人しく質問に答える。

 

「あれは、数分前のことだよ……」

「今から回想シーン入りまーす! 乗車受付がまだの方はなる早でお願いしまーす!」

(電車?)

「首領パッチ。水あめ頂戴」

「ほらよ」

(紙芝居ですか?)

 

 


 

 

「オレのニルシッシルセットおしるこやないかぁ! 関西モン舐めとったらあかんでぇ!?」

「こんな関西人は現実にいないなあ……」

 

 首領パッチは怒り心頭で、ハジメはローテンションで厨房に飛び込んで行く。そこで見たものとは――

 

「何がニルシッシルだ……。時代はおしるこなんだ……! 絶対そうに決まっているんだ……!!」

 

 寸胴一杯に入ったおしるこをヘラでかき混ぜる、二メートル程のおしるこ缶の姿があった。

 

「悪霊退散!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

 首領パッチは指からビームをだし、あっという間におしるこ缶を霊体にする。そのまま首領パッチはおしるこに見向きもせず、厨房にあるニルシッシルを食べ始めた。

 

「ハジメ……。後は、任せたぞ……」

「お、おしるティ! あんたは!?」

 

 一方、霊体となるも未だ現世に留まるおしるこ缶は、未練がましくハジメに遺言を残そうとする。

 

「運命とは眠れるおしるこだ……。俺達はそれを解き放つことが――」

「早く逝け」

「ぎゃあああああああああああああああ!!」

 

 しかし、ハジメに塩を掛けられ、おしるこ缶はあっけなく完全に消滅した。

 後に残るのは、寸胴鍋一杯のおしるこのみ。

 それを見たハジメは宣言する。

 

「去ってしまったおしるこは、受け継いでいかなければならない! このおしるこを僕は食べない!!」

「つーかこんな量のおしるこどうしろってんだよ」

 

 


 

 

「ということで持って帰ってきました」

「「話を聞いても何も分かりません……」」

 

 ハジメの回想が終わって最初の発言がシンクロするシアと愛子。二人は無言のうちに握手を交わす。

 すると、握手と同時に寸胴鍋が光りはじめる。封印解除の合図だ。

 ハジメは鍋の蓋を取り、力強く開ける。

 

 その鍋の中に、おしるこは無くなっていた。代わりにあるのはたった一人、デビッドという男のみ。

 彼の外見は何も変化していなかった。

 

「私はデビッド。おしるこを信仰するおしるこ騎士だ。エヒトとか糞だよ糞」

「でも中身別人になってる―――――――――――――!?」

「ですが愛子の為ならば、この信仰捨てることも厭わない!」

「そしてなぜか私への好感度が高い――――――――――――――!!」

 

 愛子の血を吐くようなツッコミ。しかし、その言葉はとある二人の嫉妬を掻きたてた。

 

「何よあの幼児体型教師。いい気になっちゃってさ……」

「あんなイケメン一人侍らせた所で、ワタシ達マダムンズには遠く及ばないわ」

「マダムンズ!?」

 

 首領パッチと天の助の嫌味をBGMにしながら、ハジメ達はごそごそと帰り支度を始めた。

 

「いやこの状況で帰るんですか!?」

「僕ら食べ終わったんで……」

「いつの間に!? というかデビッドさん戻してくださいよ! 凄く怖いので!!」

「明日の朝には戻ってますから」

「明日!?」

 

 衝撃の事実に崩れ落ちる愛子。そうこうしている間にハジメ達は清算を済ませ、自分達の部屋に戻って行った。

 そして愛子は、このデビッドを他に来ている騎士達とクラスメイト達にどう説明するかで、頭を抱えるのだった。

*1
エジプト料理。まるごとの鳩に米を詰め込んで焼いたもの

*2
トータス版のカレー

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