死亡キャラ生存のタグを。
愛子と遭遇し、デビッドをおしるこの騎士にした翌日の朝、ハジメ達はウェル・クデタの捜索へ向かう為、ウルの町の北門に来ていた。
そこで待っていたのは畑山愛子と彼女について来た七人の生徒、園部優花、菅原妙子、宮崎奈々、相川昇、仁村明人、玉井淳史だった。
「急にそんな新キャラ増やされても困るな……」
「いやクラスメイトですよ!?」
「でもそんなに喋ったこと無いし……」
「もっとコミュニケーション取りましょうよ!!」
「で、何の用ですか?」
愛子の言葉をスルーし端的に事情を聞くと、どうも清水幸利を探しに行きたいのでハジメ達について行きたいらしい。ハジメとしても特に拒否する理由はないので、普通にOKした。
「でも捜索依頼を受けたウィル・クデタを見つけたら山を降りますからね」
「分かってます」
こうして話がまとまり、出発しようとした段階で園部優花が話しかけてきた。
「ところで南雲、あんた移動用の馬は?」
「馬なんて別にいらないけど……」
「いきなり接点のないハジメに話しかける。これは間違いなくメイン入り狙っての行動」
「アニメでちょっと可愛く書かれたからって、このSSでもヒロインの座を狙ってるのね!?」
「ところてんを食え。話はそれからだ」
「狙ってないから!!」
いきなりハジメ以外の三バカに絡まれ、思わず叫ぶ優花。そのまま彼女は言葉を紡ぐ。
「というか接点無いわけじゃないし」
「え、どこかで絡んでたっけ? ちょっと今からありハジ読み返すよ」
「このSSありハジって略称だったんですか!?」
「公式略称がありふれたなんだから、ありハジケの方がいいと思う」
「語呂悪くね?」
「話が進まない……!」
バカに纏わりつかれイライラする優花は、ハジメからスマホをひったくりこのSSの奥義5を開き、あるシーンを見せる。
「ほらこの、南雲と谷口の協力奥義で奈落に落ちそうになった人いるでしょ。それが私」
「……ごめんね」
「そうよ! 謝りなさいよ!! 坂下先輩にコナかけたの知ってるんだから!!」
「ちょっと黙ってて!!」
「ぐはっ!!」
ついに我慢の限界を超えた優花は、首領パッチを殴り飛ばして力業で黙らせてから改めて南雲に向き合う。
「それでね南雲。私は別に謝ってほしいわけじゃないから。ただ単に、あの時助けてくれてありがとうって言いたかっただけなの」
「それだけのことを言うのに随分かかったね」
「三人のバカに絡まれなければさあ! 私もさらっと言えたんだけどさあ!!」
(いいツッコミしますねあの人。こっちのメンバーに入って貰えないでしょうか)
優花が吼える中、シアは冷静にツッコミの品評をしていた。そんな中、ユエがいきなり懐から路線バスを取り出し、ハジメに話しかけた。
「ハジメ、バス用意したし行こう」
「バス!?」
「良かったらあなた達も乗っていく?」
「いいの? ……でも馬借りちゃったし」
「それなら心配することは無い」
ユエの提案に躊躇する優花。そんな彼女を安心させるかのように、天の助は話しかけてバスの中に見るように促す。
その中には――
「「「「「「「「ヒヒーン」」」」」」」」
「お前らが借りた馬なら、とっくにバスに乗ってるぞ」
「いつの間に!?」
馬が運転席に一頭、残りの七頭が乗客席に座っていた。
「この馬運転する気満々ですぅ――――――――――――――!!」
「シア、早く乗ろう。愛子に優花、後名前覚えられないモブ共も」
「扱いひでえ!!」
ユエのあんまりな発言に淳史がツッコミを入れる中、ユエを筆頭にまず女性陣がバスに乗る。その後ろをハジメ達が同じように乗ろうとする。
「ヒヒーン!」
しかし、何を思ったのかいきなりハジメ達を運転席にいた馬が蹴り飛ばし、バスから降ろした。
「てめえ、何のつもりだ!?」
馬の行動に当然の如くキレる首領パッチ。そんな首領パッチに馬は迷い無く返答した。
「ヒヒーン(俺が乗せるのは、美しいレディだけだ)」
それだけ言って馬はバスのドアを閉め、そのまま発車してしまう。ハジメは慌てて懐から軽トラを取り出し、慌てて乗り込む。その後ろに天の助達も続き、残りの男は台車に乗せて軽トラもまた出発する。
「軽トラ! もっと速く
「馬の運転で
必死に追いかけるハジメ達。しかし軽トラの横では
「父さん……。僕は、このマシンで必ず優勝してみせる!」
首領パッチが三輪車に乗りながら、恐ろしい形相で軽トラに併走していた。
「何してんのあいつ!?」
「さあ?」
「知らね」
首領パッチの行いに荷台の乗客からツッコミが入ったが、ハジメも天の助も知ったことでは無かった。
「それと言っとくけど、公道で軽トラの荷台に人を乗せて運転するのは違法だからな。絶対やるなよ!」
「急に真面目だな~」
「納豆真拳奥義、強制捕縛地獄ver納豆!!」
「ヒヒーン!?」
目的地である山脈地帯の麓に到着したハジメが最初にやったことは、男性陣をバスから追い出した運転手の馬を納豆の糸で締め上げることだった。
「次舐めたマネしたら、お前に『I LOVE モルドバ』って書いた焼印入れるから」
「ヒヒーン(なんで)!?」
「……なあユエ、モルドバって何だ? 麺料理の名前か?」
「ウクライナとルーマニアの間にあるヨーロッパの国」
「そーなのかー」
ハジメの脅しに恐れおののく馬。その後ろでは首領パッチがユエの豆知識に感心している。
それらを無視して、シアと天の助ウィル捜索の為どうするか話し合っていた。
「捜索って言われましても、どうすればいいのでしょう?」
「普通に考えるなら、調査依頼って言ってたしとりあえず山登りだな」
「ヒヒーン(それなら私達に任せて)!」
とりあえず山登りの方向でまとまったシア達に、馬の一頭が自信たっぷりに話しかける。シアが馬の方を見るとそこには
「ヒヒーン(私、趣味は登山なの)!」
テントをバスと軽トラの傍に張っている馬の姿があった。
「いやキャンプじゃないんですけど!?」
「しかもここ麓だし!?」
「ヒヒーン(やめろ)!」
シアと優花のダブルツッコミを非難と思った運転手の馬は、テントの馬を庇うために矢面に立った。
「ヒヒーン(責めるなら、俺を責めろ)!」
「お望み通りにしてやる!!」
「ヒヒイイイイィィィィン(ぎゃあああああああああ)!!」
ハジメは運転手の馬を容赦なくぶちのめした。そのまま馬たちにバスと軽トラを見るように命令し、ハジメ達は山登りを開始した。
「走るー走るー、オレーたーちー」
「ながれーる汗も、そーのまーまーにー」
「走るの!?」
「というか読者その歌知ってますか!?」
「今でもよく聞く曲だし、大丈夫でしょ」
ハジメ達は走った。力の限り、後先考えず走り続けた。そう、さながら青春の様に。
その結果がこれだ。
「ハァ……ハァ……。ちょ……、待って……。もう、無理……。休もう……」
「でしょうね! 絶対そうなると思いましたよ!!」
バカみたい、というか正しくバカの行いをしたハジメ達と、それに付き合わされたまともな人達。そのせいで運動能力が高い兎人族であるシア以外は、疲れ果てていた。
「ほら、近くに川がありますから。そこで休憩しましょう」
「おぉ……」
そうして川に辿り着いた一行。シア以外の全員は、とりあえず喉を潤す為に川の水を一心不乱に飲み始めた。
「風が語りかけてくる」
「美味い、美味すぎる」
「「十万○饅頭!!」」
「口に入れてるの水ですよね?」
シアのツッコミを聞き流しながら水を飲んでいると、川の上からどんぶらこどんぶらこと大きな桃が流れてきた。
「いきなり桃太郎始まった!?」
ハジメがその桃を拾い、割って中を見る。するとそこには盾にペンダント、魚の骨が四つ。最後に身長百八十センチ、ガタイのいい男が一人眠っている。
「小早川大尉どの、愛しておりました……」
正しくは、全裸で寝言を呟きながらうつ伏せで眠っている。ハジメは盾とペンダント、それから魚の骨を回収してから、そっと火の付いたダイナマイトを男に添えて爆破する。
「何で!?」
「原作再現でしょ」
「何のですか!?」
優花とシアのツッコミが響く中、全裸の男は目を覚ましあたふたと周りを見渡す。
「こ、ここは……!? いやそんなことよりウィルはどこだ!?」
「ウィル? あなたひょっとして、ウィル・クデタと一緒に依頼を受けた冒険者ですか?」
思わず問いかけるハジメに、男は少し落ち着きを取り戻してから答える。
「あ、あぁ……。俺はゲイル・ホモルカ。ウィル達と臨時パーティーを組んだ冒険者だ」
「ゲイル……。さっきの寝言はそういう……」
「ユエさんは何を納得してるんですか?」
謎に一人納得してるユエを差し置いて、ハジメはとりあえず自己紹介。
「僕は南雲ハジメ。フューレンの冒険者ギルド支部長イルワさんから、ウィル・クデタの捜索依頼を受けた冒険者です」
「支部長直々の依頼を受けられるほどの実力者か……。なら、俺も今までのことを話そう」
ハジメは自己紹介と一緒に依頼書をゲイルに見せ、彼を納得させた。それを見て彼は今までの事を話しはじめた。
北の山脈地帯に辿り着いた彼らは山道を登っていたが、五合目辺りで十体のブルタールと遭遇した。その数のブルタールは無理と判断し、撤退しようとしたが上手くいかず気付けば川に居た。
そこで漆黒の竜が現れたのだ。竜はブルタールを全て焼きつくし、その余波でゲイルとウィル以外の冒険者も焼かれ、魚の骨となった。
「いやその魚の骨冒険者なんですか!?」
「何で魚になるのよ!?」
「そんな時もあるって」
「カリカリすんなよ二人とも」
当然のツッコミを入れている筈なのに、なぜか首領パッチと天の助の二人に諌められるシアと優花。
彼女達がすがるように愛子達の方を見ると、一斉に『気持ちは分かるよ』とばかりに首を大きく縦に振る。そんな優しさに彼女達はちょっと涙した。
が、その間にゲイルの話は終わっていた。
「そうしてウィルは流され、俺も仲間を回収してから逃げようとしたが気付けば桃の中だ」
「何で桃に……?」
「ともかくウィルを探さなければ。あいつは多分川の近くにいる筈だ」
「僕らもお供します。それが依頼ですからね」
「おお、助かる!」
そう言って喜ぶゲイルからハジメは魚の骨と化した冒険者四人を受け取り、それをそのまま愛子に渡した。
「ということでこれ持って、先生たちは下山してもらえませんか」
「どうしてですか!?」
あまりにも突然すぎるハジメの発言に、愛子は思わず食って掛かる。
「いや、この魚の骨塩水に浸せば元の人間として蘇生するはずなんで、早く戻してあげて欲しいなあ、と」
「塩水で蘇生!?」
「後、小説という媒体で、登場人物一シーン十四人はちょっと多すぎます。おかげでクラスメイトほぼ全員がいるはずなのに、碌に描写されないじゃないですか」
「そんなメタな理由で!?」
「それにぶっちゃけ、ドラゴンの相手とか無理ですよね? 僕らならともかく」
「……」
ハジメの最後の言葉に愛子のみならずクラスメイトの全員が押し黙る。それでも清水が心配な愛子は何とかしてついて行きたかったが、それはクラスメイトが全員で止めた。そして話し合いと妥協の末、優花がついていくことになった。
「え、来るの?」
「いや、南雲達絶対清水探さないでしょ」
「確かに」
「肯定しちゃった!!」
こうして、ハジメ達五人と優花、それにウィルの顔を知っているゲイルの七人で山を登り、残りは下山することになった。
とりあえず最初に、天の助がぬのツナギをゲイルに渡した。
「ぬのツナギ!?」
「ああ、助かるよ」
「受けとるんですか!?」
そのまま川沿いに歩き出すハジメ達。しばらく歩いていると滝が見えてきた。
特に大きいともいえない普通の滝。仮に上から流され、人が落ちたとしても運が良ければ助かりそうな位の大きさの滝。それだけならハジメ達は見向きもしないだろう。
「うわああああああああああああああああああああ!!」
「グゥルルルルル」
滝つぼの中から聞こえる男の悲鳴と、滝の前で低く唸り声を上げる竜の姿が無ければ。
「あの悲鳴はウィルのだ! そしてあの竜は俺達を襲った奴だ!!」
「最悪の状況ですぅ!!」
「という感じで次回に続くパッチ! 見逃したら等活地獄*1行きパッチよ!!」
「何その語尾!?」
「それより罰がヤバイ」
ユエの戦慄で、竜退治が始まろうとしていた