変貌した清水と対峙するバカ四人。
しかしいざ戦うと言う時に、ふとユエが疑問を口に出した。
「しかし、何であの清水はあんな姿になったの? ハジメ分かる?」
「いや僕も分かんない。はっ!? まさかあれがスマホ中毒の末路……!?」
「スマホ中毒怖っ!?」
ハジメが自分で考えた可能性の恐ろしさに身震いしていると、首領パッチが横から訂正してきた。
「いや、あれは恐らく善滅丸のせいだ」
「「善滅丸?」」
首領パッチの聞いたことの無い言葉に、ハジメとユエは二人そろって首を傾げる。その問いに答えを出したのは天の助だった。
「かつてオレ達の世界を支配していた、ネオ・マルハーゲ帝国が作った増強剤でな。それを飲むと、精神の中の良の心を溶かし邪の力が完全開放されるんだ」
「そんな薬が……」
「というかアレ、僕らの世界の物なの?」
「ああ……」
ハジメ達の問いの答えた天の助は、説明しながらある恐るべき可能性に気付いた。
自分達の世界で生まれた物がこの世界にある、それはつまり――
「ア○ゾンの宅配サービスは、ここまで進化したってことかよ……!?」
「絶対違いますよ!?」
天の助が出した想像の斜め上な結論に、思わずシアが叫ぶ。
するとその叫びを聞いたバカ四人が、じゃあ何なんだと言わんばかりの目をシアに向けた。
そんな視線を受けて、思わずどう返せばいいか悩み、オロオロとするシアに手を差し伸べたのはティオだった。
「うむ。恐らくはご主人様達の世界の住人が、魔人族側にも召喚された。そういうことじゃな」
「そ、そういうことですぅ!!」
ティオの言葉に便乗するシア。
その言葉を聞いて恐れおののいたのは、愛子達地球の面々だった。
彼女達は知っている。かつて自分達の世界を支配したマルハーゲ帝国の恐ろしさを。
しかしそれは、目の前を脅威を放置することと同義。
「お前ら揃いも揃って、俺を無視するなぁぁあああ!!」
そして清水は、自分を無視されて平然とできる精神状態では無かった。
怒りのままに魔力を集め、ハジメ達に向かってビームを発射する清水。
「納豆真拳基本奥義、バカガード!」
「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」
そのビームをハジメは、天の助とユエを盾にして防ぐ。
攻撃を防がれた清水が思わず舌打ちをする。
「イケナイ太陽~!」
「ぐばぁ!」
「Na,na,na,na,na,na~」
しかし次の瞬間、いつの間にか、首領パッチが空から清水に向かってボディアタックを仕掛ける。
そしてハジメと天の助は肩を組んで歌っていた。
「私も続く“破断„」
首領パッチの攻撃を見てユエも魔法で追撃を仕掛ける。
ユエが魔法を発動させると、空気中の水分が集まり圧縮され、そのままウォーターカッターとして放たれた。これが水の中級魔法、破断である。
「はっ」
しかし、平時ならいざ知らず、今の清水からすればユエの魔法は、嘲笑混じりに打ち消せる攻撃でしかなかった。
「……上等。だったらギアを上げる。“嵐帝„」
清水のあからさまに馬鹿にした態度に苛立ったユエはさらに威力の高い魔法を放つ。
ユエは魔法で巨大な竜巻を発生させ、清水を飲み込む。
その場にまだいた首領パッチごと。
「ユエテメ――――――――――――!!」
「あ、ごめん」
「しょうがないな。ちょっと助けて来るよ」
悲鳴を上げる首領パッチに、軽く謝るユエを見てハジメはチャーハンを両手に携えて竜巻に飛び込んだ。
「何でチャーハン持って!?」
「中華料理万歳!!」
ユエが起こした竜巻を見守る一同。
やがてしばらくすると、竜巻が消え中に居る三人の姿が見えた。
一方は膝をつき、息を荒くして苦しむ清水が。
そしてもう一方、ハジメと首領パッチは――
「おいもっと生地回せ! そんなんじゃいいピザ出来ないぞ!!」
「ハイ! チャーハン師匠!!」
「なるんだ……。オレは師匠みたいに立派なピザ職人になるんだ……!」
手足の生えたチャーハンにピザ作りを習っていた。
「どういう状況ですかこれ!?」
「「このピザを使って奥義、ピザ円斬!!」」
ハジメと首領パッチは制作途中のピザを清水に投げつけた。
それを清水はかろうじて回避し、放たれたピザは地面に突き刺さる。
「あのピザの材質何!?」
「おいてめえら、ピザを粗末にするな!」
「いつまでも師匠面するんじゃねえ!!」
「グバァ!」
「ああっ! 師匠!?」
いつまでも偉そうなチャーハンを、首領パッチはバットで吹っ飛ばした。
その状況を止められなかったハジメは酷く悲しんだ。でも大丈夫――
「――この別れも、いずれ意味のあるものとなるから」
「今の地の文は天の助が?」
「はっ!? 口が勝手に!?」
「何がしたいんですか?」
天の助の理解不能な行動に呆れるシア。
しかし全員が清水から目を離している隙に、彼は膨大な魔力を球状に溜めていた。その魔力の玉の大きさは、人間を三人縦に並べても足りないほどに大きい。
その魔力を見ながら、天の助はふと疑問を呟いた。
「しかしあいつ、さっきから魔力のビーム位でしか攻撃してこないな」
「元々闇魔法は幻覚を見せるとか、洗脳みたいにどっちかというとデバフがメイン。今みたいに直接戦闘が強い属性じゃない」
天の助の疑問に答えたのはユエ。その返答を聞いてハジメはある結論に辿り着く。
「つまり、ああいうビーム位しかできないってこと?」
「多分きっと」
「死いいいいいねえええええええ!!」
ハジメ達が話している間に、清水は魔力の球をそのまま投げつける。
その様はまさしく黒い元気玉だ。
「バッサリすぎません!?」
「そしておそらくアレが輿水の最大攻撃。アレさえなんとかすれば、戦闘パートはもう終了でいいと思う」
「そういうことならオレに任せろ! ドロー!」
ユエの言葉を聞いた首領パッチはデュエルディスクからカードを引く。
そして手札を見た時、彼は絶望のあまり思わず膝をついた。
「事故った……!!」
「どれどれ?」
ハジメが首領パッチの手札を覗き込むと、ハジメは思わず顔を顰めてしまう。そこにあったのはこの六枚だ。
オシリスの天空竜
滅びの
カオス・ソルジャー
死のデッキ破壊ウイルス
磁石の戦士マグネット・バルキリオン
ギルフォード・ザ・ライトニング
「いや事故りすぎですよこれは!!」
「せめてトレード・イン*1があればのう……」
シアとティオが首領パッチの手札事故を憐れむ。そこにハジメが手助けを申し出た。
「なら僕が生贄要因だすから首領パッチはオシリスを!」
そう言ってハジメもデュエルディスクを構え、三枚のカードを発動させた。
「初夢三連コンボ! 一富士、二鷹、三茄子!!」
「遊戯王デュエルモンスターズお正月スペシャル!?」
「ボーボボリアルタイム勢じゃなきゃ伝わらねえよこんなネタ」
ハジメがカードを発動させると、フィールドに富士山と鷹、そして茄子が召喚される。
首領パッチはそれら三体のモンスターを生贄に、このカードを召喚する。
「降臨せよ、オシリスの天空竜!!」
首領パッチがオシリスのカードをデュエルディスクに置くと、辺りに雷雲が起ちこめ雷鳴が木霊する。
そして雷雲の中から、二つの口があり、空を覆いそうな程長い蛇の如き体と、前足に大きな翼を持った赤き竜が降りてきた。
これがオシリスの天空竜だ。
首領パッチはオシリスの攻撃宣言をする。
「闇ごと切り裂け! 超電導波サンダーフォース!!」
首領パッチの指示でオシリスは口から、雷を凝縮したかのような光線を発射した。
オシリスのサンダーフォースは、清水が作りだした魔力の球と衝突した瞬間にまるで紙をナイフで切るように簡単に裂き、魔力を霧散させる。
その光景を見た清水は倒れ伏し、ガクガクと体を震わせ始めた。
「あ、あぁ……! いてえ……、なんだよこれぇ……!?」
「善滅丸の副作用か」
「副作用?」
悶え苦しむ清水に冷たい言葉を浴びせる首領パッチ。その言葉にユエが疑問を示した。
「ああ、善滅丸は副作用として体をどんどん破壊するん……だよな?」
「いや私に聞かれても」
「でも治療法なら知ってるぜ。それをすれば元に戻る」
「へぇ」
首領パッチの一部不安になる解説を聞いたハジメは、倒れ伏す清水の前に立ち言い放った。
「だってさ清水君。今からでも投降するなら命は助けてあげるつもりだけど?」
あからさまに見下した顔で言うハジメ。しかし清水にそれに気付くことも無く、ブツブツと小声で恨み言を呟いている。
「何でだよ、何で勝てないんだよ。俺はこんなに頑張ってるのに。こんなに痛い目に遭ってるのに。何でなんの努力もしてない奴が才能だけで強いんだよ……。何がハジケリストだ、何が真拳使いだ……。畜生……」
「……ふざけるなお前ぇ!!」
「ぶはぁ!!」
清水の身勝手な言い分にキレたハジメは、怒りに任せ思わず天の助を蹴り飛ばす。
「え、何でオレ? 何でオレが蹴られてんの!?」
「顔がムカツクんじゃね?」
「酷い!!」
後ろで喚いている天の助達を放っておいて、ハジメは清水の胸倉をつかみ赫怒しながら叫んだ。
「こっちは本編開始前に終わってるだけで、修行パート自体は過去にやってるんだよ! 幼稚園と小学校の放課後全部、納豆真拳の修行に費やしてきたんだよ!! おかげで中学に入ってから首領パッチと天の助がうちに来るまで、友達なんて一人もいなかったんだぞ!!」
「南雲にそんな過去が……」
「あれ、ところでユエさんは?」
ハジメの過去を聞いて意外そうな顔をする優花。その一方、さっきからユエが話に入らないことに気付いたシアはキョロキョロと辺りを見回す。
幸い、すぐにユエは見つかった。
「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」
希望の花を咲かせた状態で。
「ユエさんが死んでる!?」
「いや、私才能に寄りかかって生きてきたタイプだから……。ちょっと身につまされて」
「変なダメージ受けてますね……」
ユエとシアが会話している横では、怒りが頂点に達したハジメが清水を突き飛ばしてからさらに叫んだ。
「もうムカついた。やっちまえミカァ!!」
ハジメの叫びに呼応して、地面が割れそこから人影が現れる。
その人影は、チューリップハットを被りカンテレを持ったティオだ。
「モテる。それは人生にとって必要なことかい?」
「これガル○ンのミカですぅ――――――――――――――!?」
「でもおぬしはモテぬじゃろ。運命は変えられない、夕日が沈むのと同じように」
「何でジェダイに!?」
呼び出されたティオは、持っているカンテレでガンガンと清水を殴りつける。
その光景を見ながらハジメは力強く宣言した。
「そうまで言うなら見せてやる。薬や裏切りではたどり着けない努力の力を。納豆真拳の真髄を! 納豆真拳㊙奥義」
そしてハジメは両手を上に伸ばし、頭の上で合わせ、右足裏を左足の付け根に合わせて構え――
「ヨガの立ち木のポーズ!?」
「
奥義を発動させた。