【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義34 本当の自分を取り戻せ

 聖納豆領域(ハジメワールド)

 ハジメが奥義を発動させると、さっきまで平原だったこの場所がビルの立ち並ぶオフィス街へと変貌した。

 その光景に清水は戸惑いを隠せない。

 

「何だ、これ……!?」

「これは僕の作った世界。この世界の中では精神を開放してもらう。嫌だと言っても開放させる! 異種族レ○ュアーズの無修正版みたいに曝け出してもらう!!」

「もっといい例えあっただろ!?」

 

 酷すぎるハジメの例えに思わずツッコミを入れる清水。

 そしてハジメの後ろでは、ユエとティオが訝し気な目で彼を見ながら質問をする。

 

「というか、他の人は?」

 

 ユエは辺りを見渡すが、この世界にはハジメ、首領パッチ、天の助、ティオ、清水、最後に自分を入れて六人しか居ない。

 そのことを聞くと、ハジメは何でも無いとばかりに返す。

 

「うん、この世界には清水君以外ハジケリストしか呼んでないから」

「で、妾達は何をすればよいのじゃ?」

 

 今度はティオの質問。

 その問いに、ハジメは迷うことなく返答した。

 

「ハジケリストがすることなんて、一つに決まってるでしょ」

 

 そう言ってハジメ顎をクイッ、とある方へ向ける。

 ティオが同じ方向に目をやると、そこには――

 

「うおおおおおおおお!? ブレーキ踏んでるのに天の助カーが止まらねえええ!!」

 

 車と化した天の助を運転している首領パッチの姿があった。

 

「流石首領パッチと天の助だよ。もう順応してる」

「成程、そういうことじゃな」

「なら楽勝」

 

 そう言って三人は顔を見合わせて、一斉に叫び――

 

「「「行っくぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 

 全力で駆けだした。

 

「首領パッチは免許返納して。“緋愴„」

「「ぎゃああああああああああああ!!」」

 

 そのままユエは暴走運転をしている首領パッチに魔法をぶちかました。

 首領パッチと天の助は吹き飛ばされ、地面に倒れ伏す。

 

「ぐぐ……、ユエの奴……!」

「後で殺す……!」

 

 二人がユエに対して腸が煮えくり返っていると、目の前にティオがやってきた。

 

「妾、ホトトギスウウウウゥゥゥ! 妾は誇り高いからそう簡単には鳴かんのじゃ!!」

 

 そのままティオは鳥のコスプレをしながら辺りを走り回る。

 そんな彼女に首領パッチは――

 

「哭きなさい! ピーヒョロロって哭きなさいこの芋虫!!」

「あぁん!!」

 

 SMの女王様のコスプレをして、ムチでティオを叩いていた。

 そして天の助は――

 

「ガエリオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「ぎゃあああああああああああああああ!!」

 

 マクギリスのコスプレをして、ティオをマシンガンで銃撃した。

 

「ぐぅ、これが真のハジケリストのハジケ……! たまらんのじゃ……!!」

「はいはーい! ここでハジメさんから問題だよ!!」

「がはぁ!」

 

 ティオがバカ二人のハジケっぷりに悦んでいると、今度はハジメが押していたキャスター付きホワイトボードに追突された。

 しかしハジメはそんなことを気にするはずも無く、問題を出す。

 

「さあ解け!」

 

 そういってハジメはホワイトボードにこう書いた。

 

 

 たかし君は木村君と最終決戦を始めました。

 最初は木村君が優勢でしたが、たかし君の秘められた力が覚醒し、最後には木村君を血祭りにあげました。

 木村君は最期に言います。『高橋さんの下着を取ったのは坂本だ』と。

 さて、この時にたかし君が取るべき行動を答えよ。

 

「全然分からん!」

「ぐばぁ!」

 

 問題を見たユエは、統合性が欠片も無い問題文にキレてハジメにドロップキックを決めた。

 天の助もうんうんとそれに頷く。

 

「はい! 妾は『木村君の心臓を材料にオリハルコンを錬成する』じゃと思う!」

「残念、不正解」

 

 ティオは果敢にも問題に挑むが、結果は残念ながら伴わず。

 しかし、ここにはこの問題を解ける男が居た。

 ハジケリストの中でも数多の王の称号を持つその男の名は

 

「はい! 答えは『高橋さんのメシア計画を阻止する』だ!!」

「流石首領パッチ。正解」

「「すっごーい!」」

「くっ、引っかけじゃったか……!!」

 

 首領パッチが正解を出したことにユエと天の助は素直に感心し、ティオは己が出した解答が外れだったと悔しがる。

 

「がはぁっ!!」

 

 すると、それまで何も言わずただハジメ達のハジケっぷりを眺めていただけの清水がいきなり血を吐いた。

 彼は何が起きたのか分からず、ただ自分が吐きだした血の塊を茫然と見つめている。

 

「というか、今までボーボボ原作みたいにダメージの時に血を吐いてたの? アニメ版みたいに特に何にもないと思ってたんだけど」

「一々吐血したとか書くの面倒くせーし」

 

 ユエと首領パッチがどうでもいいメタ話をしている一方で、ハジメは清水にこの世界に着いて解説し始めた。

 

「この世界が精神を解放させる世界って言ったよね。でも精神を解放させる方法は人によって異なるんだ。僕が知ってる限りだと、魂の解放と秘めたる力ってのがあった。そして僕が思う精神の解放は――」

「ぐばぁ! やめろ……。思い出させるな……!!」

 

 ハジメの解説の最中でも清水は血を吐くことが止められない。

 しかもただダメージを受けるだけでなく、思い出したくない辛い過去を想起させて。

 それがこの世界の力。ハジメが思う魂の解放。

 

「――原点への回帰。余計な装飾品を全て取っ払った先が、完全な精神の解放だ。清水君、君には根源を、一番最初の願いを思い出してもらう!」

「ふざけん、ぐわぁ!!」

 

 ハジメの話を聞いて思わず掴みかかろうとする清水だが、その前にダメージを受けて倒れてしまう。

 そこに首領パッチが和服を着た状態で一本の包丁を携え、ハジメの元へやってきた。

 

「商品レビューを、しとうございます」

「やあトム、その包丁は一体どういう物なんだい?」

 

 ハジメが首領パッチに話しかけると、首領パッチは何も言わず包丁を一閃。

 それだけで、辺りのビルはバラバラに切り裂かれた。

 

「今のように、この包丁『村正』は凄まじい切れ味を誇るのでございます」

「すごいよトム! 僕にも使わせてよ!!」

「よいぞ」

 

 そう言って首領パッチはハジメに包丁を手渡す。

 包丁を受け取ったハジメは、包丁を鞘に納め目を閉じ、特殊な呼吸を見せた。

 

「雷の呼吸壱ノ型、霹靂一閃(へきれきいっせん)

 

 次の瞬間、ハジメは清水の頭に生えていた角を切り落とした。

 これにより、清水は善滅丸を飲む以前の姿に戻る。しかしこの聖納豆領域(ハジメワールド)は未だ解除されない。

 そうこうしていると、今度は半鐘の音が未だ残っているビルの上から鳴り響く。

 皆が音のした方を向くと、そこから天の助が拡声器を使って叫んでいた。

 

「皆、ふりかけだ! ふりかけ星人が攻めてきたぞ!!」

 

 その言葉の通り、いつの間にか二メートル程のパックのふりかけに手足を生やしたかのような怪物が大軍として現れた。

 ふりかけ星人はハジメ達を視認したと同時に、さながら逃○中のハンターの如く追いかけ始め、ハジメ達は全力で逃げ出す。

 中でもユエは特に必死だった。

 

「私は朝パン派。だからトーストにふりかけなんかかけさせない!」

 

 トーストを右手に持ちながら逃げるユエ。

 しかしふりかけ星人の足は速く、無情にもユエに追いつき持っているトーストに容赦なくおかかのふりかけを掛ける。

 

「食ベナサイ。意外ト合ウカラ」

「うぅ……!」

 

 ふりかけ星人の圧力に負け、おかかふりかけが掛かったトーストをユエは一口食べる。

 すると、ユエは目を見開き、トーストを余すことなく味わうために念入りに咀嚼する。そしてゴクリと飲み込む音を響かせてから、彼女は一言。

 

「トーストとおかかは、合わない」

「デスヨネー」

 

 ドン

 

 ユエとふりかけ星人の一人が意見を一致させたところで、今度はハッピにさらし姿のティオが櫓に上がって太鼓をバチで叩く。

 その場にいる皆がティオを見上げるのを確認してから、彼女は叫んだ。

 

「皆の者! 竜人音頭の始まりじゃ!!」

 

 それだけ告げて、ティオは歌いながら太鼓を叩き始めた。

 

「本当に美味しい天ぷらはー 塩だけでーも十分じゃー」

『りゅうじん りゅうじん 竜人族』

「ぐわぁ!」

 

 清水以外の謎の歌詞と、清水のダメージボイスを合いの手に竜人音頭は続く。

 

「だから天つゆ用意しないでー お願いじゃからー」

「食堂の女将さんの苦労を無駄にするんじゃねえ!!」

 

 するといきなりキレた首領パッチが、ユエからおかか掛けトーストを引ったくりティオに投げつける。

 

「ついでに天の助も」

「あぁ、分かってる」

 

 そしてそのついでに、ユエは天の助を同じくティオに投げつけた。

 しかし、トーストと天の助の軌道はティオに当たるより前に交差し、いかなる奇跡か不明だが一つの料理として合体する。

 

『完成! おかかトーストの天の助和え洋風ソテー!!』

「ハジメサマ、コレヲ」

 

 できた謎料理をふりかけ星人はハジメに献上し、彼は黙ってそれを受け取って実食する。

 

「不味い!」

 

 一口目ですぐにキレた。

 

「でも僕は食べる! なぜならこれで僕は――」

 

 それでもおかかトーストの天の助和え洋風ソテーを黙々と食べるハジメ。そして最後の一口を飲み込んだと同時に、ハジメの髪は金髪となった。

 そう、彼は超サイヤ人に覚醒したのだ。

 

「お前達を殺戮(ジェノサイド)してやれる!!」

「「「「「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」」」」」」

 

 ハジメは怒りに身を任せ、納豆で世界諸共辺り一帯を破壊しつくす。

 その攻撃で周りにいた一同はモロに攻撃を喰らい、聖納豆領域(ハジメワールド)は消滅した。

 

 


 

 

 ハジメが奥義を発動したと同時に彼らが消失し、どうしようかと手持無沙汰になっていたシア達。

 しかし、そうこうしている内にハジメ達が戻ってきて最初に彼女達が見た光景は、ハジメ以外の全員が倒れ伏している状態だった。

 これだけで、シア達はハジメが清水を完全に無力化したことを察する。

 すると、ハジメが倒れている清水に話しかけた。

 

「思い出せた? 君の最初の願いを」

「あぁ……。俺は……」

 

 ハジメ達の話の意味がシア達には分からない。しかし、これは彼らなりに意味があることだと信じて黙って見守っている。

 

「俺はただ、友達が欲しかっただけなんだ……!」

「……そっか」

「俺をいじめず、一緒に楽しくゲームしたりバカ話ができる様なそんな存在が欲しかったんだ……!!」

「そっか」

「なあ南雲……!」

 

 どこか目の濁りが減った清水が、ハジメに対して縋る様に見つめている。

 そのまま、清水は予想外の一言を繰り出した。

 

「俺を、仲間に入れてくれ。俺もお前らみたいに生きてみたいんだ」

 

 あまりに突然の一言に、シア達は誰も口を挟めない。

 しかしハジメは余裕の笑みで返答した。

 

「フッ、僕の修行は厳しいぞよ」

「ぞよって何!?」

「……上等だ」

「上等なんですか!?」

 

 話についていけないシア達。

 そうこうしていると、清水はヨロヨロとふらつきながらも立ち上がり、ハジメに握手を求めて手を伸ばす。

 

「南雲……」

 

 そしてハジメはその手を

 

「甘えるな――――――――――――――――――――――――――っ!!」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 取ることなく、全力で殴り飛ばして気絶させた。

 

「「えぇ―――――――――――――――――――――――――――!?」」

 

 思わず叫ぶシア達。

 それもそうだろう。和解するのかと思ったら、いきなり暴力沙汰なのだから無理もない。

 そのままシアはハジメに追及を始めた。

 

「いや、今のって敵が改心して味方になる展開じゃないんですか!?」

「そ、そうよ!!」

「馴れ馴れしいんだよ屑が!!」

「厳しっ!?」

 

 シアと優花の追及を雑に躱したハジメは、そのまま首領パッチに「アレやるよアレ」と言いながら蹴り起こす。

 

「ゲートオープン、界放!」

「またバト○ピ!?」

 

 起き上がった首領パッチが叫ぶと、空間の一部が歪み別の場所につながる。

 その場所は、スロットやルーレットなどがいくつも並ぶ巨大なカジノだった。

 ここの名前はカジノワールド。

 天の助にお金とラーメンの具の一つであるナルトを身に纏ったような謎の男、ぬー$の戦士が支配人をやっている、謎のカジノだ。

 

「変な天の助さんが居るですぅ!?」

「清水君にはこのカジノワールドで、僕らが日本に帰るその時まで労役の刑に処してもらう」

「労役!?」

「それはありがたいな。最近一人従業員が行方不明になっていたからな」

 

 そう言って、ぬー$の戦士は清水をカジノワールドに連れていき、空間の歪みも同時に消えた。

 するとこのことに、今まであまりの展開に茫然としていたがやっと正気を取り戻した愛子が抗議した。

 

「南雲君! 労役ってどういうことですか!? それはまあ、清水君は手放しで許されないことはしたかもしれませんが……!」

 

 最初こそ語気が強かったものの、清水が起こした事の重大さのせいでどんどん弱気になっていく愛子。

 しかし、たとえそうであったとしても生徒がどこか分からない場所に連れていかれるのは納得がいかなかった。

 それを諌めたのは以外にも天の助だ。

 

「落ち着いて下さい先生。彼は死んでません」

「しかしその……。罰を与えるにしても、何も変なカジノに連れて行かなくても……!」

「それだとこの王国の法で裁かれてしまいます。ならば間違いなく死罪でしょう」

「そんな……」

 

 悲しげに呟く愛子だが、敵対勢力との内通の上、神の使徒である愛子の殺害未遂となれば重罪は確実。それこそ天の助の言うように死罪も免れないだろう。

 

「それに後ろを見てください」

 

 天の助に言われ愛子が後ろに振り向くと、そこにいるのは愛ちゃん親衛隊のクラスメイトに護衛の騎士達。それから戦闘音が無くなり、戦いが終わったと思い様子を見にきたウルの町の住人達だった。

 

「襲われそうになったこの町の住人からすれば、下手人が無罪放免ではしこりが残るでしょう。だから、これで良かったのですよ」

「……そう、かもしれませんね」

 

 理屈の上では納得できても、感情の部分が受け入れられない。出来れば元の鞘に治めたかった、と言いたげな愛子だったが、それでも彼女は飲み込んだ。

 これでこの話はお終い。大騒ぎになりながらも、死者を一人も出さずに幕を下ろす。

 そんな中、ハジメ、ユエ、首領パッチの三人はこう思った。

 

(((……なぜか天の助が締めた――――――――――!?)))

 

 三人の中に、地味なしこりが残った。

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