後遅くなったのは風邪を拗らせていたせいです。すみません。
フューレンにウィル達を送り届け、シアの技能にツッコミがあることが判明した翌日、ハジメ達は一日休日を設けることにした。
ユエ、シア、ティオ達女性陣は観光街にある水族館へ遊びに行き、ハジメ、首領パッチ、天の助の三人は食糧の買い出しの後、釣りでゆったりすることにした。
下水道で。
「釣れないな……」
「餌変えるか? 次は普通のところてんから最高級ところてんにしよう」
「オレちょっと場所変えるわ」
いくら釣り糸を垂らそうとも、当然の如く魚など釣れない三人。
そのことにハジメはぼやき、天の助は餌を変えるべきかを考え始め、首領パッチはハジメの頭に移動し、そのまま下水道に叩き落とされる。
「重い!」
「がぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!」
ハジメは叩き落とした首領パッチに釣り針を付け、釣りを続行。
しばらくそのまま待っていると、キィィと何かがハジメの竿を引く。それを感じたハジメは思わず叫んだ。
「よしヒットォ! やっぱり今の時代、釣りの餌は首領パッチに限るね!!」
「なぜだ! なぜところてんじゃ駄目なんだ!?」
得意気になるハジメと対照的に、地面を幾度も叩き悔しがる天の助。そんな彼に、どこからともなく優しい声がかかる。
「その訳、私が教えてあげましょう」
「あ、あなたは……」
天の助が声のする方を見ると、そこには手足と白い髭を生やしたこんにゃくの姿があった。
「誰だテメェ!?」
「ごばぁ!?」
天の助は迷うことなくこんにゃくを下水道に叩き落とす。そのままこんにゃくは成す術もなく、流れに身を任せ下水道を下っていくが、誰も特に手を出さなかった。
一方、竿が引いているハジメだったが、かかったものが大きいのか中々竿が上がらない。
「天の助、ちょっと手伝って」
「しゃあねえな」
天の助に手伝ってもらい、二人掛かりで竿を引っ張る。すると、首領パッチにしがみついている意識の無い子供が釣り上げられた。
エメラルドグリーンの長髪と、下水道という環境で多少汚れてなお可愛らしさの残る少女だ。断じて魚では無い。
が、バカ三人はハジケリストなので話があらぬ方向へ飛んでいく。
「これ、イワナかな?」
「フナじゃね?」
「ヤマメじゃねえの?」
なんと、ハジメ達は釣り上げた少女を魚と誤認したまま話を進めていくではないか。
「食う前に魚拓とるか」
「「いいね」」
しかも首領パッチの提案で魚拓を取る為に少女に墨を塗り始める始末。
やがて墨を塗り終え、紙に拓を写したところで、天の助はあることに気付いた。
「こいつ、魚じゃ無くね?」
今更過ぎる一言だった。
しかし、それを聞いたハジメと首領パッチは改めて少女をマジマジと見つめる。
「「本当だ!?」」
そして今更気づくハジメ達だったが、流石に魚じゃないのに墨を塗りたくるのはどうかと思うし、そもそも女の子がこんな所で気絶している以上介抱しなくちゃ、と考えた彼らはとりあえず少女を抱えて下水道から出る。
そして下水道を出た先の近くにあった小屋に入り、ハジメはすぐに奥義を発動する。
「納豆真拳奥義、
ハジメは奥義で一メート半程のビキニアーマーを纏った納豆型の女騎士を召喚し、少女の介抱を押し付け、一時的に仕切りを作り、少女を見ないように待つ。
しばらく待っていると、女騎士が少女の着替えが欲しいと言うので天の助がぬのパジャマとところてん促進と書かれた襷を手渡す。
女騎士はその二つを不承不承としながら受け取り、仕切りの奥へと消えていく。
そして五分後、ついに少女が目を覚ました。
目を覚ました少女は、まず辺りをキョロキョロと見回した後ハジメ達を見て、怯えた様子を見せる。
そんな彼女に、ハジメ達は優しく話しかけた。
「大丈夫だ、問題ない」
「ハイ○ュウあげるよ~」
「ところてんもあるぞ」
優しく話しかけるハジメ達を信じたのか、単にお腹がすいていたのか不明だが、少女は首領パッチが差し出したハ○チュウと、天の助が差し出したところてんをおずおずと受け取り、そのまま食べ始めた。
これに天の助は歓喜し、思わずハジメと喜びを分かち合おうとする。
「やった! オレやったよ!! ついにところてんが受け入れられたよ!!」
「良かったね……。で……それが何の役に立つ!」
しかしハジメは天の助の喜びを軽くあしらった。それでも天の助はめげない。
「ハジメがどう思おうが、ところてんの価値はオレが決めることにするよ」
「もう……散体しろ!!」
なぜか最終的には首領パッチがネギで天の助をバラバラにしていた。
が、そんなことはどうでもいいとばかりにハジメは少女にあることを尋ねる。
「君は、海人族だよね? まず君の名前を聞こうか」
「かいじんぞく……?」
ハジメの言う海人族が理解できないのか、首を捻る首領パッチ。
仕方ないので彼は海人族が何か自分で考えることにした。
『ペラペーラペラペーラ』
「それ外人」
首領パッチのイメージが明らかに間違っているので、ハジメは軽くツッコミを入れてから、海人族の説明を始めた。
海人族とは、大陸に出回る海産物の八割を採って送り出しているという都合上、亜人族の一種でありながら、他の亜人族と違いハイリヒ王国から保護されている種族である。
海人族は西の大陸の果ての砂漠を越えた先の海、その沖合にあう【海上の町エリセン】で生活をしている。ので、本来ならフューレンにいるというのは異常事態なのだ。だからこそ、ハジメは海人族の少女に問いかけている。
「どうだ分かったか!?」
「分かった―――――!!」
ハジメは首領パッチに説明しながら腕ひしぎ逆十字固めを決めつつ、少女の回答を待つ。
一方少女は、目の前でいきなりプロレス技がかけられる状況に困惑しつつも質問に返答した。
「……ミュウ」
「そっか。僕は南雲ハジメ」
「オレは……超パチータだ!」
「我が名はとこガー。とこガー・天ボルト! 豆腐を絶つ刃なり!!」
「!?」
自己紹介をするハジメ達に、さらっとさっきバラバラになった天の助が混ざることに驚くミュウ。しかしハジメからすれば何を気にしているのか理解できない為、構わず話を進める。
「それで、ミュウは何であんなところにいたんだ?」
「ハジメったら知らないの? 女の子が必死になって行く所は一つだけ。デートの待ち合わせに決まってるわ!」
「何!? 少女が好きなのはところてんスイパラでは無いのか!?」
「……どっちも違う」
「「!?」」
ミュウの迷いの無い否定にバカ二人が驚く中、ミュウはここまでのいきさつを説明し始めた。要約するとこうなる。
ミュウは母親とはぐれて彷徨っている所、人間族の男に捕えられたよ。
そしてフューレンに連れてこられたミュウは、薄暗い牢獄に入れられたよ。
そこには他にも人間族の幼子が一杯。なんでも見世物として客に値段をつけられて売られるんだって。
いよいよミュウの番となったところで、偶然にも地下水路へと続く穴が開いていたのでミュは迷わずGO A HEAD! 油断して拘束もされてなかったから、魔法カード大脱出の発動に妨害は無かったよ。
後はまあ、頑張ってランナウェイ……スイムウェイして今に至る、みたいな?
「成程ね……」
そしてミュウの話を全て聞き、自分なりに噛み砕いたハジメは次の瞬間、ミュウにとって信じられない発言をした。
「じゃあ、潰しに行こうか。その人さらい組織」
「おう!」
「そーだな」
ハジメの言葉に一も二もなく賛成する首領パッチと天の助。そんな彼らをミュウはただ驚きを持って見つめ、口には出さないが問いかけている。『何でミュウを助けてくれるの?』と。その問いにハジメ達は迷うことなく返答した。
「主人公、だからかな」
「
「君がところてんを、心から愛してくれたからさ」
返答を聞いても意味が分からないミュウ。しかし、そんな彼らの迷いの無さは、なぜか彼女に信じたいと思わせるには十分だった。
「でもその前にミュウを保安署*1に預けに行こう。流石に放っていくのはアレだし」
「せやな」
「分かる」
時は少し流れ、場所も変わりここは商業区の外壁付近にして、表社会の目の届かない完全な裏社会の一角。そこにある七階建ての建物は、表向きは人材派遣会社だが、裏では人身売買の総元締を担当している裏組織“フリートホーフ„の本拠地である。
ここはいつもだと静かで不気味な雰囲気が漂う場所だが、今日に限っては違っていた。幾人のも伝令らしき男があちらこちらを走り回る。
その建物の最上階、フリートホーフのボスがいる、いわゆる社長室ではこの組織のボスである男が、手下の伝令らしきチンピラに当たり散らしていた。
「てめえ、もう一度言ってみやがれ!」
「ひぃ! で、ですから、何だかよく分からねえ三人組が次々とウチのアジトを潰しているんです! 既に五十軒以上のアジトが潰されて、オークション会場まで……!!」
「ふざけやがって!!」
「ぐはぁ!?」
怒りの余り、思わず伝令を蹴り飛ばすボス。そのまま伝令を足蹴にしながら周りの男達に怒鳴り散らした。
「いいかてめえら! 何としてもその三人組を捕えろ! 捕えた奴一人に付き五百万ルタを出してやる!! なんとしてもフリートホーフの面子を守れ!!」
ボスの号令と共に、室内は一気に慌ただしくなる。ただし、ボスに足蹴にされている男は例外だ。
彼はボスに蹴られた時、当たり所が悪く悶絶していた。さらに言うなら、たった三人でフリートホーフのアジトを次々潰すような奴に勝てるわけがないと怯えている。しかしここで行かねばボスに殺されることは確実だ。
(死ぬ……。このままじゃ死んじまう……)
「死なねえ!」
そんな男の恐怖を振り払うかのような声が、部屋の外からいきなり響く。しかし声の主にこの場の人間は誰も心当たりがないのか、全員が顔を見合わせ、首を傾げていた。
「死んでたまるか! このままじゃ……こんなところじゃ……! 終われねえ!!」
そして声の主は部屋のドアを勢いよく開け、そのまま飛び込んでくる。
声の主は十代後半で、黒髪と黒コートが特徴的だがそれ以外は普通の少年だった。
その場の誰も知らないが彼は南雲ハジメ。今彼らが血眼になって探している、フリートホーフのアジトを潰しまわっている三人組の内一人である。
「だろ? ミカァ!!」
「……何だお前?」
部屋に飛び込んできたハジメに、ボスはあまりにも真っ当な疑問を投げかける。
が、ハジメがまともに返すわけがない。
「その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ」
「何言ってんだこいつ!?」
「勇を失ったな……」
「もういい! こいつを殺っちまえてめえら!!」
会話が成立せず、業を煮やしたボスは部下にハジメの始末を命じる。
それでもハジメは焦りを見せたりはしない。
「爆発して死ぬのに? 意味無いよ」
「は?」
ボスがハジメの言葉に気を取られた直後、何の前触れもなくいきなりハジメの眼前に爆発が発生した。
同時刻、フリードホーフの本拠地の遥か上空。そこには、ガンダムバルバトスルプスと化した首領パッチが、発射口から硝煙の臭いを漂わせた腕部ロケット砲を携え――
「慣性制御システム、スラスター全開」
『勝ち取りたい ものもない 無欲なバカにはなれない!』
コクピットに天の助を乗せ、RAGE OF DUST(早○美鈴カバー)をスマホで流しながら一直線に落下していった。
ドゴォォォオオオン
そしてフリードホーフの本拠地の屋根に恐ろしい程の轟音を響かせ着地。
しかし、31.2トンという重さを誇る*2バルバトスルプスに床が耐えきれるはずも無く、重量に耐えられなかった本拠地を崩落させながら地面へ落下。
こうして、フリードホーフは物理的、組織的にも壊滅した。
「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」
ちなみに、ハジメだけは当たり所が悪く即死したものの、他のその場にいた面子はギャグ補正のおかげで全員無事だった。
「それで、何か申し開きはあるかい?」
その後、ハジメ達がフリードホーフを潰したことを報告しようと冒険者ギルドへ赴くと、応接室にて報告書片手にハジメを睨むイルワの姿があった。
いきなりフューレンの町に潜む大規模な闇の人身売買組織が潰れたのだから、その余波でギルドの長が忙しいのは当然だろう。
が、ハジメは特に気にする事も無く応接室にあるお菓子をゆったりと食べている。
「ムシャムシャしてやった。今は反芻している」
「いやお菓子のことじゃなく」
『僕は悪くない』
「確かにそうだけども!」
ハジメの煙をまく態度にツッコミを入れつつも、やがて諦めたかのように溜息を吐き、やがて苦笑いと共に話し始めるイルワ。
「まあ、いいか。私達も裏組織には手を焼いていたからね。今回の件は助かったと言えるよ。そのついでと言ってはなんだが、一つ頼みを聞いて欲しい」
「何です?」
「君達のギルドランクを金に上げる代わりに、混乱が起こらないように取り計らうのを手伝ってほしい」
「それって……!?」
イルワの大胆な発言に驚く天の助。それもそのはず、金とはギルドランクの頂点だったはずだ。それがこんなにあっさり手に入るとは思っていない。
ちなみに首領パッチは、話に飽きたのか横でエアロビを踊っている。
「ハイ。ワン・ツー! ワン・ツー!」
「邪魔!!」
「ぎゃあ!?」
ハジメに蹴り飛ばされる首領パッチを尻目に、イルワの話は続く。
「元々ウィル達を連れ帰って来た時に上げるつもりだったんだけどね。まあ、彼女達のステータスプレートが衝撃的すぎて忘れてたけど」
「忘れてたのかよ!?」
まさかの発言に思わず天の助はツッコむが、ランクが金に上がって損することは無いのでハジメはこれを快諾。
これによりハジメ達三人と、それからこの場にいないユエ達三人のランクは金となった。
そしてフューレンの裏世界に混乱を起こさず、一般人に迷惑を掛けないようにするため奮闘するのだった。
ちなみに翌日、何も知らない間にギルドランクが金になったシアが、ハジメ達にツッコミを入れまくるのだがそれは別の話。