グリューエン大火山の最奥は直径三キロほどの空間の大半にマグマの海があり、その中にわずかな岩場がポツポツと浮かんでいた。
ただしこの海の中心に小島が浮いてあり、その中心をマグマのバリアが覆っている。そして島から一本の道が伸び、端には階段がある。恐らくここが正規ルートなのだろう。
ハジメ達は不慮の事故で変なルートを通ってきたのか、と気づいたが別に罪悪感とかは抱かなかった。
「たかが静因石を採ったくらいで、想定外のルートができるとか思わないじゃん?」
「ダンジョン作るのにデバッグしない方がわりーんだよ」
「……ん、その通り」
「当然んじゃろ……!」
「早速ファイナ〇ソード語録使ってきたですぅ」
デバッグ不足の迷宮に各々が好き勝手言いながら、乗っているタタミが溶け始めたので近くの足場に飛び移る。
そしてハジメ達が足場に飛び移ったと同時に、マグマの中から巨大な蛇が現れた。
マグマを纏ったその蛇は、ハジメ達に向かって顎門を開き襲い掛かってくる。
さらにマグマの中から火炎弾が追加で襲い掛かってきた。
「怒りじゃ……! マグマの中にタタミなどという不純物を落とすから蛇神様がお怒りなのじゃ……!!」
「ティオテメェ! タタミがマグマにとって害のあるものだって言うのかよ!?」
怯えるティオに掴みかかる首領パッチ。その光景を無視して早速ユエは魔法で攻撃を仕掛ける。
「ヒャド。ヒャダルコ。ヒャダイン。じょーじょーゆーじょー」
「そっちのヒャダイン!?」
ユエが氷魔法で攻撃すると、マグマの蛇はあっさりと爆散する。しかし蛇はマグマで構成されており、さらに本体であろう魔石も見つからない。
しかも今度は蛇が二体に増え、再びハジメ達の前に現れる。
「そんなに蛇神がお怒りなら、僕が怒りを鎮めよう」
ハジメが天に指を掲げながら、奥義を発動する。
「納豆真拳奥義、
ハジメが奥義を発動すると、空から大量のアンパンが彗星の如く流れ落ち、マグマの蛇達を打ちのめしていく。
「微塵も鎮める気がないですぅ!!」
空から落ちてくるアンパンが蛇を滅ぼすが、またも新たな蛇が現れる。
しかし蛇が現れたと同時に、マグマから二メートル程のメダカが数十匹現れアンパンを食べようとするが、蛇に先を越されアンパンを取られた。
「マグマからメダカが出てきた――――――――――!?」
アンパンが食べられないことにキレたメダカの群れは、一丸となって蛇をタコ殴りにする。例えるなら、原生生物をオリマーの指示でボコるピクミンみたいな。
決着は一瞬で付く。いくらマグマの蛇がメダカより大きくても、数の暴力には勝てやしない。
勝利したメダカ達はアンパンを貪るが、新たな蛇が現れそのままメダカ達を襲う。そこにハジメが再びアンパンを投入することで、またもメダカの群れが現れ蛇を襲う無限ループが誕生した。
その凄惨たる光景から目を背けたシアは、ふと迷宮の壁に魔石が百個埋め込められ、そのうちいくつが光っていることに気付く。
更によく見ると、光っている魔石の数はシア達がこの部屋に入ってから倒された蛇の数と同じだと感づいた。
シアは皆に言う。
「皆さん。恐らくですけどここのクリア条件は蛇を百匹倒すことだと思います! ほらあそこ見てください!」
言いながらシアが光る魔石に向かって指をさすと、そこを見たユエとティオはすぐに言いたいことを理解する。
しかしハジメと首領パッチは理解できず首をひねっていた。
見かねたティオが二人に近寄り小声で助言する。
「簡単に言うなら、スマブラの百人組み手じゃ」
「なるほどなー」
「なんだよ、そうならそうと早く言えよ」
ティオの助言でハジメは理解するが、首領パッチはそれだけに留まらず、あろうことか分かりづらいとシアを小突く。
苛立ったシアは首領パッチをマグマに突き落とした。
何もできず沈んでいく首領パッチ。しかししばらくするとマグマからメダカが一匹現れ、ハジメ達に語り掛ける。
「あなたが落としたのは金の首領パッチ? それとも銀のルギア?」
「ルギア!?」
「ルギアです」
「即答!?」
ハジメがルギアを選ぶと、メダカはルギアを置いてマグマの中へと去っていく。
「ルギアが手持ちに……フフフ、素晴らしいぞ」
伝説のポケ〇ンを手に入れてご満悦のハジメ。しかし――
「引っかかったな! そいつはオレだ!!」
ルギアの中から現れる首領パッチ。そう、ルギアは着ぐるみだったのだ。
当然、ハジメは怒声を浴びせた。
「よくもだましたアアアア!! だましてくれたなアアアアア!!」
「心眼を鍛えろ。お前には観察眼が足りていない」
猛るハジメに対しなぜか師匠面をする首領パッチ。
その裏ではメダカの群れが暴れに暴れ、気づけばマグマの蛇は百匹倒され試練はクリア扱いとなり、部屋の中央にある小島のマグマが消えていた。
「いや、私達ほとんど何もしてませんけどいいんですか!?」
「やはりデバッグ不足」
「いいんですかいいんですか こんなに好きになっていいんですか」
ユエが再びデバッグ不足を指摘し首領パッチが歌う中、ハジメ達は中央の小島に向かう。そして小島にたどり着いたその瞬間、ハジメの頭上に光が舞い落ちる。
光が落ちたとともに爆音が響き、小島の上に炎が灯る。それはハジメも例外ではない。
しかしハジメは燃える己の体に構わず言い放つ。
「半分は当たっている。耳が熱い!!」
その言葉と共に体についていた火が耳に移動していく。
無論耳は熱いままだが、ハジメは怯むことなく啖呵を切った。
「頑張れハジメ、頑張れ! 僕は今までよくやってきた! 僕はできる奴だ!! そして今日も! これからも! 燃えていても! 僕が挫けることは絶対にない!!」
「はいここで一回区切りまーす」
「お待ちかねこの後は!」
「お楽しみの!」
「ありハジじゃんけん占いだ!」
「「「皆じゃんけんの用意だぞ~!!」」」
「さあ行くよ。じゃーんけん、ぽん(グー)」
「自分の勝ち負けを覚えてて」
「占いはこの話の最後じゃぞ」
「……いや、何ですかこのコーナー」
耳が燃えているハジメに対し、首領パッチ達は大慌てで水の入ったバケツと柄杓を用意し水を柄杓であたりに撒き始める。
「打ち水――――――――――!? その水直接ハジメさんに掛ければいいのに!?」
その光景にシアはツッコむが、彼女の思いとは裏腹に功を奏したのかハジメの耳の炎は消える。
そのままハジメは警戒心を露わにしながら目線を上にやり、シア達もまたそれに釣られた。
彼らの視線の先には白竜が、その背には赤髪で浅黒い肌を持つ魔人族の男がいる。
「殺しきれんか……ならば」
男が何かを呟いたかと思おうと、いきなり白竜の背から飛び降りハジメ達の眼前に降り立ち、そのままハジメに向かって飛び掛かった。
「くらえ、五定規!!」
そして出てきたのはなぜか定規が五本。何がしたいのかシアにはさっぱり分からないが、ハジメは慌てることなく対処する。
「なんの、充電器!!」
「甘い! ガンプラ!!」
「ここで来たか極光コンボ! だったらたくあん二つを発動で防ぐ!!」
「馬鹿な!? 命が惜しくないのか!?」
「シャバドゥビダッチヘンシーン!!」
「くっ……私の六ピカソ負けか……」
(何をしているのか全然分からないですぅ……)
ルールの分からない勝負方法にシアが困り果てる一方、首領パッチは戦慄で体を震わせながらボソリと呟く。
「ハジメがたくあんを発動してなかったらオレ達は全員死んでいた……」
「そうなんですか!?」
「あなたは、何者?」
首領パッチとシアの会話を尻目に、ユエは魔人族の男に問う。
男は不敵な笑みを浮かべ答えた。
「私はフリード・バグアー。魔国ローランドの将軍だ」
「その将軍が、妾達に何の用じゃ」
「ハジケ勝負を申し込みに来た」
「は?」
フリードの想定外な言葉に固まるティオ。発言者当人は構うことなく話を続ける。
「神代の魔法を手に入れた私に“アルヴ様„は直接語り掛けてくださったのだ。”ハジケの力を手に入れ、イレギュラーであるハジケリスト共を倒せ„と。私はアルヴ様に召喚されたハンスにハジケリストとは何かを問い、そして己なりの答えを得たのだ」
「それで、その成果を僕らで試しに来たってこと?」
「そうだ」
フリードの返答に、ハジメは半月状の獰猛な笑みを浮かべる。
それは歓喜。なぜならハジメにハジケ勝負を挑むものなど、一年以上ぶりに出会ったのだから。
「受けて立つよ、エキスパートルールでね。テーマはそっちが決めたらいい」
「面白い」
ハジメとフリードの二人がノリノリで盛り上がる一方、シアは浮かんだ疑問を仲間にぶつけた。
「エキスパートルールって、何ですか?」
「簡単だ。ハジケ勝負は大抵よりハジケた方が勝ちっていうシンプルなルールだが、エキスパートルールだとテーマを決めてハジケるんだ」
首領パッチがシアにルールを説明し終わると同時に、フリードはテーマを決めて発表する。
「テーマは、夏休みだ!!」
「また今年の学生に印象深くなるものを……」
「そして私の先行だ! 食らえ!!」
〇月×日
きょうからなつやすみ。
なつやすみのしゅくだいに、ぼくはドラゴンをそだてることにした。
たまごからかえったばかりだけど、はやくおおきくなるといいな。
〇月◆日
あさおきるとドラゴンのしんちょうが5メートルをこえていた。
もっとだ……もっとちからをぼくに!
〇月▽日
私は全てを支配する力を手に入れた!
もうこの学校に私のドラゴンを上回る存在はいない!!
フハハハハハ! これから私は覇道を歩む!! 誰も私に追いつけないのだ!!
「ぐばぁ!?」
「ハジメ!?」
「ご主人様!?」
「いい話でごわす……」
フリードのハジケが終わり、血を吐くハジメに心配するユエとティオ、感動し涙を流す首領パッチ。そして話に入れないシア。
彼らの様子を見たフリードは得意気だ。しかしハジメは怯まない。
「上等だよ。次は僕のハジケを見せてやる」
昔、あるところに高校二年の少年がいた。
彼の高二の夏休みの思い出はこれだ。
夏休み前に発売されたゲームをただひたすらやりこむ日々。
気づけば登校日前日。彼はそこで明日提出の宿題があることに気付き、夜中まで起きて済ませる。
そして提出した後、残りの宿題をやれるだけやって間に合わなかった分は友達のを写させてもらった。
「そんなバカな!? 一番気兼ねなく過ごせる高二の夏休みの思い出がこんなものか!?」
ハジメのハジケが終わり、動揺を隠せないフリード。更にハジメは追い打ちをかけた。
「しかもこれ実話なんだよ」
「実話だと!? 誰のだ!?」
「
ハジメから語られる真実にフリードは耐え切れず、思わず語り手の当人に掴みかかってしまった。
「嘘だろう!? 嘘だと言え!! 仮にも字書きが夏休み全てを潰してゲームしてただけなんて……私は信じないぞ!!」
「僕だって嘘だって言いたいよ! でも真実なんだ!! 揺るぎない真実なんだよ!!」
ハジメの血を吐くような叫びに、フリードは何もできずただ崩れ落ちていく。
その光景をただ見ていたシアは、思わずこう呟いた。
「今のうちにあの魔人族、ボコっちゃダメですかね?」
「「「……」」」
シアの言葉に、バカ三人は何も言えなかった。
「じゃんけん占いの結果なのじゃ~」
「じゃんけんに勝った君は漫画を読もう。ラッキーアプリはジャンプ+だ!
あいこだった君は、暑いからと言ってエアコンの効いた部屋にばかりいると体調を崩すよ。
そして負けた奴! 暑い時には運動して汗をかけ!!」