【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義48 純も不純も関係ない

「まだだ……まだ私は戦える……」

 

 ハジケ勝負に敗れ、地面に這いつくばっていたフリードが膝を震わせながら必死に立ち上がる。

 その姿はともすれば劣勢になり、なお諦めない闘志と見えるかもしれない。

 しかしハジメと首領パッチの目つきは冷ややかだった。

 

「ハジケリストの姿か? これが……。勝負に敗れ、倒れている隙を見逃されて、戦いを止めぬ醜さ。生き恥」

「……まるで八丸くんみたい」

 

 目線のみならず、言葉までもが冷たい二人。

 もしフリードが仕掛けてきたものがハジケ勝負ではなく単なる殺し合いなら、ハジメはここまで冷たい視線を向けることはなく、ただ単に警戒するだけだろう。

 しかし彼はハジケ勝負を挑んだ。そして負けた。この時点で潔く諦めない行為は非情に見苦しい。

 純粋なハジケリストとして生きてきたハジメには、どうにもフリードの諦めの悪さは受け入れられなかった。なお、首領パッチはフリードに対して思うところはないけど、ノリでハジメと一緒になって冷たく接していた。

 だがフリードは二人の視線に怯むことなく、皮肉気に言葉を吐き捨てる。

 

「なんとでも言え。私とて魔人族(バリアン)を救わねばならん」

「バリアン!?」

 

 フリードの発言にシアはツッコミを入れ、ハジメと首領パッチは興ざめする。一方ユエとティオはフリードの言い分に否定的な反応は見せなかった。

 ユエは吸血鬼族の元女王で、ティオも竜人族の姫君であり、純粋なハジケリストとは言えない。そんな二人からすれば、目的の為に諦めないフリードは厄介であれど嫌う理由は存在しなかった。

 二人ともハジケをある種能力として利用しているという部分ではフリードと同類と言っていいだろう。

 だからユエはフリードにこう言い放つ。

 

「私は構わない」

「何?」

「わたしは一向にかまわんッッ!!」

 

 叫んだと同時にユエはフリードに殴りかかるが、それを彼はジャンプで回避し空中に待機させていた白竜に飛び乗った。

 回避したフリードに向けてユエは続けて叫ぶ。

 

「キサマは中国武術を嘗めたッッッ!!」

「いや武術は関係ないですぅ!!」

「いいだろう! ならば第二ラウンド始めっか!!」

 

 ユエの叫びに応えたのかどうかはよく分からないが、フリードは指を天に向かって掲げる。

 すると、空から灰竜の大群が現れハジメ達に向けてブレスを一斉掃射し始めた。

 威力はフリードが現れる前にハジメがくらったものに比べれば威力は十分の一程度だろう。

 しかしそんな攻撃も無数に来るとなれば話は変わる。しかしユエは慌てることなく魔法で対抗した。

 

「“絶禍„」

 

 ユエが放った魔法。それは直径六十センチほどのブラックホールのようなものを展開し、周囲のものを吸い込むという攻撃にも防御にも使える魔法である。

 ユエはこれで灰竜のブレスを吸い込み、易々と攻撃を防いだ。

 その光景を見たフリードはすぐに灰竜にブレスを止めさせる。

 ブレスが止んだと同時に今度はハジメが動いた。

 

「次はこっちの番だ。納豆真拳奥義、パラジクロロベンゼン島名物巨大パチンコ!!」

「どこですかその島!?」

 

 ハジメが奥義でパチンコ*1を地面に出す。

 

「その脚注必要ですか!?」

「早速弾を撃ちだすよ!!」

 

 そのままハジメは大量の弾をパチンコにセットし、空にいる灰竜の群れへと発射した。

 

「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」「ニャー」

「猫ですぅ――――――――――!? 弾ってタマ!?

 

 打ち出されたネコのタマ達(命名:有明のチャーハン)は灰竜に襲い掛かる。

 あるタマは鋭く砥がれた爪を以て灰竜の目を引っ掻き、別のタマはボディアタックで灰竜に攻撃を仕掛ける。しかしどのタマも決定打は与えられない。

 

「なら追加だ! 首領パッチとユエも行け!!」

「「ワオーン」」

「犬!?」

 

 犬と化した首領パッチとユエが撃ちだされ、先に空にいるタマ達と合流する。

 その時不思議なことが起こった。

 数多のタマ達が合体し、巨大な一つのエネルギーとなり二人に力を与えたのだ。

 二人は与えられた力を、灰竜の群れにむけて全力で振るう。

 

「「協力奥義、ワンニャン時空拳!!」」

「ドラ〇もんの映画タイトルみたいな技出した――――――――!!」

 

 二人の奥義で空にいた灰竜の三分の一が吹き飛ばされ、竜の主であるフリードは動揺を隠せない。

 その横で、吹き飛ばされた灰竜を見てタマの集合体であるエネルギーは安心したような表情を見せる。

 

「ニャー(これでもう大丈夫だ。さあ行くか)」

「ニャー(ああ。人類の未来をかけた、対話の始まりだ!)」

 

 するとタマはダブルオークアンタへと変形し、空へと消えていった。

 

「私達と全く関係ない使命携えて行った――――――――――――!?」

 

 一方、灰竜が吹き飛ばされて茫然としているフリード相手に、今度はティオが仕掛ける。

 

「ふむ、次は妾が黒竜にふさわしき攻撃を見せてやろうぞ」

「おお。一体どんな攻撃が……」

 

 シアの期待する声に、ティオは技を発動することで応えた。

 

「かめはめ波!!」

「竜関係ない!?」

「黒竜→竜→ドラゴン→ドラゴンボール→かめはめ波、という完璧な連想ゲームじゃ」

「遠い!!」

 

 シアのツッコミを背に、ティオのかめはめ波はフリードが乗る白竜に命中する。

 しかし、ダメージは与えるものの空を飛ぶ白竜を撃墜には追い込めなかった。

 その事実に安心するフリードに、未だ空を飛んでいるユエが話しかける。

 

「ところでフリード、気にならない?」

「……? 何がだ」

「ハジメがどこにいるか」

 

 ユエのその言葉を聞き、顔を訝しめつつユエを警戒しながら、フリードは地上を覗き込む。しかし、視線の先にハジメの姿はない。

 それもそのはず。なぜならば――

 

「僕はここにいるぞ!!」

 

 ハジメはフリードの頭上から攻撃を仕掛けているのだから。

 

「バカな!? いつの間に上へ!?」

「壁面を素手で登って、頂上からは納豆の糸をスパイダーマン的に竜の尻尾に伸ばしてやってきた! やってて良かったパルクール!!」

「パルクールってそんな競技でしたっけ!?」

 

 フリード視点では突然現れたハジメに必死に対応しようとするが、ハジメの攻撃態勢はすでに準備完了しており、フリードに何かさせるより前に攻撃を繰り出した。

 

「納豆真拳奥義。ジャムパン投げ祭り創始者、チャシブ・オッチネーナー!!」

「甘い!」

 

 ハジメの攻撃を、フリードは咄嗟の判断で自らの腕を盾にしてダメージを防いだ。しかし、衝撃で吹き飛ばされ白竜から落ちてしまう。

 しかしフリードは慌てない。なぜなら己の白竜が助けてくれると確信しているからだ。

 だが彼が落ちながら白竜を目にしたとき、彼の顔は驚愕に染まる。

 

「甘いのはそっちだよ。甘々の甘えび官房長官だ!!」

 

 ハジメがフリードに向かって叫ぶ。その言葉が意味するものは、納豆で拘束され、その場に固定された白竜だ。

 必死に暴れる白竜。様子を見る限り、三十秒あればこの拘束を脱出できるだろう。

 しかしそれは、今落ちているフリードに追いつけないことを意味する。

 抗うすべもなく、フリードはただ落ちていく。

 そして落下点には――

 

「トドメは頼んだよ、シア!」

「はいですぅ!!」

 

 ピアニカソードを構えたシアがいる。

 フリードは咄嗟に魔法で落下点にいるシアに攻撃を仕掛けるが、それより先に彼女はフリードにジャンプで接近した。

 

「どっせい! ですぅ!!」

「ぐばぁ!?」

 

 そしてピアニカードによる強烈な一撃で、フリードは何もできず地上に叩きつけられた。

 その光景を見ていたティオは、少々恐れを感じながら呟く。

 

「あれがシアのガツーンナグーリか。恐ろしいの」

「私そんなペーパーマ〇オみたいな技使えませんけど」

「なるほど……それが古き『武家諸法度』にもある、“侘び寂び”というやつじゃな」

「それは技名ですらないですぅ!!」

 

 いつも通りなティオとシアの会話。それに連れられるようにハジメ達三人も地上に降りてくる。

しかしここで異変が起こる。

なんと、いつの間にかマグマの量が増し、足場を少しずつではあるが浸食していたのだ。

 

「これは一体!?」

「子沢山か……」

「子沢山!?」

「フフフ……」

 

 異常事態にハジメ達が慌てる中、フリードがフラフラしながら立ち上がり、不敵に笑う。

 そのまま彼は得意げに解説まで始めた。

 

「この火山にはマグマを鎮める要石がある。私はその石を破壊したのだ。これでこの部屋はすぐにマグマで埋まる。貴様らにここの神代魔法は渡さん!」

「くっ……」

 

 苦悶の表情を浮かべるハジメを横目に、フリードは拘束を解いた白竜に乗って去っていく。

 その光景を見たユエは思わず呟く。

 

「この迷宮、ひょっとして空からなら普通に入れた?」

 

 ユエの疑問に答える声はないが、フリードが従えていた灰竜はまだ残り、ハジメ達に向けてブレスを仕掛けてくる。

 そしてマグマはまるで台風勢力圏に入ったが如く荒れ狂っていた。

 この状況でハジメはある決断を下す。

 

「ティオ。君は静因石を持って先に脱出するんだ」

「そんな!? ご主人様達は!?」

「大丈夫だ、問題ない」

「問題しかなさそうな返事!!」

「……うむ」

 

 ハジメが建てた死亡フラグに不安げな様子を見せるも、ティオはハジメから静因石を受け取ってアンガジを目指す。

 当然、灰竜は妨害を仕掛ける。だが――

 

「“雷龍„」

 

 ユエが魔法で灰竜を妨害し、ティオはなんなくこの迷宮を脱出した。

 それを見送ったハジメ達はマグマのバリアが消えた中央の島へ移動し、島に立つ漆黒の建造物に飛び込む。

 少し様子を見ても、この建物にマグマが入ってくる様子がないことを確認してから、ハジメ達は部屋の中を見回す。

 そこにはオルクス大迷宮と同じように魔法陣があった。ハジメ達は早速中に入り、特にイベントもなくあっさり神代魔法を習得した。

 ここで習得した魔法は“空間魔法„だ。空間に干渉し、瞬間移動なども可能とするすごく……すごい魔法である。

 

「説明が頭悪いです」

 

 ハジメ達が空間魔法を習得すると、部屋の壁の一部がはがれそこにメッセージが現れた。

 

“人の未来が 自由な意思もとにあらんことを 切に願う„

“だがここは人間ごときがくる場所ではない„

“ナイズ・グリューエン„

 

「もっと言うことあったんじゃない?」

「二行目がおかしい!!」

 

 ハジメとシアが解放者のメッセージにコメントしている裏で、ユエがこの迷宮の攻略の証であるサークル状のペンダントを手に入れる。

 これで後は脱出だけという状態になった。

 

「で、脱出手段どうしよう?」

「考えてなかったんですか!?」

「オレに任せな」

 

 ハジメが頭を悩ませていると、首領パッチがサムズアップしながら名乗り上げてきた。

 

「やってみろ! このYUEに対して!!」

「行くぜ相棒!!」

「もう何が何やら……」

「奥義、ありーメシ!!」

 

 シアの呆れ声を背景に、首領パッチは奥義を発動した。

 すると背景が切り替わり、いきなり畳が敷いてある子供部屋へと変化する。

 そこでユエが寝転がりながらボヤいていた。

 

「あ~、時間空いちゃったな~。なんか手軽に読めるなろう小説――」

 

 ユエのセリフの途中でいきなり背景が首領パッチに破られ、ユエを踏みつけながらありふれの単行本を掲げつつ叫ぶ。

 

「――いてっ」

「時間空いたらありふれた! 兵器作って無双だぜ!! チート習得簡単。奈落に落ちて魔物食うだけ! シアもビックリ!!」

「いや簡単に纏めすぎですよ」

「ほらほらどうだぁ、面白そうだろう? ヒロインたっぷり選べるぜ!! ハジメもビックリ!!」

「タマゲタケ」

「ポケ〇ン!?」

「簡単ハーレムありふれた!!」

 

 セリフを一通り言い終える首領パッチ。しかしそこに新たな登場人物が、ターザンの要領でやってくる。

 

「わああああ~」

「(原作)香織さん!?」

「ヒロイン大半が巨乳なのにメインだけ貧乳ってどうかと思う~」

「何の話ですか!?」

「うぅわ!」

 

 ここで首領パッチの背中にロケットブースターが搭載され、エンジンが起動する。

 それを見たハジメ達三人は慌てて首領パッチに抱き着いた。

 

「やったぁ――――――――――――――――――――――――!!」

 

 そしてエンジンに火が付き、首領パッチはハジメ達を引っ付けたまま漆黒の壁もマグマもすり抜け、あっさりグリューエン大火山を脱出し、遥か高く空を飛んでいた。

 これで後はアンガジに向かうだけ。しかしここでトラブル発生。

 

「馬鹿な!? 首領パッチのメインローターがいかれただと!?」

「ローターありませんけど!?」*2

 

 なんと首領パッチに故障が発生し、ハジメ達はただ風の流れと自由落下に身を任せるほかなくなってしまった。

 

「はたして、ハジメ達の運命やいかに」

「界王様!?」

*1
ギャンブルではなく、弾を撃つ方

*2
ローターとは、ヘリコプターの回っている部分を繋げる中心部のことである




最後に首領パッチが出した奥義の元ネタ

https://www.youtube.com/watch?v=6MsrwWjwFTc
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