【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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遅くなってすいませんでした。
後半シリアス多め(相対的)なので注意。


奥義51 ぜったい遵守☆強制狂信エヒト神

 メルジーネ海底遺跡に突入したハジメ達は現在、平屋を降りて歩いていた。

 しばらくは水中を進んでいた彼らだったが、途中で水中から陸地へと切り替わったのだ。

 

「海底洞窟なんて途中で船から降りるのがお約束だよね」

「ドラゴンボールのレッドリボン軍編でも降りてたしな」

 

 ハジメと天の助がダベりながら歩けるくらい気が抜けているが、理由はとてもシンプル。

 敵が、彼らと比べて弱いのだ。

 初代ポケ〇ンで言うなら、ハナダの洞窟でも問題ないくらいになった後にふたごじまの野生ポ〇モンと戦わされるようなものである。

 

「例えよく分からないんですけど」

 

 おかげでハジメ達はダベり、ユエはペットのティラミスを数ピース放して運動させる始末。ティラミス達はドタドタと洞窟の奥へ走っていく。

 

「あんまり遠く行かないで」

「ペットのティラミスには適度な運動が欠かせないからな」

「ケーキがペット!?」

 

 ユエと首領パッチの会話にシアがツッコミつつしばらく歩いていると、先に進んでいたティラミス達が鳴きながら必死に戻ってきた。

 

「ピキーピキー!」

(ティラミスってそう鳴くんですか……)

「どうしたの?」

 

 ユエがティラミスに尋ねると同時に、魔物の群れが通路の奥からやって来る。

 どうやらティラミスはこの群れから逃げてきた、と判断したユエはそっとティラミスの一ピースを握る。

 

「可哀そうなマイペット」

「ピキー!」

「でも、この軟弱者!!」

「ピキー!?」

 

 ユエは手に持っていたティラミスを、魔物に向かって投げつける。

 見事命中したティラミスは爆発四散。ぶつけられた魔物と運命を共にしてこの世を去った。

 

「我が配下に軟弱者はいらない。選んで。私に殺されるか敵と戦うか」

「鬼ですぅ!!」

「ピキー!?」

 

 ユエの情け容赦ない言葉に怯み、泣き叫ぶティラミスのうち一ピース。

 あれ、五ピースあったような? と思ったシアはキョロキョロと辺りを見回す。

 すると――

 

「美味い! 美味い!」

「でも少しかてえな。身が引き締まりすぎだぞ」

「運動させすぎじゃな、これは」

「食べてるですぅ――――――っ!? 養殖マグロみたいな感想が出てきてるし!!

 

 ハジメ、天の助、ティオの三人がティラミスを一人一ピースずつ食べる姿があった。

 それを見たユエは泣き叫ぶ。

 

「私の非常食が!!」

「さっきペットでしたよね!?」

 

 その叫びを聞いた最後の一ピースであるティラミスは、己の全身全霊をかけて体から羽を生やし、空を切って逃げ出す。しかし――

 

「グワァラゴワガキーン!」

 

 いつの間にか回り込み、バットを構えていた首領パッチに打たれティラミスは強制的にとんぼ返り。そのまま魔物の口の中に突っ込んでしまった。

 

「ゴオオオオオオオオオル! はらたいらに三千点!! レイブンクローに四十点!!」

「超! エキサイティング!!」

「何ですかこれ!?」

 

 これには実況のハジメに解説の天の助も大盛り上がり。彼らはかつてないほどの熱狂に包まれた。

 なお、その裏ではティオがちゃっかり魔物の群れを倒していた。

 

「この状況は灘高の過去問ですな」

「問題ですらありませんけど!?」

 

 首領パッチの訳の分からない言葉をシア以外が聞き流しながら、一行は先へ進む。

 しばらく歩いていると、開けた空間にたどり着いた。

 ハジメ達が何の警戒もなくそこに入ると、いきなりゼリー状の何かによって通路が塞がれた。

 

「おっと、トラップに引っかかった?」

「というよりあのゼリーみたいなのが魔物だと思う」

「じゃあオレがぶっ殺してやるぜ!」

 

 そう言って首領パッチはネギでゼリーに斬りかかる。するとゼリーが弾け、彼に少し引っかかる。

 すると、首領パッチが着ていたセーラー服が少しずつ溶け始めた。

 

「イヤァァァ――――――ッ! アタシの服がぁ―――――――!!」

「お前がお色気イベントを消化するな!!」

 

 ハジメは首領パッチをゼリーに向けて蹴り飛ばした。

 首領パッチは成すすべなく溶かされ、最後には――

 

「肉抜き……完了だ」

「行け、僕のパッチマグナム!!」

 

 極限まで軽量化されたミニ四駆となり、ハジメの手で走らされていた。

 

「いやどういうことですか!?」

「ミニ四駆って、軽量化しすぎるとコースアウトするから、肉抜きってそんなに意味がないらしい」

 

 ユエが変な豆知識を披露する一方、さっきから喋っていなかったティオと天の助は鍬を手に畑を耕していた。

 

「畑!?」

「うむ、いい土じゃ」

「んだんだ」

 

 満足げな二人。するといきなり、上から通路を塞いでいるものと同じゼリーが垂れ、畑の作物を溶かしていく。

 

「村の収入源が大変じゃ――――――っ!!」

「おら達作のプリン君抱き枕カバーが!!」

「プリンの枕カバー!?」

「しかも見ろよこの抱き枕カバー。こいつ――」

 

 慌てふためく二人を放っておいて、首領パッチはシアに対し得意げな顔で抱き枕カバーの解説を始める。

 

「表はカップに入っているけどな、裏はそれが無いんだ。セクシーショットだぜ」

「それ皿に出しただけですよ!!」

「R-15タグはこの為に……」

「そうだったんですか!?」

 

 首領パッチが語る衝撃の事実に叫ぶシアを尻目に、天井からはまるでクリオネの様な魔物が現れる。

 ただし大きさが十メートルを超えているので、ハジメ達には化け物にしか見えないが。

 

「こいつを仕留めるのは、私!」

「ほむらちゃん!」

 

 先陣を切ったユエは魔法で火炎を出し、クリオネに攻撃する。

 その攻撃でクリオネは四散するが、すぐに再生し元の姿に戻った。

 ユエは再び攻撃を仕掛けようとするが、その前に地面に異変が起こる。

 なんと、地面が畑を中心にひび割れていくではないか。これには一行も驚愕した。

 

「い、一体何が……!?」

「そうか! おら達の作物にクリオネがついたから、プリン君抱き枕カバーが淫猥に見えてコンプライアンスに引っかかったんだべ! その影響で土壌汚染が!!」

「もう何が何だか分からないですぅ!!」

 

 天の助の説明になっていない言葉を聞き、一同はあたふたしながらなんとかしようとするが、地面のひび割れは決定的なものとなり、全員は哀れにも地下へと落ちていく。

 

「「「「「おのれクリオネ――――――――――っ!!」」」」」

「責任の所在そこですか!?」

 

 


 

 

「けほっ、こほっ……」

 

 白い砂浜の上で、シアが咳き込む。

 地割れに落下したハジメ達は、下にあった地下水脈に成すすべもなく流され、バラバラになってしまった。

 シアが流された砂浜には彼女以外にもう一人――

 

「この僕、南雲ハジメがいる。だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

「死体が喋ってる……」

 

 死んでいるハジメの蘇生を待ち、シアは話しかける。

 

「皆さんとはぐれちゃいましたね」

「そうだね。まあ、そのうち合流できると思うし親睦イベントでも挟んどこうか。二人きりになるの初めてだし」

「そういえばそうですね。何か聞きたいことあります?」

 

 シアに聞かれたハジメはうーん、と少し頭をひねってから尋ねた。

 

「……ご趣味は?」

「お見合いじゃないんですから。……料理です」

 

 そのまま二人は取り留めのない話をしながら先へと進んでいく。

 しばらくするとおびただしい数の帆船が、朽ちかけている状態で横たわっている岩石地帯にたどり着く。どの船も最低百メートル、一番大きいものになると三百メートルほどの大きさだろうか。

 

「ここはバミューダトライアングルだった……?」

「絶対違いますよ」

 

 ハジメのボケをシアが聞き流しながら二人が岩石地帯の中心辺りまで進むと、いきなり大勢の雄たけびが響く。

 それに続くように周りの景色が歪み、気づけば彼らは何百隻の帆船が相対する戦場の真っただ中。

 船の甲板では武器を持った人々が戦い、彼らもまたその横に立っていた。

 

「こ、これってハジメさんが前に使ってた領域支配系奥義って奴ですか!?」

「……いや、多分違うよ。これはおそらく魔力を使った幻影、みたいなものだと思う」

 

 驚いたシアが思わずハジメに尋ねるが、尋ねられた側は冷静に否定する。

 ハジメも領域支配系奥義が使えるので現状と似たようなことはできるが、これは何かが違うと感じていた。

 しかし事態はハジメ達の想定を上回っていく。

 

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様万歳ぃ!」

コケッコー(異教徒めぇ)! コケコッコー(我が神の為に死ねぇ)!!」

 

 なんと、さっきまで戦闘していた男達が、ハジメ達へと武器を持って襲い掛かって来るではないか。

 彼らの血走った眼に、ハジメ達は狂気しか感じない。あまりにもおぞましい神への狂信がここにあった。

 

「……どっせい! ですぅ!!」

 

 しかしシアはその狂気に怯むことなく、ピアニカソードを襲い掛かる男達に向けて振るう。

 シアの一撃で吹き飛ばされる彼ら。しかし彼らは何も感じていないのか難なく立ち上がり、再びハジメ達に襲い掛かる。

 

「そんな!? どうして!?」

「納豆真拳奥義、初恋刑事純情派!!」

 

 今度はハジメが納豆で攻撃した。すると、攻撃された男達は成すすべもなく消滅していった。

 

「どうやら魔力のある攻撃なら倒せるらしいね」

「納豆真拳って、魔力こもってたんですか?」

「……心ばかりの量は」

「ほぼありませんよねそれ!?」

 

 衝撃の事実を明かしながらハジメは戦場の男達を吹き飛ばし、シアもハジメにピアニカソードに魔力を付与してもらうことで戦えるようになる。

 ちなみに余談だが、シアがハジメに「魔力を付与とかできたんですか?」と聞くと彼は

 

「アハーン?」

 

 と返してきてシアは凄くイラッとした。

 そうしてしばらく男達を倒していると、彼らがどういう集団なのかが分かって来る。

 彼らは二つの国の兵士で、それぞれ神への信仰の在り方が理由で争っているようだ。

 最も、ハジメ達が近づくとさっきまでの戦いを忘れてハジメ達に武器を振るうが。

 しかし、一部違う集団もいた。

 

「今日こそ“ぬ„が究極だと思い知らせるぞ!!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 いつの間にかいた天の助がリーダーとなり、ぬの文字が書かれた鎧をまとった男達を率いている一派と

 

「黙れ、我ら“ね„こそが至高だと分からせてやる!!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

 顔がねの文字の男がリーダーとなり、ねの文字が書かれた男達を率いている一派が、それぞれの文字の威信をかけて戦っていた。

 

「変な争い繰り広げてるですぅ――――――っ!! というか天の助さん!?

「納豆真拳奥義、ブレイブクローレボリューション!!」

「「「「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」」

「諸共やった―――――――――――――――――!?」

 

 ハジメはぬの軍勢とねの軍勢の双方を攻撃し、天の助以外の全員を消滅させる。

 そして――

 

「天の助。このままここの軍勢を殺戮(ジェノ)るから手伝って」

「OK、オレに任せな」

「ジェノる!?」

 

 ハジメ達は掃討戦を開始した。

 

 


 

 

 一方そのころ、首領パッチは。

 

「キエェェェェイ!! キェエエエエエエイ!!」

「おお! 首領パッチの奇声で怨霊が消えていくのじゃ!!」

「なかなかできることじゃないよ」

 

 いい感じにユエとティオの二人と合流し、怨霊相手に無双していた。

 

 


 

 

「面倒な雑魚戦はカットカットォ!!」

「オ、オレのぬのハンカチ乱舞が……」

 

 掃討戦を終えると、ハジメ達は再び岩石地帯へと戻ってきた。そのままとりあえず一番大きな、三百メートルほどの帆船へと歩きたどり着くと、今度は豪華客船で行われている豪勢なパーティ会場へと景色が切り替わった。

 聞き耳を立てると、どうやら長きにわたった争いが和平条約の締結、という形で収束したらしい。よく見ると会場には人間族だけでなく、亜人族や魔人族の姿も見える。

 

「ところてんの売れそうな、いい眺めだぜ……」

「でもこの映像おかしくないですか? 和平なんて現状、トータスにはありませんよ」

「……いや、これのキモはここからだ」

 

 シアの疑問の声に、ハジメはどこか苦々しい口調で答える。

 気になったシアがハジメの視線を追うと、そこには壇上に登りなにやらスピーチを始めた初老の男性。そして横にはフードを被った謎の人物がいた。

 普通に考えれば失礼に当たるはずだが、誰もフードを被った人物に注目していない。

 

「レ〇リフォースの諸君。平和を願い、その為に身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる使者達よ。今日この場所で一同に会することができて、私は誠に喜ばしく思う」

 

 フードを無視して始まった演説に、誰もが身じろぎせず聞き入っている。

 どうやらこの男はどこかの国の王で、和平の為に裏で苦労して動いていたようだ。

 そして演説も終盤に差し掛かったが、どうにも様子がおかしい。

 この国王と同じ顔をした人間をどこかで見た気がして、ハジメはたまらなく嫌な予感がした。

 

「――こうして和平条約を結び終え、一年たって思うのだ…………実に、()()()()()()

「え?」

 

 シアの驚く声と同じに、この言葉を訝しんだ一人の魔人族が国王に詰め寄ろうとするも、胸から剣を生やす結果に終わってしまう。

 そのまま国王の兵士は甲板にいる魔人族や亜人族を殺しにかかる。

 魔人族達も応戦するが、元々和平パーティの為に来ているのだ。戦う覚悟なしの彼らが勝つ道理など無かった。

 

「ああ、エヒト様! この光景を見ておられますかぁ!!」

 

 そして国王の口から出る言葉はエヒトへの狂信。

 そんな見るに堪えない光景を最後に、景色は切り替わり元の場所へと戻る。

 

「オレのところてんパーティを邪魔しやがって……おのれエヒト!!」

「いやそんなパーティじゃありませんよ!?」

「でもこれで、僕はこの試練のコンセプトをDOWNLOADED(完全に理解した)

「本当か!?」

「この小説、流行に敏感なのか鈍感なのかよく分からなくなります。ゲー〇ングお嬢様?

 

 ハジメの言葉に驚愕する天の助と、ツッコミを入れるシア。

 それを聞いてからハジメは解説を始めた。

 

「この試練のコンセプトは行き過ぎた信仰心の末路、そして神の凄惨さを見せることだと思う」

「成程な……」

「結構エグイね。僕らには関係ないけど、この世界の大半の住人が信仰心を抱いているんだ。なかなか嫌なコンセプトだ」

 

 ハジメの口調こそ軽いものの、そこには確かな怒りがあった。

 強くこぶしを握り締めすぎたのか、彼の手から血が流れ出ていた。

 

「トマトで手がニチャニチャする……」

「何でそんなもの握ってるんですか!?」

 

 訂正、流れていたのは血ではなくトマトの汁だった。

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