【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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今回、前半は雫視点。後半がハジメ視点となっています。
後、冒頭が下ネタなのでご飯を食べながら読むのはお控えください。


第5章 天使降臨戦線 王都
奥義54 この報せは嵐の予感! 南雲ハジメは異端者!?


前回までのあらすじ

 

 私ユエ! 突然だけど私、今恋をしてるの!!

 でも私が大好きなハジメは女の人にモテモテ。

 だから両手両足を縛り付けて、私の部屋に監禁してるの!!

 

ユエ「ただいまハジメ! 今からご飯作るね!!」

 

 しかし私が部屋に帰った時にみたもの。

 それは、大好きなハジメがうんことおしっこを漏らしながらも不敵に笑う姿。

 

ハジメ「次からは、オムツかおまるを用意するんだな」

 

 

 大体こんな感じだった。

 

シア「新章の初っ端から汚いですね!!」

首領パッチ「でもトイレのない部屋に監禁されるってそういうことだよな」

 

 


 

 

 時は少し遡り、具体的にはハジメ達がメルジーネ海底遺跡に挑む前日くらいまで戻る。

 ハイリヒ王国王城にて、雫は日々高まる風潮に疑問を感じていた。

 その風潮とは、対南雲ハジメである。

 曰く、彼はエヒト神の恩恵であるステータスプレートを狂わせる異常な存在の上、魔族との戦いにも非協力的な異端者だそうだ。

 確かにどちらも言っていることは事実であり、なおかつ元々一部の貴族から嫌われていたとはいえ、それだけでここまで風潮が広がるものだろうか。雫は疑問だった。

 この状況に疑問を抱いているのは雫だけではない。

 騎士団長のメルドも、王国の王女たるリリアーナも同じことを考えていた。

 そんな折、愛子達が城に帰ってくる。

 これ幸いと現状について相談しようと思った雫だが、その前にこの国の陛下へ報告があったので、後で話したいことがあるとだけ告げてから、報告終わりを大人しく待つ。

 そして出てきた愛子だったが、彼女の口から驚くべき一言が飛び出した。

 

「……正式に、南雲君が異端者認定を受けました」

「!? それは……正直、そうなるかもしれないとは思っていましたけど。でも、そんな浅慮な……」

 

 ハジメの力は強大だ。だからこそ敵に回さないようにすべきなのに何を考えているのだろうか。いや、危険視自体は頷ける。この世界の規格から外れた理不尽な力を、この世界の(のり)ではなくノリで振るうのだから。

 だがしかし、ハジメは善人だ。強きを挫き、弱きを助けるヒーローとまでは言わないが、少なくとも狼藉と働いたりはしない。

 それでも異端者認定するということは――

 

「まるで、流れにそぐわないハジメを力技で排除にかかったみたいな……」

「そうですね。私もそう思います」

 

 雫の考えに愛子も同調する。

 さらに考えるべきは、仮にハジメを排除するとなったとき、誰が戦うかだ。

 これの答えは決まっている。神の使徒(わたしたち)だ。

 正直、大半が勝ち目のない戦いを嫌がりそうだが、光輝を抱き込んでしまえば一部を差し向けるくらいはできるかもしれない。

 いくら現状、クラスメイトの間でイシュタルを中心とした教会上層部に不信感が募り始めていても、ハジメの排除に対し徹底的な否定を貫けるだろうか。

 生活基盤の崩壊を恐れたり、ハジメならなんやかんやでうまく纏めてくれるのではないか、という甘えから出発するかもしれない。

 

「八重樫さん」

 

 思考を回していた雫だったが、ここで愛子からインターセプト。

 

「私は南雲君から、教会が祀る神様と、彼らの旅の目的について聞いています。これらが今後、私達にも関わるはずですので夕食のときにお話ししたいと思います」

「夕食……ですか?」

「教会の人に聞かれたくないものですので、人払いも兼ねてです。たまには気兼ねなく食事がしたい、といえば聞いてくださると思いますから」

 

 それだけ告げて愛子は去っていく。

 雫は光輝達にこのことを連絡し、夕食の場に全員を集めた。

 しかし、愛子は結局夕食には来ない。

 それどころかこの日から、彼女は姿を消した。

 

 


 

 

 現在、メルジーネ海底遺跡攻略から数日後。アンガジ公国のとあるレストランにて、ハジメ達は自分たちの将来を考え就職活動を始めていた……。

 

「なんかいいとこあった?」

「ありませ――――――ん」

「私のエビチャーハンが来ない」

 

 男性陣と女性陣がそれぞれ向かいあって座り、ハジメと首領パッチは職業案内誌を睨みながらダベり、ユエは自分の注文したものがこなくてイライラしている。

 そして残りの三人、シアはチョコレートパフェ、ティオはクリームソーダ、天の助はところてんを黙々と食べていた。

 

「ハジメ、今期アニメでオススメあるか?」

「ヒプノシス〇イクか、無〇なナナかな」

「ダ〇大か呪術〇戦じゃないの?」

「いやジャンプ作品の二次でジャンプ作品勧めるってのはどうも……ん?」

 

 ユエが雑談に交じり始めたところで、ハジメは一つの記事に目が留まる。

 それはこんな記事だった。

 

聖教教会騎士募集中! 君も騎士になろう!!

 

今、教会は若い力を必要としています!

君も騎士となってエヒト神様の為に戦おう!!

 

給与:二十万円~

昇給:年一回

   年二回ボーナスあり

 

応募資格:十五歳以上の体力に自信がある方。

     エヒト神への信仰心に自信のある方。

     人殺しに躊躇のない方(経験者優遇)。

     その他資格などは求めません。

 

休日:完全週休二日制

   異端者南雲ハジメを討伐したものには一年間の休暇を与えます。

 

 

ご応募は近くの教会にて承っています。

 

 

 

「これだ!!」

「いいじゃんいいじゃん週休二日だし!」

「ちゃんと前に完全ってついてるのもヨシ」

「それ聖教教会ですぅ!?」

 

 いい職場見つけた、とばかりに盛り上がるバカ三人に対し、ここでついにシアがツッコミを入れた。

 

「異端者の南雲ハジメを討伐すれば休暇もくれるって!!」

「ハジメさんここにいますけど!?」

 

 シアは叫ぶが、三人のバカは決まってよかったとばかりに気を抜く。

 それと同時にハジメの前にチャーハンが置かれ、首領パッチの前にはイナゴの佃煮が置かれた。

 そして食べ始める二人だったが、しばらく食べてからユエがふと呟く。

 

「ハジメ、それ私のエビチャーハンじゃない?」

「え?」

 

 その直後、ユエの手前に置かれたのはカニチャーハン。

 そう、ハジメはエビチャーハンとカニチャーハンを間違えてしまったのだ。

 

「エビチャーハンはすでに我が手中よ!」

「絶対に許さない」

 

 その言葉を皮切りにユエがハジメをボコり始める。

 拳の連打が血飛沫を散らす凄惨極まりない光景だが、シアはそれをスルーして周りの三人に問うた。

 

「ところで、ハジメさんっていつ異端者になったんですか?」

「「「さあ?」」」

 

 


 

 

 食事を終えたハジメ達は、自転車に乗ってヒャッハーしていた。

 するといきなり白い豪奢な法衣を着た初老の男が立ちふさがる。

 

「見つけたぞ神敵め。我らの裁きを――ぐふぉ!?」

 

 しかし自転車はいきなり止まれない。哀れ男はユエに撥ね飛ばされた。

 

「ママ! やっちゃった!!」

「心配ご無用!」

 

 人を撥ねてしまったことに慌てるユエ。そこで首領パッチが紹介するのはこの商品。

 

「レインボー〇ートデラックスなら、垂れない! 跳ねない! そして手につかない!!」

「何の話ですか!?」

「レイ〇ボーアートデラックスじゃろ」

 

 いきなり始まるCMにツッコミを入れるシアと、ただ普通に眺めるティオ。

 その横では、ハジメが跳ね飛ばされた男を介抱しようとする。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「……」

 

 しかし男は気絶していた。

 そんな彼に天の助は必死で呼びかける。

 

「起きて戦え! 戦ええええぇぇぇ――――――っ!!」

「誰と戦うんですか」

 

 その呼びかけが功を奏したのか、男は目を覚ました。

 だが彼は起きると同時に飛びのき、ハジメをギロリと鋭く睨みつける。

 

「おのれ神敵め! 私に何をした!?」

「勝手に飛び出した挙句撥ねられておいて、何でこんな風に人を睨めるの……?」

「ただの雑魚じゃねえ……」

 

 男の態度にハジメと首領パッチが勝手に戦慄している中、領主であるランズィが偶然通りかかった。

 ランズィはハジメを睨みつけている男に問いかける。

 

「フォルビン司教、ハジメ殿が何か?」

 

 ランズィに問いかけられたフォルビンは、さっきまで利かせていた睨みを一旦止め、不敵な笑みを浮かべながら質問に答えた。

 

「私はこの異端者認定された南雲ハジメの仲間に危害を加えられましてね。それについて問い詰めていたのですよ」

「危害? それに異端者? 本当ですかハジメ殿!?」

「うん」

 

 切羽詰まった様子のランズィに対し、ハジメはあっさりと答える。

 

「なんかねー、きづいたらいたんしゃにされてたのー。あとなんかこのしきょうさんがあたりやしてきたー」

「読みづらいですぅ」

「栄えある司教が当たり屋だと……!?」

「いや当たり屋は違う!!」

 

 云われなき罪を押し付けられそうになり、慌てて否定するフォルビン。

 しかしランズィからすればそんなことはどうでも良かった。

 

「いやそれよりハジメ殿が異端者とはどういうことです? 彼らはこの国の英雄です。いくら教会といえど無礼は見逃せませんな」

「ふん、強大な力を持つ者が神に従わぬなどあってはならぬこと。故に裁かねばならんのだ」

「成程な」

 

 フォルビンの話を途中で遮り、しゃしゃり出る天の助。

 その手にはあるものが。それは――

 

「つまり、これが欲しいってことか」

 

 もぎ[ピィーッ]テゥだった。

 見た目にも名前にもモザイクが掛かる、謎の物体だった。

 

「いや何ですかこれぇ!?」

「いらんいらんいらん!!」

 

 もぎ[ピィーッ]テゥを見たシアとフォルビンは思わず叫ぶ。

 そしてハジメは天の助の手からそれをひったくり、ティオの口の中にねじ込んだ。

 

「どうだもぎ[ピィーッ]テゥの味は!!」

「グレープフルーツの様な酸味の中に練りからしの様な辛みと、モンブランの様な甘みが混ざった複雑な味わいじゃ……!」

「訳が分からんぞ!!」

 

 この光景を見ていたまたも叫ぶフォルビンだったが、それでもオホンと咳払いをして力づくで仕切りなおし、ランズィに向かって再び言い放った。

 

「さて、どいてもらおうかゼンゲン公よ。よもや我ら教会と事を構える気ではあるまいな」

 

 ランジィに詰め寄るフォルビン。

 この世界の教会の権力と影響力、それを考えれば潔く退くに決まっている、とばかりに浮かべる笑みは、途方もなく醜悪だ。

 

「断る。彼らはこの国の英雄だ。仇なすなど断じてさせん」

 

 だがランズィは退かなかった。

 いくら神敵と称されても、ハジメ達はこの国を救ってくれた恩人なのだ。

 そんな彼らを見捨てるなどできるはずがない。

 

「愚かな選択をしたな」

 

 そんなランジィに対し、フォルビンは近くに控えていた神殿騎士を百人差し向ける。

 そこにヒュッ、と風切り音がしたかと思えば、騎士の一人に何かがぶつかった。

 ぶつけられた騎士が足元を見ると、それは小石だった。

 

「死ね――っ! 騎士は死ね――――っ!!」

「オアシスが汚染された時、教会は何もしてくれなかった癖に!」

「何が異端者だ! お前らの方がよっぽど異端者だ!!」

「人の足を引っ張ることだけは一人前だな!!」

「領主様とハジメ様達を守れ――――っ!!」

 

 一つの小石がきっかけで、アンガジの住人は次々とフォルビン達に向けて石を投げつける。

 フォルビンはなんとかやめさせようと住人に対し必死に「ハジメは異端者に認定された神敵だ! これは神の意志だ!!」と訴えかける。

 しかし住人達は石投げを止めることはなかった。むしろさらに強くなり、最後には岩を投げつける住人まで出る始末。

 これにはたまらんとフォルビン達は走り去っていく。去り際に「貴様ら全員異端者にしてやる!!」と捨て台詞を吐いていたが、誰も聞いていなかった。

 この光景を見ていたユエは、小さく呟く。

 

「いくら権力を得ても、地元住人とのつながりを忘れればいざというとき見捨てられる。あの司教はそれを教えてくれた」

「そんな……フォルビンさん。僕らなんかの為に……!」

「違うと思いますけど!?」

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