【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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ここからしばらく、どうやってもちょこちょこシリアス要素が入り込みます。
具体的に言うと5章終了くらいまで。


奥義57 王都インフレイム

前回までのあらすじ

 

ティオ「ドンペリ一丁じゃ!!」

ハジメ「ドンペリ入りました~!!」

首領パッチ「ハイ飲んで飲んで飲んで!!」

天の助「付け合わせのところてんです」

ポスト「さっすがティオさん! いい飲みっぷり!!」

 

大体こんな感じだった。

 

シア「何ですかこれ!? ホストクラブ!?」

ユエ「四人ともここで喋っとかないと今回出番無いから必死」

 


 

 

「助けてくれええぇぇ――っ!!」

「はいだらー火事だ――!!」

 

 魔人族の襲撃に対し、王都の人々の対応は様々だった。

 家の中に閉じこもる者、最小限の荷物だけ持って王都からの脱出を図る者。そして王宮に避難しようと門前に集まって中に入れろと叫ぶ者。

 一体どれが正しいのか。それを知る者はきっと王都にはいないだろう。

 現状、王都の住人のみならず兵士であっても慌てふためいているのだから。

 王宮の人間が何とか軍備を整えようとするより前に、王都を守る結界がすべて破られた。

 王都を囲む壁の周りには魔人族の戦士と、魔人族が操る数多の魔物が外壁を攻撃し始める。

 その惨状を尻目に、ユエとシアは魔人族の元へひた走っていた。

 

「今日もドッタンバッタン大騒ぎだね」

「今日もというか今日はだと思います」

 

 ユエの普段通りの発言を軽く流すシアだったが、次の問いを聞き流すことはできなかった。

 なぜなら、その質問をするユエは珍しく真面目な表情だったからだ。

 

「それにしても、シアは何で私についてきたの?」

「いきなりどうしたんですか」

「いや、私はなんか因縁があるっぽい気配を何となく感じたから、一応解消しておこうかと思ってきたんだけど」

「ふっわふわした動機ですね……」

「でも――」

 

 呆れるシアに構わずユエは言葉を紡ぎ続ける。

 

「シアが戦いに行く理由にはならないと思う」

「あぁ……」

 

 ユエの言葉にシアはそういうことか、と得心がいく。

 そう。二人は別に人間族の死に思うところはない。特定の個人や集団相手なら好悪は別として多少変わるが、人間族全体となると関心はゼロに近い。

 なぜならユエは元々関心が薄く、シアはハウリアという元は魔物を殺すことすら躊躇うほど優しい種族だった*1が、人間族と魔人族による亜人族の扱いの酷さが理由で人死に強い関心を抱けない。

 だからこそユエは問う。なぜシアはここに来て、戦いを選んだのかを。

 それにシアは確かな答えを出した。

 

「……ユエさんが心配というのが一つです。まあ大丈夫だと思いますけど。ハジケリストですし

「その注釈必要?」

「それに――」

 

 今度はユエがツッコミを入れるが、それを意趣返しとばかりにシアはスルーして続けた。

 

「こういうの見過ごしたら、ハジメさんは気に病みそうじゃないですか」

「成程」

 

 シアのその言葉にユエは深く頷く。

 彼女達二人は人間族の生死にそこまで興味はない。ティオも二人ほどでないが関心はやはり薄い。これは彼女達に限らずトータス人全体の傾向である。

 親しい間柄の誰かが死んでも地球の住人より早く割り切り、仇がいるなら悲しみよりも怒りを抱いて戦う覚悟を決める住人が多い。

 人間族、魔人族、亜人族全てにとって敵である魔物や、明確に敵対している種族がいる以上悲しみに浸っていることを許さないのだ。

 しかし地球の住人であるハジメ達は違う。

 首領パッチは仲間であるユエ達にもどう思うのか想像しきれず、天の助も分かりにくいが結構修羅場を潜り抜けているのでなんだかんだ割り切れる。

 だがハジメは確実に気に病む。地球は数年前、ピーマン帝国が倒されて以降小競り合いはあれど基本平和になり、そのおかげでハジメは戦いの経験はあれど数少なく、本格的な戦闘はトータスにやってきてからが初めて。

 その上地球の戦闘は、口で死ね死ね言いつつも実際の所死人が出にくい傾向にあった。

 だからこそハジメはなるだけ人を殺さないように戦うし、周りの仲間もなんだかんだ死なないと思っている。それが当たり前だった。

 だがトータスはそうじゃない。命のやり取りは割と日常茶飯事で、普段は目立たないが上は教会や王族、下は奴隷と結構なカースト社会。本来ならハジメ達のバカなノリが通じる世界ではない。

 にも関わらず今まで同じノリでやってこれたのはハジメ達がトータス基準で規格外に強かったことと、ユエ達女性陣が彼らのノリに対して完璧に合わせていたからだ。

 ユエとシアにとっては恩人、ティオにとってはご主人様のハジメに合わせることに抵抗はない。

 それはこの人間族と魔人族との戦場でも変わらない。上に“できれば〟だったり“なるだけ〟という言葉は付けど、二人は死人が出ないように立ち回るつもりである。

 

「シア、来た」

 

 ユエの言葉にシアが顔を上げると、空を飛ぶ黒鷲のような魔物が数匹襲い掛かろうとする光景が目に入る。

 

「普通に倒すだけなら別に苦戦はしないけど、被害を減らすとなると面倒。なので援軍を呼ぶ」

「援軍?」

「お願い来て、妖精さん達」

 

 そう言ってユエは懐からハンドベルを取り出し、カランカランと鳴らす。

 

「妖精さんというよりメイドさんを呼びそうなんですけど」

 

 シアがツッコミを入れた直後、まだ残っている建物の陰から背中に透き通る羽を持った――

 

「俺が望んだ天とは、貴様だったのかもしれん」

「妖精とは思えないのが来たですぅ――――――――!!」

「ん? 間違ったかな?」

 

 身長が二メートルを超えている、筋肉モリモリマッチョマンの大男が数十人程現れた。

 やってきた妖精(?)を見てシアのみならず、ユエすら「え?」と言いたげな顔をするが、すぐに切り替えて指示を出す。

 

「総員用意! 一斉射撃! 撃て(ファイヤー)!!」

「北〇剛掌波!」

「完全にラ〇ウじゃないですか!!」

 

 妖精の内一匹は手から闘気を放って攻撃し

 

「「「「「日〇!! 〇清!! 日〇!!」」」」」

「ラオ〇ってそっちですか!?」

 

 別の数匹は手からラーメンを放って攻撃し

 

『ス〇王ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

「〇王ですらないですぅ――――――――――――!!」

 

 残りの妖精は手からスパゲッティを放ち、次々と空に浮かぶ魔物を撃ち倒していく。

 それだけではなく、竜に乗っていた魔人族を打ち落とすことにも成功し、戦場は妖精と魔人族の戦いに移行していった。

 そんな中ユエとシアは

 

「久しいな」

「貴様らが……!」

 

 グリューエン大火山で戦った魔人族、フリードともう一人別の若い魔人族の男と相対していた。

 

「久しぶり。フリード・バグアー」

「そういう君はジョナサン・ジョーンズ」

「違いますけど」

 

 ユエが軽く挨拶すると、フリードが小ボケで返してくる。

 シアがフリードに呆れる一方、若い魔人族はフリードがボケた瞬間、彼はユエ達に向かって強烈な殺意を向けた。

 

「「……?」」

 

 殺意を向けられた二人は一瞬疑問に思うも、まあ敵だしであっさり流し、ある決断をする。

 

「分断で行く。私はフリードを」

「じゃあ私はあの若い魔人族です、ねっ!!」

 

 シアは言葉の最中に強く踏み込み、一瞬で若い魔人族の男の懐に潜り込んだかと思うと、そのまま男の襟首を掴み、投げ飛ばした。

 

「私達の戦場は、あっちですぅ!!」

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 なすすべもなく飛ばされる男を追い、シアは疾走する。

 だが男も伊達に魔人族の戦士ではない。投げ飛ばされながらも体をひねり、空中で体勢を変えてなんなく着地した。

 それを見たシアは久々にピアニカソードを取り出し、魔人族に殴りかかる。

 

「はああぁぁぁ――――っ! ですぅ!!」

 

 叫びながら殴りかかるシアのスピードは、普通なら目で追うのも一苦労どころか不可能と言ってもいいほど常軌を逸している。

 だがスピードこそ速いものの動きは直線的で、男からすれば予想ができてしまう。故に回避は可能だが、しかし男の顔に余裕はなく、むしろシアを見つめる憎悪が徐々に増していく。

 そしてついに、その憎悪は言葉となって男の口からついに直接シアに吐きかけられた。

 

「我が名はミハイル。貴様らに問いたいことがある」

「……問い、ですか?」

 

 ミハイルの言葉に怪訝な面持ちでとりあえず質問を待つシア。

 しかし彼の問いを聞いたシアは更に戸惑うことになる。

 

「……何なんだ、貴様らは?」

「いや主語が無さすぎて質問の意味が分からないんですけど」

「貴様らハジケリストは何なんだと聞いている!」

「私、ハジケリストじゃないです」

「とぼけるな!!」

 

 淡々としているシアの返答に対し、ミハイルのテンションはヒートアップする一方だ。

 

「ならそのふざけた武器はなんだ!?」

 

 そう言ってミハイルが指さすのは、シアの手にあるピアニカソード。

 しかしここでもシアは冷静だ。

 

「いや、これこの国の宝物庫にあったものを又貸してもらったものですけど。ハジケリスト関係ないです」

「何だと!?」

「まあ、ふざけた武器というのは同感ですけど」

 

 シアの返答に驚愕するミハイル。シアは一応後にフォローを付け加えるが、当のミハイルには聞こえていないようだ

 そのままブツブツと小声で何事かを呟き始める彼に、今度はシアが質問してみた。

 

「あの、何でそんなにハジケリストを目の敵にしてるんですか?」

「なぜ、だと?」

 

 ミハイルはシアの質問の意図を心底理解できないとばかりに肩をすくめた後、今までで一番の憎悪を込めて叫ぶ。

 

「世界の法則をその場のノリで歪め、魔人族(われら)の悲願にいつでもたどり着けるクセにヘラヘラふざけているだけの奴らをどうして好きになれる!? それだけでなく、尊敬するフリード様までおかしくなってしまわれた!! あいつらは世界を乱す!!」

「はあ」

 

 心底どうでもいいと言いたげなシアの生返事にも気付かず、一人ヒートアップしていくミハイルはシアへ言う。

 

「なあ、貴様はなぜハジケリストと一緒に居られる? あいつらは世界(トータス)の邪魔だ。在り様を乱し我らが神であるアルヴ様に仇なす邪悪だ。そんな輩となぜ共に在れる? それとも獣風情にはそれすらも分からないというのか?」

 

 魔人族らしい神を崇め、獣人族を嘲るミハイルの物言いだが、シアの胸には何一つ響かなかった。

 なにせトータスで行われている戦争自体が、エヒトの一人芝居が原因という真実を知っているシアからすれば、ミハイルの物言いは滑稽でしかない。怒りすら湧いてこない。

 だが何も返答しないというのも気に食わなかったので、シアなりに答えを出す。

 

「どうでもいいですよ、神々(そんなこと)は。トータスの在り様がいくら歪もうとも、私には一切関係ありませんし」

「世界が歪んでいるのだぞ。それをどうでもいいとは。これだから獣人は」

 

 ミハイルの言葉に最早反応する気も起きないシアは、強く地面を踏み込みピアニカソードを振るう。

 シアの攻撃をミハイルは「芸の無い奴め」と嗤いながら躱す。しかし――

 

「ハウリアに同じ手は通用しないですぅ!!」

 

 どこぞの聖〇士(セイ〇ト)の様なことを言いながら、シアの攻撃は回避したミハイルを追尾する。

 それも回避したミハイルを追いかけるのではなく、あらかじめ回避する方向が分かっているように振るわれたのだ。

 これぞシアの持つ技能未来視の力。ハジメ達は恐らく忘れていて、ティオは存在すら知らない可能性があり、持ち主の彼女自身もここの所全く使う機会がなかった未来を予知する能力だ。

 これでミハイルの回避先をあらかじめ知覚しておき、本命の攻撃を命中させる。

 

「ぐっ!!」

 

 ミハイルは顎に一撃をもらい、体をガクガクと震わせる。辛うじて立っているが、とても戦える状態ではない。

 そこにシアは容赦なくピアニカソードを振るい、ミハイルを殴り飛ばす。

 殴り飛ばされ、家を突き抜け、生えている木にぶつかり彼は死んではいないものの、何もできずそのまま気を失った。

 このままその気になればシアはミハイルにトドメを刺せる。だが――

 

「やめておきましょう。私は世界(トータス)道理(ルール)より馬鹿(ハジメさんたち)道理(ルール)の方が大事ですし」

 

 シアはトドメを刺すことなくそれだけ言い残し、去っていく。

 もしかしたら未だ逃げ惑う王都の住人がミハイルを見つけ、殺すかもしれないがそこまで彼女は看過しない。ここで殺さないのは人道ではなく自己満足にすぎないのだから。

そして彼女はユエとフリードの戦場へと走り、たいして離れていなかったのですぐにたどり着いた。

 そこでシアが見たものは――

 

 

TIME

60

          
          

     
     

YUE
FREED BAGUER

 

 

「格ゲー風になってるですぅ――――――!?」

「パソコンで見るとライフバーが短く見えるだろうけど、縦のスマホで見るならこれがちょうどいい」

 

 フリードを圧倒しているユエの姿だった。

 しかしまだ彼は負けていない。そんな姿を見てユエは思わず感心してしまった。

 

「私と一対一で戦ってここまで粘った相手は初めて。そんなあなたを称えて私から吸血鬼族に伝わる伝統料理をあげる」

 

 そう言ってユエはどこからともなくバナナと納豆を取り出す。

 そしてバナナの皮をむき、そこらにあった皿の上に置くと、それに納豆を躊躇なくぶっかけた。

 

「これぞ吸血鬼族の伝統料理。その名も“バナっ豆〟」

「不味そうですね!!」

「これを御神体と崇めながら食べるのがかつての私達の風習だった」

「どういうことですか!?」

「シア、これだけは言っておくね」

 

 叫ぶシアに対し、ユエは普段のノリで冷たく言い放った。

 

「伝統と格式は、必ずしもいいものじゃない。ぶっちゃけ頭おかしいと思う

「ユエさんもそう思ってるんですか!?」

「ぐふっ……がほっ……不味いな、これは……」

(食べてるですぅ――――――――――!? 別に食べる必要ないでしょうに!!)

 

 ユエの出した伝統料理を律義に食べるフリードに、内心でツッコむシア。

 しかし次の瞬間、何を思ったのかフリードは近くにある家から卵とひき肉を用意し、一心不乱にオムレツを作り始める。

 そして完成したオムレツはユエとシア、二人の視線を釘付けにした。

 ほのかに立ち上る湯気。少し溶けているが、熟してないわけでない適切な卵の焼き加減。そして中のひき肉の豊潤な香りは食欲を刺激する。

 

「いくら味が悪くとも、もてなしにはもてなしで返すのが礼儀だ。さあ。遠慮なく食べるといい」

「いただきまーす」

 

 フリードの作ったオムレツを何の抵抗もなく一口食べるユエ。

 すると彼女の目が見開き、そのまま何も言わずカカカッと一気に完食してから彼女は小さく呟く。

 

「こ、このオムレツはたまらなく……」

 

 しかし呟いたのはこれだけで、次はもう叫んでいた。

 

「うーまーいーぞ――――――――――――――っ!!」

 

 文字と共にユエ自身も巨大化し、彼女は叫びながら口から光線を放ちながらオムレツを味を賛美する。

 

「アニメ版味〇子みたいなリアクションですぅ――――!!」

 

 そしてユエが出した光線は、王都の空に浮かんでいたドラゴンや魔物の群れに向かって掃射され、敵に抵抗を許すことなく一斉に撃墜していった。

 

(敵をなぎ倒してる――――――!?)

「フッ。作った甲斐があるというもの」

「あなたの味方が倒されてますけど!?」

 

 フリードの呑気な発言に敵味方の壁を越えてツッコミを入れてしまうシア。

 一方、魔物達を一通り倒したユエは巨大化したままフリードに向き直り、そのまま拳を躊躇なく振るった。

 

「孕めオラァ!!」

「ぐばぁ!! 料理で勝てないから暴力だと!?」

「いつの間に料理対決に!?」

 

 よく分からないままフリードは倒され、なすすべもなく地面を転がる。

 そこに魔人族の兵士が数人ほどやって、フリードを庇うべくユエに立ちふさがる。

 

「フリード様、大丈夫ですか!? ここは我らが!!」

「私は大丈夫だ。それよりお前達も退け。もうこの戦場はおしまいだ」

「そんな……」

 

 フリードの言葉の悲壮感を漂わせ、震える兵士。その兵士にユエは唐突に言い放つ。

 

「オムレツお代わりもらえる?」

「誰が作るか貴様なんぞに!!」

(全くですよ)

 

 正論過ぎる叫び声を上げながら、魔人族達は撤退していく。

 これにてユエとシアの死闘、決着!

 

「死闘と言えるほど大層なことはしてませんけど」

「それは言っちゃダメ」

*1
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