【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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色々なことがあった平成が終わり、今日から令和が始まりますね。
このSSも令和になってパワーアップ、していくくらいの気持ちで頑張ってハジケていきたいです。


奥義5 ベヒモス襲来!

 ハジメ達は現在、オルクス大迷宮の正面入り口がある広場に集まっていた。

 ハジメの想像では、迷宮の入口はテ○ルズオブシリーズみたいに薄暗く陰気なイメージだったのだが、実際は博物館の入場ゲートのように管理された入口があった。なんでも、ここでステータスプレートをチェックして出入りを記録する事で死亡者数を正確に把握するそうな。

 ハジメ達は、メルドから離れないようについて行った。

 

 そして迷宮の中。

 中は明かりも無いのにある程度周りが見えるほどの明るさを保っている。その中を先頭が光輝達勇者パーティ。後ろにクラスメイト達が何人かに分かれてパーティを組んでいる。そして最後尾にはハジメ達三人が、四畳半ほどの大きさの板にキャスターを付けた物の上に乗り、それを騎士達に引かせながらハジメは迷宮入口がある広場にあった露店で売っているお菓子を食べつつジャンプを読み、天の助はところてん促進グッズの裁縫、首領パッチはししおどしだった。

 

「いや何寛いでるのよ!?」

 

 そして雫はキレた。当然である。今日自分達は訓練に来ているのに、後ろでサボられたらキレる。誰だってそうなる。

 

「カマトトぶってんじゃないわよ!!」

「ハジメのメインヒロイン気取りなんてさせないんだから!!」

「いやどこをどう見たらそうなるのよ!?」

 

 しかし首領パッチと天の助は逆ギレ。それに雫は戸惑う。

 

「う、うぅ……。こんなラブコメ主人公みたいなことが現実に起きるなんて……」

 

 一方、ハジメは自分を取り合われるというシチュエーションに思わず泣いていた。

 

「この状況嬉しい!?」

「うーん、そうでもないね」

 

 そして一瞬で冷静になった。学校で女神と称される雫はともかく、心太と見た目金平糖に迫られても嬉しくは無かった。

 

「何よハジメ。アタシらじゃ嬉しくないっていうの? メインヒロインにはふさわしくないって!?」

「アタイらと八重樫、どっちがいいかはっきり言えよオラァ!?」

 

 冷静になったハジメに凄む天の助と首領パッチ。首領パッチは状況次第では答えにくい質問付きだ。

 

「そりゃ八重樫さんだけど」

「ハレンチ―――――――!!」

「古手川さ――――――ん!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

 しかしハジメは即答し、それに対して首領パッチは目潰しをした。

 痛さの余り思わず転がるハジメ。そのまま転がっていると、進路上に灰色の毛玉が現れた。

 がそのまま轢き殺した。それを見たメルドはなんとも言えない表情で解説する。

 

「あー、今ハジメが轢き殺したのはラットマンという魔物だ。すばしっこいが大した魔物じゃない。次出てきたら光輝達、戦ってみろ」

 

 どこかゆるい空気の中、迷宮の壁の隙間から再びラットマンが現れた。

 光輝達はそれを特に苦戦もせず撃破。強いて言うなら、魔石の回収も考えずオーバーキルしてしまったのをメルドに叱られた位だ。

 そこからは特に問題も無く交代しながら戦闘を繰り返し、迷宮を下っていた。

 そしてニ十階層に到着。ここの終わり、次の階層に続く階段が今日の訓練のゴール地点である。

しばらく探索していると突然先頭を行く光輝達とメルドが立ち止まり、戦闘態勢に入る。

 その直後、迷宮の壁が突然変色しながら起き上がった。擬態能力を持った魔物である。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 メルドの声が響く。そして光輝達と戦闘が始まった。

 戦闘そのものは光輝達の圧勝だったが、何を思ったのか光輝が必要以上の威力の技を出し、ロックマウントのみならず後ろの壁も破壊した。

 光輝はいい笑顔だったが、メルドは迷宮の崩落を考えろと叱る。

 

「てかさ、もう少し静かにしてよ。オレテレビ見てんだからさ」

 

 一方、天の助は寝っころがりながらテレビを見ていた。その後ろでは、ハジメと首領パッチがバトミントンで遊んでいる。

 

「こいつら引っ叩きたい……!」

 

 光輝が静かに怒りを燃やしていると、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に全員が香織の指差す方を見ると、そこには青白く発光する鉱物が壁から生えていた。

 

「あれはグランツ鉱石だな。いわば宝石の原石だ。加工して指輪などにすると喜ばれるらしく、求婚の際に選ばれる宝石にもトップ三に入る代物だ。大きさも中々だ。珍しい」

「素敵……」

「本当。まるでアタイの為にある石だわ……」

 

 メルドの説明を聞いて、香織と首領パッチが頬を染めてうっとりしている。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

「おっと、パチ美さんのハートを頂くのは私ですよ」

「いやそれはいらねえよ!?」

 

 そう言って唐突に動き出し、グランツ鉱石の元へ走りだしたのは檜山と天の助だ。二人を見てメルドは制止を呼びかけるが、二人は聞こえないふりをしてそのまま進み、ついにグランツ鉱石の元へ辿り着く。

 

「団長! トラップです!」

「ッ!?」

「何やってるんだよ団長!?」

「止まるんじゃねえぞ……」

 

 檜山と天の助が辿り着き、ハジメが希望の花を咲かせているのと同時に、実はトラップが無いか調べていた騎士団員が叫ぶ。しかしそれは何の意味もなさない。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

 クラスメイト達は魔法陣から離れようとするが、その前に魔法陣が光り陣の内側に居た全員を転移させた。転移先は巨大な橋の上、その中間地点だった。橋の下には何も見えない、深淵の如き闇が広がっている。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く階段と上階への階段が見える。

 

「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 階段を確認したメルドが、険しい表情で指示を飛ばし、クラスメイト達はそれに応じてわたわたと動き出す。

 しかし、迷宮のトラップは転移だけでは無かった。階段側の端の入口に現われた魔法陣から、骨の体に剣を携えたトラムソルジャーという魔物が大量に出現した。そして反対側にも魔法陣が現れ、一体の巨大な魔物が現れる。

 その巨大な魔物を茫然と見つめるメルドの呟きが、なぜか明瞭に響いた。

 

「まさか……ベヒモスなのか……」

「ベヒモス!? かつて人間がもっともオルクスを深く潜った六十五層に出てくる魔物の!?」

「つまりここは六十五層!? なんてこった、どうりで……」

 

 メルドの呟きに驚くハジメ。それに呼応して首領パッチは得心したとばかり頷く。

 その首領パッチの背後には――

 

「土地が安かった訳だ。パチンコ店作っちまったぜ!」

「こんな所客来ないわよ!?」

 

 パチンコ店が出来ていた。そして店の中には――

 

「うおおおおおお!!」

「きた……っ! リーチだ……っ!!」

 

 パチンコしているハジメと天の助の姿があった。

 

「この状況で!?」

 

 しかし数秒後、天の助が泣きながら店から出てくる。

 

「うわああああん! 十万負けちゃった――――!!」

 

 泣き叫びながら天の助は魔剣大根ブレード*1を携え、突撃する。

 

「プルプル真拳奥義、敗北パチプロ怒りの乱舞!」

「八つ当たりでしょそれ!?」

 

 天の助が奥義で大根を振り回し、トラムソルジャー達を吹き飛ばしていく。しかし骨の集団はまだまだ数が多い。

 その数秒後、ハジメは財布をニヤニヤ見ながら出てきた。

 

「いやー勝った勝った。これでしばらく遊んで暮らせるな」

 

 しかしハジメが出てきた瞬間、ガチャンと婦警のコスプレをした鈴に右手首に手錠を掛けられてこう告げられる。

 

「賭博罪で、逮捕」

「丁度いい」

 

 しかしハジメは不敵な笑みを見せ、鈴の腕を掴みそのままグルグルと回り始めた。回転スピードはどんどん早くなる。

 

「このSS&令和最初の協力奥義はこれで行くよ!」

 

 そして余りの速さに、ついにハジメ達は竜巻を発生させた。

 

「協力奥義、ポリスサイクロン!!」

 

 ハジメ達は次々とトラムソルジャーを吹き飛ばし、橋の外に落としていく。しかし橋の上にいるのはトラムソルジャーだけではない。魔物が集まっているせいでパニックになっているクラスメイト達もいるのだ。

 ハジメ達が起こした竜巻が強く、クラスメイトの一人が橋から落ちそうになる。

 

「やばっ」

 

 だからハジメは咄嗟に手を離して竜巻を止め、落ちそうになっているクラスメイトを助けた。

 一方鈴は、手を離された勢いでそのまま飛ばされて

 

「「ギャア!」」

 

 檜山に激突して停止した。

 それを無視してハジメ達三人は集まって話し合い始める。

 

「ヤバい。クラスメイトが邪魔で大技が出せない」

「何とかあいつら落ち着けないと!」

「アタイが脱いで気を引くわ!」

「キモい!」

 

 脱ぐ宣言をした首領パッチをドカッと鈍器で黙らせて、ハジメと天の助は頭を捻らせる。そしてハジメはひらめいた。

 

「そうだ。天之河君やメルド団長なら皆を落ちつけられる!」

「成程。それであいつらどこに居るんだ?」

 

 二人が光輝とメルド探すと、ベヒモス相手に足止めしている姿が見えた。二人は首領パッチを抱えてそっちに走り出す。

 

 

 光輝達は、ベヒモスの手前で言い争っていた。

 騎士団員達が総出で魔法による障壁を作り、ベヒモスの突進をかろうじて防いでいるが、時間の問題だ。

 

「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

「嫌です! メルドさんを置いていくわけには――ブハッ!!」

 

 メルドを置いて行きたくない光輝は、ベヒモスを倒すと意気込んでいたが横から飛んできた首領パッチに話を阻害された。

 

「いきなり何をするんだ!」

「黙れ! そしてあれを見るんだ!!」

 

 いきなり攻撃されて怒る光輝に、それ以上の怒気で返すハジメ。ハジメは、パニックになり逃げ惑うクラスメイト達の方に指を向け、光輝にその光景を見せる。

 

「天之河君がクラスメイト達を何とか落ち着けるんだ! それが出来るのは君しか居ないんだ! 後ろも見ろよ主人公になれなさそうなスペックの癖に!!」

「どういう罵声!?」

「あ、ああ分かった……。すみませんメルド団長! 先に撤退します!」

 

 どこか釈然としないものの、クラスメイト達を放っておくわけにもいかないので撤退する光輝。

 

「さあ他の皆も。騎士団の皆さんも早く! ベヒモスの足止めは僕らが――」

「下がれぇ――!」

 

 引き受けます、という言おうとした瞬間、障壁が壊れベヒモスの突進がこっちに脅威として向かって来る。

 だが

 

「リバースカードオープン。攻撃の無力化!」

 

 首領パッチがいつの間にか左腕に付けていたデュエルディスクにセットしてあるリバースカードを発動し、ベヒモスの攻撃を止めた。

 デュエルディスクを具現化し、遊戯王カードの効果を実体化させる。これが天職決闘者の力である。

 

「ハジメ、長くは持たないぞ!」

「分かってる。皆早く撤退して。そこに居られると巻き込みそうで大技出しにくいから」

「撤退促すのってそんな理由なの!?」

「「つーかオレらなら万が一巻き込んでもいいのかよ!?」」

 

 バカ二人の言葉をハジメは黙殺し、メルド達を撤退させる。そして万が一にも技の効果範囲に入らないことを確認してから、ハジメはこう言った。

 

「よし、僕が足止めするから天の助はとどめを」

「おう、任せろ!」

「納豆真拳奥義、ビーンボムラッシュ!」

 

 奥義の発動と共に、ベヒモスの上空数メートルほどの高さに三メートル位の大きさの納豆が現れ、そこから大量の大豆をばら撒いている。その大豆がベヒモスに命中すると、爆発が起こりベヒモスに着実なダメージを与えていた。

 

「兄ちゃんの仇!」

「グバァ!!」

 

 途中、コーヒー豆が混ざりハジメを攻撃したが、些事なので誰も気に留めなかった。

 

「いや些事では無いでしょ!?」

「今だ天の助、やって!」

「行くぜ!!」

 

 雫はツッコミを入れるが、当のハジメすらスルーして話を進め、天の助は空に跳びあがる。

 

「プルプル真拳奥義、ところてんセイバー!!」

 

 そして心太でできた剣を取り出し、兜割の要領でベヒモスの頭部に剣を叩きこむ。これで終わり、と誰もが思ったが――

 

 プルン

 心太でできた剣に切れ味があるはずも無く、天の助は何も斬れないまますごすごと戻ってきた。

 

「ゴメン、駄目だった」

「何やってんのお前――――!!」

 

 ハジメは天の助を蹴り飛ばし、ベヒモスに叩きこむもダメージは与えられず天の助は粉々になった。

 そうこうしている間に攻撃の無力化の効果も切れ、再びベヒモスが攻撃できるようになった。

 ベヒモスは突進を始め、ハジメ達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石の様に落下してくる。

 

「納豆真拳奥義、決して切れない(ネバーエンド)ネバネバ!」

 

 ハジメは咄嗟に、納豆の糸をクモの巣の様に張り巡らせ、ベヒモスの攻撃を受け止めた。だがベヒモスの着地を許してしまったので、再び突進されるのも時間の問題だ。

 さてどうしよう、とハジメが頭を捻らせた所で首領パッチが話しかけてくる。

 

「ハジメ、ここはオレに任せてくれ。天職決闘者の力、見せてやるぜ!」

「いいけど、駄目だったら北京原人に売り飛ばす。コーラまみれにして売り飛ばす」

「!?」

 

 ハジメの脅迫に恐れおののきながらも、首領パッチはデュエルディスクにセットしたデッキに指を置く。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 首領パッチがカードを引いたと同時に、ベヒモスは納豆の糸を取ろうと暴れはじめる。

 そこに天の助が飛び込んでくる。

 

「プルプル真拳奥義、極上料理! さあオレを食え――――!!」

 

 大皿に自分を盛り付け、ポン酢をかけながら飛び込んでくる天の助に対し、ベヒモスは咆哮で答えた。その咆哮で天の助はあらぬ方向へ飛んでいく。

 その隙に首領パッチの展開が始まった。

 

「オレはサポートカード、チェレンを発動。この効果でデッキから三枚ドロー!!」

「いきなりゲーム違う! それポケ○ンカード!!」

「そして通常ドロー以外でこのカードがドローされた時、糸こんにゃくを特殊召喚!」

「糸こんにゃく!?」

「そして卵を召喚! さらに卵がフィールドにある時、牛筋を特殊召喚できる。来い、牛筋!」

「さっきから何これ!? おでん!?」

「そしてこれら三体をリリースすることで、こいつを特殊召喚できる。来い、レベル十!」

 

 首領パッチの言葉と共に、宙にベヒモスを超える巨大な何かの影が現れる。やがて影が消え、その姿を見せた。

 

「焼きうどん!!」

「あの具材から何で麺類――――!?」

 

 そう、十メートル程の大きさの皿に山盛りになった焼きうどんの姿が。

 その光景に思わず雫は頭を抱えてしまった。

 

「焼きうどんの攻撃、うどんアタック!」

 

 首領パッチの指示で、焼きうどんはベヒモスにむかって上空から落下していく。ベヒモスは身体でそれを受け止めるも、大きさの違いからか徐々に押しつぶされていく。

 しかし完全に押しつぶされる前に、足場である橋に異変が起こった。

 ピキッ、と橋がひび割れたかと思った瞬間、ベヒモス達が居た部分の足場が完全に崩落したのだ。ベヒモスの度重なる攻撃、ハジメの奥義、そして焼きうどんの攻撃に足場が耐えられなかったのだ。

 ベヒモスも抵抗を試みるも、焼きうどんと一緒に成すすべなく奈落の底へ落ちていく。

 

「よし、ベヒモスを倒したぞ!」

「いやぁ、ベヒモスは強敵でしたね……」

「Yeah! Foooooo!!」

 

 上からハジメ、天の助、首領パッチの順にベヒモス撃破に喜ぶ一同。しかしそれは大きな罠だった。戦闘が終わったと誰もが思ったその瞬間、奈落に落ちた筈の焼きうどんがバカ三人の足に絡みつき、奈落へと引きずり込もうとしてきたのだ。

 

「ヤメロー! シニタクナーイ!」

「オンドゥルルラギッタンディスカー!」

「図ったなキシリア――――!!」

 

 各々抵抗するも、その行為が実を結ぶ事は無く最後には

 

「「「おのれイタリア人め――――――――――!!!」」」

「何でイタリア人!?」

 

 奈落へと落ちて行った。

 

 

 はてさてこの先、ハジケリスト三人はどうなってしまうのか?

 待て、次回!

 

「何かサイボーグク○ちゃん風に締めてきた!!」

*1
ただの大根

遊戯王はどのあたりまで分かりますか?(ネタに使います)

  • そもそも知らない
  • 遊戯王DMまで
  • 遊戯王5D'sまで
  • 遊戯王ZEXALまで
  • 全部わかる

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