前回までのあらすじ
ノイント「きえろイレギュラ~」
こいつが
ハジメ&ティオ「がったいちょうおうぎ~」
ノイント「やられた~」
こうなったので
首領パッチ「オレ様が、SYU☆YA☆KU!!」
▶人形劇がいい
▷お化け屋敷がいい
ハジメ「えっと、杏ルートはどっちだっけ?」つP〇2コントローラー
ユエ「人形劇」
首領パッチ(ギャルゲーやっとる!!)
こんな感じだった
リリアーナは心底から困惑していた。
彼女が頼ろうとしていた相手は、その仲間によって無力化され、更には自身の部下な筈の騎士達は別の人間に従っている。
あてにしていた人間と天の助はなぜか騎士達に押さえ込まれ、傍にいて頼りになるのは別の世界の理解不能な謎生物、首領パッチと結界師の谷口鈴だけだ。
「って鈴は押さえ込まれていたはずでしょう!? しかも今はなぜか天の助さんが押さえ込まれていますし!?」
「逆だったかもしれねェ……」
「つーかこれ、どういう状況だ?」
鈴がいつの間にか拘束から脱出していたことにリリアーナは驚くが、一方天の助は横で同じように押さえ込まれている雫に現状を問う。
以下は、雫の話した内容を要約したものである。
雫が寝ていると、見えない力導くよBLADEって感じに何かが割れる音が聞こえたよ。
慌てて起きた雫は光輝達を起こすと同時に、雫のお付きのメイドであるニアが「目を覚ませ 僕らの世界が何者かに侵略されてるぞ(魔人族に)」と知らされたので、全員でヤバイ、ってなったよ。
そこで恵理が「騎士団と協力したほうが効率よく戦えていーじゃん! いーじゃん! スゲーじゃん!?」と言ったので、皆もじゃあそうしよっか、となって決められた集合場所であるここに来たよ。
そしたら捕まっちゃった♪ どういうことなの!?
「大体現状は理解できたぜ!」
「きちぃぜ……」
(私こんな言い方してない……)
首領パッチと天の助のせいで、雫が現状の伝わり方に少し疑問を抱いているタイミングで鈴は、拘束を解いたことに対しての説明は一切せず、必死になって恵理に問いかける。
「どうしてこんなことを!? 鈴が降霊術師のことを『あかんやつやん! めっちゃ敵キャラっぽい能力やん! 絶対途中で裏切る奴やん!!』って言ったから!?」
(酷っ!?)
(アイツそんな天職だったのか)
「それともこいつのせいか?」
鈴の発言に雫が内心でツッコミを入れ、天の助が恵理の天職を初めて知った中、首領パッチはある男を紹介する。
そいつは、二メートル程のゴボウだった。
「何このゴボウ!?」
「拙者、恵理殿の眼鏡を外した姿を見て、不相応にもちょっといいなと思ってしまったでござる。それが裏切った理由というなら、拙者は切腹するでござる!」
そう言ってゴボウはどこからか小刀を取り出し、自らの腹を裂く。
その痛みに耐えきれず、思わず彼は叫んでしまっていた。
「エリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサンエリサン……」
(怖い――――――――――――――――!!)
「 キ モ チ イ イ 」
「介錯し申す!!」
激痛の余り正気を失っていたゴボウの首を、首領パッチはドンパッチソードで薄皮一枚残して斬る。
そしてそのままゴボウを調理し出来上がるのは、それはそれは見事な肉じゃがだった。
(ゴボウは!?)
「そら、皆で食えよ。それがあいつへの手向けだ」
そう言って首領パッチは自らが作った肉じゃがを人数分小鉢に移し、そっと一つずつ拘束されているクラスメイト達の前に置いていく。
その置かれた肉じゃがを、拘束している騎士達は美味しそうに食べ始めた。
「あなた達が食べるのですか!?」
「これでゴボウを許して、あいつらを放してやってくれ」
リリアーナのツッコミを無視して首領パッチは恵理に訴えかける。彼の瞳はとても澄んでおり、心底ゴボウの気持ちに同調していた。これでゴボウを許さねば人ではない。
だがしかし
「いや全然放す気にはならないけど」
「「「!?」」」
「というか、そのゴボウ誰?」
「「「!!?」」」
(でしょうね……)
恵理がにべもなく首領パッチの願いを切り捨て、雫が内心で納得している中、ここである少年の叫びが一陣の風の如くこの場の空気を切り裂く。
その声の主は意外というべきか順当というべきか、ハジケリストの間には入れなかった光輝だった。
「恵理、どうしてこんな、皆を裏切るような真似をするんだ!?」
「拘束したのはまあ謝るけど、裏切り者扱いは心外だねぇ。ボクはエヒト神様に召喚された神の使徒として、一番懸命に行動しているっていうのにさ~」
光輝の必死な叫びに対し、恵理は軽薄に笑いながら返答する。
その答えに怪訝な表情を浮かべながら、雫は光輝に続いて恵理に質問した。
「……どういうこと?」
「エヒト神様はおっしゃられました。もうトータスで神をするのにも飽きた。次は地球の神になる。だけどその前に掃除として、私が無駄に繁栄させた
「なっ……!?」
恵理の言葉こそ丁寧に取り繕おうとしているものの、皮肉と憐れみがふんだんに詰まった物言いだ。
だがリリアーナはそんなことは気にもならない。認識すらできない。
いくら最近不信感が漂い始めたとはいえ、十年以上信仰を捧げてきたこの世界の創造神が、自分達を見捨てたなどと言われれば、それは己の世界の崩壊に等しい。盤石な地盤の上に建っていたものが、ある日突然地盤だけ消失して建物が崩れるようなもの。
それほどの衝撃を受けたリリアーナの膝は震え、今にも意識を失いそうだ。むしろ、未だ己の足で立っているだけ驚嘆に値するかもしれない。
恵理はそんなリリアーナを見た上で、楽しそうに笑いながらこう続ける。
「その手始めとしてまずは魔人族と懸命なエヒトの信者達で、このハイリヒ王国を滅ぼすのさ。ボクは魔人族が王都に入れるよう、結界を止める役目だったんだよ」
「待って、人間族と魔人族は敵対しているのよ!? それに魔人族の神はエヒトじゃなくてアルヴで、だからこそ戦争をしているはずじゃ……!」
そこで口を挟んできたのは雫だ。
雫が今までに仕入れた知識と恵理の語る言葉にある矛盾に対し疑問を呈すが、恵理の返答は雫にとって想像を超えるものだった。
「ああそれ? 南雲達と畑山先生は知ってるみたいだけど、アルヴはエヒトの眷属、手下だよ。そもそも人間族と魔人族の戦争自体、エヒトが起こしたマッチポンプで、戦争で苦しむ人々を見るのが楽しかったんだって。趣味悪いよねぇ」
恵理の言葉に、今度は光輝達が衝撃を受ける番だった。
理不尽にいきなり
特に光輝のショックは大きかった。過程はどうであれ、正義の為の戦いだと信じていたものが、全て崩れ去ってしまったのだ。故に彼は項垂れ、動けずにいる。
もっとも、逆に奮起したとしても今の彼にできることは何もないが。
だがここで、あらかじめ事情を知っているがゆえに別にショックを受けていない天の助が疑問を口に出す。
「なあ、エヒト云々のことは騎士達も知ってんのか?」
「いや知らないよ。ここに居るメルド団長含む騎士達はボクが認識をいじってるから、今話していることも聞こえてないしね」
恵理の語る内容に、彼女が降霊術を使うことを合わせて考えてしまい、最悪の想像をするのはここまで一言も喋っていないが、実はちゃんといる香織だ。
「ま、まさか恵理ちゃんが降霊術をなんかいい感じに発展させて、騎士さん達を従えているの!? ひょっとして、最近変だった王様も降霊術のせいで!?」
「半分あってるのがムカつくなぁ」
香織の推測に恵理がどこか呆れたような顔を見せるなか、降霊術が何か分からない首領パッチは一人効果を想像していた。
『漢文死ネェ! 読ミ辛インダヨォ!!』
首領パッチの頭に浮かんだイメージは、最近日本にやってきたアメリカ人、トムが漢文にキレている状況だった。
「成程な。そういうことかよ……」
(何このイメージ映像!?)
雫が脳内でツッコミを入れているとは知らず、恵理は香織の疑問に答える。
「ここにいる騎士達は降霊術とは違う方法で操ってるよ。ここで死んでいた方が幸せかもしれないけど、流石にお世話になったメルド団長を殺すのはボク嫌だからさぁ。殺したのは王様とその周り。後は、今城内を見張っているモブの騎士とメイド達だけ」
『……なっ!?』
恵理の言葉に、今度ばかりはクラスメイト達、首領パッチと天の助、そしてリリアーナの全員が思わず怯む。
当然の如く人を殺したと宣言する彼女に、トータスに来るまで戦いとは無縁だったはずの彼女に対して。
その怯みから一番最初に解き放たれたのはリリアーナだった。
「……何で、メルド団長達だけ生かすのですか? 私の父と団長に、一体どんな差があったというのですか!!」
リリアーナから発せられるのは紛れもない怒り。さっきまで震えていたはずなのに、それはもう消えている。
最早親の仇と化した恵理に対し、リリアーナは殺意すら向けて叫んでいた。
しかし
「反吐が出そうな程嫌いだったから」
恵理はリリアーナの怒りを全て受け止めたうえで、それ以上の怒気を放ちながら底冷えするような声で返答した。
「あの自分達は救われて然るべきみたいな態度が、召喚されたボク達が神の為に戦うのは当然のような態度が、ずっと気に入らなかった。本当は、聖光教会も殺したかったくらいだよ」
「……まだ教会は生きているのですか!?」
希望を見つけたと言わんばかりのリリアーナの声。ずっと一緒に魔人族と戦ってきたのだからしょうがないかもしれないが、恵理はその希望すら容赦なく潰す。
「無駄無駄。あいつら頭おかしくされてるからさ。エヒトがトータス滅ぼすって言ったしノリノリで
恵理の言葉がトドメとなり、今まで気丈に立っていたリリアーナは今度こそ崩れ落ちた。
そんな彼女を満足気に見下ろしながら、次はクラスメイト達に向かって恵理は語り掛ける。
「で、ここからが本題なんだけどさぁ。君達も一緒にトータス滅ぼさない?」
「ふざけるな!!」
恵理の勧誘に皆が困惑する中、ノータイムで否を叩きつけたのは光輝だ。
彼は怒っていた。俺は絶対にそんな誘いには乗らないと、表情、雰囲気、その他すべてが示している。
「そんなものに誰も乗りはしない!! 俺は皆と一緒に、必ずお前達の野望を止めて見せる!!」
「ちなみにオレはお前の誘いに乗ってもいいぜ」
そして天の助はノータイムで恵理の勧誘に乗っかった。
「いや、南雲達は絶対に殺せってエヒトは言ってるから。そもそもボク、南雲はともかく首領パッチ、ところ天の助だけは無条件で絶対に殺すって決めてるし」
「「オレらなんかした!?」」
「うん」
まるで身に覚えのない殺意にビビるバカ二人。
すると、そこに新たなる乱入者が現れた。
「おやびん大変です!」
「どうしたコパッチ!?」
乱入者の正体はコパッチだった。
コパッチは慌てて報告をする。
「オレ達がさっき使った地下鉄、従業員のウサギが『給料にんじんは酷い! 上乗せでたくあんも寄越せ!』とデモを始めました!!」
「バカ野郎! そういう時はシゲキックスを賄賂にするんだ!!」
「はいおやびん! ってあれ?」
ウサギに渡すシゲキックスを買うためこの場を去ろうとするコパッチだったが、そこで恵理の存在に気付き
「久しぶりだな、恵理」
何の前触れもなく、どこか親し気に話しかけた。
だが
「……え? いや、誰?」
話しかけられた恵理は、心底困惑しかできなかった。
そのことに気付いたコパッチは慌ててこう言った。
「おっとそうか。今のこの姿じゃ分からないな。おやびん、元の姿に戻っていいですか?」
「お前戻れんの?」
「はい! だから見ててください。俺の、変身!! はあああああああああああああああああ!!」
「変身っつーか元に戻るだけだろ」
(元の姿……?)
天の助の冷たいツッコミと、恵理の内心での疑問の中コパッチは、まるでアニメドラゴンボールZで超サイヤ人に初めて覚醒する悟空のような叫び声を上げながら、少しずつ姿を変えていく。
そして――
「ふぅ……」
コパッチは、人型になった。
背格好は少年位で、髪は白。特徴があるとしたら尻尾が生えていることくらいだろうか。
だが恵理にはそれで充分。
それだけで、彼が誰かを悟った。
「ハロンオニ、様……?」