【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

64 / 111
奥義63 まあ思春期だし、こういうこともあるって

前回までのあらすじ

 

 

ティオ「天使がいっぱいじゃのう」

ハジメ「一匹位貰っても、バレへんか……」

首領パッチ「転売か」

 

大体こんな感じだった。

 

シア「いや誰が買うんですか天使!?」

 

 


 

 

 恵里がイシュタル達と共に飛び去って行ったあと、ハジメは説明に必死だった。

 神の使徒ノイントのことを説明し終えるとユエ達は納得するが、これに関連して今度はエヒトについて知っていることを話せと光輝が詰め寄る。

 彼の訴えに応じてハジメは全てを話した。

 エヒトのこと、人間族と魔人族の戦争のこと、反逆者と呼ばれている解放者のことも。

 それら全てを聞いた光輝含むクラスメイト達と、メルド団長筆頭騎士団の反応は様々だ。

 ある騎士はあらゆるものに絶望し、首に剣を当て、死を選びそうな状態になり、それを他の騎士やクラスメイト達が必死になって止めている。

 

「ふざけんなよ! そもそもお前らが俺達をこんなところに呼び出したから――」

「そ、それは……」

 

 檜山に至っては、そもそも自分達を呼び出したトータス人が悪いとリリアーナを責め立て始める。

 実際に檜山達をトータスに呼び出したのはエヒトなので、リリアーナを責めるのは筋違いであり、彼自身も分かってはいるのだが、それでも言わずにはいられなかった。

 その気持ちがリリアーナにも理解できるので、彼女は何かを言い返そうとするが口を噤む。

 

「アベンジ!!」

「ぐばぁ!!」

 

 そんな檜山を首領パッチはたわしで殴り飛ばして気絶させた。

 

「お前らもうちょっと静かにしろよ。オレはこれからナメクジピックアップガチャ引くんだからさ」

「何でこの状況でソシャゲしてるんですか!? しかもSSR枠ナメクジ!?

 

 ちなみに天の助は騒ぎをガン無視して、一人ソシャゲをやっていた。

 

「アンインストール!!」

「オレのぬ円の課金が水の泡に――――――!!」

「ぬ円!?」

「今の僕には理解できない」

 

 しかし天の助のソシャゲは魚雷ガールによって強制的にアンインストール。彼の悲しみは鬼なり、後ろでシアがツッコミ、ユエが茶々を入れるが、誰も気に留めなかった。

 そして事情の説明を求めた当の光輝はというと

 

「知っていたのか?」

 

 ハジメに掴みかかり、詰め寄っていた。

 

「え、何? シ〇ル・ウォー? 僕がキャップ役?」

「ふざけるな!!」

 

 しかし掴みかかられているハジメが急にふざけたので、光輝は激情にかられ叫ぶ。

 普段ならツッコミを入れるか流すかできるハジケリストの行いも、今この状況ではただただ腹立たしさしか生み出さない。

 

「そうじゃなくて、南雲が今話したことはいつから知っていたのかって聞いてるんだ!!」

「少なくとも前にオルクス大迷宮で会った時には知ってたよ」

「なら何でもっと早く言ってくれなかった!?」

「それは――」

 

 光輝の問いにハジメは目を逸らしつつも、明確に返答しようとする。

 

「一緒に神様倒して噂になっても恥ずかしいし……」

 

 だが、その前に首領パッチに遮られた。

 

「藤崎詩織ィ!!」

「「がはっ!?」」

 

 ハジメは首領パッチを掴んでティオに投げつけ、二人を黙らせる。

 そして一息ついてから改めて光輝にこう答えた。

 

「あの時は近くに騎士団がいたからね。言いにくかったんだ」

「言いにくかったって……」

 

 ハジメの言葉に、言い分は理解できるが納得いかないという微妙な心境になる光輝。

 確かにこの話を一般的なハイリヒ王国の住人が聞いた時、どう思うかは想像がつく。

 ハジメの言葉を信じないのが大半で、信じたとしたらとてつもないショックを受けることになるだろう。だからこそあの場では言いづらいのは光輝にも理解はできる。

 できるのだが――

 

「それに先生にはあの時より前に話しておいたから、うまいことクラスメイトの皆に伝えてくれると思ってたし」

 

 実際の所はダメだったみたいだけど、と後ろに付け加え、ハジメは光輝の心情を無視して話を終えようとする。

 当然、光輝は納得などできる訳がない。

 

「いや、あの時じゃなくても、南雲が少しだけでも残って、後で話すことだってできた筈だ!」

「……かもね」

 

 光輝の主張に可能性だけは否定しないハジメ。

 もしあらかじめ光輝達に知っていることを話していれば、こんな風に死人は出なかったかもしれない。

 騎士団の皆が知っていれば、魔人族の襲撃にも効率的に対処できたかもしれない。

 可能性だけなら、確かにあった。

 

「そんなの、ただのたられば」

 

 しかし二人が思い描く可能性を、それまで傍で聞いていたユエがバッサリ切り捨てた。

 彼女の言うとおりだ。ハジメと光輝が考える可能性など、もう決して起こりえない。あるはずだった別の未来でしかない。

 現実は、絶対に変わらない。

 

「大体さっきから何? 黙って聞いていれば、全部ハジメが悪いみたいに言うけど。あなたが気を付けていればよかっただけじゃないの?」

 

 そしてユエはそのまま光輝を責め始める。

 決して声を荒げることはないが、彼女の言葉はどこか陰湿だ。できたかどうかも分からない可能性を提示し、光輝を責め立てる論理を繰り出している。

 

「あなたがもっと警戒していれば騎士団が操られず、魔人族と戦えないことはなかったって思わないの?」

「……ユエ」

 

 ユエのあんまりな物言いにハジメは止めようとするが、彼女は止まらない。

 

「あなたがもっと強ければ、さっきみたいに無様に押さえつけられているだけじゃなくて、自分の力で何とかできたとは考えないの?」

「ユエ!!」

 

 そしてユエの言い分が、最早言いがかりと化した段階で、ハジメは大きな声を出して止めた。

 彼女の言葉はそもそも前提に無理がありすぎる。

 第一に、光輝に限らず誰の視点であっても、恵里が裏切る想定などできる訳がない。彼女が持つ首領パッチ、天の助との因縁(うらぎるりゆう)など、誰も知ることはできなかったのだから。

 第二に、あそこで恵里が行った光輝に対するメタが強すぎた。

 一年以上光輝と友好関係を結び、彼の性格を良く知り、彼らとって青天の霹靂というタイミングを意識し、その上で入念に計画して裏切った。これを力技で抜け出すのは、はっきり言って無理というものだ。

 勿論、ユエにもそれくらいは分かる。ならなぜこんな嫌味なことを言ったかといえば、光輝のハジメに対する発言に対する意趣返しでしかない。

 

 そもそもユエは正義の味方でもなければ、人間族の味方でもない。彼女はあくまでハジメの味方だ。

 できる限りハジメの意向に沿い、なるだけハジメの味方をする。

 普段は一緒にハジケたり、冷たくあしらったり、時には盾にしたとしても彼女にとってハジメは恩人で、大切な仲間である。

 だからこそ、向こうの言い分が正論ならいざ知らず、言いがかりに近い物言いでハジメを非難されるのは我慢ならなかった。

 もっとも、ハジメに強く止められたのでこれ以上は言うつもりはないが。

 一方、その後ろでは全く話に入れずに悩む二人のハジケリストが。

 

「どうしよう、めっちゃシリアスやってるぞ」

「オレらじゃ話に入れねえよ」

「ちょっと真面目にやるか」

 

 首領パッチと天の助は、この状況に対し別段言いたいことがあるわけでもないので、逆に浮いてしまっていた。

 そして話に入れなかったのがもう一人。

 

「うむ、ならば妾が手ほどきしてやろうぞ」

 

 いつの間にか眼鏡をかけ、タイトスカートとスーツに着替えたティオが、教鞭を持ちながらドヤ顔でそう言った。

 

「ここ筆記試験の範囲じゃからな~」

「Xの数値が変わっても点Pは移動しないから……」

「ありおりはべり、いまそかり」

「テスト勉強してるですぅ――――――――――!!」

(何の科目だろう……)

 

 テスト勉強を始めた首領パッチ達にシアが突っ込む横で、香織は素朴な疑問を浮かべる。

 

「あれは、タオルソムリエの試験勉強だね」

「そんなのあるの!?*1

 

 その答えはなぜか鈴からもたらされ、香織は思わず本気で驚いてしまった。

 

「さっきから邪魔!!」

「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」

 

 ハジメが試験勉強している三人のバカをマシンガンで銃撃したところで、視点は光輝へ戻る。

 

「力、結局力か……」

 

 ユエの言葉に何かを悟ったかのように崩れ、落ち込む光輝。

 彼の顔に普段の頼もしさはなく、ただ追い詰められた少年の姿しかない。

 

「光輝の奴、流石に余裕ねえな」

「そうね。何とかしないと……」

 

 その様を心配するのは彼の幼馴染である竜太郎と雫の二人。

 二人は何とかして光輝に言葉を掛けようとするが、その前に彼はこう呟いた。

 

「南雲はいいよな」

「ん?」

 

 光輝のいきなりな言葉に、意図がつかめず困惑するハジメ。

 そんな彼を無視して、光輝の台詞は続く。

 

「南雲は真拳使いだろ? 俺も昔、真拳使いになりたかったんだ」

「僕はなって損したとまでは思わないけど、なりたいと思ったことはないかな」

 

 光輝の独白めいた言葉に冷たく応じるハジメ。しかし光輝の言葉はなおも続く。

 

「何でだよ。俺じゃどうにもできなかったベヒモスも、魔人族も、魔人族側の神の使徒も倒したじゃないか。お前は何で、俺の欲しいものを持ってるくせに……!!」

 

 光輝の言葉は途中で止まり、代わりに彼は剣を抜く。

 そして勇者のみ扱える聖剣が、ハジメに向かって振り下ろされた。

 

「おっと!」

 

 しかしハジメは咄嗟に納豆をかざすことで聖剣を受け止め、ダメージを零にする。

 

「ちょっと光輝!?」

 

 幼馴染が起こす突然の凶行に驚く雫だが、光輝は憎しみに心を染めたままハジメを睨み叫ぶ。

 

「何でこの惨劇を防いでくれなかった! お前ならどうとでもなっただろ!! 南雲が得た力は、こんな時に使う為のものじゃないのか!?」

「その場にいなかったから仕方ないでしょ! これでも結構対処できた方だし!! それに何より――」

 

 光輝の叫びに負けじとハジメも叫び、受け止め続けていた聖剣を弾いて距離を取る。

 

「別に好きで真拳使いになった訳じゃないんだよこっちは!! 人間社会は力だけで何とかなるほど甘い物じゃない!!」

「そんな訳あるか! マルハーゲ帝国が世界を支配できたのは力のおかげで、その帝国が倒されたのも力があったからだろ!! だったら、力があれば正義ができる筈だ!!」

 

 互いの思いをぶちまけあうハジメと光輝。

 こんなことをしている場合ではない、と二人とも分かっている。しかしハジメも光輝も、相手の言い分がどうしても納得いかないのだ。

 光輝としては、口ではこう言っても実際の所、ハジメがいなかったのはしょうがないと思っている。そしてユエが言った通り、結局自分が弱かったのも悪いと思っている。

 そして光輝は、ハジメが持つ真拳(ちから)が羨ましい。にも関わらず、それを疎んでいるハジメが気に入らなくてしょうがない。

 だが言われているハジメ側にも言い分がある。

 実の所、ハジメも光輝のもっと力があればよかったという発言自体には思うところはないし、あの場にいてくれたらよかったという言葉も別に意地張って反論するものではないと考えている。

 ハジメが気に入らないのはただ一点。光輝の言い草だと、まるで自分の価値は真拳使いであることだけのように聞こえるからだ。

 だから

 

「シア、ピアニカソードちょっと貸して」

「は、はいですぅ!」

 

 ハジメの言葉でシアはピアニカソードを投げ渡す。受け取った彼はそれを光輝に付きつけながら、こう言い放った。

 

「天之河君の言い分はどうにも気に食わない。だから勝負だ」

「何だと?」

 

 ハジメの言葉を訝しむ光輝。普通にやればハジメの方が強いのは、過去の戦いで明白。

 しかし次の言葉で疑問は解けるが、光輝の怒りが一気に爆発する。

 

「こっちは真拳なし。そしてこの国の宝物庫にある武器を使えば、フェアに近い条件だ。納豆真拳しか価値がないみたいな思い込みは、ここで正してやる」

「上等だ。俺はいくらなんでも、真拳のない南雲に負けるわけがない」

 

 周りが何も言わないのをいいことに二人は勝手に話を進め、互いに剣を構えて向き合う。

 そして――

 

「いくぞおおおおおおおおおおお!!」

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 同時に叫びながら駆け出し、戦いは始まった。

 なお、どうでもいい余談だが、この二人の後ろで――

 

「やめて、ところてんの為に争わないで! 人数分あるから!!」

「それは違う」

 

 天の助が悲痛な声で二人を止めようとしていたが、ユエに冷たく切り捨てられる一幕もあったが、どうでもいいことなので詳しくは割愛する。

*1
注:実在する資格です。なお、数学の要素も古文の要素もありません

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。