前回までのあらすじ
ハジメVS光輝 決闘開始。
一方その頃、話に入れなさそうなバカ達はマッサージを受けていた。
ティオ「ふ…うぅ…っ♡………♡気…っ♡…っ持っ…っ…っ!ちぃいぃ…っっい……♡っのぉ♡おおう…!」
一人は喘ぎ
天の助「ああああああああああ~」
一人は震え
首領パッチ「天上天下唯我独尊」
一人は滲んでいた。
魚雷ガール「アナタ達ふざけすぎ!!」
バカ三人「ぎゃああああああああああ!!」
唐突に始まるハジメと光輝の決闘。この状況で周りがとった反応は大きく三つに分かれる。
まずは突然すぎる展開に理解が追いつかず、何もできないもの。ここにいるクラスメイト、騎士のうち大半がこれだ。
次に、何とかして決闘を止めようとするもの。
「光輝! ハジメ! 今はそんなことをしている場合じゃないわよ!!」
「そうですよ二人とも! 今すぐやめてください!!」
雫と愛子はハジメと光輝の決闘を何とか止めようと呼びかけるが、二人は聞く耳を持たない。
ならばとばかりに雫達はハジメ達の間に割り込もうとするが――
「やらせてあげなさい」
魚雷ガールがそれをせき止めた。
これが最後のパターン。何もできないのではなく、ただハジメ達の決闘を見守ろうとするものである。
ハジメの仲間は全員このパターンで、彼の選んだことにケチをつけるつもりはなかった。
だが愛子は納得できない。
「どうして止めるんですか魚雷ガールさん!? 喧嘩なんて、ダメですよそんなの!!」
「そうね。喧嘩は確かによくないわ。でもこれはきっと彼らには必要なことよ」
「ど、どういうことですか!?」
魚雷ガールの言い分が理解できず、当惑してしまう愛子。
だが雫はそれ以前の疑問に引っかかっていた。
「というか、誰なのこの魚雷?」
「あれ、ご存じありませんか?」
雫の疑問の声に、愛子は意外そうな顔をしながら回答を示す。
「何年か前のCMクイーンにして、魅惑レディの元看板モデル。魚雷ガールさんです」
「CMクイーンだったのこの魚雷!?」
「あら、懐かしいわね」
愛子の紹介に雫が驚き、魚雷ガールが懐かしむ中、ハジメと光輝の戦いは進んでいた。
「限界突破!」
技能を発動し能力を高めた光輝は、右手に聖剣を持ってハジメに斬りかかる。
その剣をハジメはピアニカソードで受け止め横、ハジケから見て左に受け流すが、ここで光輝は剣を左手に持ち替え、今度は横薙ぎで斬りかかろうとした。
これは八重樫流剣術の一つ、“水月〟を応用したものだ。元々は右手に持った剣で左薙ぎしてから、途中で左手に持ち替えて右薙ぎに移行する剣術だが、光輝は受け流された状況で左手に持ち替えて同じことをしたのだ。
しかし本来とは違う動きとは、一瞬だけでも鈍るのが常である。
光輝に生まれた刹那の隙に、ハジメはヘッドバッドを光輝に叩き込んだ。
咄嗟のことで対応できず、まともにヘッドバッドを受けた光輝は少しだけヨロヨロと足を下げてしまう。
これで光輝と距離を取れたので、ハジメはそのまま追撃を仕掛けた。
「ハジケ奥義、タコさんアタック!」
ハジメは口からタコさんウインナーを三つ、光輝の顔面に向かって吐き出す。
そして吐き出されたウインナー達は光輝の顔面に着地すると、そのままペチペチと顔を殴り始めた。
「えいえい」
「くらえ~」
「まいったか~」
しかしウインナーの攻撃は、当然の如く通じない。
そして光輝はこの攻撃に対し、どうすればいいか分からない。
「タコさんしっかりして!!」
「ごはぁ!?」
(えぇ――――――――!?)
結局ハジメがタコさんウインナー諸共殴り飛ばし、光輝は成すすべもなく吹き飛ばされる。
それでも必死に立ち上がろうとする光輝を尻目に、ハジメはブツブツと小さく呟く。
「納豆真拳を縛ったせいで戦いにくい……」
「いやそれハジメが自分でやったことよね!?」
「おのれユエナレフ」
「え、私?」
ハジメの言葉は、もう自分には関係ないと思って首領パッチ、天の助、ティオと合わせて四人でポーカーをやっていたユエに届き、驚く。
「あ……ありのまま今起こったことを話す。『私は花京院の魂を賭けて皆とポーカーをしていると思ったら理不尽に恨まれていた』。何を言っているのか分からないと思うけど、私も何をされたのか分からなかった」
「本当に何言ってるんですか!?」
「何でポーカーしてるのよ」
ユエの発言にツッコミを入れるシアと雫。
その横では光輝が必死に立ち上がりながら、ハジメを恨みがましい目で睨みながらも次の手を打つ。
「“天翔閃・嵐〟!」
光輝は剣に聖なる光を纏わせ、振り下ろすことでハジメに向かって光の斬撃を飛ばす。
これに対し、ハジメはピアニカソードを、まるでバットでボールを打ち返すが如く構えた。
「目指せホールインワン!!」
「それゴルフですぅ!!」
そして全力で振りぬくことで、ハジメの狙い通り光の斬撃は遥か空の彼方へと飛んでいく。
しかし――
「ぐわああああああああああああ!!」
「ハジメさん!?」
ハジメは光ではなく、風に斬り刻まれていた。
実は光輝の攻撃には光の斬撃に付属して、大量の不可視な風の刃も飛んでおり、ハジメはそれらに斬り刻まれたのである。
これには攻撃を喰らったハジメも大慌て。
「僕の服がボロボロになっちゃった! これダメージコーデってことで何とかなるかな!?」
「何の心配してるのよ!?」
ハジメの心配に雫がツッコむが、彼女の後ろから優しい声がかかる。
「大丈夫であるぞ。今年のブームは超ダメージコーデだからな」
「あなたは……ファッションのカリスマパッチ仙人!」
「仙人がファッションのカリスマなんですか!?」
「むしろ更にダメージを増やすのがお勧めであるぞ。若いの、これを使いなされ」
そう言って首領パッチはカッターナイフを取り出してハジメに渡そうとするが
「いや、面倒臭いからいいです」
当のハジメは素気無く断った。
「ファッションを、ファッションをワシの前で馬鹿にすることは許さ――」
「雑音!!」
ハジメの態度に怒り、闇堕ちしかかる首領パッチだったが、魚雷ガールが力技で黙らせ事なきを得る。
このハジメ達の態度に、こうきの いかりのボルテージがあがっていく!
「急にポ〇モンみたいなメッセージ入ってきた!!」
「決闘に集中しろ南雲! “天翔剣四翼〟!!」
ハジメの不真面目な態度にキレた光輝は、今度は四つの斬撃を同時に飛ばして攻撃してくる。
しかし、その攻撃にハジメは余裕の笑みを以って答えた。
「その程度なら余裕だ。奥義、超有能係長上杉さん的働き!!」
ハジメが奥義を発動すると同時に、彼はスーツに着替え、書類の作成、クレームの対応電話、相手先との取引、会議で使うパワーポイントの作成を一人でこなしていく。その仕事の早さのあまり、彼は四人に増えていた。
「分身してるですぅ――――――――!?」
「係長なんだから部下を使うことも覚えたほうがいいと思う」
ユエの非難もなんのその。四人に増えたハジメは、光輝が繰り出した四つの斬撃をそれぞれ弾き飛ばす。
「そして反撃のお中元だ! 闘鶏用ニワトリをくれてやる!!」
「ぐばぁ!?」
「それ貰ってどうすればいいのよ!?」
闘鶏用ニワトリに蹴り飛ばされた光輝は成すすべなく倒れこむ。そしてそのままニワトリによる執拗な蹴りが行われていた。
「凄い! 完全にハジメさんのペースですぅ!」
「ハジメのタイマン。しかも真拳縛りの戦いなんて初めて見たけど、案外大丈夫だったな」
シアと天の助が完全にハジメの勝ち確定ムードになるが、当のハジメはまだ戦闘態勢を解かない。
そして光輝は、未だニワトリに蹴られ続けながら過去を思い返していた。
天之河光輝の人生を振り返ると、彼の人生は順風満帆であるものの、当人にとっては不満のある道程だった。
普通の家庭に生まれ、両親と妹のいる家庭。文武両道を地でいき、三人の幼馴染を始め多くの人間に囲まれ生きていた。
そんな彼には弁護士の祖父がいた。祖父は光輝によく、自身が弁護士として担当した事件について話していた。
弁護士が持つ守秘義務に反しないように気を付けつつ、子供相手に話すので多分に美化を入れて。この話を通して、祖父は光輝に正義という物を教えたかった。
だが、光輝は祖父の話を胡散臭いと断じ、あまり身を入れて聞こうとはしなかった。
何せ当時はマルハーゲ帝国が世界を支配している全盛期。どんな正しさも優しさも暴力で容易く掻き消える暗黒期。そんな中で輝く正義など、フィクションの中にしかなかったのだ。
そこで祖父は、本来なら中学生くらいになったら話そうと思っていた、少しダーティな話をすることにした。依頼人を信じ、裁判に勝つためにルールは破らないものの、少々狡っからいことをする話。
それらは光輝をようやく引き付けた。そして光輝は同時にこう思った。
どうして爺ちゃんは正しいのにこんなずるいことをしなきゃいけないんだ?
光輝は祖父の語る輝かしい正義を信じてはいなかったが、嫌ってもいなかった。むしろ好きだったと言ってもいい。
だが正義は脇に追いやられている。そこで光輝は考え、こう結論を出した。
――力だ。マルハーゲ帝国を倒せるくらいの力が必要なんだ。
そこで光輝は真拳使いになろうと思い立つ。それがこの世界で一番分かりやすい強者であるがゆえに。
しかし当時の光輝の行動範囲には真拳を伝承する道場など無かった。否、正確には道場はあったが、彼を弟子にしようとはしなかったのだ。
もしこの時の光輝に、真拳は伝承するものだけでなく自身で編み出すこともできるという知識があれば、彼はいつまでも真拳を編み出そうと試行錯誤していただろう。
だが現実には、光輝にそんな知識はなく、仕方ないので近所の剣術道場、八重樫流に入門する。
そこで光輝はメキメキと頭角を現し、彼は剣道の大会でもいい成績を残すようになった。
八重樫流師範にも気に入られ、明らかに剣道で使わない技も教えてもらえた。
ここで強くなればその内マルハーゲ帝国とも戦えると思った矢先、マルハーゲ帝国はボーボボの手により壊滅。一年後にネオ・マルハーゲも現れ、その半年後にはピーマン帝国も台頭したが、全て同様に壊滅。
これにより光輝は目標を見失う。それでも彼は剣道を続けた。
なぜかというと、周りに勧められたのが三割。あと僅かな惰性もあったが、一番は性に合っていたからだ。それに単純に結果が残せたのが嬉しかったのもある。
こうして光輝は特に事件もないまま高校に進学。そこである男と出会った。
その男の名前は南雲ハジメ。光輝は彼が嫌いだった。
なぜかというと、ハジメがかつて自分の望んだ真拳使いであることへの嫉妬と、彼の生活態度が原因だ。
毎日ではないものの授業中に寝続けていることも多く、二年生になると遅刻寸前に登校することも増えていた。
ハジメも、光輝の言い分を正論と捉えながらも特に態度を改めることなく貫いていたので、お互いウマも合わなかった。
それでも、時がたてば高校を卒業し、お互いバラバラの進路を進むことになるだろう。そうすれば、こんなことも過去となり、光輝は自分なりの人生を歩めただろう。
だがそこで異世界召喚だ。
最初は驚愕したが、同時に光輝は歓喜した。かつて自分が望んだ正義を体現できると思い、その為の力も授かった。
元々強いハジメはリーダー向きじゃないと思って口を出さなかったこともあり、光輝はここでも中心人物だ。
しかし、ハジメの奈落落下をきっかけにクラスメイト達は怯え竦む。
それでもと踏ん張っていたが、急襲してきた魔人族には勝てず、結局ハジメに頼る始末。
そしてトドメとばかりに今回の騒動。光輝の精神は限界だった。
何もできず、ただ犠牲を見過ごすしかなかった自分。
その場に居てくれさえいれば、きっとどうにかしてくれた南雲ハジメ。
どちらも許せない。例え八つ当たりでしかないと思っても。こんな決闘に意味がないと分かっていても。
俺はせめて、南雲に勝ちたい。そう――
「俺の願いの前にはいつも南雲がいる! だから俺はお前を倒す!! そうしなければ俺は前に進めない!!」
叫びながらニワトリを振り払った光輝は立ち上がり、ハジメを睨む。
その叫びの意味は、きっと光輝にしか分からない。無力を嘆き続け、己を呪う彼にしか。
「“光刃〟!!」
光輝が叫ぶと、光の刃が彼の聖剣に付与されていく。更に――
「“覇潰〟!!」
再び叫ぶと、今度は彼の全身が光のエネルギーに包まれ、彼の能力が五倍以上に跳ね上がる。
これが光輝の全力。戦闘終了後など考えず、ただハジメを倒すという意志を固めた彼の本気。
それに対し、ハジメは笑みでこう返した
「ねえ天之河君、何で僕は君の回想を黙って聞いてたと思う? あんな支離滅裂な話をさ」
「……何が言いたいんだ」
「こういうことさ。伏せハジケオープン!!」
ここでハジメは伏せていたものを開け、パワーアップした光輝に対抗し始める。
「『落とした覚えのないエロ動画』と、『中々治らない口内炎』! そして二つを首領パッチのデッキボトムに送って効果発動!!」
「オレ!?」
いきなりよく分からないものをデッキに入れられ、驚く首領パッチ。しかしハジメは構わず話を進める。
「この二つをデッキボトムに送ることで、僕はピアニカソードをパワーアップさせる! リミットオーバー・アクセルシンクロオオオオオオオ!!」
「行けえええええええええ遊星ええええええええええ!!」
「遊戯王DMさえわかれば問題ないとは何だったのか」
天の助のノリノリな発言と、ユエの冷めたツッコミを背景に、ピアニカソードはエロ動画と口内炎と一つに交わり、新たな武器に生まれ変わりつつある。
「そして今度は僕自身を強化する!!」
ピアニカソードをリミットオーバー・アクセルシンクロし、強化させている一方で、今度はハジメが詠唱をし自身を強化すべく詠唱を始めた。
「天来せよ、我が守護星──鋼の
荘厳な
約束された末路にしかし、嘆きも恐れもありはしない。
天に煌きらめく神話こそ、今も気高き我が憧憬。
灰燼と化す罪業が、猛き焔に抱いだかれながら浄化の熱を浴びるのだ。
この墜落に悔いは無し。されど今、水底に響く音色は何なのか?
悲哀を奏でる闇の竪琴。かくも心に滲み入るこの悲しみは何やらん?
「ならばあなたも、愛しい人よ───どうか光へ連れ出して」
ハジメの詠唱が続くが、ここで首領パッチが割り込んでくる。
しかしこれはしょうがない。なぜなら――
「これ、原作でも二人でやる詠唱だから……」
「何の小説ですかこれ」
ユエの合いの手とシアのツッコミが入る中、ハジメと首領パッチの詠唱は続く。
「地獄の柘榴はもういらない。悠久の常春で実りの季節を讃えましょう。
優しいあの日の思い出は決して嘘ではないのだから」
「是非も無し──共に生きよう、優しい渚。おまえの
大海原を統べるが如く、銀河を駆けろ
───
詠唱完了。それと同時にピアニカソードは黒き鞘に収まった、全く違う新たな姿に置き換わる。
「さあ、続きをやろうか!!」