【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義66 あっさり薄味塩ラーメンな武力介入できないハジケリスト

前回までのあらすじ

 

ハジメ「今、五枚の手札が全て揃った! エクゾディアを召喚する!!」

光輝「馬鹿な!? 奇跡を起こしたというのか!?」

 

ハジメと光輝の決闘は、ハジメの勝利で幕を下ろした。

 

シア「いやこんな戦いではないですぅ!!」

 

 


 

 

「南雲君。それから天之河君、おはようございます」

 

 魔人族による王都襲撃。それに加えてハジメと光輝の決闘から三日後の朝。奥義の副作用で昏倒していたハジメと、単純にダメージの蓄積で気絶していた光輝は、全く同じタイミングで目を覚ました。

 そして王城にて、空いている席が無い故に、互いに仕方なく顔を突き合わせながら朝食を食べる二人だったが、そこに愛子がやって来た。

 先生が自分達に何の用なのか、と訝しがる二人を尻目に、愛子は怒りの表情を見せている。

 私、怒っていますとばかりに腰に手を当てて、目を鋭くするものの、ポーズと元々のキャラクターのせいで今一つハジメ達には伝わっていない。

 

「先生、何か用ですか?」

 

 そのことが気になったハジメが代表して質問すると、愛子は声を荒げながら返答した。

 

「お説教です!」

「「え?」」

 

 愛子の口から飛び出した言葉に思わずハモる二人だったが、理由はすぐに行き当たった。

 何せ、魔人族に王都が襲撃され大変なことになり、魔人族が撤退したものの色々すべきことがあるはずなのに、二人してそれをほったらかして決闘していたのだから。

 とはいえ説教なんて受けたくないのが人情。なので――

 

「全部天之河君のせいです」

「南雲!?」

 

 ハジメは光輝を売ることにした。

 まあ、実際の所光輝が斬りかからなければ、ハジメも決闘なんて申し込むつもりもなかったので、あながち間違いではない。だがしかし――

 

「いいえ、二人ともお説教します。異論は認めません」

 

 愛子はハジメの主張に真っ向から否を唱えた。

 するとそこに、朝食を食べ終えどこかに出かけようとするユエの姿がハジメの目に入る。

 

「ユエ、ちょっと助けて!」

 

 ハジメは迷うことなくユエに呼びかけ、呼びかけられた方は面倒くさそうに呼びかけた当人に向かってやってきた。

 

「何か用?」

「ユエ、このままじゃ僕説教させられそうだから助けて!」

「そうなんだ。じゃあ私王都復興の手伝い行くね」

「スルー!?」

 

 ユエはハジメの懇願を切り捨てた。

 

「子供みたいな喧嘩して無駄に気絶した罰。少しくらい叱られた方がいい」

 

 心底面倒くさそうにそれだけを言って、彼女はこの場を去っていく。

 

「朝ごはん食べ終わったら私の部屋に来てください。いいですね?」

「「は~い……」」

 

 ユエが立ち去るのを黙ってみるしかできなかった二人は、愛子の宣告を死んだ目で聞き、心持ちゆっくり朝食を食べるのだった。

 

 


 

 

撃ち落とせな~い

 

雫「なにこれ」

鈴「アイキャッチアイキャッチ」

ユエ「武力介入できないってこれ?」

 

 


 

 

 これはハジメ達が目覚めるより前の話。具体的に言うと彼らが倒れた次の日。

 ユエ、首領パッチ、天の助、シアの四人はティオの案内で神山の頂上へ赴き、神代魔法を手に入れにやって来た。

 しかしここで問題が発生した。

 

「魔法を手に入れる条件が分からぬ……!」

「えぇ……」

 

 ティオは、神代魔法を習得する条件が分からなかった。

 何せ、彼女からすればノイントを倒したと同時に神代魔法が授けられたのだ。正直、来るだけ来て後は流れで何とかするしかなかった。

 するとそこに助けがやってくる。

 

しんだいまほうをしゅうとくするじょうけんは かみにたいするはんぎゃくしんをみせること

 

「おお、親切なメッセージの人じゃ! ありがたいのう!!」

「誰ですかこの人!? いや人かどうかも分かりませんけど!!」

 

 メッセージの人がとりあえず条件を教えてくれたものの、しかしどうすれば神への反逆心を見せられるのか分からなかった。

 仕方ないので首領パッチ達は決断した。

 

「歌いましょう」

「えっ?」

 

 シアの呆けた声とは裏腹に、首領パッチ達三人は歌い始めた。

 

「Bomb A Head!」

「Bomb A Head!」

「燃え立つような 熱い魂!」

「Bomb A Head!」

「Bomb A Head!」

「無茶して知った 本当の俺を」

「「「Bomb Bomb Bomb a Head! Bom- Bom- Bomb a Head!」」」

「七行も歌わないでくださいよ」

 

 七行も歌う首領パッチ達。しかしロクにメッセージでの反応もなく、三人の熱唱はむなしく響くのみ。

 しかし諦める訳にはいかない。そこで全員が一致団結して話し合い始める。そして数分後――

 

……なんかもういいです だいじょうぶってしんじます

どんパッチ てんのすけ ユエ シア は しんだいまほうを しゅうとくした!

 

「いや軽っ!?」

「これがマク〇ス……!」

「絶対違いますよ!!」

「これがマクロコスモス……!」

「もう何の関係もないですぅ!!」

 

 


 

 

撃ち落とせな~い

 

ハジメ「母さん。僕の、ピアノ……」

首領パッチ「ニコルゥゥゥウウウウウ!!」

シア(撃ち落とされてる――――!?)

 

 


 

 

 ハジメ達が倒れてから二日。もしくはユエ達が神代魔法を習得した翌日。

 クラスメイト達の大半は王都の復興の手伝いをしたり、あるいは王城で何かしらの作業をしている者が大半だが、そうではない人もいる。

 王城の一室。そこで谷口鈴は親友である中村恵理の裏切りのショックから未だ立ち直れず、一人ふさぎ込んでいた。

 それを心配するのは、友人である白崎香織と坂上竜太郎の二人。ちなみに同じく友人である光輝は昏倒中で、雫は王都復興の手伝いをしていた。

 彼らは鈴の部屋に入らず、彼女の食事を持ってきていた。

 

「谷口。飯持ってきたぞ」

「メニューはフライドチキンに手羽先、それと親子丼だよ」

『鳥づくし!!』

 

 鈴は香織の告げるメニューにツッコミを入れつつも、部屋から出ることなく香織と龍太郎を追い払う。

 大人しくそれに従いながらも、二人は鈴を心配していた。

 

「谷口の奴、やっぱりまだヘコんでるな」

「そうだね。鈴ちゃん、決闘が終わってからハロンオニって人に恵理ちゃんの過去を聞いて、凄く動揺してたもんね」

 

『違う! 違うよエレン……! エリリンが皆を裏切ったのは、時代や環境のせいじゃなくて……鈴が悪いんだよ。王様や皆が死んだのは鈴のせいだ!!』

 

「凄く、苦しそうだった……」

「そんなことは言ってなかったけどな!? 誰だよエレンって!?

 

 香織のボケに龍太郎がツッコミを入れながら、二人は去っていく。

 いずれ友人は立ち直り、部屋から出て来てくれると信じて。

 一方、部屋に籠りきっている鈴は、ハロンオニから聞いた恵理の過去に思いを馳せていた。

 以下が、ハロンオニから聞いた内容である。

 

『ありふれ原作と同じ部分はダイジェストで話すぞ』

 

 恵理は五歳の時に、父親が恵理を助けて交通事故で亡くなったよ。

 恵理の母親は、父親にヤンデレじみた好意を向けてたよ。そのせいで父親が死んだら超ショック! 全部恵理のせいだ、と言って彼女を虐待したよ。

 恵理も自分のせいだと思って耐えてたけど、しばらくしたら母親が新しい男を連れてきたよ。

 その新しい男が恵理をレイプしようとしたよ。おまけに抵抗してなんとか逃げたら、母親が私の男を誘惑するなんて、と恵理に敵意を向けたよ。

 絶望した! とばかりに恵理は自殺を決意するんだー!

 

『そしてここからが原作と違う話で、僕と出会ってからのことだ』

 

 それは今から八年前。マルハーゲ帝国が滅亡する二年前にまで遡る。

 その日ハロンオニは、地上に来ていた。理由は闇世界で作り上げた地上へ移動するマシーンが正しく機能するかどうかの実験と、地上の偵察と、この時から二年後に行われる『マルハーゲ帝国新帝王決定戦』の開催場所を調査する為だ。

 マルハーゲ帝国では五十年に一度、帝王の座をかけて集まり戦う大会が開かれる。その大会は毛狩り隊の幹部・隊長クラスのみが参加資格を持つが、資格者ですら情報を持っていないこともある機密の多いものであり、ハロンオニは適当な毛狩り隊の基地を潰して情報を手に入れた帰りだった。

 当時、転移するためのマシーンは特定の場所でないと使えず、その時ハロンオニが転移しようとするには、彼の近くにある橋の上に居る少女、恵理と毛狩り隊二人が邪魔だった。

 だから彼は毛狩り隊二人を殺し、次に恵理を殺そうとした。

 

「……どうぞ」

 

 すると、恵理はなんとハロンオニに向かって体を差し出し、自らを殺すように言ったのだ。

 その時ハロンオニが彼女に覚えた感情は、抵抗されなくて楽、ではなく純粋な気持ち悪さだった。自ら死を望む、という感覚が彼には理解できないのだ。

 そこでハロンオニは純粋な好奇心で尋ねてみた。恵理も特に抵抗なくスラスラと答えた。

 彼女の話を聞いて彼はこう考えた。

 

(こいつは使えるかもしれない)

 

 ハロンオニは当時、裏マルハーゲ四天王の中でパシリ扱いされていたが、彼はそれが不満であり、代わりを求めていたのだ。後、地上偵察なら地上に詳しい奴にやらせた方がいい、という考えもあった。

 

「お前さえよければ、裏マルハーゲに来る気はないか?」

「?」

 

 そしてハロンオニは恵理に向かってスカウトをする。自分達に着き、闇拳を習得すれば虐待する親など軽く一捻り。それどころか、そこらの真拳使いですら相手にならないだろう、と。

 恵理はこの話に一も二もなく乗った。ハロンオニにとってはただのパシリ獲得だが、彼女にとっては生きる希望だった。

 そして恵理は闇世界で修行をしつつ、合間を縫って地上に戻り、望んだ情報を仕入れ闇世界に戻るという生活になる。

 その過程で恵理は、裏マルハーゲ帝国の皇帝であるハイドレートに異常なまでの忠誠心を捧げ、捧げられている側のハイドレートも彼女を気に入り始めた。

 ハイドレートにとって、恵理の忠誠は自尊心を満たすに丁度いいものであるのと同時に、彼女の境遇がどこか自分と重なって見えたのだ。

 そして二年後、マルハーゲ帝国新帝王決定戦の日。恵理は待機を命じられていた。

 彼女自身は戦いの場に出るつもりだったが、ハイドレートが戦力不足を理由に止めたのだ。

 

「代わりに家で待っていろ。この私が世界の王になったと示す時を」

「はい!」

 

 二人の意気揚々とした言葉。しかし結果は失敗に終わる。

 マルハーゲ帝国の王ツル・ツルリーナ四世が逃走したため、帝国は事実上壊滅したものの、ハイドレートはボーボボ一行に倒され、彼が世界の王になることはなかった。

 

『ここまでが、僕の知っていることだ。後は恵理に聞くんだな』

「エリリン……」

 

 そして現在。鈴は恵理を思い、胸を傷めていた。

 

「鈴は、何も知らなかったよ……」

 

 恵理の過去。そして望み。鈴はどちらも知らなかった。

 だけど、それでも。鈴は恵理を止めなければならない。

 

「だって、鈴達は親友だもんね」

 

 恵理にとってクライメイト達よりハイドレートが大切だとしても、鈴と育んだ友情は嘘ではない。嘘である理由がない。

 だから――

 

「絶対に、こっちに連れて帰るよ。エリリン」

 

 鈴は決意を固める。

 友達を、絶対に取り戻すと。

 例え本人が何と言おうと。

 

 


 

 

撃ち落とせな~い

 

天の助「オレがところてんだ!」

リリアーナ(いやところてんですけど!?)

ティオ「君は、ガン〇ムマイスターに相応しくない」

 

 


 

 

 そして現在、時刻は夕方。ユエが王都復興の手伝いから戻るとそこには

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

 

 久しぶりに死んでいるハジメの姿があった。

 

「ハジメ、何で死んでるの?」

「先生の説教が想像以上に長かった。天之河君は昼前に解放されたのに、僕はさっきまでずっとだよ……」

 

 ユエが面倒くさそうに聞くと、ハジメは例のポーズのまま返答した。

 そして死んだままのハジメを放置して、ユエは愛子に問う。

 

「……そんなに怒ることあるの?」

「あります! 南雲君はトータスに来る前、生活態度が悪くて教師陣(わたしたち)の間で問題になっていたんです。でも全然改善しない上、成績に問題ないので諦めている先生も多いのですが、いい機会なので全部言いました」

「そう……」

「……あの、僕死んでるんだけど?」

 

 心底興味ないと言わんばかりのユエの態度にハジメが抗議するが、当のユエは知らんぷりのまま。

 そしてこう言い放った。

 

「うるさい」

「はい、ごめんなさい……」

 

 ユエの言葉にハジメは大人しく屈し、そっとスマホでフリージアを掛けながら死体に戻った。

 

『ここにいーるーよー よごーれたーままで』

「それ違う人のフリージア!!」




第5章 これにて終了。
帝都篇はまたギャグ盛りだくさんにしていけるはずです

使用楽曲コード:01730487,16527691,N00016807

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