前回のあらすじ
ハジメ「僕が」
ユエ「私が」
大体こんな感じだった。
シア「なぜにデス〇ート?」
帝国兵が捕らえた亜人族をフェアベルゲンに送り届けたハジメ達。しかしそこでハウリアの一人からある情報がもたらされた。
「帝国の首都に行った族長達が帰ってこないハウ! きっと帝国に捕らえられているリア!」
「語尾うぜえ!!」
「がはぁ!?」
報告したハウリアは首領パッチに殴り飛ばされたが、族長のカムを助けに行くべく、フェアベルゲンの防衛を務める一部を除くハウリア達がハジメ達に着いてくることになった。
その道中――
「久しぶりねあなたたち。レースに向けてどれほど鍛え上げたか、私が見てあげるわ」
『ずきゅんどきゅん 走り出しー』「「「ふっふー」」」
『ばきゅんぶきゅん かけてーゆーくーよー』
(ウマ娘!? しかも合いの手入れてるのハジメさん達ですし!?)
魚雷ガールがハウリアの修練具合を確かめたり
「けものは居ても のけものは居ない 本当の愛はここにある」
「一人けもフレを歌っておるのじゃが」
「ウマ娘はフレンズの亜種だった……!?」
ユエが衝撃の真実に気付き、SAN値チェックをする場面もあったが、ハジメ達は帝国の首都、略して帝都に到着した。
流石にハウリアの集団を入れる訳にはいかないので、シア以外のハウリアは帝都の周辺に身を隠してもらい、彼らは帝都に入っていく。
帝都に入ったハジメ達は、リリアーナと彼女の護衛騎士達。それから光輝達を王族の住まいである帝城へ送り出した。
「僕らも多分遅れていくから、後からでも入れるように手配しておいて」
「ええと、それは少々難しいかと……」
ハジメの頼みに難色を示すリリアーナ。何せ彼女はこれから帝国へ話し合いに行くのだが、その実は恐らく帝国に頭を下げることになるからだ。
何せ、魔人族と神の使徒の襲来により、国力に多大な被害が出ているのだ。情報料を鑑みても差し出せるものは多くない。そこへ更にハジメ達のことも絡むと、彼の要求は通せないかもしれない、というのがリリアーナの考えだ。
「なら私も一緒に行くわ」
しかしここで魚雷ガールが助太刀に入った。彼女なら、実力主義な帝国に対して最高相性だ。なぜならば、彼女はここにいる中で一番強いからである。そのことはこの場にいる全員が承知していた。なぜリリアーナ達がそれを知っているのかというと、書かれていないところでも色々あったのである。何があったかをハジメが知ることはないが。
なお、実力を示す過程で帝国兵が痛めつけられる可能性は十二分にあったが、リリアーナは気にしなかった。何だったらジャンジャンバリバリやっちゃってぇ!! と言わんばかりに目を輝かせていた。
「ジャンジャンバリバリやっちゃってぇ!!」
「声に出てるわよリリィ」
リリアーナが若干キャラ崩壊しつつも、彼女達は魚雷ガールを連れて帝城に向かっていった。
「あれ!? 私もいるのに六章入ってから台詞一つもないよ!? どういうことなの!?」
「それで、これからどうすんだ?」
「とりあえず、情報集めなきゃいけないし冒険者ギルドに行ってみるよ」
天の助の質問に対し、ハジメが行動方針を決めたところで、彼らは歩き始めた。
ただし、ハジメは“私はポ〇モンのアサナンをアナサンと間違えて覚えていました〟と書かれたタスキを掛けた、ユエと首領パッチを載せた台車を押し、横には“海馬瀬人が嫌いな食べ物はおでんです〟と書かれたプラカードを掲げた天の助を、積んだスーパーのカートをティオが押しながらだが。
(何ですかこの状況!?)
そして彼らの後ろで、シアは一人ツッコミながら距離を置いて歩いていた。
そのまま冒険者ギルドに到着した彼らは、ギルドの受付嬢に話しかける。
「ちょっといいかな?」
「……用件は?」
異様な風体のハジメ達にも動揺一つ見せず、気怠さを隠すことなくさっさとしろと言わんばかりの態度を示す受付嬢。
妙な不動っぷりを見せる彼女に対し、ハジメは毅然とこう言い切った。
「用件は、見れば分かるでしょ」
(絶対無理ですよ!?)
「……そういう話ならあっちの酒場のマスターに聞いて」
(伝わったですぅ!?)
謎の以心伝心で省略された会話に従って、ハジメ達はギルド受付の横にある酒場へ向かう。
そこでは、バーのマスターらしきダンディなちょび髭の男が、シェイカーを振っていた。
ハジメに気付いたマスターは、彼らの風体に少々引きつつも話しかける。
「用件は何だ?」
「見れば分かるでしょ」
「いや分からん」
(ですよね!!)
マスターの言葉にシアが内心で共感する一方、ハジメは面倒くさそうに、帝国で兎人族が捕らえられた情報がないか尋ねる。
「それなら知っているぞ」
対しマスターは、十数人ながら百人以上の帝国兵を動員しなければ捕まえられなかった兎人族が、帝城に連行されていった旨をハジメ達に話した。
「にゃるほどにゃー」
(なぜに猫?)
マスターから情報を貰ったユエは猫耳を付けながら、腕を組んで頷く。
それを見たハジメは横から冷笑しながらツッコミを入れた。
「今時猫耳はないよ。時代はウマ耳だ」
「ウマ娘引きずってません?」
ドパンドパンドパン
「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」
「なあマスター。次は帝城について聞きたいんだが」
ユエがハジメを撃ち殺すいつもの光景にマスターがビビる一方、天の助は無視して城についての情報を聞こうとする。
しかし、
「それについては私が教えよう」
天の助に対しマスターが何か返答をする前に、ハジメ達の後ろから呼びかける声が聞こえた。
彼らが振り返ると、そこには――
人間の手足を持った、見た目がオバQのような
「「サービスマン!!」」
「久しぶりだな」
(変な文字がでてるですぅ――――――!?)
戦友の姿があった。
「いや、僕は戦友だと思ってないんだけど」
しかし、ハジメはサービスマンに対して冷淡に対応した。
「釣れないことを言うな
「ドイツ語!?」
サービスマンが冷たく接するハジメに対し気さくに話しかける一方、ティオはユエにある質問を投げかけた。
「誰じゃ、あのオバQもどき」
「歩く強制わいせつ罪」
ティオは普通にサービスマンと面識がなかった。
その横では、彼から聞いた帝城に関する情報をもとにハジメは作戦を考える。そして出した結論はこれだ。
「シンプルに行こう。三人くらいでカムさん達を助けに行って、残りは帝都で騒ぎを起こして兵を引きつける囮役をしてもらう感じで」
「で、誰が囮をするの?」
ユエの質問に対し、ハジメは投げやりにこう答えた。
「サービスマン、首領パッチ、天の助の三人でいいんじゃない? 目立つし」
「「何ィ!?」」
ハジメの言葉に対し、いつの間にか全身黒タイツに着替えていた首領パッチと天の助は、完全に予想外だったと言わんばかりに叫ぶ。
特に首領パッチは必死になってハジメに掴みかかりながら抗議した。
「オレは潜入班だろ!? だってオレはスッパイだから!! 酸っぱいだからさぁ!!」
「お前は酸っぱくない(無言の腹パン)」
ハジメは首領パッチを力技で黙らせた。
そこにティオが話しかけてくる。
「妾も囮役になろう。どっちかというと妾、目立つ側じゃし」
こうして、ハウリア救出組はハジメ、ユエ、シアの三人。囮組は首領パッチ、天の助、ティオ、サービスマンの四人となった。
深夜。
流石に昼間から騒ぎを起こすつもりのないハジメ達は、夜になってから行動を開始する。
まずは囮組サイドから。
「帝都兵士のみなさ~ん」
「サービスの時間じゃオラァ!!」
建物の屋根の上から天の助とティオが、レジ袋で顔を隠しながら兵士達に呼びかける。
呼びかけられた側が訝し気に屋根の上を見ると、空からサービスマンが降ってきた。
「サ――――――――――――――――」
「「ライトアップ!!」」
そしてティオと天の助の二人がサービスマンをサーチライトで照らし出す。それと同時に彼は
「ビスッ!!」
股間を惜しげもなく曝け出した。
ライトアップされ、深夜にも関わらず明るく照らされているおかげで、サービスマンのサービスは兵士からとてもよく見える。
おかげで彼らは阿鼻叫喚の嵐だ。
「いやあああああああああ!!」
「変態だ――――――――!!」
「捕まえろ―――――――!!」
兵士達がサービスマンの捕縛をしようとする中、首領パッチはレザーマスクを被り一人別行動で
「レーズンレーズンレーズンレーズン……」
レーズンで六芒星の魔法陣を作りながら
「うわああああ力が吸われる――――――――――!!」
「やめてくれ……! そのレーズンは母さんの……!!」
「アジアアジアアジアアジアアジアアジアアジアアジア」
兵士達を無力化していた。
これにより兵士達は大混乱。例え城で騒ぎがあったとしても、彼らは決してそこに行くことはないだろう。
「「そうしてオレ達は微生物にハマったとさ」」
「めでたしめでたしじゃな」
はい場面転換しま~す。
首領パッチ達が街中で暴れている頃、ハジメ達は帝城の牢屋に潜入していた。
途中にある鍵はハジメのピッキングで開け、魔法が使われピッキングでは開かない鍵も、シアが心持ち胸の谷間を強調しながら涙目で「開けて……下さい……」と言うと開いていった。
「私の色仕掛けが通じないなんて……っ!!」
「そもそも何で鍵に色仕掛けが通用するんですか!?」
「可愛いは正義ってことだよ」
シアと同じくユエも色仕掛けをしたが通用せず悔しがる中、彼らはハウリアが収容されている牢屋にたどり着く。
そこでは――
「なあ、族長がどんな痛めつけられ方してると思う?」
「両手の爪全部剥がれるとか?」
「俺は乳首を引き千切られてると思うぜ」
「勢い余って両耳欠損かもな」
「「「HAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」」」
体中色んな部分に傷を負いボロボロになりながらも、カムの怪我具合を予想してジョークを飛ばしあう、ハウリアの姿があった。
それを見たハジメは呆れた様を隠さず話しかける。
「……随分と楽しそうだね」
「ハジメ殿!? それにユエ殿にシアまで!?」
話しかけられたことで初めてハジメ達の存在に気付いたハウリアは慌てて佇まいを正し、質問する。
「なぜこのような所に!?」
「あなた達を助けに来た」
「それより父様はどこですか!?」
シアの切羽詰まった問いに、ハウリアの一人はある扉を指さして返答する。
その扉はとても重厚で頑丈に作られており、部屋に入った際に囚人が逃げ出さないように作られていることが一目で分かった。
「あの扉の奥で尋問されています」
「そんな、父様……!」
シアが心配気に扉へ意識を向けたその瞬間、中から叫び声が響いた。
「何だその腑抜けた拳は! その程度で我らハウリアがどうにかなると思っているのか!! 気合を入れろ気合を!! それともこれが全力か!? これでよく帝国の兵士になれたものだ! コネで入れてもらったのか!?」
「ふざけんじゃねえ! コネじゃなくて実力で入ったんだ俺は!!」
「何だよこの兎人族! 拷問までしているのにこれって頭おかしいんじゃねえか!?」
叫びの内容は、カムの暴言に音を上げかけている兵士の泣き言だった。
これを聞いたシアはそっと扉の前に立ち、ピアニカソードを取り出して振りかぶり
「私の心配返してください!!」
思いっきり扉に叩きつけた。
「「「ぐばぁ!?」」」
その衝撃で扉は吹き飛び、中にいるカムと兵士二人に激突。そのまま三人は仲良く気絶した。
そしてシアはそのままカムを背負い、ハジメに向かって静かにこう言う。
「それじゃ、脱出しましょうか」
「うんっ! そうだね! よし皆、僕についてきて!!」
『押忍!!』
シアと気絶しているカム以外の全員がシアに怯える中、彼らは帝城から脱出した。