【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義69 決意するハウリア。後押しする魚雷。話に入りきれないハジケリスト

 ここは帝都から少し離れた所にある岩場地帯。

 ここにフェアベルゲンから連れてきたハウリア達が待機しているのだが、そこに帝城に囚われていたハウリアを引き連れてハジメ達がやってきた。

 その後、帝都で囮をやっていた首領パッチ達も遅れてくる。

 

「おうハジメ。どうだ、オレら役に立っただろ?」

 

 岩場地帯にやって来た首領パッチが、開口一番にハジメへ己の成果を誇示する。確かに彼らの行いで帝都は前代未聞の大騒ぎではあった。が――

 

「いやぶっちゃけ囮とかいらなかった」

「「「!?」」」

 

 ハジメのこの言葉で首領パッチ、天の助、サービスマンは驚愕する。ちなみにティオは気付いていたので特にリアクションはない。

 そもそも同じ帝国兵といえど、街の見回りと牢番では管轄がまるで別である。なので、帝都がいくら騒ぎになろうと牢番からすれば、なんか騒がしいですね、くらいにしか思わない。

 はっきり言って、首領パッチ達の囮は何の意味もなかった。ハジメは、こいつらがいると隠密に潜入とか無理、と思ったから適当な理由で厄介払いしたというのが真相だ。

 それを告げられた時、天の助は怒り狂った。

 

「ハジメテメェ!!」

「まあ許してよ。ゴキボールあげるから」

「羽蛾さん! これレアカードじゃない!!」

「ふん!!」

「ぐあ!?」

 

 ドゴォ、と轟音が響くほどの腹パンを天の助に叩き込むハジメ。

 一方、同じく何の意味もない囮をさせられた首領パッチは、なぜか不敵な笑みを浮かべながらハジメにこう告げる。

 

「ハジメ、オレはお前の行いを許そう」

「え、いいの? グレムリンのカードを用意してたのに」

「何でさっきから用意するカードが微妙なものばっかりなんですか!?」

「グレムリンを馬鹿にするでない! 遊戯さんがバトルシティ編でもデッキに入れておったカードじゃぞ!!」

「そうなんですか!?」

 

 ティオがシアに対しグレムリンのカードの価値を熱弁する一方、首領パッチは懐からあるものを取り出してハジメに突き付けた。

 

「だがこのカニパン様が許すかな?」

「ヒィィィィィィ――――――ッ!!」

 

 首領パッチが取り出したものを見て、ハジメは酷く狼狽する。

 それは、カニカマの形でカニカマの味を持ち、食感も限りなくカニカマながら、なぜか自分はパンだと固く信じているカニカマだった。

 

(限りなくただのカニカマ――――――――――!!)

「お許し下さいカニパン様~~~! 暗黒の騎士ザガーンのカードを差し上げますから~~!!」

「ここにきてデュエマ!?」

 

 ハジメが取り出したカードを見て、カニパンは一瞬だけ考える素振りを見せるも、彼はすぐに結論を出した。

 

「首領パッチ君はこの前掃除当番を変わってくれたから、ハジメ君は有罪(ギルティ)で」

「そんな!?」

「カニパン様の攻撃! ゴーレム・ヴォルケーノ!!」

「イワアアアアアアアアアアアク!!」

 

 カニパンの口から地獄の業火のごとき炎が放たれ、ハジメは立派な焼き鳥となった。

 

「……塩で食べてね」

「食べませんよ」

 

 焼き鳥と化したハジメが自分を食べるよう頼んでスルーされた時、空から一条の光が彼らの元へと降ってくる。

 その正体は――

 

「あなた達ふざけすぎ――――――っ!!」

「「「「「ぎゃああああああああああ!!」」」」」

 

 魚雷ガールである。

 彼女はおふざけをしていたハジメ達を吹き飛ばしながら着地した。すると、彼女の眼前には、跪いて礼をするシア以外のハウリアの姿があった。

 彼ら一同、声を合わせて魚雷ガールに挨拶する。

 

「「「「「「「「「「お久しぶりです、先生!!」」」」」」」」」」

「あなた達、無事だったのね」

「はい、おかげさまで」

「それで、魚雷さんは一体何の用?」

 

 カムと話している魚雷ガールに対し、ハジメが割り込む。彼としてはハジケにくいので、さっさと城に戻ってほしかった。

 彼のそんな考えは露知らず、魚雷ガールは一枚の紙を取り出しハジメに渡す。

 

「これは?」

「帝城に入る時に使う許可書よ。これを門番に見せれば入れるわ」

 

 魚雷ガールにそう言われたハジメ達は、ジロジロと渡された紙を見る。

 そこには『きょしょ』と五文字だけ書かれていた。

 

「どうみても正規の手続きを踏んで作ったものじゃないですぅ―――――――――!!」

「ファッションかもしれない」

「嫌ですよ許可書に謎の拘り見せる国なんて!!」

「ま、我々はこれからその国に戦争を挑みますがね」

 

 シアのツッコミに乗っかるような何気なさで、とんでもないことを口にしたカム。

 ハジメ達が思わずハウリア一同へ視線を移すと、他の皆も同意見だと言わんばかりに無言で頷いていた。

 しかし、ここで魚雷ガールが彼らに待ったをかける。

 

「待ちなさいあなた達。今、なんて言ったの?」

 

 鋭い目でカムを睨み、問いかける魚雷ガール。

 それに対しカムが返答しようとしたその時

 

「オレタチハ、テイコクニ、センソウシカケル!!」

「浅草寺!!」

 

 なぜか天の助と首領パッチがノリノリで帝国に挑む気満々だった。

 

「ウザい!!」

「「ぐばぁ!?」」

 

 ハジメがバカ二人をドロップキックで沈めたところで、改めてカムが魚雷ガールに向けて強く宣言した。

 

「はい。我々は帝国に戦争を仕掛けます」

「ちょっと待ってください父様!!」

 

 カムの宣言にシアは慌てて静止をかける。

 彼女からすれば、さっきまで捕まった挙句尋問され、父親は最終的に気絶まで追い込まれた相手に即再戦を仕掛けようというのだ。正気とは思えなかった。

 

「いや、気絶させたのはシアじゃろ」

「ともかく!」

 

 ティオがもっともなツッコミを入れるが、シアは聞かなかったことにして話を続ける。

 

「私は反対です! どうしてもと言うなら私を倒してから――」

「秘孔新胆中! これでお前はオレが声をかけない限り動けない」

 

 シアがハウリアを止める為、戦いを挑みかけたその時、天の助は彼女の秘孔を突くことで動きを止めようとする。

 だが

 

「あの、普通に動けますけど……」

「何ィ!?」

 

 シアは秘孔の効果を受けていなかった。

 それもそのはず。なぜなら天の助には指が無いから、秘孔が突けなかったのだ。

 

「しまった!?」

「いや、突く前に気付いてよ」

 

 驚愕する天の助に対し、ハジメは冷たくツッコミを入れる。

 一方、シアのどんなことがあってもハウリアの帝国との戦争を止める、という意志を受けたカムは必死に弁解を始めた。

 

「待てシア。何も私達は無策で挑むつもりはないのだ」

「じゃあどうするつもりですか」

 

 必死なカムに対し、どこまでも冷めているシア。

 だがカムは挫けなかった。

 

「帝国に勝つためなら卑怯な手も使おう。地獄に落ちることもしよう。だが逃げることだけは、しねーぜッ! 暗殺だッ!!」

「ポルナレフ……」

 

 カムの必死な叫びに、なぜかユエが少しだけ感極まっていた。

 しかしここで、今まで黙ってみていた魚雷ガールが口を出す。

 

「カム。はっきり言うわ。私は今日皇帝に会ったけど、少なくともあなたより強いわよ」

 

 魚雷ガールの容赦ない言葉に、カムのみならずシア以外のハウリア一同が俯く。

 しかし彼らは再び顔を上げ、彼女に向かってこう言い切った。

 

「ならば玉砕を覚悟します。そして暗殺に及ばなくとも、せめて亜人族を脅威だと思わせれば――」

「おバカ――――――――――――――――――――!!」

「「「「「「「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」」」」

 

 カムの言葉に怒った魚雷ガールは、シア以外のハウリア諸共吹き飛ばす。

 そしてそのまま全員を正座させ、説教を開始した。

 

「ダメよ~自己犠牲なんて。仮にあなた達が犠牲になったとしても、帝国が亜人族を脅威に思う保証はどこにもないのよ。それどころか、脅威であるあなた達が排除されたとみて、逆に一段と酷くなる可能性だってあるわ」

「で、ですが……」

「それにあなた達には守るものが、帰るべき場所があるでしょう。それを見捨てるような真似は許さないわ! なぜなら私は、魚雷だから!!」

「それは……」

 

 魚雷ガールの言葉に反論しようとするカムだが、彼女は安心させるような笑みを浮かべた後、ハウリア達に向かってこう言い切った。

 

「私も手伝ってあげる。生徒を見捨てたりはしないわ」

「「「「「「「「「「せ、先生!!」」」」」」」」」」

 

 魚雷ガールの言葉に感動したハウリア一同。

 内数名は思わず彼女に抱き着こうと走っていくが

 

「やだ、痴漢!!」

「「「がはぁ!?」」」

 

 痴漢扱いされて、魚雷ガールの拳で沈められてしまった。

 だがそんなことはどうでもいいとばかりに、彼女は一堂に向かって言う。

 

「作戦は私が立てて、必要なものも私が用意してあげる。だけど成功するかはあなた達次第よ。やれるわね?」

「「「「「「「「「「イエスマムッ!!」」」」」」」」」」

「あなた達は、何!?」

「「「「「「「「「「我ら、兎人族が一つのハウリアにして! 先生に鍛えられた魚雷であります!!」」」」」」」」」」

「その通りよ! ならばあなた達の刃を以って、帝国を切り裂きなさい!!」

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」」」」」」」

 

 魚雷ガールの叫びで、士気が一気に最高潮にまで跳ね上がる、シア以外のハウリア一同。

 一方、そんなテンションにハジメ達は付いていけなかった。

 

「あ、終わった?」

 

 なので、彼らはトランプで七並べをやっていた。

 

「オイ、誰か♢の8止めてるだろ? ユエかこれ?」

「私じゃない。恐らくティオ」

「いや妾でもないのじゃが」

 

 誰が♢の8を止めているかで少し揉め始めるハジメ達。ちなみに止めているのはシアである。

 

「アンタ達ふざけすぎ――――――――――!!」

「「「「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」」」」

 

 だがその事実は、魚雷ガールがトランプ諸共ハジメ達を吹き飛ばすことでうやむやとなった。

 そんな中、首領パッチは一人思う。

 

(だって、話に入れないんだもん……! じゃあもうトランプするしかないじゃない……!! そうよね、ヤっ君……)

「ヤっ君!?」

 

 そしてハジメはこう思う。

 

(何千何万人が揃いも揃って! 女一人に! 縋りついてんじゃねえ!!)

「何でキレてるんですか!?」

 

 シアのツッコミが闇にこだまする中、夜は何事もなかったかのように更けていった。

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