【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義70 帝城インしたお!

 あの後、魚雷ガールは帝城へ戻り、ハジメ達は帝都の宿で、ハウリア達は岩場に留まって夜を明かす。

 そして翌日。ハジメ達は帝城へ入るべく順番待ちをしていた。

 帝城は許可書を提示したものしか入ることができず、できたとしても更に、フランスの凱旋門のような外観をした詰所で念入りな検査をされるという、とても厳重な警備をしていた。

 

「次ぃ~……許可書を出してくれ」

「はいこれ」

 

 門番の兵士に求められるまま、ハジメは昨日魚雷ガールに貰った例の許可書を提出した。

 すると――

 

「お通り下さいませ」

 

 それはそれは見事な土下座を披露しながら、門番は本来するはずの厳重な検査すらスルーして、ハジメ達を城の中へと通した。

 

(何したんですかあの魚雷さんは――――――!?)

 

 彼が見せた土下座はまさしく芸術の一言と言うほかない。ここは外で地面は石畳にも関わらず彼は額を地面に押し付けて頭を下げている。更に頭と手、そして体の位置は完璧な黄金比を表し、土下座であると同時に彼自身が美しさの体現へと成り、二度と見ることのできない究極の存在と化していき――

 

「土下座の描写が長いですぅ!!」

「境ホラなら十三ページ使ってた」

 

 シアの叫びで門番の土下座をスルーしながら、ハジメ達は城の中を進んでいく。

 途中、城の兵士達に訝し気な目で見られることもあったが、許可書をチラりと見せれば皆黄金比を体現した土下座を見せて何事もなく案内してくれた。

 しかし――

 

「よぉ、ウサギの嬢ちゃん。久しぶりだな」

「誰だこの、焼きそばパンパシリ専門兵みたいな奴」

「どんな奴だよ!?」

「っ! あなたは……」

 

 許可書を見せても怯まない兵士に、シアが絡まれた。

 首領パッチは彼を見て頓珍漢なことを言ったが、シアは覚えていた。それもそのはず、なぜなら彼は第2章においてフェアベルゲンに亜人族を捕らえに来ていた帝国兵の一人であり、隊長である。彼の名前はグリッド・ハーフ。

 彼はあの時自身を含む隊員が全員いいようにやられたこともあり、城の中で評判を著しく落としていた。なので、その鬱憤晴らしとばかりにシアへ話しかける。

 しかし――

 

「鈴以外のセイバー死ねぇ!!」

「がはぁ!?」

 

 いきなりやってきた鈴に鈍器で殴られ、グリッドは成すすべもなく気絶した。

 そしてなぜかそのまま彼女がさらにと案内役を務め、この帝国の王であるガハルドの元へ案内してくれることになった。

 これにハジメは戸惑う。

 

「え? 僕ら、とりあえず天之河君達と合流するつもりだったのに、何でいきなり皇帝と会うことになってるの?」

「皇帝がなんか会いたいんだって」

「オレを食うために?」

「それは無いよ」

 

 ハジメの疑問には要領を得ない回答を返し、天の助の問いは冷たく切り捨てる鈴。

 そうこうしている間に一行は皇帝のいる部屋へと到着し、通された。

 部屋の中には三十人くらい並んでも問題ない長さのテーブルが置いてあり、その上座には四十代ほどの野性味溢れ、スマートながら極限まで鍛え上げられた体の持ち主が座っており、その横には二人の男が立っている。

 誰であろう、上座に座っている彼こそがガハルド・D・ヘルシャー。この帝国の皇帝であり、横に立っているのがその部下だ。

 対し、ハジメ達は特に怯むことなくガハルドの対面へ進んでいく。

 首領パッチとユエに至っては、黒のビキニに着替えて気楽にしていた。

 

「いつ水着に着替えたんですか!?」

「サマーシーズン到来!!」

「夏色えがおで1,2,jump! ぴかぴかフェイスあげたい」

 

 シアの叫びに首領パッチがそれ以上の叫びを見せ、ユエが歌うことで返答とした。

 すると、ガタッと音がしたと思ったら、天井裏から一人の男が鼻血を流しながら落ちてくる。

 彼はこの部屋の天井裏に潜んでいた兵士の一人だ。実はこの部屋には隠れているだけで兵士が何人かいる。その内の一人がユエの水着姿に見惚れ、思わず興奮して鼻血を出して天井裏から落ちてしまったのだ。

 この小説では禄に描写されないが、ユエは男なら誰もが見惚れるような美少女である。そんな少女がビキニを着ているのだ。一人くらい鼻血を出したとしても不思議ではない。

 

「ユエの美少女設定って死んでると思ってた」

「妾もじゃ」

 

 ユエの美少女設定について不穏なことを言い合うハジメとティオを尻目に、ユエはそっと鼻血を出した兵士に近づき

 

「ふん」

 

 流れるような動きで、そのまま兵士に目潰しを喰らわせた。

 

「ぎゃああああああああああああ!!」

「私を嫌らしい目で見つめると、こうなる」

「じゃあそんな恰好するなよ……」

 

 痛みの余り転がりまわる兵士を冷たく見下ろしながら告げるユエに対し、ガハルドは乾いたツッコミを入れていた。

 その横では、首領パッチが懐から練りわさびのチューブを取り出し

 

「そしてオレの水着姿に見惚れなかった奴は……」

 

 天の助の目に、わさびを叩き込んだ。

 

「ぎゃあああああああああああああ!!」

「こうなる」

 

 悲鳴を上げながら転がりまわる兵士と天の助。

 

「高橋!!」

「「ぐばぁ!?」」

 

 そんな二人を、鈴は蹴りで気絶させて黙らせた。

 この光景を何も言えず、ただ茫然と眺めていたガハルドに向かって、ハジメはこう言い放った。

 

「これで理解したでしょう。僕達はやるかやらないかで言ったら、やる奴らです」

「わっけわかんねえ……」

(ですよねー)

 

 心底から理解できないものを見て唖然とするガハルドに、シアが内心で同意する一方、ハジメは特に意に介さず皇帝の前に座り、質問をした。

 

「で、皇帝陛下。僕らに会いたいとお聞きしましたが、一体どのようなご用件で?」

「いや、お前らは強いって雫から聞いてたんで、一目見て、場合によっては部下に勧誘しようかと思ったが――」

 

 そこでガハルドは一旦言葉を切り、首領パッチ達の方に一度視線をやってから再びハジメの質問に対し返答の続きをした。

 

「やっぱやめにするわ。もうお前らに用はねえよ」

「何よ! 一方的に呼びつけて、いらなくなったらポイ!? あなたとアタシはそんなに安い間柄だったの!?」

「最低男」

 

 ガハルドの勝手といえばその通りな物言いに、首領パッチは抗議しユエは冷たく吐き捨てる。

 それに対し、一方的な物言いをした側のガハルドは、面倒くささを十全に示しながらハジメ達にこう言った。

 

「まあ、なんだ。せっかくだからお前らもパーティーに出席していけ」

「パーティー?」

「ああ、俺の息子とリリアーナ王女の婚約パーティーを今夜するからな」

「こんにゃくパーティーだと!?」

 

 ガハルドの普通な説明に対し、婚約とこんにゃくを聞き間違えた天の助がここで目を覚まして抗議しようとする。

 

「鈴木!」

 

 それを鈴が再び殴り倒して阻止。ガハルドの言葉は何事もなく続く。

 

「で、どうする? 出るか?」

「じゃあ、せっかくですし出席します」

「分かった。なら服とかの用意はこっちでするから、案内に従ってくれ」

 

 ガハルドの誘いをハジメは快諾し、他のメンバーも異論を挟まなかったので、彼らは和気藹々と部屋を出ていく。

 

「僕パーティーとか初めてだよ。ドレスどうしよう?」

「オレはやっぱりぬのドレスだな。色はどうでもいいけどよ」

「アタシはやっぱり~、ヤっくんとおそろになるような真っ白の純白ドレスがいいかな~って」

「何で男性陣までドレス着る気満々なんですか!?」

 

 


 

 

(ここまでのあらすじ)

 婚約パーティーの為に着付けをしていたリリアーナ。しかしそこに婚約相手である帝国の皇太子、バイアス・D・ヘルシャーがやってきた。

 彼は部屋にいた侍女やリリアーナの護衛騎士を追い出すと、リリアーナを押し倒しパーティーの前に処女を奪おうとしてきたのだ。

 ウカツ! バイアスは女好きで有名で、ジッサイリリアーナが十歳の時に一度会った際、彼女を舐めるような嫌らしい眼つきで見ていたが、それでもこんな時にやってくるとは思っていなかった。

 

「フィーヒヒヒ! リリアーナ=サンカワイイヤッター! その反抗的な目を苦痛に、絶望に、快楽に染め上げたい! ジッサイ、キンボシオオキイ!!」

「あ、あなたという人は……」

「婚約パーティーの前に純潔を散らすお前を想像すると楽しみで仕方ない!!」

 

 おおブッダよ、あなたは今も寝ているのですか! リリアーナは涙をこらえながら気丈にバイアスを睨むが、彼はそんな彼女を見てただ嗤う。

 このまま彼女はこの悪漢にファックされ、処女を奪われてしまうのだろうか?

 

 ズルズルズルズル

 

 しかしここでなぜか、まるで麵を啜るような音が部屋に響く。

 部屋には誰もいない筈、とバイアスが疑問を抱きながら音のする方を見る。するとそこには――

 

「全く。ここではおちおち食事もできないわね」

「アイエエエエエエ!? ギョライ!? ギョライナンデ!?」

 

 魚雷ガールがリリアーナを抱きかかえながらソバを啜っていた。

 その光景に驚くと同時に、じゃあ今俺が押し倒しているのは誰なんだ、と疑問を抱きながらベッドを見る。

 

「くっ許せないぜなぜこんなことを・・・」

 

 するとそこには、口紅を塗り、ドレスを身に纏い、押し倒されている首領パッチがバイアスを睨んでいた。

 

「ザッケンナコラー!」

「ぶべっ!?」

 

 そんな首領パッチをバイアスは壁に投げつける。

 だが魚雷ガールは眼前の行いを無視して、バイアスに指を突き付けて宣言した。

 

「婚前に無理矢理女の子を襲うなんて、そんな不埒な真似は許さないわ! なぜなら私は、魚雷だから!!」

「スッゾコラー! イヤーッ!」

 

 皇太子たる自分に仇なすとは生意気な、とばかりに魚雷ガールに襲い掛かるバイアス。

 彼はこの帝国の皇太子だけあって、かなりの実力者だ。

 そもそもこの国で王位の継承権は血筋の強さではなく実力で決める。単純な戦闘力に加え政治的な能力で政敵を蹴落とせるか、この二つが要だ。帝国はこんなところでも実力主義である。

 故に、バイアスは普通なら難敵と言えるだろう。

 

「不埒者には魚雷昇竜拳!!」

「グワーッ!」

 

 だがナントカ楽勝で倒した

 

「まさにあらずんばね・・・」

「力は力だけじゃなく心も合わさって初めて力からずやだぜ!」

 

 そしてよく分からないセリフを残し、去っていく魚雷ガールと首領パッチ。

 一人残されたリリアーナはしばらく処理落ちしていたが、やがて正気に戻った彼女は、とりあえず侍女を呼んでドレスの仕立て直しを頼むことにした。

 

『いや、忍殺とFFSが混ざってカオスすぎるんですけど!?』

 

 なお、この際にいない筈のシアのツッコミが響いた気がしたが、リリアーナは無視した。

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