【完結】ありふれたハジケリストは世界最狂   作:味音ショユ

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奥義71 素敵なパーティーですってよ。奥さん!

 ヘルシャー帝国皇太子バイアス・D・ヘルシャーと、ハイリヒ王国王女リリアーナ・S・B・ハイリヒの婚約パーティー会場。

 そこは外の世闇が嘘のような煌びやかな空間だった。会場にはいたるところに長机があり、その上には豪奢なテーブルクロスと、何百種類もある趣向を凝らした料理やスイーツが置かれている。これも二国間がつながるパイプの為と考えれば納得できる代物だ。

 その会場の一角にシアはいた。

 彼女はムーンライト色のミニスカートドレスを身に纏い、スラリと長く引き締まった美脚を惜しみなく出していた。しかし、そこに下品なものは感じさせず、むしろパーティー会場の雰囲気と合わさって、彼女の可愛らしさをふんだんに引き出していた。

 当然、シアが兎人族なこともあって、彼女を我が物にと考える帝国人は多かった。しかし、仮にも神の使徒、それも皇帝が注目するような強者であるハジメの仲間である、という情報を予め仕入れていたので、彼らは迂闊な真似ができない。

 そしてもう一つ。彼らが話しかけられない理由は、シアより先に会場へと来ていたハジメ、首領パッチ、天の助の三人にある。

 彼らは真のハジケリストである。故にその振る舞いは、常人に関わることを躊躇わせるのだ。

 その証拠に、天の助は下に黒のシャツを着て、上はぬのスーツでキメていた。

 

「どうよ? イケてるだろ?」

「まあ、予想していた範疇です」

 

 天の助のドヤ顔をシアは適当に躱し、彼女は次に首領パッチへと視線をやる。

 彼は、“GUNDAM〟と書かれたダンボールを頭から被り、外には一番上のトゲと腕と足だけを出している状態だった。

 

「オレがガンダムだ」

「顔出てないんですけど!?」

 

 シアが首領パッチのダンボールを引っぺがすと、中にはこんなものが。

 

「メロンパン入りとなっておりまーす」

「トリ〇アの泉――――――――!!」

「懐かしっ」

 

 首領パッチがメロンパンを掲げているのにツッコミを入れてから、シアは最後にハジメへと視線をやる。

 

I am Ir〇n Man(私がアイ〇ンマンだ)

「ハジメさん! それスーツ違いですぅ!!」

 

 ハジメは赤と金色の鉄のスーツ、アメコミヒーローのアイア〇マンのコスプレをしていた。そのコスプレのクオリティは凄まじく、シア達には最早本物の金属を使っているようにしか見えなかった。

 

「でもこのアイアン〇ンスーツ、紙でできてるんだ」

「ペーパーハジメじゃん」

「スーパーペーパーハジメ、始まります」

「始めなくていいです」

 

 危うく別ゲーが始まりそうなところをシアは適当にあしらい、ハジメは紙製ア〇アンマンスーツからきぞくのふく*1に着替えた。

 

(ドラ〇エ6?)

 

 シアがハジメ達にツッコミを入れ続けていると、いつの間にかパーティー会場のある部分がざわざわと騒がしくなっている。

 ハジメ達四人が騒がしい場所へ行くと、そこにはユエとティオが遅れて会場にやってきていた。

 ユエ、ティオの二人は忘れられがちだが非常に容姿が整っているので、パーティーに参加している男達は皆目を見開いて彼女達を見つめていた。

 そのせいでパートナーの女性がいる男性陣は制裁されていたが、そんなことはどうでもいいとばかりにユエ達はハジメ達の元へ向かう。

 まずユエは、ミッドナイトブルーのロングドレスを身に纏っていた。肩口こそ露出していたものの全体の露出度は控えめでありながら、当人の醸し出すオーラが、外見の幼さと反比例して妖艶な色気を纏わせていた。

 

「どう、ハジメ? 似合う?」

 

 体をクルクルと回しながらハジメに問いかけるユエ。そんな彼女に対し、彼はこう返事した。

 

「ああ、うん。いいんじゃない?」

(返答が雑ですぅ!!)

 

 ドパンドパンドパン

 

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

「仕方が無いのう」

 

 反応の薄かったハジメがユエに撃ち殺されたところで、次はティオが現れた。

 彼女は黒のロングドレスを着ていた。それも、体のラインが浮き出るようなピッチリとした服で、おまけに背中と胸元が大きく開いているので、彼女の大事な部分が零れ落ちそうだ。

 

「……何いきなりお色気キャラアピールしてんのさ」

(反応が冷たい――――――!!)

「アズ〇ンの大鳳みたいじゃろ?」

 

 ハジメの冷たい反応も気にすることなく軽口をたたくティオ。

 一方、今まで黙っていた首領パッチと天の助は、ここにきて彼女達に物申す。

 

「……何でハジケねえんだよ? あぁん? やる気あるんですかぁ? 先パァイ!?」

「ところてん和えドレス、特注で用意したのに……どうして着ないのよ!!」

(理不尽な難癖ですぅ―――――――――!! ところてん和えドレスって何!?

 

 ウザく絡んでくるバカ二人に対し、ユエは平手打ちで応え二人を黙らせた。

 その光景を見届けてから、シアはハジメに話しかけた。

 

「さて、ハジメさん。それじゃあ――」

 

プレイ画面

(心眼で捉えよ)

▷ばしょいどう

 ひとに きけ

 ひと しらべろ

 なにか みせろ

 よべ

 たいほ しろ

シア「ここは パーティーのかいじょうです

   どうしますか?

 

「う~ん、じゃあ“ひと しらべろ〟で……」

「何でいきなりポー〇ピア連続殺人事件になるんですか!?」

「今回、全体的にネタ古くない?」

 

 ユエが懸念の声をあげると、今度は会場の入口の方が騒がしくなる。その直後、リリアーナ王女とバイアス皇太子がやってきたと、会場のいる誰かが情感たっぷりに大声で伝えた。

 しかし、会場に入ってきたリリアーナのドレス姿に、人々は困惑を隠せなかった。

 それは彼女が

 

「黒だよ! 真っ黒ォ!!」

 

 と首領パッチが思わず叫ぶほどに、着ているドレスの色が黒色である上に、顔には「自分、義務でここにいますけど何か?」と言わんばかりに不満そうなすまし顔だったからだ。

 そのまま彼女達は壇上に上がり、パーティーの司会を務める男を微妙な顔にしながら、それでもパーティーはつつがなく進行していく。

 やがて会場に音楽が流れ始め、男性のパーティー参加者は会場の花を誘って踊り始めた。

 

「ハジメ。踊ろう」

「いや、僕が踊れるのサンバくらいなんだけど」

 

 ユエがダンスに誘うも、ハジメは踊れないからと拒否した。

 そんな彼にティオは呆れた表情を隠さず、こんこんと諭すようにこう言った。

 

「ご主人様。ユエは元王族じゃからぬしのリードくらい出来よう。それに、女子から誘っておるのじゃ、あまり恥をかかせるでない」

「あ~……」

 

 ティオの言葉に思うところがあったのか、ハジメは頬を軽く掻いた後、ユエに手を差し出して踊りに誘った。

 

「ハァ……。一曲踊りませんか、ユエ?」

「……ふっ。ハジメにそんな台詞は似合わない」

「言わせておいて……!」

 

 ユエの軽口にハジメがキレる一幕もあったものの、二人は踊り始めた。

 結論を言うと、ダンス初心者で致命的なミスを何度もしそうになるハジメを、ユエが必死にフォローする有様であったが、恥ずかしがるハジメとは対照的に、当のユエは非常に楽しんでいた。

 他の四人の内、シアとティオは会場にいる男の一人にそれぞれ誘われて踊り、首領パッチと天の助はコンビで『ソウル・DE・マチュピチュ』というダンスを披露。

 

「マチュピチュマチュピチュ」

「マチュピチュマチュピチュ」

「あ、あれは古代インカ帝国に伝わる伝説の空中都市ダンス! こんなところでお目に掛かれるとは思っていなかったわ……!!」

 

 その結果、ワインレッド色のドレスを纏い目立ちつつも、パーティー中は壁の花に徹していた雫の目を引いてしまったがこれは余談である。

 それからしばらく、ハジメ達は思い思いにパーティを楽しんだ。

 そうこうしているうちに時間がどれほどすぎたのか、いつの間にか曲が終わり、ガハルドが壇上に立っていた。スピーチと再びの乾杯の為である。

 

「さて、まずはリリアーナ姫の我が国訪問と、息子との正式な婚約を祝うパーティーに集まってもらったことを感謝させてもらおう。色々と……実に色々サプライズがあって、実に、おもし、ろい……催しと、なった」

(言い淀んでる……)

 

 意味ありげ、というか恨めし気な目をハジメに向けながら話すガハルドに対し、思わずどこか憐れんでしまう雫。ちなみに当のハジメは、仲間を含む六人でけん玉を使って遊んでいる。

 やがて意味がないと悟ったのか、ハジメに目を向けるのをやめたガハルドはワインの入ったグラスを天に掲げ、スピーチを続ける。

 

「パーティーはまだまだ始まったばかりだ。ハジケリストという輩に驚くことはあるだろうが、今宵は大いに食べ、大いに飲み、大いに踊って心行くまで楽しんでくれ。さあ、皆も杯を掲げろ!!」

 

 ガハルドが促し、やがて会場にいる全員が杯を掲げるのを確認した後、音頭を取る。

 

「この婚姻により人間族の結束はより強固となった! 我ら、人間族に栄光あれ!!」

『栄光あれ!!』

「バエルの元に集え!!」

 

 その瞬間、会場に灯っていた光は全て消え、辺り一面が闇に染まった。

 

「うわっ!? 何が起こったんだ!?」

「嫌ぁ! 何なのよぉ!?」

「神砂嵐」

 

 突然の暗闇にパーティー参加者は怯え、慌てふためく。

 しかしユエはこの状況下でなお、慌てず騒がず皆に指示を出す。

 

「皆落ち着いて。これは恐らく氷を使ってブレーカーを落とし、会場を停電させるトリック。犯人はまだこの会場のどこかにいる!」

「まだ何も起きていませんけど!?」

 

 ユエのボケとツッコミを入れるシアはともかく、一部の人間は魔法で灯りを作ろうとする。

 

「狼狽えるな! 所詮死にぞこなガハァ!?」

「どうしタァァン!?」

「何が起こっテンタクルス!?」

 

 だが、灯りを作ろうした者、あるいはその近くにいた者から次々と何者かにやられていく。

 当然、帝国も負けてはいられない。

 状況は呑み込めないが、この暗闇に乗じて何者かが襲撃してきているのは確実。ならば実力主義を掲げる彼らがここでひれ伏すわけにはいかない。

 しかし最終的には――

 

 キンキンキンキンキンキンキンキン

 

「ぐぅ……」

「なんということだ……」

 

 帝国の実力者は皆敗れ、地に堕ちていた。

 

「いや戦闘シーン面倒くさがりすぎですよ!!」

 

 そして闇が失せ、光が再び会場を照らす時、そこにいるのは――

 

「お前達の負けだ。帝国共め」

「お、お前らは……」

 

 そこにいるのは、なんと――

 

「いや引っ張るんですか!?」

 

 続くッ!!

 

(続いたですぅ―――――――――!?)

 

 シアがツッコミを入れる一方その頃、会場の隅では鈴、光輝、龍太郎、香織の四人が、雫に対し恨めしい視線をぶつけていた。

 

「ところで、間違いなくパーティーにいるはずなのに碌に描写されないシズシズ以外の鈴達四人のことを、皆覚えていますか……?」

「ごめんなさい……って色薄っ!?」

 

 四人の視線に対し、雫は思わず謝ってしまっていた。

*1
守備力23

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